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【アニメ放送中】マジック・メイカー -異世界魔法の作り方-  作者: 鏑木カヅキ
幼少期 魔法開発編

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魔力の形

 雷鉱石を入手して一ヶ月が経過していた。

 最近はかなり気温が下がり、乾燥している。

 雪が降る日もあるくらいに、完全な冬季に突入したみたい。

 さて、この一ヶ月の出来事を説明しようと思う。

 まず、毎年のことだけど、冬場は基本的に食料の保管と燃料の確保が重要になる。

 日本のように、どこにでも生活用品や食料がある環境ではないからだ。

 僕や姉さんもすでに労働力として数えられているため、村に手伝いに行ったり、買い出しに同行したりする日が増えた。

 ということで、魔法の研究に割く時間はあまりとれなかった。

 それでも時間をできるだけ確保して、多少は魔法を研究することはできた。

 雷鉱石を手に入れた当日の研究結果を改めて簡単に説明しよう。

 雷鉱石に対して魔力を与えた場合、電流の色が赤くなり、一瞬だけ光量が増した、という結果が出た。

 なぜこのような反応が出たのか、という点に関しては一先ずおいておくことにする。

 何度も試したけど、魔力を与えると同じ現象が起きた。

 火魔法との大きな違いは一瞬で魔力が消失するということだ。

 火魔法の場合は、火に魔力を接触させると青く変化し、魔力に火が移る。

 そして燃え続けた状態で移動し、放出魔力がなくなると消える、という感じだ。

 でも雷魔法に関しては、一瞬だけしか変化がない。


 これはどういうことか。

 僕は、魔力は可燃性物質ではないが、それに類する性質のある何かしらのエネルギーだと思っていた。

 そして魔力は何かしらの現象を継続させる性質を持っているのではないかとも思っていた。

 燃えるには点火源と酸素と可燃物質が必要で、可燃物質の役割を魔力が担っていたと思ったからだ。

 でも、雷魔法の実験でそれは違うとわかった。

 火と雷の違いを考える。

 共にプラズマ。

 でも、特徴は違う。

 火は三要素があれば、燃える。

 何かしら燃えるものがあれば燃え続けるわけだ。

 つまり自然に継続する現象。

 雷、この場合は電流だけど、それはどうだろう。

 電流は電荷の移動だ。

 放電されれば、それで終わりで、また電荷の移動をする必要があり、それはいわばタメが必要な現象。

 雷を見ればわかるが、落雷は継続的に地上に流れ続けない。

 電気を流し続ける自然現象は存在しない、と思う。

 雷鉱石もあくまで断続的に電流を発生している。

 つまり、火と違って断続的な自然現象である、と言えるだろう。

 もちろんアーク放電のように近距離で発生する高電圧の放電のようなものであれば、継続的に現象は起こるけど。

 今回は、あくまで一時的な放電の話だ。

 二つの違いは、継続的か断続的か。

 そして自然現象として継続するか、しないかという違い。

 火は魔力を与えれば燃え続ける。

 雷は魔力を与えれば一時的に変化し、消える。

 つまり。

 こういうことだ。

 『魔力は現象自体を増幅し、その現象を独立して起こすことができる』ような物質であるということ。

 火魔法に関しては、すでに点火しており周囲に酸素もある。

 だから魔力を与えることで『疑似的に燃え続ける現象を起こし続けることができる』のではないだろうか。

 雷は発生源が鉱石であり、雷を発生させるには電荷の移動が必要で、魔力はその現象を手助けしない。

 だから『雷魔法は一時的な変化しかしない』のではないだろうか。

 この結果から導き出される、魔力の性質。

 魔力は現象を増幅させる。

 つまり火に触れれば魔力が燃えるのではなく、魔力自体が火になるということ。

 恐らくは色の変化も、魔力が現象に変化した現れなのだろう。

 そして火は継続し、電気は一瞬で放電されるというわけだ。

 電流に関して、光の量が増すのは、広義的な意味でのスパークをしている状態なんだと思う。

 つまり魔力内――この場合は放出魔力の形状が球の形をしているので、その内部において――一瞬にして魔力内に電流が流れ、電圧が増した、ということかも。

 これが魔力が現象を増幅させるという考えの理由だ。

 現時点で、魔力には二つの性質があるということ。


 『触れた現象を疑似的に模倣し、現象を自ら起こす』

 『触れた現象を模倣した後、その効果を増幅させる』


 後者がなければ、火は燃え続けることはない。

 魔力が可燃物質でないという裏付けにもなるはずだ。

 ただこれは暫定的な考えであって、結論ではない。

 まだまだ研究は必要だし、改良も、そして実用性を高めるための試行錯誤も必要だ。

 さて、ここまで判明した時点で、今に至っているわけだけど。

