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神様?いいえただの悪魔です。  作者: 次元
第2章:熱血学園編
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第42話:金火竜の素材は?

特別授業も始まり、講師も生徒と同じように魔力の精度を高める練習をしている。


出来る人が出来ない人を指導しお互いに魔力の練度を高める。

これを3ヶ月も進めてれば相当レベルアップは可能だ。


そこでやはりと言うべきかコリー兄さんとミーシャ姉さんが頭一つ飛び出ている感じだ。


特別授業の終了後は転移魔法の特訓も行っている。

魔力も順調に上がっているようだしそろそろ成功しても良い頃だ。


そして特別授業開始から1週間後。


「おおぉい出来たぞ!!」

「私も出来たわよ~!!」


コリー先輩とミーシャ先輩が転移魔法を成功させた。


壊れたペンが数本記念に贈られる。

ついでに「弁償お願いしますね。」と笑顔なアリスに言われ引きつる二人。


そしてイグース学園にアーカムギルドから討伐依頼が来る。

アーカムギルドも王都ギルドと同じように実力のある生徒に対して討伐依頼を発行する場合がある。


王都と違うのは、課題授業としての依頼では無く、本格的な討伐依頼だった。


アルフレート学園の課外授業の討伐依頼でも多少の怪我や負傷はつきものである。

しかし、イグース学園に依頼される内容はハンターに依頼される内容と何一つ変わらない。


生徒が死ぬのも、ハンターが死ぬのも同じ意味合いなのだ。


学園もその辺は承知しているようで王都よりも弱肉強食色度合が強い。

獣人は元々人間に比べると身体能力に優れる種族だけに己の肉体、そして身体を操る技術には自信があるようだ。


今回の討伐隊もコリー先輩率いる高等科選抜チームが依頼を受けた。

メンバーとしてミーシャ先輩、ジョン先輩の護衛チームとシロン、シュン、アロンを含む上位クラス5名と他にヒーラーが5人の高等科でも選りすぐりのメンバーだ。


俺とアリスは留学生と言う事で選抜メンバーには入っていない。

しかしコリー先輩とミーシャ先輩がトランスファーを使用できるため非常事態の場合は即座に転移して応援が可能とする。




どうやら、今回の討伐対象はレオファングと呼ばれるライオンの様な体に、非常に長い牙が特徴のサーベルタイガーモドキのライオン。

結局ライオンなのかと言うが、体高も2mを優に超す個体も居る。

推奨ランクはB+なのだが、アーカムギルドが異様に強い個体も報告されているだけにAに届いている可能性を告げていた。

アルフレート学園で討伐依頼があった時の異常なモンスターの状況を、ハーグ副学園長からイグース学園長へ伝え、臨機応変に対応できると進言したためだった。

流石に、ハーグ副学園長から言われた言葉には信じがたいものを見る様な眼差しだったイグース学園長だったが、魔素の結晶とその時のモンスターを説明する。

そして転移については目の前で転移魔法を披露すると、驚愕の表情を見せた後に納得してくれたようだ。


幸い、今回の討伐メンバーは学生がてらにA+。

討伐自体は討伐ギルドにも引けを取らない比較的問題ない構成だった。


しかし討伐3日目のお昼に緊急連絡のトランスファーを受信した。

レオファングの群れは問題なかったのだが見た事も無いモンスターが現れて討伐隊が壊滅状態に陥っていると言う事だった。


俺はイグース学園長と副学園長に報告してもらう旨をハーグ副学園長にトランスファーで伝え、直ちにコリーの元へ転移魔法を展開する。

現地では既にアリスがモンスターと交戦していた。


外見はレオファングに見えなくもないのだが大きな翼があり、さながら金色のオオトカゲから翼が生えているようだった。

これはあれか? 金火竜なのか!? ついに亜種が出現したか!

