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神様?いいえただの悪魔です。  作者: 次元
第2章:熱血学園編
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第31話:ギルドからの依頼

「ギルドの方から報告がありましたので皆さんにも報告します。前回の黒狼討伐授業の後、冒険者ランクB+の冒険者たちが全滅しました。しかも、討伐内容は授業と同じ黒狼討伐でした。ギルドの依頼は推奨C+だったのにB+の冒険者が全滅したんです。学園としては、未確定なランクの討伐を受ける訳にはいかない為、本日の討伐授業を中止としました。代わりに、訓練室で実戦形式の模擬訓練を行います。皆さんは訓練室に移動して下さい。」


討伐授業に随伴する副学園長から直々に今回の討伐授業の中止が告げられる。

しかしB+ランクの冒険者が黒狼に全滅させられるとは。

黒狼の討伐はC+が集まって行う程、決して楽ではないが危険な討伐でもないはず。

にも拘らずB+でさえ全滅するとなると黒狼の大集団なのか、それともこの前のようにハッシュが苦戦する個体が居たのか。

ハッシュの実力ではA+は確実。

とするとB+が何人居ても厳しいのだろうな。


しかし、前回参加していない生徒にしてみれば不満も出てくるのは確実。

案の定と言うか教室内に不満の声が上がる。


「「「「「え~」」」」」


中々収まらないブーイングに徐々に目を細め、魔王のようなオーラを纏い眉間に皴を寄せる副学園長。


その雰囲気に一言「うるさい」と告げる。

聞こえるか否かの静かな、それでいてこの世の破滅を宣言する様な一言。


生徒たちも理解しているようで、一斉にブーイングが止む。

自分より強いものには従順で素直がモットーの我がクラスでした。


ブーイングが止むと副学園長はいつもの顔に戻り俺とアイリスに視線を送る。


「アイリス、アリス、学園長がお呼びです! 2人は学園長室に向かってください」


「「分かりました」」


強いものには巻かれろ。

俺もアリスも素直に右手を額に当てて敬礼をする。


この学園にそんな敬礼は無いんだけどね。

雰囲気ですよ。



―――学園長室前


「ねぇ、アイリスどう思う?」


アリスが俺の方に振り向き話しかけてきた。

大体アリスの言いたいことは凡そ分かる。


「どうって?」


「もしかして学園長は黒狼のクエストを私たちに頼むんじゃないかな?」


俺もそう思っていた。

でもさ、仮にも学園の生徒に相談することじゃ無いと思うぞ。

それに学園長だってわざわざ生徒に危険な事を押し付けるとも思えない。

B+ランクの冒険者が全滅したほどの脅威ならばAランク冒険者への依頼もしくはAランク以上の冒険者を伴って軍を動かすのもあるんじゃないか?

そういう意味も含め討伐依頼とは違うと思う。


「どうだろ…うん、確かに…いや…たぶん、俺たちに調査を依頼するんじゃないか?」


「調査?」


「うん。CランクのモンスターがB+の冒険者でも敵わなくなってるんでしょ? 公にAランクの冒険者に依頼したら王都の軍も動き出すと思うんだよね? でも、ギルドでそんな大それた依頼を簡単には出せないでしょ」


「そのための調査?」


「だと思う。これ以上、ギルド査定の乖離が進んだら、王都のギルドは冒険者から反感と不振を買って解体しちゃうよ」


「それもそうね」


アリスは俺の考えを聞くとコブシを顎に付け肯定してくる。

そんな訳で俺は学園長の扉をノックする。


コンコン


学園長室の重厚な扉をノックすると学園長から返答が来るまで扉の前で待機する。


「入って良いぞ。久しぶりじゃな、2人とも」


「いや、昨日も会いましたよ」


ここ・・に登場したのが久しぶりなのじゃ!」


「はい??」


「まぁそれはさて置き…2人に頼みたい事があるんじゃが」


「ね?」

「だね」


「ん? なんじゃ?」


「ギルドから黒狼の調査依頼が来たんじゃないの?」


そう聞くと学園長はシワシワの目を大きく見開く。


「おぉ、そうなんじゃよ。良く分かったな。頼みたい事は黒狼の調査なんじゃが」


そう前置きを置いて学園長は説明モードとなる。


「実はな、副学園長から聞いたと思うのだがB+以上の冒険者へ討伐依頼がギルドからきての? じゃが参加したB+の冒険者が全滅してな…それを聞いて、学園の生徒を危険な目に合わせるにはいかんから断ったんじゃ。じゃがB+を超えるような黒狼など聞いたことが無い。だが確証も無く気軽に王都へ報告するわけにもいかない。そこで前回黒狼を討伐した学園に調査依頼があったんじゃが…引き受けてくれんか?」


