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【アニメ放送中】マジック・メイカー -異世界魔法の作り方-  作者: 鏑木カヅキ
幼少期 怠惰病編

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友達

 翌日、僕達はイストリアを出ることになった。

 僕と姉さんが自宅に戻りたいと言ったからだ。

 グラストさんの家に世話になりすぎているし、もうイストリアへいる理由はなくなったわけで。

 やっぱり勝手知ったる我が家でゆっくりしたい。

 この平穏は長く続かないのだから、せめて家で、という気持ちが強かった。

 そういうことから僕達は朝、グラストさんの家を出る準備を終え、居間に集まっていた。

 そこにはグラストさん、ラフィーナ、コール、ブリジッド、父さん、母さん、姉さん、僕が集まっている。

 姉さんは自分で歩けないため父さんが背中に抱えている。


「忘れ物はねぇか?」

「ああ。長い間、世話になった。グラスト、本当に助かった。ありがとう」

「へっ。まあ、これくらいは当然だな。俺としちゃ、いつまででもいてくれていいんだけどな」


 グラストさんは本心から言っているようだった。

 寂しそうにしているし、残ると言ったら喜びそうなほどだ。


「ふっ、気持ちだけいただいておく。また来る。その時は頼む」

「ああ。ま、その時はこっちの家は売ってるだろうから、新しい店の方に来いよ」


 グラストさんはニッと笑い「いい店なんだ」と一言漏らした。

 そういえば、グラストさんの新しいお店に行ったことないな。

 みんな忙しかったし、そんな余裕もなかったから。

 今度はみんなでお店に行こう。

 ラフィーナ、コール、ブリジッドが僕の近くにやってくる。

 ラフィーナは悲しげにし、コールは顔を厳めしくしたまま、ブリジッドは顔を隠しているけど、しゅんとしてしまっている。


「シオンがいなくなると寂しくなるな」

「そうだね。僕も寂しいよ、ラフィーナ。でも、また会えるから」

「……今まで通りとはいかんが、そうだな。また会える。

 最初に出会った時は貴族の子供という印象しかなかったが、今はその考えが間違いだとわかっている。

 シオン、おまえは私が出会った男の中で、最も素晴らしく、立派な男だ」

「大げさだなぁ、ラフィーナは」

「そ、そんなことはない! まったくシオンは、自己評価が低すぎる。

 もっと偉そうにしろ。威厳を示すことも貴族としては必要なのだぞ。

 それこそが上に立つ者の義務だ」


 時折見せる、ラフィーナの上から目線はそのためだったのだろうか。

 確かに腰の低い貴族なんていたら、平民は見下してしまうだろうか。

 そうなれば家族や、領主であれば領民も見下される。

 あえて偉そうに見せることも必要、か。

 覚えておいた方がいいかもしれない。


「金言、ありがたく頂戴するよ」

「うむ! そうしろ! そ、それとだな、こ、今度、ゼッペンラストへ来い。

 我が父に紹介してやろう」


 ゼッペンラストはどうやらかなりの田舎らしい。

 僕達の領地よりも更に。

 ただし領地は広く、農耕地域として重宝されているとか。

 牧歌的な場所は好きだし、悪くないかも。


「うん。機会があればよろしくね」

「あ、ああ! いつでもいいぞ! いつでも、ばっちこいだ! がはは!」


 豪快に笑うラフィーナを前に、僕も思わず笑みをこぼす。

 そうしていると妙に強い視線を背後から感じて、振り返る。

 姉さんがジト目をこちらへ向けていた。

 しかし僕と目が合うと、ぷいっと視線を逸らしてしまった。

 どうかしたのかな。

 そんな疑問が鎌首をもたげる中、コールが嘆息しながら言葉を紡いだ。


「鈍感だな」

「え? 何が?」

「……なんでもない。おまえは鈍感なくらいが丁度いいんだろう。

 そうじゃなければ、あれだけのことをやり遂げられないだろうからな。

 常人なら途中で諦めている。いや最初から諦めてるだろうからな」

「えと、褒めてる? それともけなしてる?」

「褒めてるぞ。一応はな」


 本当だろうか。

 コールの顔を見ると不安になってくる。

 こいつ、真顔で冗談とかいうからなぁ。


「またイストリアに来た時には顔を見せろ。何もなくても顔を見せるくらいはできるだろ」

「うん、イストリアに来た時はそうさせてもらうよ。次、いつになるかはわからないけど」


 僕が王都へ行くことは、みんな知っている。

 姉さんも。

 彼女はわがままな部分もあるが、理知的でもある。

 僕が王都へ行くことを嫌がってはいるが、やめてほしいとは言わない。

 怠惰病患者の治療をしなければならないことを理解しているからだ。

 ちなみにバルフ公爵からの挨拶はもういただいている。

 女王からの連絡があればすぐに報告すると言ってくれた。


「いつでもいい。頻繁に顔を合わせなければならないってわけじゃないだろ。

 常に時間を共有しないと関係を保てないならば、それは真の友人じゃない。

 それはただの仮初の存在で、表面上だけの薄い関係だ。

 俺達は違う。そうだろ?」


 僕は驚きに目を見開いてしまう。

 コールからこんなことを言われるなんて思いもしなかった。

 最初に出会った時は、もっとつっけんどんとしていたのに。

 コールは気まずそうに視線を泳がせた。

 恥ずかしいのか、ほんの少し耳が赤い。

 僕は彼の言葉が嬉しかった。

 だから我に返るとすぐに返事をした。


「うん。そうだね。友達だから。離れても、時間が経ってもそれは変わらないよ」


 僕が言うとコールは嬉しそうに笑った。

 しかしすぐに表情を取り繕い、僕に背を向けた。

 思わず笑いそうになるのを、みんなで必死にこらえる。

 と、くいくいっと袖を引っ張られた。


「……シオン……」


 相変わらずの小柄な少女。

 髪が伸びっぱなしになっていて顔が見えないが、結構整っていると思う。

 ただ猫背だし、顔を俯き気味にしていることが多いので、顔は見えないけど。


「ブリジッドも来てくれてありがとう」


 ブリジッドはふるふると首を横に振った。


「ボクと、シオンは友達……コールも、ラフィーナも友達……だからこれは当然のこと。

 シオン…………頑張れ……」


 グッと拳を握るブリジッド。

 その言葉に多くの意味を感じ、僕は大きく頷いた。


「うん、頑張るよ」


 ブリジッドはニコッと笑う。

 今まで見た彼女の笑顔の中で最も眩しく印象的な顔だった。


「さあ、シオン。帰るぞ」


 父さんの号令で家族一同が頷いた。

 僕達はグラストさんの家を出た。

 寂寞の思いと郷愁を胸に、僕達はイストリアを出た。

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