と、心躍るのだが、呼ばれた内容を聞くに小躍りしてる場合でも無いと気を引き締める。


「アリス! 大丈夫か!」


「私は問題ない」


「コリー先輩たちを看て!」


コリー先輩の魔力を感じ、そちらへ急行する。

状況は最悪だった。


コリー先輩は左腕が欠損し、意識も無い状態。

ミーシャ先輩はその美形の頭部が無くなっている。

ジョンも左半身を失っており即死状態。

シロンは右足を欠損しているが辛うじて息があるだけの意識不明。

アロンは下半身が欠損し、臓物をまき散らして死んでいた。

シュンは辛うじて背中に爪痕が残るが意識はあるようだが自力で立てる状態でもない。


ヒーラー隊が3名しか見当たらない。

上位クラスの5名も見当たらない。

よく魔力を察知するが、近くに魔力を感じられない。


転移の時に感じた魔力の減退。

それはコリー先輩の今の状況を見るに、瀕死の状態だったからだろう。


幸いにも意識が無くなり魔力が尽きる前に転移が完了して良かった。


そうでなければ、今頃俺はどこに飛ばされていた事やら…

転移は一瞬の事なれど、その一瞬に何かあった場合を考えると…今後の課題だな。

と、転移について考えていると、シュン先輩に話しかけられ我に返る。


シュンに見当たらないメンバーを聞くと


「あの化け物…仲間を食いやがった…くそ」


そう言い残し意識が途切れた。


なるほど、通りで人数が合わない訳だ。

俺は何を転移魔法の課題について考えているんだよと、自分で自分に突っ込んでみた。


全く…早急にみんなを回復する必要がある。


俺は再びみんなが横たわっている方へ目を向ける。

やはり凄惨な状況に怒りが湧きあがってくるが、ミーシャ、ジョン、アロン、ヒーラー隊3名にレベル5魔法バディックスをかけて蘇生させる。

コリー、シロンにはレベル4魔法リペアをかけ、失った手足を再生させる。

最後に全体でレベル4魔法ヒーリングをかける。


一瞬で蘇生、肉体再生、体力回復。

ダメ押しにとフルキュアを展開する。

これでレベル4魔法ヒーリングで全快とならなかった肉体を回復させる。

フルキュアには精神的損傷にも効果があるようで、程なくコリー先輩とミーシャ先輩が意識を戻す。


「ん…あ、アイリス! 来てくれたのか! くそ、あのモンスターがみんなを殺しやがった…」


「死んだ人や怪我した人は皆治しておきました」


「え?」


素っ頓狂な声を喉から出して、コリー先輩は死んだと思っていた人たちと目が合い、放心状態に逆戻り。

ついでに自身の千切れたと思ってた左腕を見て欠損したと思ってた腕や掌の関節を休みなく動かしてる。

動かしてはいるが現実が受け入れられないのか意識なく動かしてるようだ。


「そんな事より、俺はアリスの応援に行ってきます」


アイリスの言葉を聞き、我に返るコリーは懸命にアイリスに言葉を送る。


「いや、あれは尋常じゃない強さだ! お前も危険だ! 逃げよう!!」


「いや大丈夫ですよ。アリスからのトランスファーでは、倒せない相手ではないって」


「いや、しかし…」


懸命に止めるコリーをアイリスは笑顔で答える。


「先輩たちはここに居てください。念のため、グランドプロテクションと再度フルキュア―をかけておきます。ただ、あいつに捕食された人を蘇生できるかどうかは…試してみないと何とも」


心苦しくコリー兄さんに言うと、食われた連中の今後ではなくミーシャ姉さんの事を言ってくる。


「は? 蘇生? じゃぁミーシャも生き返ったのか?」


「え? 私、死んだの?」


「おわっ! ミーシャ!?」


流石に目があっただけ生き返っていると思わなかったコリーは言葉を発したミーシャに驚くとそのまま抱きつく。

他の連中も生きているのが確認できたのか、怪我ひとつない事に驚愕しつつも抱き合い、涙を流して喜び合う。


その光景を見届けると「では、行きますね!」と言い、物凄い速さでアリスの元へ駆けつける。

そのあまりにも強烈な疾風に喜び合う事も忘れ言葉を失う一同。





アリスを強敵と認識したレオファング(リオレイア希少種)は大きな羽を羽ばたかせ上空で旋回している。

その姿はこれからの戦術を組み立てているようであった。


「アリス! 大丈夫か!!」


アリスが上空を眺めてるその場に到着する。


「みんなは!」


自分たちの事より危険な状態のみんなの事を心配するアリス。

多分、みんなの状態を詳しく見てないが危険な状態にあると認識しているアリス。


恐らく、惨状を見ていたらここまで冷静に居られないだろう。

あの時の盗賊たちを倒したように冷静でいられないはずだ。


「コリー先輩やミーシャ先輩は大丈夫だ。無事蘇生させてきた」


あ、心配させるつもりが行ったことをそのまま口にして瞬時に"しくった"と思ったが時すでに遅し。


「そ…せい?」


アリスの目つきが変わる。

気持ち目の色が変わった気がする!

