第39話:獣人と仲良くなる(男だけ)
午後になり早速模擬訓練。
なのだが、なぜか獣人男子20人と模擬訓練をやる羽目になった。
向こうを見るとアリスも女子20人を相手に模擬訓練をすることになってる。
なんでこうなった?
しかも来るって言ってたコリー先輩居ないし…コリー先輩が一緒に模擬訓練をするんじゃなかったの?
これじゃ人間が一方的に叩きのめされるの図でしょ!
いじめでしょ!!
いじめはカッコ悪いでしょ!!
アリスにトランスファーを送る。
『アリス、どうする?』
『売られたケンカは買うわよ?』
うわ…予想通り完全にやる気だよ。
チラリとアリスの方に目を向けると邪悪な微笑を浮かべている。
ハア…仕方ない、アリスの方法でやりますか。
『アリス、やりすぎて殺しちゃダメだよ』
『フフッ分かってるわよ程々に叩きのめすわよ!』
あれ、絶対わかってない。
絶対ダメなやつだ。
「それでは、一人目始め!」
何故か勝手に司会進行してる奴までいるよ。
しかも司会進行は講師じゃない所がミソだな。
「行くぞ人間!」
そこは行くニャ! とかいう所だぞ。
猫がその語尾を忘れたら猫としてのアイデンティティが損なわれるぞ。
「はいはい、分かりました」
鋭い爪を指先から出し、低い体勢で間合いを詰める。
さすが身体能力は人間以上と言われるだけはある。
筋力と俊敏性は人間のそれを遥かに超越している。
真正面の低い体勢から一気に体のバネを生かしアイリスの顔面に横なぎの手のひらが襲い掛かってくる。
それを木刀で受け止めようとしたが、簡単に木刀が切断されてしまった。
「あら?」
顔を後ろに逸らし爪攻撃を避ける。
「へぇ? 人間にしてはやるね。じゃぁこれでどうだ?」
この人、完全に俺を殺す気DETH!
今度は相手の右手が地面スレスレの超低空、左手が頭上から襲い掛かる。
「喰らえ、大咢!」
俺の頭と腹を同時に狙ってくる攻撃。
そのままバックステップで躱すが、相手もその行動を読んでるようで両手を合わせ体を回転させながら飛んでくる。
あ…あれは、電磁の必殺の技"超電磁スピン!?"
思わず憧れのロボ技に見惚れてしまった。
ドレイ獣の様に腹に穴をあけられる訳にはいかないし超電磁竜巻を受けていないので難なく横に避ける。
随分と萌える、いや燃える技を繰り出すではないか!
こちらもお礼に燃える技を披露してやろうか。そう思い輪切りにされていて手に持ってる木刀の柄の部分へ魔力を通す。
するとアリスの戦っている方で歓声が上がる。
あ…アリスも木刀が切られたがすぐに炎の魔法剣を展開し使ってる。
クッ、燃える剣は先に使われてしまったか。
仕方ない、ではこちらは超電磁竜巻…は出来ないから雷撃の剣を作る。
するとこちらでも歓声が上がる。
「何だその剣は、どこから出した?」
対戦している獣人は驚きつつ一歩後退する。
そこは"どこから出したニャ"でしょう。と心の中でツッコんでみた。
「では今度はこちらから行きますね」
前傾姿勢で構える。
獣人をも凌駕するような鋭い間合いの詰め方に獣人も焦る。
「くっ!」
"くっ"じゃなく"ニャ"だろと完全にツッコミ役に回る俺は、正面で構えてる獣人に突きを出す。
流石獣人という所か、横に避けられるが追随するように切先を横に振るった。
切る速度ではない事を見切ったが獣人が爪で受けるがその瞬間「ぎゃっ!」と言う悲鳴と共にダウンした。
さすがの獣人でも、電気には弱いよね。
最初は獣なんだから火に弱いでしょ。って胆略な考えで炎の剣を展開しようとしたが、良く考えるとそれは意味が無いと思った。
人間と同じ生活をしてるのに火を怖がるわけがないだろうと。
それに最初にアリスに取られてしまったし、二番煎じじゃインパクトも少なかろう。
今度の対戦相手も、先の対戦で警戒したのか構えたまま俺の出方を窺っている。