 問題は、電流をどうやって魔法に変換するか、だ。

 火は燃え続けるため、魔力を与えるだけで魔法に変換が可能だ。

 火打石で発火し、魔力を与えることで、鬼火のような形を造り出すわけだ。

 だけど雷鉱石に関しては、魔力を接触させた時点で、魔力は霧散する。

 一瞬で放電されるため、魔力によって増幅された電流は大気中に放電されるわけだ。

 電気は一瞬で流れていく。

 それを止めるのは難しい。

 ということで僕は頭を捻っていた。

 自室のベッドの上。最早、僕の定位置になっている場所だ。

 そこで僕はずっと唸っていた。


「うーん、どうしたらいいのかな……」


 放出した魔力を触れさせた時点で弾けるのならば、打つ手はないような気がする。

 ただ魔力による反応が生まれることを目的とするならばこれで目的は達成している。

 でも僕はもっと自由な魔法が使いたいし、以前のゴブリン襲撃以来、魔法での自衛も考慮し始めている。

 僕には剣術のような戦闘は向いていない。

 けれど僕が魔力の存在に気づかず、魔力の操作ができなければ、あの日、みんな殺されていた。

 今後そんなことがないとは限らない。

 だから自衛でき、みんなを助ける手段が欲しい。

 僕が戦うには魔法が必須だ。

 火魔法もそうだけど、雷魔法も実践に使える程度には昇華させたい。

 今のままだと薪に火をつけたり、相手に火傷を負わせるくらいしかできないし。

 相手に魔力があれば、先日の戦い方もできるかもしれない。

 でもあの現象もまだ不確かだし、相手が魔力を持っていない場合は効果がない。

 すぐに結果を出すつもりはないけれど、最終形は頭に描いているということだ。

 話を戻そう。


「雷魔法……雷魔法……雷……うーん……何か根本的に間違ってるような」


 何かが引っかかる。

 とてつもない間違いをしているような気がする。

 なんだろう。

 何がいけないのかな。

 僕はなんとなく集魔状態になり、手のひらから魔力を放出した。

 球体の発光した魔力が天井へ浮かび上がると徐々に消えていく。

 その様子を見て、僕はあんぐりと口を開けた。


「……トラウトと同じ現象に拘りすぎてた?」


 以前も同じように考えていた。

 トラウトの現象から魔力の存在に気付いたため、僕はトラウトの行う魔力関連の出来事に固執してしまっていた。

 でもそうじゃない。 

 そうだ。

 簡単なことだった。

 『魔力が球体である必要はない』なんてことに気づかないなんて。


「そうか! そうだよ! 放出魔力の形が球体である必要はないんだ!」


 トラウトのこともあったけど、何となく魔力のイメージが球体だった。

 色々な創作物で魔力とか気とかなんか不思議エネルギーの形が、なぜか円状が多いからかも。

 僕は試しに『右手に集まった魔力が四角形で放出される』という意思を抱いた。

 すでに何千回と行ってきた集魔状態からの放出だったためか、円滑に魔力は放出される。

 手のひらから現れた魔力は、四角形だった。


「うお! 本当に出た!?」


 その四角形の魔力は天井に向かうと消えた。

 その後も、何度も別の形を試してみた。

 すると思い通りの形の魔力が放出された。

 固定概念は足かせにしかならないことが証明された。 

 もっと柔軟に考えないといけないな。

 なるほど、僕は魔法を使うことに執着しすぎていたらしい。

 もっと魔力に関して知るべきだし、もっと試すべきだったんだ。

 形だけじゃない。

 今は、ただ放出させているだけだ。

 もっと他の命令を与えることで、複雑な動きをしたりもできるだろう。

 色々と試さないといけない。


「へへ……これから、これから」


 僕は頬を緩めて、魔力の放出を続ける。

 最初に比べて、一日に四十回近くまで魔力の発動が可能になっている。

 当然、一度の体内に魔力を巡らせる量は限界がある。

 総魔力量はもう少し増えそうだけど、魔力放出量はカンストかも。

 まあ、今のところ、放出魔力が足りないと思うことはないから問題ないけどね。

 さて、じゃあ、体外放出魔力への命令を色々と試してみよう。

 なんかプログラミングみたいだけど。 

 その内、魔力がハローワールドとか言うんじゃないだろうな。

 さすがに、それはないか。

 なんてことを考えながら、その日の僕は魔力へどんな命令ができるのか実験を繰り返した。

 夢中になり、魔力が枯渇してしまい、身体が動かなくなり、家族に呆れられました。

 なんだがちょっとずつ家族が慣れていってる気がして、怖い。


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― 新着の感想 ―
[一言] 固定観念はいけないって言った直後にいや、それはないなとか言うスタイル。かっこよすぎて憧れる。
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