手にしている魔法剣(雷)も刀身が迸る稲妻から白い直刀へと変化する。


「待てアリス! そいつに捕食された人を救い出さないとダメだ!」


「こいつ、人も食ってるの!?」


ますますアリスの目の色が変わる。


「どうするのアイリス!」


凶暴な殺気がアリスを包み込むが、捕食された人たちの事を考えるとどうしていいか分からないアリス。


「たぶんまだ胃の中で消化されないで残ってるはずだ! だから消し飛ばすなよ!」


そうか、消し飛ばして消滅させなければ良いのか。と理解したアリスは対策が分かったのか仄暗い笑みを浮かべる。


「分かったわ、こいつの腹を裂けばいいのね!?」


そう言うとアリスは手にした魔法剣を雷から炎に変化させる。

普段の揺らめく炎の剣と違い、青白い直刀へと変わる。


「よし、援護する!!」


アリスが電撃の魔法剣を展開していたのにスタン状態にならないと言う事はこのモンスターは電撃に耐性があるのか?

疑問に思ったことは試してみよう。


「レベル4魔法スタンアロー!」


電槍がモンスターに飛来する。

ふむ、ダメージを与えているようだがスタンの効果は無い。


アリスと自分にレベル4魔法マジックバリアをかけ、レベル6魔法サテライトレインを唱える。


瞬時にして上空から1m程の隕石が複数飛来する。

隕石はモンスターの翼に直撃し落下してくるが俺達には飛翔物はマジックバリアの効力で避けて通る。


アリスは落下中のレオファングの翼にエクスプロージョンをかけると大爆発を起こす。

爆発が終わった直後、俺はダイアモンドダストを唱えモンスターを凍らせる。

羽がサテライトレインによって穴が開き、アリスのエクスプロージョンでズタズタにされたので簡単に空に飛び立てなくなっている。

それに続く怒涛の魔法攻撃に動きの鈍くなったレオファングへ、再度アリスはエクスプロージョンを唱える。


熱⇒冷気⇒熱と急激な温度変化に耐えられなくなったのか、高質化した毛皮の様な鱗のような皮膚にひび割れを生じさせた。

再び俺はダイアモンドダストを展開すると一際大きな亀裂がレオファングの腹部に走る。


アリスが超圧縮化した炎の魔法剣でレオファングに生じたひび割れた隙間に剣を差込み剣を薙ぐとレオファングの腹部からはハラワタが零れ落ちる。

余りの激痛にもんどりを打つレオファングに安らかな眠りを与えるように首を一閃する。

息絶えた所で、俺も超硬質化した氷の魔法剣を展開しモンスターの腹部を切裂く。


瞬間冷凍された胃と思われる箇所を抜き出すと、溶けかかっている人間の一部が氷結された胃液と共に流れ出てきた。


俺がレベル6魔法バディックスを唱え続けざまにアリスがレベル4魔法ヒーリングとフルキュア―を併用する。

全壊状態の人体は残された肉塊を基に骨、神経、血管、筋肉、皮膚と復元し蘇生が完了した。


その間に、モンスターは魔素へ変換していくがそこに現れたのは、またも魔素の結晶だった。

転がる魔素の結晶を拾った所でコリー先輩たちが現れた。


「…お前ら無事だったか…ありがとう」


と握手を求めてくる。


「「いえ」」


「大丈夫ですか? 先輩」


「ああ本当に助かった」


「とりあえず、ここでは落ち着かないので学園に戻りましょう」


「そうだな…ところで…そこに寝てる奴らは…確か喰われた…」


コリー先輩が疑問に思っている事を軽くスルーして、学園に戻るためハーグ副学園長にトランスファーを送り任務が完了し今戻る事を伝えた。

但し、15人も居るのでハーグ副学園長には少し広めの場所に移動してもらう。


こんなに大人数での移動は初めてだからね。

念のため位相空間ごと移動する為にスフィアを展開した。


「転移!」


無事に学園へ転移が完了した。

そこにはハーグ副学園長をはじめ、アーバン学園長、ジーン副学園長やヒーラー担当講師達が居た。


光の粒が集約されてゆき人の姿を形造る。

その光景にハーグ学園長以外の先生たちが驚きを隠せない。


「本当に転移してきた…」


驚愕する学園長にハーグ副学園長が促す。


「学園長」