何か、ギルドも王都と冒険者の板挟みで非常にやりにくい状況なのだと理解した。

と言う事は、多少の条件を出しても承諾してくれるんじゃないかと思い、ここで免許皆伝試験を思いつく。


「良いですが条件があります」


「ん? なんじゃ?」


条件と聞いて学園長の眉間に皴が寄る。

まさかアイリスから条件が出てくるとも思わなかったのだろう。

しかし幼い時から見ていたアイリスとアリスの頼みは最早、孫の頼みでもあるので出来れば聞いてあげたくなる学園長。


「同じクラスのハッシュとスージーも同行させてもらえませんか?」


学園長は条件内容を聞いて、眉間に走った皴が更に深く刻まれる。

そしていつもの会話ではなく、若干声のトーンも低く感じる。


「じゃが危険な調査依頼にその2人が対応できるのか?」


威厳の籠った低いトーンではあったが俺は笑顔を浮かべていつも通りの返事をする。


「問題ないと思います。ハッシュはランクで言ったらAを超える実力はあると思います。それにスージーも"フルキュア―"を使えますし」


「な…なんじゃと?!?!!? 担当の講師からは何も聞いてないぞ!?」


眉間に寄った皴が一気にオデコに集中する。

流石の学園長でもあの"フルキュアー"を使えると聞いて、驚愕する。


「内緒ですから」(笑)


俺はいたずらが成功したように人差し指を唇に持って行き渾身の笑顔を浮かべる。


「お前らに関わると…周りは化け物だらけになるな? じゃが、おかげで学園が変わったのも事実じゃし、わしにも見る目があったと言う事かのぉ」


俺の言葉と態度に学園長が好々爺に舞い戻り得意げに髭を弄る。

何より高等部とはいえ初年度の生徒からすでにAランクを超える実力とあの"フルキュアー"が行使できると言われたのだ。

アイリスから驚愕の事実を聞いて学園長も断る理由が思い浮かばない。


「では、4人で行っても良いですか?」


「まぁ…お前たち2人が責任を持って守れるのであれば良いじゃろ」


「分かりました!」


「じゃが、無理はするなよ? 危ないと感じたらすぐに戻ってくるのじゃぞ?」


「「分かりました。ありがとうございます学園長!」」


俺とアリスは学園長にビシッとキレッキレの敬礼をして学園長室を退出する。

廊下を歩いていると後方の学園長室から変な笑い声が轟いたが、聞かない様にした。



―――その日の夜


学園長で話したことをハッシュとスージーにも報告した。

ハッシュとスージーは相変わらず俺たちの部屋に入り浸ってるから報告が楽でいい。


その報告を聞いてハッシュは


「でかした!」


と興奮していた。


出発は明日の朝だ!

前回の討伐授業で来た森に再び足を踏み入れる。

前回と違う所は俺たち4人+副学園長と少数精鋭。


ここが前回黒狼を討伐した場所、そして、より深い所でB+の冒険者が全滅した場所だ。


俺とアリスはこっそりと『エネミーシーカーレベル6』を発動させている。


俺とアリスは11歳

本来であればレベル9位の魔法は解放されていても良いはずなのだが

未だにレベル6の魔法までしか解放されていない。

予定と大違い。

その辺のところ、アスラさんどうなってるんでしょうか?


==========


レベル6(1日使用可能数:12回)

グラビティ

・局所的に重力崩壊を起こし対象を原子レベルで崩壊させる

 重力崩壊の二次利用として高エネルギープラズマジェットを生じさせる。


サテライトレイン

・超高度から隕石などを落下させる


エネミーシーカー

・エネミーシーカーレベル5の2倍の範囲で敵意を探知し索敵を行う。(6Km程)


タイムスタンプ

・5秒ほど、自身を中心とした半径10m以内の時間を停止させる


バディックス

・死者を蘇生させる(老衰以外の死因で死後1年以内)

 円環の輪を断ち切る理由から神と喧嘩になった要因でもある。


サンライト

・サンライトレベル5の3倍の光を収束し光線を発生させる。


==========


それなりに強力な魔法が解放されているが。

一つ間違えば星自体を崩壊に導く可能性もあるがその分、解放数も少ない。

それについてもアスラに聞きたいのにあの白昼夢(デイドリーム)以降全然現れない。


元々、簡単に接触出来ないって言ったから納得はしてるんだが、あの時も一方的に現れてアリスにすべてを話しても大丈夫って一方的に言ってすぐに消えちゃうし。


いったい上では何が起こってるんだ?


