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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異世界はテンプレを求めている

作者: 零度霊水

異世界人も大変なんです

「それじゃあお姫様、頑張ってテンプレ勇者を召喚して王国を守ってね」

 そう言って女神様は去っていった......ど、どうしましょう! 私に王国を守って? 嘘でしょ! 働かないお姫様って評判の私が、助けてくださいお父様......


 私は天を仰ぎながらお父様と話す時間を作るようカラ(侍女)に命令を出す。


「お父様と話があるので時間を作れないか聞いてください」


 お父様はこの国の国王だから簡単には時間を作れないだろうけど、私のお願いなら聞いてくれるはず。


「はい」


 天井にシミがないか探しているとカラが帰ってきた。


「くっ、一つも見つけられなかった」

 そういえば天井のシミってどうやってつくんだろう?


「何の話ですか? 」


「ん? 何でもないわよ、それでいつお父様と話が出来るの? 」


「水の刻になったら部屋に来てくれと言っておりました」


 水の刻ですか、時間が余りますね。女神様から貰った『らいとのべる』ああ! いけない、女神様に発音教わっていたの忘れてたわ。

『ライトノベル』でも読んでいますかね。


「じゃあ火の刻が終わったら呼びに来て、それまでは私の部屋に入らないでね」


「わかりました」






  ◇◇◇


 [コンコン]


「エリル様、時間になりましたよ」


 カラが扉の前で私を呼んでいる。それにしてもこの『ライトノベル』とは恐ろしいわ。やめられなし、止まらないなんて......そうだ! ここはライトノベルに書いてあったあの方法を。


「あと五分だけまってー」


「五分? 何ですか? それ、そろそろ火の刻終わりますよ」


 ああそうか、この世界には時間の刻み方って刻しか無いからなぁ、この分や時間は革新的なアイディアだね。是非この国に広めたいな。


 私はライトノベルを収納袋にしまってドアを開ける。


「ありがと、あとは一人で行くから」


 この城の中では私は比較的自由に行動できる。お父様が私を溺愛しているのをみんな知っているので、人がいっぱいいる所なら自由に歩き回っていいと言われているからだ。





  ◇◇◇


「お父様大変です! 女神様が降臨しました! 」

 私は部屋に入ってしっかり扉が閉まっている事を確認した上でそう伝えた。


「なっ、そ、それは本当か? 」


「はい、女神様が言うには数年後にこの世の災厄を集めた魔物がこの国に出現するらしいです」


「うーむ、嘘発見の魔道具は反応せんし、だとするとまずいな、冒険者ギルドへの呼びかけとーー」


王の言葉を遮るのは重罪だけど、今は父として接しているので問題はない……たぶん。


「女神様がこの国に救済をもたらしてくれました、この『ライトノベル』という異世界の書物と七日に一回異世界より勇者なる者を召喚する能力を授けてくれました」


 私はバックから十数冊のライトノベルを取り出しお父様に渡す。

 お父様はライトノベルを流し読みして

「この表紙の精密な絵からして、異界の技術だと言われても納得がいく。さらに、時間の概念、お金の細かさなどは見習うべきところだな。勇者召喚はエリルに任せよう。ワシは冒険者ギルドへの呼びかけと、この書物を調べよう」

と言いました。私にも仕事ができたようです。


「わかりましたお父様」


 私のテンプレ勇者召喚生活はこうして始まった。









 1回目


 七日間毎日ライトノベルを読み続けた。ライトノベルといちいち呼ぶのは長いので『ラベル』と略す事にした。『ラノベ』と言う案もあったが辞めた。


 場所は城の裏にある別館で行う事に決まった。騎士団一つを使って私を守って守ってもらう事にしました。

 他にも、美人魔法使いや、メイドを用意した。なんでもテンプレ勇者とはイケメンで、ハーレムを作る者が多いらしいからだ。

 私も『見かけだけのお姫様』とか陰口を言われていたので容姿はいい方だと思う。でも私は男性に興味ない。むしろ女性方が好きだ。だから私以外にも人を用意した。でも、この国のためなら私は勇者に身を捧げることも考えている。


「それじゃあ召喚しますね。 『扉よ開け、異界より、召喚に答えし者を! 勇者召喚(サモン・ブレイバー)』」


 地面に魔法陣が現れ強い光を放つ。

視界を青い光が多い、思わず目を瞑る。

 光が晴れた時そこにいたのは、17歳くらいの黒髪の女の子だった。


「あの、何処ですかここは」


「召喚に答えていただきありがとうございます勇者様、ぜひこの国を救っていただきたいのでs「何ですか貴方達、召喚? 答える? 勇者? 知りません、早く家に返してください! 受験は一週間後なんです!勉強しないといけないんです!! 」


 どうやら間違えて召喚に答えてしまったようだ、仕方ないので私は少女を元の世界に召還した。

 どうやら物語の様には進めず、テンプレ勇者は来ないようです。


 次の召喚は7日後。成功するといいなぁ……






 5回目


 遂に一ヶ月経った。

この能力、よく鑑定したら勇者を召喚する能力では無く、異世界から高確率で人を召喚するスキルだという。しかも、答えものなど関係なく、無作為に召喚をするようだ。この能力で召喚される方は年齢もまちまちで2回目ではお爺さん、3回目は赤ちゃんだった。