そこで相手のわき腹に隙を発見してそこを雷撃剣で触れると「んぎゃ!」と悲鳴を上げダウン。
あとはこの繰り返し。
誰も俺の相手にならず20人組手が早々に終了した。
最後は審判役なのか、進行役なのか分からない人も返り討ちにしてやった。
この人このクラスで一番の手練れと言うかジャイアン的ポジションだったようで、最後に美味しい所を持って行くはずだったようである。
"んっ"と背筋を伸ばしてアリスの方を見ると、丁度最後の一人だったようで背中に魔法剣を叩き込みダウンをさせていた。
おお~アリスの方も終わったか。と眺めていると背後に気配を感じて振り返ると最初に戦った獣人がこちらに詰め寄ってくる。
俺は振出しに戻るのか。と剣を構え直すが相手は満面の笑顔。
「おい! お前スゲーな! 人間にもこんな強い奴がいるなんて人間も侮れないな」
「あ、いや…」
俺は照れながら後頭部を掻くと他の人たちも詰め寄ってきて一転賞賛の嵐。
「いや、本当にスゲーよ」
「この剣は何なんだよ」
「触れた瞬間に体がしびれちまったぜ」
「お前は剣士なのか? 魔法使いなのか?」
「次は絶って~勝ってやるからな!」
等々、あれほど疎外感満載だった獣人が和気あいあいと話しかけてきた。
「俺はシロンって言うんだ、宜しくな」
最初の対戦相手が名乗ってきた。
「俺はシュン」
「俺はアロン」
・
・
・
・
「俺はアイリスです」
「知ってるって!!」
「「「「ああはははは」」」」
結局、対戦後は自己紹介の場になってしまった。
それはアリスも同様だったようだ。
少ししてコリー先輩とミーシャ先輩がこちらに駆け寄ってくる。
「おおぉい!! 遅くなったな!!」
「ちょっと学園長と話してたら遅れちまったよ」
「アイリス、約束通り対戦相手になってくれ」
「分かりました」
「おお、アイリスと学園リーダーのコリー先輩の対戦だぜ」
「向こうではアリスとミーシャ先輩の対戦だよ」
「俺両方とも見たいよ!」
「だよな、どっちが勝つかワクワクするな」
アイリスと同じクラスの生徒が和気あいあいとなっている事に気が付くコリー先輩。
「お? なんだアイリス、何でこいつらと仲良くなってるんだ?」
剣を構えながら周りをキョロキョロするコリー先輩。
「はい、さっきまで20人組手をやってたんで」
「え…20人組手ってこいつら全員相手に勝ったのか?」
「はい」
「よ…よし、今度は俺の番だ!(マジか、こいつ)」
"…早まった…アイリス相手に…どう考えても瞬殺されるビジョンしか浮かばない…しかし、瞬殺されると先輩の威厳が…そうだ! 良い事考えた! ミーシャには悪いが…"
「あっ! その前に! ミーシャとアリスの対戦を見た後で良いか? こいつらも向こうの対戦も見たがってるからな」
コリー兄さんが冷や汗を流しながら提案すると
「さすがコリー先輩! 分かってる!!」
と称賛の嵐。
まあ別に良いけどね。
「って事で、ミーシャとアリスが最初な」
向こうでは丁度アリスとミーシャの対戦が始まる所だった。
「それじゃ、行くわよアリス!(程々に頼むわよ)」
「分かりましたミーシャ先輩!(程々に行きます)」
どんな打ち合わせをしたのか、何か忖度が働いたような雰囲気を纏っている。
「アリス頑張ってね~」
「ミーシャ先輩! 私たちの仇を撃ってくださいネ~」
などなど美少女達の黄色い声援に思わずウットリ萌え心に火が付いた。
その瞬間、何かを察知したのかアリスがこちらを睨んできた。
"殺すぞ!"と言う念信と共に。
アスラ並みの殺気を放出するアリス。
その殺気に"ビクッ!"とした全獣人たち。
俺は知らず知らずのうちに土下座の型をしていた。
「ふん!」
凄い勢いで鼻から空気を出すアリスは殺気を抑える。
アリスの殺気が消えて安心したのか。
「い…行くわよ…アリス」
ミーシャが攻撃を開始する。