ハーグ副学園長の言葉に意識を戻すアーバン学園長は驚きの顔そのままにそれぞれに指示を出す。


「ああ、まずは全員を医務室に運んで診察と手当をして下さい」


「俺とアリスは大丈夫です」

「俺も大丈夫です」

「私もです」


全員はアイリスとアリスにこの世に存在しない程の魔法を使用されある意味、討伐前よりも体調が良くなっている。

それでもコリーとミーシャは自分達以外を医務室へ行く様に促す。


「では、コリーとミーシャは報告の為に学園長室に来てもらえますか?」


「「分かりました」」


「それと、ハーグ副学園長、アイリス、アリスも同席して頂きます。」


「「「わかりました」」」


学園長室へ向かう間、アーバン学園長とジーン副学園長はチラチラと後ろを向き俺とアリスを交互に見渡す。

そんな奇怪なアーバン学園長とジーン副学園長を華麗にスルーしていると学園長室へ到着する。


「では、まずは報告を聞きましょうか」


学園長の言葉を受け、コリーが一歩前へ出て事の経緯を説明する。


「俺たちはレオファング討伐の為、草原を探索していおりました。探索3日目にしてやっとレオファングの群れを発見し討伐を開始しました。群れは全部で12頭のレオファングだったので比較的問題なく討伐が完了したのですが…」


「どうしたのです?」


説明が途中で止まってしまったコリーに続きを促す学園長。


「そこに見た事も無いモンスターが上空から現れまして…ヒーラー隊数人と前衛がモンスターに捕食されました」


コリーの報告に矛盾が生じたと思ったアーバン学園長とジーン副学園長。

そこに間髪入れずに疑問の言葉をかける。


「…はい?」


「捕食って…さっき全員帰ってきましたよね?」


アーバン学園長は頭で理解できなかったのかコリーの言葉に素っ頓狂な返事をしてしまう。

そんな学園長を見た後で、フォローするようにジーン副学園長が、先程帰還したメンバーから欠員が居ない事を思い出す。

どうやらこの学園でも学園長より副学園長の方が出来るらしい。


「はい、その際、何人かはレオファングに捕食され…俺やミーシャを含む数名がモンスターの攻撃に晒され…全員が戦闘不可能な状況になりました」


「そこに、アイリスとアリスが駆け付けたのですね?」


「はい」


項垂れるように力なく説明するコリー。

恐らく、その状況を思い出してか、コリーとミーシャは恐怖に顔を引きつらせた

体も若干ではあるが震えているし、獣人ならではの心内を耳で表現している。。

これ以上、話をコリーから聞くのは酷と判断した学園長は質問の矛先をアイリスとアリスへ向ける。


「アイリスとアリスに尋ねます」


「「はい」」


「あなた達は…ハーグ副学園長からも窺いましたが転移魔法を作ったそうですね」


「「はい」」


「現に現場へ向かい、更に我々の前に転移してきたことで転移魔法が使えると理解できました。」


転移魔法を目の当りにして、最早疑いようも無い事実を理解する学園長。


「そして今、コリーからの報告でも討伐隊の数人は捕食、そして討伐不可能な状況になったと言われましたが…あなた達が到着した時はどの様な状況だったのですか?」


アリスから念信が来る。


『ねぇアイリス、どこまで説明する?』

『ここまで来たら本当の事を言ってみる。アスラの魔法は説明できないけど、俺たちが作った魔法と言う事で話をしてみよう』

『どこまで信じてもらえるか分からないわね』

『それならそれでいいけどね』

『分かった、アイリスに任せるわ』


俺とアリスが一瞬止まってしまったので学園長が報告を促す。


「どうしました? アイリス」


「はい。コリー先輩が言った事と概ね同じです。」


「なぜ、あなた達はコリー達が危険だと分かったのですか?」


あれ? ハーグ副学園長は長距離トランスファーを説明していなかったのかな?


「私たちの作った転移魔法の応用で…遠く離れていてもコリー先輩とミーシャ先輩から連絡を取る事が可能です。そして今日のお昼に、討伐中のコリー先輩から緊急の連絡を受けました。そのことをハーグ副学園長に伝え、すぐに現場に向かいました」