 4回目に関してはただの犬です。首輪をしていたので思わず魔力で『ユーシャ』と文字を書いてしまいました。こちらの言語で書いたので、恐らくは問題ないですが、少し反省しています。

さらに別館には新しくスキル鑑定の設備がつきました。召喚された人の能力を調べられまあう。これをつけた意味が無くなればいいのに。

 王国ではラベルから情報を取り出し、時間とお金の単価を変えようとする取り組みについて話し合いがなされています。まぁ、お父様のことですから恐らくは国の制度は変わるでしょう。


私は自分の仕事。勇者召喚に力を尽くすだけです。


「では、行きます! 『扉と開け、異界より、召喚に答えし者を! 勇者召喚(サモン・ブレイバー)』」


 地面に魔法陣が広がり、強く発光する。



「おお! これが異世界召喚ってやつか! 」


 眼帯と、片腕に包帯をぐるぐる巻きにした眼の赤い十七歳くらいの少年がいた。容姿はイケメンではない。しかし勇者は必ずイケメンでは無いようなので、別に問題ない。


「召喚に答えていただき、有難うございます、勇者s「わかってるから。この世界を救ってくれとか言うんだろ」

 察しがいいのは嬉しいが異世界人はどうしてこんなにも私の言葉を遮るのだろうか?

 スキル鑑定の魔道具のスイッチを入れる。


「異世界は救ってやるから安心しな、報酬はここにいる美女、美少女全員で」

 この場にいる女性は全員奴隷身分なので申し訳ないが従ってもらうしかない。


「わかりました、その報酬でお願いします」


 少年が近づいてきて手を出す。握手の申し出のようです。

 スキル鑑定が完了した。


「じゃあ前金としてお姫様。あんたを貰うぜ」


私の手を引き私を抱き寄せようとする。


「召還」


「えっ? 」


 少年、改めクソ野郎は私の胸の数センチ前で帰っていった。彼が持っていた能力は『奴隷王』という能力で効果はレベルの数だけ、触れた異性を強制的に奴隷にするという物らしい。これは人間にしか効果がないので送り返した。政治的な使い道は存在するかもしれないが、私達が求めるのは勇者だ。新たな者を召喚するには既存の者を召還しないといけない。私達は勇者を召喚するまで止まれないのだ。

 幸い召還すると能力も消えるのであっちの世界が危険に陥ることは無い。

 テンプレ勇者までの道は遠いです。







 12回目

 私はもう諦め始めている。召喚される者達の殆どがあっちの世界に強い思いがあった。7回目と10回目はこの世界に残ってもいいと言っていたが、能力を伝え、勇者はこの世界に1人しか召喚できないので何が何でも勇者をやってもらうという趣旨を伝えたら帰っていった。


「じゃあ行きますね『扉と開け、異界より、召喚に答えし者を! 勇者召喚(サモン・ブレイバー)』」


「マリアたんーーん? ん? ここどこ? これって異世界召喚! ! 」


 召喚されたのは上半身裸のとても太った方だった。失礼ながら顔面は崩壊していた。頰肉が


「召喚にk「リアル桃色髪美少女キター!ステータス! 俺の能力は......どこでも転移ぃ? 1日に一度この世界のどこかに転移するぅ。じゃあ美少女襲って転移すればなんでもできんじゃん! 」


 ヤバイ、こいつまずいやつだ。不意に呟いてくれて助かった。

「あ、あの」「デュフフ、また今度襲いに来るからねお姫様!! 『行きたい場所はどこでしょう、行った先ではどうしましょう、夢の世界への片道切符! どこでも転移!! 』」


 そう言ってきえってった。なんて言ってる場合じゃない! 被害が出る前に消さないと!

『召還! ! 』

 召喚した人は召喚されてから二十四時間以内だったらいつでも召還する事ができるから助かった。この世界の美少女は私が守る!


 取り敢えずこの後カラ(侍女)に告ってみようかな。




 48回目

 女神様が降臨してから遂に一年が経とうとしています。ちなみに、お父様がその日を元旦にしたので本当に一年経ちます。

 そろそろカラに婚約指輪渡そうか迷い始めています。まだこの国では同性愛は認められていないので。


「じゃあ、毎週恒例の勇者召喚始めるよ〜『扉と開け、異界より、召喚に答えし者を! 勇者召喚(サモン・ブレイバー)』」


 いつもより大きい魔法陣といつもより強く赤い(・・)光が溢れました。


「おお!」


これには私達も気合が入ります。一年間召喚した中で初の演出。これには私たちのボルテージも高まります!


赤い光が晴れ、魔法陣に乗っていたのはーー「ワンッ! ワンッ!」 ーー犬です。私が『ユーシャ』と名前を書いたあの犬です。



「......召還」



「終わったか〜」 「異世界人問題多すぎね? 」 「城の警備に戻るか〜」


 私と週一で会うようになり、今では私の眼の前でも普通に会話するようになりました。


 私は一人、部屋で天井のシミを見ながら、叫びました。

「テンプレ勇者早く来てぇぇぇ! ! 」



読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字、ご指摘等ありましたら教えてくださると幸いです。

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