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第0話 プロローグ


(苦しい苦しい苦しい...!!!)


意識が朦朧とする暗闇の中

呼吸ができず苦しくて苦しくて

俺は必死に叫ぶ、ひたすら叫びつづけた

声がでているのかどうかすらもわからないが

俺にはそれしかできなかった。


そして叫び疲れたせいかそのまま眠りについていた...



――――――――――――――――――――――――


目を開けると若い金髪の女性がのぞき込んでいた


(え?誰...?)


隣には同じく金髪の男性もおり、笑顔でこっちを見ていた


「....ーーー......ーーーー.....ーーー」


二人は何か話しているが全く聞き取れない


「....ーーーー....ーーーー...!」


今度はこちらに向かって話しかけてきているが

やはり全く言葉を聞き取ることができない。


間違いなく日本語ではない。

そして恐らく英語でもないと思われる。


よく見れば二人とも顔立ちから日本人ではないことがわかる。となれば、ヨーロッパ系か?


もちろん俺にはそんな知り合いなどいない

じゃあなぜ目の前に二人の外国人が...??


わからない。

なぜ?昨日俺はなにをしていた?

最後になにをしていたんだ?

思い出せ...思い出せ...!!


あ....そうだ...。ようやく思い出した。

そうか。そうだったのか。。。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


25歳男 社会人1年目


それが昨日までの俺のステータスだった。


男3人兄弟の次男として生まれ

兄に負けたくない一心で、勉強とスポーツへ熱心に取り組み

関西トップの理系私立大学に合格。

大学卒業後はそのまま大学院に進学。就職活動は同じ研究室の優秀な先輩にスカウトされ、某大手電機メーカーに就職。

社会人生活が始まる4月からその当時2年付き合っていた彼女とも同棲を始めた。


ここまで俺の人生は順風満帆だった。


しかし、それは徐々に崩壊していった。



先輩からはその職場は残業が多く辛いとは聞いていたが

当時ノリノリでお金が欲しかった俺は乗り切れる気満々だった。だが現実は甘くなかった。

直属の上司がハズレだった。

頭ごなしに怒鳴り散らす、無理難題を押し付ける。

物に八つ当たりする。こっちの言い分は何一つ聞かない。

挙句の果には人格否定。


残業時間も初月で45時間、2月目で60オーバー

3月ヶ月目、4ヶ月目も残業は減るどころか増える一方


これぐらいまでなら、まだ想定はしていた

俺だって慣れれば大丈夫だと思っていた。


しかし問題はまだあった。

 

仕事が終わり夜の11時

へとへとになって家に帰ると鬼の形相で荒れ狂う彼女

「どうして怒っているの?」と理由をきくと

「全てお前と仕事のせいだ」という

お前の残業が多すぎて二人の時間がない。

共働きなのに家事はなぜ私が全部やらないといけないの?

私の仕事の上司がきらい。

仕事がうまく行かない。

もう辛い死にたい。

ねぇ、一緒に死のう?


元々ネガティブでヒステリックな所がある彼女だったが

同棲と仕事の開始という環境の変化に耐えられなかったようだ。そして俺に八つ当たり。

俺はそんな暴れる彼女を慰めつづけた。

そしてそれと同時に俺の心は徐々に蝕まれ続けていた。


しかし俺の心は1年が経過する直前にとうとう

完全に潰れてしまった。


ストレスで胃潰瘍ができ、食事も喉を通らない、睡眠もできない

その上、会話も段々とまともに出来なくなり

当時は簡単に受け流せていた叱責も徐々に受け流せなくなってきていた。

そして異変に気がついた会社の同期に勧められ

心療内科へ受診しにいくと「うつ病」と診断されたのだ。


原因は仕事と彼女によるストレス過多。



ああ。俺の人生は終わったのか。


親や後輩にも祝福され順調だった俺の人生は...


どこから俺の人生が狂ったのか。

仕事のせいか?彼女のせいか?


いや違う、この俺の中途半端な性格のせいだ。


仕事では数多くの仕事を任せられた時、同時にうまくこなすことができず、結果どれも中途半端な出来で使い物にならない新人というレッテルを貼られ


女関係においては、彼女がいるにもかかわらず

ケンカした拍子にネットで知り合った女の子と遊んでしまった。ケンカが仲直りした際に彼女にそのことがバレ死ぬほど怒られ、それが原因でSNS禁止・女性との関わり禁止など強い束縛をされるようになった。


そう、実は全て俺の性格に原因があったのだ


「人生....やり直せたらな」


気がつくとそんなことを呟いていた



うつ病にかかったときの本当の恐怖は

何を言われても全てがネガティブにしか捉えられず

自分はダメな人間なのだ、自分以外の人間は俺を否定する全て邪魔者だ。という負のスパイラルにおちいることである。


たとえうつ病がましになったとしても

もうあの職場に復帰する勇気もやる気も存在しない


かといって転職などできるわけがない。


親は「大丈夫、ゆっくりでいいじゃない。今は休みなさい」と優しく言ってくれるが

ゆっくりなんてしてられるわけがない

周りが生きるため必死で仕事をしている中

俺は何をしている?布団に篭って、自分がうまくいかないことを全部人のせいにして自分を正当化しているだけのクズ人間だ。こんなやつは死んでしまったほうがいいにきまってる。


いっそのこと人生をやり直したほうがいい...


そうだ、人生をやり直そう。



そう最後に強く思ったことだけは思い出せた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


恐らく俺は死んだのだろう。


どうやって死んだのかまでは覚えていない。

でもいまとなってはどうでもいい。


俺は転生したのだ。







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