ゆっくりと首を縦に振る学園長。

どうやら偽証は無いと判断したのか、話を続けるように言う。


「そこではアリスが既にモンスターと戦っていましたが、急を要するのはコリー先輩たちと言う事をアリスに言われ、コリー先輩たちの元へ向かいました」


ここからはコリー先輩もミーシャ先輩も分からない内容だったので皆真剣な眼差しで俺の話を聞き入っている。


「コリー先輩は左腕が欠損して…ミーシャ先輩は頭部が………私が到着した時にはすでに死んでました」


皆の頭の上に「???」が浮かんでいるのが分かるくらいに、動揺した顔をこちらに向けてくる。


「そこで、私はフルキュア―を使いみんなを回復させました」


「聞いた話通りフルキュア―も使えるのですか…しかし、フルキュア―では欠損した身体の回復や死者を蘇生することは出来ないと思いますが?」


やっぱりそうだよね。

流石にフルキュアーでは誤魔化しきれないと予想はしていた。


「フルキュア―の上位魔法を作り欠損した身体の回復を可能にしました。そして死後、時間制限つきですが死者の蘇生が可能な魔法も作りました」


俺の説明に今一パッとしない顔の学園長。

いや、学園長だけではなくこの場の全員が理解不能を示す顔をしている。

それでも頑張って噛み砕き、嘘を散りばめながらそれらしく説明する。


「…な…んと??」


「…そんな事が可能なのか…?」


アーバン学園長、ジーン副学園長、コリー先輩にミーシャ先輩、ついでにハーグ副学園長さえも驚愕の発言に目を見開いて固まっている。

フルキュア―を使う事でさえ法王レベルの能力なのだが、その能力を大きく超えた魔法をアイリスが発言し実際に蘇生された生徒が帰ってきていたのだから。

ハッと我に返ったジーン副学園長は恐る恐るハーグ学園長の方へ目をやる。


「…は…ハーグ副学園長?」


「は…はい」


呆けていた顔をキッと直しジーン副学園長の方へ姿勢と正す。


「ハーグ副学園長とアルトマン学園長はこの事実を御存じだったのですか?」


思い起こすと理不尽とも思える所業の数々。

この二人に常識と言う枠が既に外れている事を理解する副学園長。

ジーン副学園長の問いに少し間を開けると、ハーグ副学園長はアイリスとアリスの入学当時の思い出を話し出す。


「アイリスとアリスが入学した当時、まだ5歳だった2人は…すでにフルキュア―を使用可能でした」


その驚愕の話を聞いてジーン副学園長が驚く。

話には聞いていたが人間のしかも幼子が世界最高峰の魔法を行使可能という所に、虚勢を張り獣人と魔人より優位に立ちたいと人間の賢しい部分を見越していたハーグ副学園長ではあったが、今までのアイリスの説明を聞くとそれが虚偽でも偽証でも無い事は明白だった。

しかも、そんな賢しい人間が王都へ秘密裏に交換留学制度を導入するとはとても思えない所から、俄然真実味を帯びる。


「なんと!!」


「そしてその驚異の才能をアルトマン学園長は見出し、アイリスとアリスが講師を務める事によりアルフレート学園の根本的なレベルアップをしました。おかげでアルフレート学園では入学から1年目で全ての学園生がキュアを使えるようになるのが必須となりました」


「アルトマン学園長の言う事が本当だったとは…本当に入学1年目にしてキュアが使えるようになるのですか」


「はい、それも、全てアイリスとアリスが監修した特別授業のおかげです。そんな二人がどんな魔法を開発しても実践しても驚愕する事はあっても、不思議ではありません」


アーバン学園長とジーン副学園長は互いに目くばせすると、何かを納得するように首を縦に振る。


「そうですか分かりました…アイリス、アリス」


「「はい」」


「残り数か月…このイグース学園も宜しくお願いしますね」


「「わかりました!」」


俺はもはやアルフレート学園では定番となっている、アイリス発祥の敬礼を行う。


「「「「「では、失礼します」」」」」


アーバン学園長とジーン副学園長を残し学園長室から退席すると学園長室に静寂が訪れる。

その静寂を壊したのは副学園長だった。


「学園長」


深刻なしかしどことなく柔らかい笑みを浮かべる副学園長。


「なんだね? 副学園長」


アイリスとアリスの人智を超える魔法と討伐に赴いた生徒たちの報告に依然として固い表情の学園長は言葉少なめに返事を返す。


「アルトマン学園長は本当に人類と獣人の架け橋を送ってくれたんですね」


人を蘇生可能な魔法を行使可能な唯一無二の少年少女の派遣にアルトマン学園長の心内を鑑みる学園長は険しい顔から柔和な顔へと変わる。


「そうだな…アルトマン学園長は獣人も魔人も差別のない世界にしたいのだろうな。そして、それを実現可能な逸材を手に入れたんだよ。人類が獣人を排除する気だったらあの二人を送っては来なかっただろう」


