4-3 デビュー前に考えた方がいいこと
今は大勢の方がネットからデビューしますが、しかしそれでもまだ、狭き門なのは確かです。「人気を得る」という大前提が、なかなか難しいからですね。
ただこれも、現状では考え方次第というか、やり方次第なのかもしれませんが、そのことについてはまたいつか書くとして――今は置きます。
今、私がなんとしても書いておきたいのは、「デビューするチャンスが来た時に、少し考えてみましょう」ということです。
これも一例ですが、貴方がwebで書いた小説が、絶大な人気を得たとします。
それこそ、なろうさんで言えばアクセスは週に十万越えで、感想などは(面白半分の批判が半分とはいえ)返信する暇もないほどジャンジャンバリバリもらえている……そのくらいの人気が出たとします。
でも、昔と違って今はwebで人気を得る小説も珍しくないので、なかなか即、出版社さんから依頼が来るとはいかない時もあるでしょう。
ランキングにたくさんの「売れそうな小説」がある以上、出版キャパシティの決まっている出版社としては、そうそう声かけ(依頼)ばかりもしていらられないですしね。先に出版が決まった小説の面倒もみなければいけませんし。
でも、貴方にとっては秒刻みで期待している時間かもしれません。
当然、脳内で妄想も駆け巡ります。
「人気が出る→依頼が洪水のごとく押し寄せ、たちまち出版→挙げ句、テレビアニメ化もセットで人生逆転ホームラン!」
こんな想像をしつつ、満面の笑みで依頼を持っていたのに、いつまで経っても来ない……苛々する状況です。
いつまで経ってもと言いつつ、別に一ヶ月とか様子見たわけじゃなくても、苛ついている時にはそう感じるものです。時間が敵に回るのですね。
そういう方達に言いたいのですが、間違っても早まらないでください。
そこで少し考えることで、その後が変わるかもしれません。
「畜生っ。出版業界を揺るがす人気作を書いた俺様が待ってやってるのに、どいつもこいつもなにしてんだっ!? とっとと依頼メールを寄越せ!」などと憤慨し、とにかくなんでもいいから出そうとしてはいけません。
この際、少し自分からも動いてみようじゃないですか。
なにも、依頼を待った人しか出せないという決まりもないわけですから。
私が何を言いたいかと言うと、様子を見て「まだ少し(依頼には)時間がかかりそうだ)と思ったら、自ら動いてみてくださいとお勧めしたいのです。
実はこの手は単純でありながら、かつては使えない手でした。
でも、今なら通用する手なんです。
そういう美味しい手段があるのに、早まってはいけません。
貴方にも、「あそこで仕事したい」と望む場所があるはずですし、あるいはそれは、日頃読んでいるレーベルさんかもしれません。
なら、駄目元で今こそ動きましょう。
……察しのいい人はここでわかったと思いますが、そう、私は「営業しましょう」とお勧めしているわけです。
あ、でもここまで読んで「あ、コミュ障の俺には電話して営業とか無理」とそっとページ閉じるのは、ちょっと待ってください。
大丈夫です、私がお勧めするのは、そんな方でも余裕の方法です。
ここで少し話がズレますが、だいたい世間の厳しい方達は「プロを志す者(あるいはもうプロも同じ)が、出版社に電話くらいできずに、どうする!?」と仰る時があります。
しかし、私はそうは思いません。
人それぞれ、資質も違えば得意なことも違うんですよ。
世の中には「これは間違ってる!」と思えば、ヤクザの事務所にも抗議に押しかける人もいるでしょうけど、そんなの誰にでもできないことは、前述の意欲ある方にも理解していただけるはずです。
その人にできても、貴方や私には無理……そういうことですね。
そう、つまり私も電話して営業なんて、できません……というか、やりたくないですね。
リアルに以下のようなことを想像するので。
――想像パート――
「はい、雷撃出版です(編集様)……え、天城さん? え、えっ? うちに営業!? ちょ、ちょっと待ってくださいね」
ここで電話に出た社員様が、あわてて受話器に手で蓋をして、編集部全体に響くような声で叫ぶわけです。
「うぉおおおい、落ち目になった天城が、うちに営業かけて来たぞぉおおお」と。
そして当然、次の瞬間には爆笑の嵐、みたいな。
――悪夢終わり――
……まあ、それ以前に私のリアルPNを聞いても知らない可能性も高い気がしますが。
とにかく、誰かも書いてたようなそんな想像が脳内を駆け巡るので、私も出版社に電話して営業とか、難易度高すぎて嫌です。「しなければ殺す!」と脅されたらするでしょうけど、素のままでは無理ですね。
考えすぎといわれようが、嫌なものは嫌です。
ここで、あえてくどいほど自分の弱気を羅列したのは、別に電話しなくてもやり方はありますよ、と言いたいからです。
世の中、なぜか正攻法にしか目の行かない方も多いので、戦法を変えましょうと提案したいんです。
しかもこの戦法は、多分、「今のこの業界なら」多くの出版社さんに喜ばれます。
もったいぶった上でようやく書きますが――
……ずばり、メールしましょう!
出版社のメルアド知らないと仰るかもですが、出版社のHPに飛んでくまなくメルアドを探せば、多分、どっかに載ってます。
編集部宛のメルアドがベストですが、この際、「弊社ご連絡用メールフォーム」とか「ご意見フォーム」などでも構いません。
そこに自分がどの程度の人気を得ているか説明を加え、「よろしければご検討くださいませんか?」と書いて送信――これでオーケーです。
震える手で送信する前に、自分の書いた文章を二度ほど読み直すとベストです。
多分、誤字がありますから。
送信し終わった後で遅すぎる見直しをして、「うおっ、あそこ誤字ってる!? しかもこっちもぉおお」と髪を掻きむしりたくなること、請け合いです。
今ならカクヨムさんがメールフォームから受け付けてしていたような気がしますが、その辺の情報もググって探しましょう。
正面からが駄目なら、自分にできる方法を探せばいいんです。
大事なのは、「座して流されるままに、己の運命を決めない」ことなのです。
メールするというのは単純な手段ですが、実際、今書いた手は今なら使えます。
昔は無理だったはず……そもそもWeb小説を出してもらうというのが、成層圏並の敷居の高さでしたからね。
でも、もはや時代は変わっているので、今ならメール作戦は有効ですよ。
――くどいですが、本当です。
「うちの会社もwebからスカウトして、ガンガン出してガンガンもうけ(以下略)」という会社が、本当にたくさん出てきているので、今なら有効なんです。
(もちろん、人気次第ですけどね)
とにかく、「俺はもしかすると、デビューできるかも!?」という立場になったのを自覚した時、どうかそういう手段もあると思い出してください。
敷かれたレール以外が道ではありません。
必ず上手くいくなんて保証はないですが、逆にそこで行動を起こすことで、貴方の今後が大きく変わる可能性だってありますよ。
運命が変わるのは、ちょっとしたきっかけが元になっていることが多い気がしますし。




