第35話:帰郷
今回は短いから連投で。
ああ、別に感想とか評価が欲しいわけじゃ… |ω・`)チラ
アリスは初めて長距離転移を体験する。
俺もハッシュとスージーに右手を上げると
「ちょっと行ってくるね」
と告げアリスの魔力を頼りにアリスに向け転移する。
光の粒子に変換されたのだから、光の速度で移動可能と言う事は惑星間移動で無い限り殆んど一瞬の出来事となる。
転移の瞬間は眩しいの一言。
視覚と言うよりは感覚で眩しさを認識する事になる。
一応、転移を完了すると確認の為ハッシュに連絡を取る。
ところが残念な事に俺が通信を行おうとしている相手は脳筋の為、長距離トランスファーが出来ないので仕方なくアリスに頼む。
「そこは本当にアルテリアなの?」
ハッシュの声は聞こえないがスージーの声は間違いなく聞こえるし、会話も成立している。
王都からアルテリアの距離であれば、媒体を介せば問題ない事は確認できた。
「そうよ、今からお母さんに会いに行くから。誰かに何か言われたら1時間後位で帰るって言っておいてね」
「分かったわアリス。でも、1時間でいいの? もっとゆっくりしても良いのに」
「もう移動時間に左右されないからいつでも帰って来れるし大丈夫よ」
「わかったわ。私も何かあったらトランスファーを送るから」
「よろしくね」と通信を終了するアリスは何だかんだ言っても12歳の子供なのだ。
目の前を歩く母親を目にすると早々に駆け出す。
目の前には、突然眩い光が現れたと思ったら俺とアリスが現れた事で、思考回路が停止し呆けているアリスのママン、テイラーが呆然と立ち尽くしていた。
しかしいいのかママンよ。
自分の子供より俺の事を見つめてて。
「ママ~~!」
「あ…アリス??」
アリスはテイラーに抱きつくと、テイラーも我に返ったのか驚きの表情でアリスを力無く抱き締める。
「久しぶり~ママは元気だった?」
「え…ええ、それより学園は? 突然どうしたの? 今のは?」
アリスを抱きながらも困惑するビッチ…もとい、テイラーと目が合う。
「アイリス様も?!」
俺は"ペコリ"と軽く腰を折ると「ご無沙汰しております」と軽く挨拶を交わす。
「アイリス様も大きくなられまして…」
と若干目をキラキラさせる。
テイラー専用スキル"ビッチ"を発動させ始める。
と同時に、俺の危険察知スキルもレッドラインに突入するので慌てて切り返す。
自分の娘より俺を見て正気を戻すとは…相変わらずですな。
「パパ達も家ですか?」
「ええ、私も今お屋敷に戻る所だったんですよ」
「じゃぁ一緒に行こ!」
「そうねアリス」
アリスは久しぶりに帰ってきてはしゃいでいる。
年に1回は帰って来れると言っても、まだ12歳だ無理もないだろう。
「おおぉ!!! アイリス~~~!!!」
「ぱ…パパ…苦しい…」
家に帰ってくると恒例の、ほぼ挨拶と化したロックの抱擁。
しかも、今回は何の連絡も無く予定外の帰郷なだけに、その感動もひとしお…いや、いつも通りか。
「ひ…髭がくすぐったい」
12歳ではさすがに赤ちゃんスキルも幼児スキルも発動できなかった。
あの必殺のスキルは期間限定だったようだ。
「な、なんだと?! 転移魔法!? 学園ではそんな魔法も教えるのか?」
「いえ、あなた、転移魔法なんて今まで聞いたことないですよ」
「だよな…」
簡単ではあるが転移魔法を説明する。
「アリスと二人で作ったんだよ」
「「「…は?」」」
久しぶりに父、母、テイラーの呆気に取られた顔を見た。
この光景も懐かしい。
「ア、アイリス様?」
「ん? なに? テイラー」
「アリスも…アリスもそんな高度な魔法を使えるのですか?」
「うん。今回の転移はアリスに発動してもらったんだよ」
アリスはスゴイでしょ! 撫でて撫でて!!
