第1話 幼女転生
そう。俺は生まれ変わったのだ
「あうあうあー、あー」
目の前の若い金髪の二人に名前を聞こうとしたが
舌がまわらずうまく言葉にならなかった
それを聞いた二人は溢れんばかりの笑顔を向け
俺の体をゆっくりと抱えあげる
どうやら俺は赤子に生まれ変わったらしい
となるとこの二人が俺の両親である可能性が高い
そして俺も将来美形に育つことが約束されたということだ。
やったぜ
そして持ち上げられて初めて気が付いたが
俺の隣にはもう一人の赤子がいた。
これはあれか、双子というやつか。
となると私は兄か弟なのかな?
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一ヶ月が経過した。
どうやら俺は兄でも弟でもなく姉であったのだ
そう、あるはずのものがなかったのだ。
そしてどういう原理かわからないが前世の記憶を持っている。
ラノベなどでよくある設定で、誰もが一度は憧れることだろう。
それが現実となっているのだ。
それと、予想はしていたがここは日本ではない
それどころか地球ですらない可能性が出てきた。
まず、会話が聞いたこともない言語で話されていること
次に両親の服装が民族衣装と洋服を足したようなものであること。
そして極めつけは、家電製品みたいなものがあるにはあるが
現代科学では説明できないものが多々あったのだ。
たとえばキッチン。
火といえばガスコンロだが、恐らくガスや電気を使わず
赤い石?のようなものに鍋を置くと火が出ていたのだ
それ以外に不思議だったのが水道だ
水といえば蛇口だが、これも蛇口をひねるのではなく
桶の上に置かれた水色の石に手をかざすと水が出てくるのだ。
いくら現代社会の科学を必死に学んできた私でも
これは魔法と認めざるを得ない。
そうでなければ説明のつかないことが多すぎるのだ。
そう、私は日本でも海外でもなく
【異世界に転生】したのだ。
魔法のある異世界に転生...
俺だって一度どころか何度も夢みたさ
魔法が使える異世界に転生してみたい。と
ワクワクぐらいしてもいいだろ?
年甲斐もなくそう思うのは変じゃないはずだ
俺はこの時、前世で人生に失敗し絶望した分
この世界で本気生きよう。
俺は強く、強く決意した。
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半年が経過した。
少しずつだが言葉がわかるようになってきた。
どうやら俺の名前はユーリというらしい。
そして双子の妹はリリィという名のようだ。
そう!私にも妹ができたのだ!
前世では男三兄弟のむさ苦しい生活の毎日だったが
これからは華しかない双子姉妹の生活が始まるのだ。
これは心オドル。嬉しい。人生は始まったばかりだが
幸先が良すぎてなんだかやる気に満ちあふれてきた。
それはそうと、ハイハイができるようになった。
俺は動かない体に鞭をうってとにかく家中を動き回った。
情報が欲しいのだ。
なんでもいい、とにかく情報が欲しかった。
話している言葉もわからない、両親がどんな人で
自分がどんな世界にいて、何者なのかもわからない。
何も知らないことが恐怖なのだ。
言葉を必死に覚えようと絵本を読みまくった。
周りを知るため家の中を隅々までみてまわった。
早くうごけるようになるため体を動かしまくった。
その間妹のリリィも俺の真似をして
ハイハイで後をついてきたり、絵本をのぞき込んだり
体を俺と同様に無理して動かしていた。
俺はかなり無理して体を動かしていた
間違いなくリリィも辛いはずなのに
なんて我慢強く一生懸命な子なのだろうか
両親はそんな元気に動き回る俺達を見て
「私達の子はなんて元気に動き回るのかしら!」
「きっと将来立派に育つぞ!」
と、とても嬉しそうに話しているように思えた。
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さらに半年が経過し、俺達は1歳になった。
自由に歩き回れるようになり
階段も登れるようになった。
それで気付いたのだがこの家はかなり大きい
俺はもしかしたらお金持ちの家に生まれたのかもしれない
2階には親父の部屋があった。
部屋の中には何十種類もの剣や、鎧、宝石のようなキラキラした石などがあった。
一瞬、俺の父は厨ニ病かなにかか?
ともおもったが、ここは異世界だ。
剣と魔法の世界なのだろう。
きっとこれがここでは普通なのだ。
父の隣の部屋は母の部屋だった
父とは対象的に、剣や鎧などは少なく洋服や本棚が多い印象だ。
本棚をみてみると
『薬学読本』『杖の有効的使用方法』『D級魔法書』
などがあり、恐らく母は魔法使いかなにかかもしれない
部屋の隅にはキレイな石が嵌められた杖が大事におかれていることから
その可能性は高い。
となると父は剣士か?
母が魔法使い、父が剣士。
そして娘は魔法剣士に!!
ってそんな夢みたいな話あったらいいんだけどな。
生前は男だから少しそういうカッコいいの憧れる
「あっ!ユーリ!それにリリィまで!
こんなところまできちゃだめでしょー」
母親のマーサが俺達を抱えあげる。
「マンマ!マンマ!」
「そうよリリィ、ママですよー
二人とも本が好きだからここまできたのかな?
絵本よんだげよっか?」
「「うん!」」
「ユーリ、リリィいい子ねー。じゃあ今日は
元気な犬のハンターのお話にしましょうか」
元気な犬ハンターのお話とは
主人公がかわいい犬の獣族なのだが
小さくて弱そうな見た目が原因で周りからは
バカにされたり、いたずらされたりするが
主人公はそれに屈せず、持ち前の元気さでハンターを目指す。
幾多もの苦難を乗り越え、その持ち前の元気さと強い心に
惹かれたものが仲間となり世界中を旅するという
冒険ファンタジー(?)物語である。
きっと、『見た目にコンプレックスがあっても諦めず頑張れば仲間も付いてきて夢が叶うよ』ということを伝える絵本なのだろう
「しゅごい!かっくいい!」
「おー!」
俺とリリィは笑顔で賞賛した
俺も子供のフリがうまくなったものだ。
隣に見本がいるから真似してるだけだが
母親のマーサが俺達に度々絵本を聞かせてくれたおかげで
俺は言葉をそこそこ理解しつつあった。
ここまで言葉を理解できるようになったのも
もちろん生前の知識があるからというのもあるが
この体は物覚えが非常にいい気がするのだ。
一度聞いたものが、なんの抵抗もなくスッと頭に入ってきて
脳に定着する感覚がある。
それになんだろう、生前と比べものにならないぐらい
気分が晴れている。
うつ病の欠片もない、もはや存在してなかったかのような気分だ。
偉人の言葉で
『健全なる魂は健全なる身体に宿る』とある。
ひょっとすると健全な身体に移ったから魂である精神も
健全になったのかもしれない。
うつ病を治すには健全な身体に移ればよかったのだ!
ってなんでやねん。
そんなうつ病治すためにぽんぽん身体移るってどないなっとんねんって。はい。
こんな脳内一人ノリツッコミも数年ぶりにやったきがする。
昔は根っから明るかったのにな。いつから暗くなったんだろうか...
とまぁ、なんにせよつまり転生はすごいということだな。
これからの人生とことん頑張ってやろうじゃないの!!