6-2 ツカミ(冒頭文章)は会話か地の文か
これ、たまに議論のネタになるようですが。
別に「こうあるべき!」という決まりはないんですね。
賛否両論あるのは認めますが、会話で入ろうが地の文で入ろうが、別に問題ありません。
問題にすべきは、前に書いたように「果たして、そのツカミが読み手の心を捉えるかどうか」、これだけです。
もちろん、百人が読んで百人とも「面白いっ」なんてことは、滅多にありません。
それは覚悟しましょう。
いきなり極端な例を出して恐縮ですが、例えば以下のような数行の文章があったとします。
「おい幸太っ、空から女の子が降ってきたぞっ」
幸太は顔をしかめて首を振った。もちろん、意地でも空を見上げる気はない。
「エイプリルフールとはいえ、もう少しマシなネタにしろ。古いアニメからパクるなよ!」
「い、いや、ホントだって」
なぜか真っ赤な顔で、友人が幸太を見た。
「しかも……しかもあの子、パンツ穿いてないんだっ」
例がいちいち痛いのは見逃してください。
とにかく、こういうの読むと、私などはコトの真偽が気になってたまらないわけですが、逆に一読するなり腹を立て、「不謹慎だっ」と怒る人もいるわけです。
下手をすると、「幸太が中学生か高校生と仮定するなら、降ってきた子も同年代かもしれぬ。となると、児童ポルノ的な疑いが(以下略)」と、とんでもない突っ込みが入ることさえ、有り得るでしょう。
人の反応は千差万別であり、読んだ人全てに喜ばれるというのは、非常に難しいことです。
上の例なんか理解できなくても、アマゾン見ていれば容易にわかりますね。
前に書いたように、人気作だからこそ絶賛する方がいる一方、それこそ洟も引っかけてくれない方もいます。
むしろ、シリーズの一巻は否定派が多かったなんて、特に珍しくありません。
ですから、万人受けなどは目指す必要ありませんし、目指したところでまず成功しない……そこは頭に入れておきましょう。
ただ、その時の自分の力で創造し得る、最良のツカミを考えればいいかと思います。
複数パターン作って、誰かに読んでもらうといいかもですね……勇気があれば。
ツカミに限らず、後の本文でも、事情は同じです。
よく、ライトノベルは「会話文が多い」という話が出てきます。しかしこれ、実はタイトルによってかなりばらつきがあります。
かなり前に、ネット上で会話文と地の文の比率を出してくれるページがありました。
テキストを流し込むと、「会話文が全体の○○パーセントで、地の文は○○パーセント」と、ばっちりわかるわけです。
今はもうないと思いますけど。
この時、ごく一部で「有名小説タイトルとラノベのタイトルの比率の違いを見よう」という有志さんがいて、わざわざ両方のテキストを引っ張ってきて、試していた記憶があります。
結果は正確に覚えていませんが、少なくとも「圧倒的にラノベ以外の小説に軍配が上がった!」とはならなかったはずです。
むしろ、純文学などでも、普通にラノベより会話文の多い作品がゴロゴロありました。
つまり、「ラノベは会話文が多い説」は、必ずしも正確とは言えないわけです。
他のジャンルと同じく、そんなのはタイトルによります。
そこを踏まえた上で書くと、ツカミに限らず、会話文章がどれだけの量になろうと、逆に地の文が多くなろうと、気にすることはありません。
まれにうるさい人が指摘する、「会話文多いのは駄目!」みたいに決めつける必要は、全くないと思います。
世の中には、会話文章のみで構成される小説も、ちゃんとありますし。
問題はそこではなく、「そのやりとり(キャラの会話)は、読み手が読んで面白いのだろうか?」というのが唯一、気にするべきポイントかと思います。
面白い会話であれば、小説一冊分を費やそうが、問題ないわけです。
もちろん、逆もしかりですね……地の文だけで面白いのが書ける自負があるなら、それでも構いません。ただその時にちょっと注意すべきだろうなと思うのは、削ることが可能そうな部分は削ることでしょうか。
長い文章を同じ意味で縮めて書けるなら、その方がいいですよ、という意味です。
これも程度もので、あらすじほど短くしろというんじゃありません。どんな場合にも、バランス感覚は大事です。
最終的な結果は、プロの方なら売り上げで現れるでしょうし、webで投稿中の方なら、ブクマの数やアクセスなどでわかるはずです。
短くするといえば、もう一つ付け加えることがあります。
強調すべきポイントを考えるべき、という点です。
例えば、主人公たるキャラがどこかの家を訪れたとしましょう。
その時、彼が周囲を見て何が見えたかを書くのは、別に構いません……というか、普通なら書くべきですね。
今この瞬間、主人公がどこで何をしているのか、ちゃんと読者が把握できるようにすべきですし。
特別な理由でもない限り、なるべく簡潔な文章で書いておきましょう。
しかし、そこでもう本当に、屋内にあるもの一切合切――絨毯の色から勉強机のメーカーまでくまなく書くような意味は、全くないと思います。
仮にですが、書き手の貴方がここで真に意図しているのは、「三秒後にヒロインのさせ子ちゃんが飛び込んで来て、主人公に抱きつく!」という、見せ場シーンだとします。
であるなら、正直、内装や家具の優先度なんか、皆無に等しいはずです。
机のことなんか書いてる暇あったら、ヒロインのおっぱいが大きいか小さいかを書くか、抱きついてきた時の感触なんかを書いた方が、間違いなく正解かと。
ものすごく下ネタ的な例ばかりで申し訳ないですが、「強調すべきポイントを考えるべき」というのは、つまりそういうことです、はい。
一応書いておくと、なにもヒロインが飛び込んでくる場合じゃなくても同じです。
その家で何が起こるかを考え、その中で自分が最も重要と思えるシーンを、第一に強調する……そういうことですね。