と12歳丸出しで母親に甘えていた。
「アリスも何だかんだ天才の部類だよね」
俺がテイラーにそう言うと、アリスはあからさまに嫌な顔を俺に向けてくる。
テイラーに頭を撫でられながらだが。
「おだてても何も出ないし、嫌味なの? あたし真剣勝負で1回もアイリスには勝ってないじゃない」
そんな事を言って頬を盛大に膨らますアリス。
そんなアリスで一同の場も和むのはいつもの事。
「さすがアイリスとアリスだな。学園長の言うとおりだったよ!」
「今日はゆっくりしていけるの?」
久しぶりの優しい言葉にこのまま眠りたくなる俺とは対照的にアリスは至って冷静だった。
テイラーに頭を撫でられながらだが。
「あっ!! もう帰らなきゃだね」
アリスの言葉に残念そうな顔をするロック。
「何だ、もっとゆっくりしていけばいいのに」
その横で「仕方ありませんよ」と宥めるマイママン。
「黙って来ちゃったからね。学園のみんなが心配するし、転移魔法もあるからまたすぐ来るよ」
転移魔法と聞いて、それが社交辞令で無い事に嬉しさを隠せないどこまでも親バカなロックだったが、やはり見送ってくれる時は少し寂しげ。
それを察してサマンサはロックの腕に寄り添う。
「アイリス、アリス気を付けるのだぞ?」
「うんパパ!」
「アリス、アイリスを頼みましたよ」
「分かりました! 奥様!」
「アリス、元気でね。いつでも帰って来るのよ」
「うん、ママ」
名残惜しいが、アリスはスージーから受け取ったボタンを右手にすると、転移の魔法を展開する。
「「じゃぁ行ってきます」」
シュッ!! と一瞬のうちに光の粒子と化し、転移する。
今までの喧騒がウソみたいに静まり返る屋敷の玄関前で寂しさの籠る笑顔を見せるロック。
「…本当に神の子の様だな。あれが俺たちの子なんて信じられるか?」
「何を言ってるんです。紛れも無く私たちの子ですよ、あなた」
そんな事を話してることなど露知らず寮に帰ってきた。
「「ただいま!」」
俺とアリスはアリスの持つボタンの主であるスージーの元へ転移した。
「お! 早かったな」
「とりあえず、長距離でも通信は出来るから安心だね」
「でもね…」
「ん?」
「俺とスージーで話しかけたんだけど応答がなかったんだよな。こっちからは話しかけても繋がらないのな」
「「あ…そっか…」」
そう言えば、俺たちから話しかければ応答はできるが発信の方法を教えていなかった。
単純に言えば超長距離トランスファーなのだが、まずはアクセスさせるための手段が分からなかったら通信のしようがない。
俺とアリスは、テヘペロしながらお互いの制服のボタンを取る。
そう言えば、パパンとママンから、転移用の媒体を貰うのを忘れていた…。
アリスに頼めば戻る事はできるが、それはあくまでもテイラーの居場所だ。
ま、明日にでもまた帰郷するか。
自分の間抜けさ加減に心の中で再度テヘペロをしてみる。
何て事をしているとアリスから小声で提案された。
「ねぇアイリス」ヒソヒソ
「ん?」ヒソヒソ
「二人にゲーベンスキルで…」ヒソヒソ
「それいいな」ヒソヒソ
俺とアリスの怪しい会話に割って入るハッシュ。
「何コソコソしてるんだよ」
「あ、なんでもない」
何でも無くは無いけどコソコソしてると言われたらとりあえず"何でもない""何もしてない"と惚けるのはお約束だろ。
「ねぇ、俺からハッシュに」
「アリスからスージーに」
「「ある術をかけて良い??」」
俺とアリスは聖なる鳥の卵を守る双子並みのシンクロ率で言葉を紡ぐ。
「は? まぁ俺は良いけどよ」
「あたしも良いよ」
二人とも俺とアリスの提案に快諾してくれる。
術と聞けば身構えてもおかしくないのに、内容を聞かずに快諾するとはこれも信頼なのかな。
「じゃぁ…」
「「レベル5魔法ゲーベンスキル!」」
レベル5魔法ゲーベンスキル:自身が獲得している技術を他人に貸出する事が可能な術。
声に出さなくても使用可能だけど、何か声に出すと技発動! って感じで、何かいいでしょ。
「おおっ!」
「転移術の知識が頭に浮かんだぞ??」
スージーは自身から発せられる光を眺めた後、不思議そうにアリスの方へ向く。
「ねぇアリス、これ、あたしにも転移術が出来るって事?」
俺とアリスは二人に向かって指をVの字にして向ける。
「二人も転移術が使えるようにしたと言うか、知識を譲渡したから使えるはず」
「だから、私たちのボタンも渡すね」
ハッシュとスージーはお互いを見つめて軽くため息を漏らす。
「お前ら…本当に何でもアリだな」
これで心置きなくイグース学園に行ける。
さぁ!
一週間世界中を旅して遊び尽くそうか!!
と思ったのだが…
転移先の媒体が無いと転移できない事に気が付くのは旅行の準備や計画を立てていた翌日だった。