「そうですね…あの二人の能力は王都でも知られていないようです。王都に知られていたら、それこそ王都は世界を自分たちの地にする為、あの二人を戦争の先兵に使っていただろうに…我々も、人類と手を取り合って生活する日が近そうですね」


「そうだな」


アーバン学園長とジーン副学園長は、アルトマン学園長の真意に触れ感謝の念が膨らむ。





「あっ!!」


「どうしたの? アイリス」


「これ忘れてた!」


俺はポーチに入れていた結晶を取り出すとハーグ副学園長に差し出す。

コリー先輩とミーシャ先輩は『なにそれ?』って顔をしている。

確かに討伐した後に応援に駆け付けたのだから『それ』が何なのか知る由も無い。

ただ、禍々しいものが濃縮された気配は感じるようだ。


「これは、結晶じゃない?! しかも、黒狼の結晶より大きいわね!」


「そうなんですよ、これ学園長の所へ持って行った方がいいですよね」


「そうね、早くもって言って報告しなさい」


「は~い!」


小さな足跡を残してアイリスは学園長室へ踵を返す。

その年相応の様子に心が癒されほっこりするコリーたち。


「あいつ、普段は普通の子供なのに戦闘になると人が変わったようになるよな」


「今回は特別よ」


「ん? どういう事? アリス」


「みんなの悲惨な状況を見てしまったから…私もみんなの状況を聞いて冷静さを失ったけど、それでもアイリスは極力冷静に対応したんだと思う。そうでなかったらあんなモンスター瞬殺していたわ」


アイリスから惨状を聞き怒りに頭が埋め尽くされたアリスに対してアイリスは端から敵を討つよりも捕食された人を救う事を考えていた。

アイリスにしてもアリスにしても金火竜のようなモンスターと言えど、タブレット魔法やタブレットに収納されている武器を使えば文字通り瞬殺していただろう。

言葉通り跡形も残らずにだが。


「…まぁ、喰われた連中も居たからな…なんにせよお前ら2人は命の恩人だ。何かあったら俺たちが力を貸すぜ!」


「あたしだって! 一度死んだんだもん、この命はあなた達のモノよ」


「うふふふ、ありがと。コリー先輩!ミーシャ先輩!」


その言葉を聞いて年相応の無邪気な笑顔を返すアリス。

そんなアリスの笑顔にまたもやほっこりするコリーたち。



アイリスは再び学園長室を訪れる。

コンコンと軽くノックすると、促されるまでその場で待つ。


「どうぞ!」


先程、みんなと出て行ったアイリスがその場に顔を出す。


「どうしましたか? アイリス」


「今回討伐したレオファングの魔素と正体不明のモンスターの結晶を持ってきました」


そう言いながら、ポーチの中から魔素の結晶体を取り出す。


「え? 結晶? ち…ちょっと見せてもらえるか?」


アーバン学園長とジーン副学園長が慌てふためきながら結晶を見つめる。


「はい、どうぞ!」


「これは…レオファングの魔素と同じ構成の結晶? と言う事は学園長!!」


ジーン副学園長がマジマジと結晶を見ると、学園長に視線を向ける。


「討伐隊を襲ったモンスターはレオファングの進化種かもしれません」


その視線を受け取り、恐らく副学園長も危惧している言葉を学園長は示唆する。


「進化種??」


「アイリス、この結晶を排出したモンスターはレオファングとは似てもいなかったのですか?」


レオファング自体は見た事が無かったのだが、聞いた内容と若干の乖離がある事を学園長と副学園長に報告する。

本来レオファングとは、ライオンの様な猛獣にサーベルタイガーの様な長い牙が特徴だ。

ましてや翼なんて存在しない獣なはず。


「はい、聞いていた内容とは全然別の種に見えました。翼も生えてましたから」


「コリーも上空から襲ってきたと言ってましたね…分かりました。この件はギルドの方にも連絡しておきます。ご苦労様でした」


「はい、失礼します」



はやりギルドの判定も大きく食い違うようだ。

これが頻発したら、冒険者から信用が無くなり、アーカムのギルドは潰れちゃうんじゃないか?


その前に、人狼が治める国なのだから人間より好戦的だし国を上げて討伐を行うのかな?

人間の国とは根本的に違うようだし。




こうして、討伐依頼は無事? けが人もなく終了した。

気持ち長くなったようです。

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