ネコ系のミーシャ先輩も俺の最初の対戦相手シロン同様、低姿勢から一気に間合いを詰めてまっすぐに爪をアリスの腹に突出す。
流石はミーシャと言うべきか。
俺と対戦した猫系の誰よりも鋭い突進だった。
そんなミーシャに"おお~"と驚嘆するアリスも俺の剣の真似をして雷撃剣を生成しミーシャの爪を防ぐ。
と同時に「んきゃん!!」と可愛い悲鳴を上げてミーシャがダウンする。
「「「え!!!」」」
見ていた全員が呆気に取られた。
「この剣、触っただけでスタンの効果もあるのね。初めからこれで戦ってればよかったわね」
アリスと対戦した全員が首を横に振りながらビクビクしている。
「おお、ミーシャ先輩がアリスに簡単に負けちゃったぞ?」
「アリスもやるじゃねーか!」
「へ~アリスも中々に強いな」
「いやいや、そんな事ないですよ」
アリスも照れ笑いで応じている。
俺に見せない清々しい笑顔であった。
「俺はお前らの真剣勝負見てるからな。お前らの実力が分かってるよ。たぶんこの学園の誰が相手でも負けないだろうから、程々に頼むぜ」
コリー兄さんも覚悟が決まったのかノソリと重たい腰を上げる。
「いや、買いかぶりすぎです」
「ふん、謙虚も度が過ぎると皮肉にしか聞こえないから気をつけろよ。よし! 行くぞ!!」
「分かりましたコリー先輩」
俺は電撃剣を構える。
「今度はアイリスとコリー先輩の対戦だぜ!」
「どっちが勝つと思う?」
「やっぱりコリー先輩だろ」
「でも、アイリスもなかなか強かったぜ?」
皆さんはこの剣に触れて痺れてましたからね。
俺の強さもよく分かっていなかった事でしょうし、コリー先輩を応援したい気持ちも分かります。
そんなコリーは木刀を構えアイリスと対峙する。
アイリスもいつものように相手の隙を窺う。
コリーとアイリスの距離は5m程。
じりじりとアイリスが距離を詰めるが、まだ木刀の射程範囲に達していないのにコリーが木刀を縦に振るう。
その瞬間、剣先から真空の刃、所謂ソニックブームが発生しアイリスに襲い掛かる。
アイリスは左足を引きソニックブームの軌道上から外れる。
「出たぜコリー先輩の得意技!」
「後はアイリスがどこまで凌げるかだな」
「やっぱり避けるか。ではこれならどうだ?」
コリーは袈裟切り、逆袈裟切りに素早く剣を振りXのソニックブームを発生させる。
しかも連続でアイリスに向かってソニックブームを撃ち出している。
さながらマシンガンのように縦横無尽にソニックブームが空間を切り裂く。
電撃剣でソニックブームの軌道をずらしながら躱していたが余りにも大量のソニックブームによけきれなくなるアイリス。
風属性の剣を展開しようか考える。
真空に風属性で…それだと、こっちも同じ技になっちゃうし、怪我されるのもメンドイ。
色々考えているとアホみたいにソニックブームが襲い掛かってくる。
避けるだけにも正直面倒臭くなってきた…
アイリスは『ウォーターウォール』を展開。
その水の壁に遮られソニックブームはアイリスに到達する事は無かった。
そして、その水の壁をそのままコリーに叩きつけた。
大洪水がコリーを襲う。
「わっぷ!! おいアイリス!! 魔法は使うなって言っただろ!」
「あ…い…いや、あまりにもコリー先輩の攻撃が鋭くって…つい」
テヘペロと誤魔化す。
「ついじゃねーよ!」
「「「「おおおおおぉ~~~!!」」」」
「アイリスつえ~な!!!」
「コリー先輩に勝ったぞ!!」
「お前もう俺たちの友達だからな!!」
「剣と魔法の両方行けるのか」
「ふん、仕方がねえな。アイリス、勝負は今度な!」
濡れた姿に大量の冷や汗が混じるコリー。
濡れているおかげで、誰も気が付かないのが幸いした。
「な? 言っただろ? みんな強い奴が好きなのさ」コソコソ
「はい。ありがとうございますコリー先輩」
こうして、コリーの面目が潰される事も無く、俺とアリスは獣人の絆に入る事が出来た。