そんな事を考えながら森の中を歩いていると前方に敵意を伴う魔力を感じた。


「…アリス、気が付いた?」


「ええ、3キロ程先に黒狼の気配がするわ! しかも、前回の討伐授業の黒狼リーダーより強い魔力を感じる」


「なに? あの時のやつより強いのか?」


俺とアリスの5m後方を歩くハッシュが駆け寄ると同時にハッシュの魔力の膨らみを強く感じた。

前の奴より強いと聞いてハッシュにやる気が満ちている。



俺とアリスがその場で歩を止める。


「どうしたの? 二人とも」


最後尾の副学園長が俺たちに問い詰める。


「グランドプロテクション!」


アリスが全員に魔法をかける。

突然のアリスの魔法に俺以外の全員に緊張が走る。


「お…おい」

「どうしたのアリス」


ハッシュと副学園長がアリスに問い詰めようとしたところで俺が説明する。


「向こうのリーダーもこちらに気が付いたみたい。全速力で向かってくる」


俺の説明を聞いたハッシュは木刀を構える。


「前より強いってマジか!」


「でも、ハッシュとスージーのランクだったら黒狼の群れはもちろんリーダーにも勝てるよ。だから、俺とアリスは手を出さない! 2人で何とかしてみて! そしてアドバイス」


俺がそう言うとこちらに振り向くハッシュ。


「おう!」


「リーダーには二人で協力して立ち向かってね」


「「わかった」」


ハッシュが前衛、スージーが後衛のポジションとなる。

既にやる気の2人にアングリと様子を見ていた副学園長だったが意識が戻って来たのか俺の独断を遮る様に副学園長が声を強める。


「ちょっと! あなた達! 何勝手に話を進めてるの? これは討伐じゃなくって調査なのよ! しかも、B+の冒険者でも全滅した黒狼の群れに2人だけって副学園長として了承できないわ!」


引率者として副学園長の意見は尤もだ。

しかし今日ここにハッシュとスージーを同行させたのは調査の為でなく、免許皆伝の試験の為だ。

そこが俺と学園との意識の乖離だな。


「大丈夫!」

「二人は負けないわ」


俺とアリスは副学園長に自信満々な顔を返す。

それによっぽどヤバい状態になったらフォローするし。


「しかし!」


「何かあったら俺とアリスが二人を守りますから」


「そんなこと…!!! っっ!!」


副学園長も黒狼の気配が確認出来たのだろう。

そしてその群れのボスの存在を。


既に黒狼の群れは見える範囲に迫っていた。


「行くよハッシュ!」


「おう!」


そう言うなり2人は群れに突っ込んで行った。


「ああぁっ! 作戦も何も伝えていないのに!!」


「大丈夫ですよ副学園長」


俺はハッシュとスージーのポジションを見て確信する。

お互いがお互いのサポートとフォローするポジションだし、あの二人だし、何の心配もしてない。


「こうなったら、2人を全力でサポートします!! って! ちょっと!!」


アリスが副学園長をスフィアで覆う。

本来、スフィアは外部からの干渉を無にする絶対防御。

それは言いかければ内部から外部への干渉も無にする。


その特性を利用してアリスは副学園長をスフィアの中に閉じ込めた。


「ちょ…この魔法! ちょっと! 出しなさいアリス」


「ダメ。二人の邪魔になる」


「何を言ってるの!」


そういって二人が駆け出した狼の群れに顔をやると副学園長に信じがたい光景が目に映った。

ハッシュの木刀から炎が噴き出し、狼たちを切り裂いていく。


「うそ、あれ木刀でしょ?」


スージーがハッシュの後方から支援魔法"クインタプル"を展開する。

ハッシュの筋力が凡そ5倍となり、あっという間にリーダーと対峙する。


スージーは他の黒狼をけん制し、ハッシュとボスとの一騎打ちを邪魔をさせないとばかりに、他の黒狼に対してファイヤースリングを連弾で撃っている。


「ええっ!! クインタプル!? しかもクインタプルを発動させたままファイヤースリングの連弾?!」


通常、魔法は体内に螺旋を描きそれを体外に放出し魔法とする。

同一の魔法であれば螺旋を多重で紡ぎだすことは不可能ではないが上位魔法職でも簡単に扱えない高等技術だ。


それをスージーは肉体強化魔法の"クインタプル"を発動・維持させたまま別系統の"ファイヤースリング"の連弾という常軌を逸した魔法を展開している。


ヒーラーなどの支援魔法の発動中は魔法を止める事が無いように後方で守られているのが普通である。


しかし、スージーは守られるだけの自分を嫌い守る側になると決めていた時から今に至る様な異種魔法の多重連携を特訓していた。


2人が組めば熟練のAクラス冒険者でさえも凌駕する実力を発揮する。

それは二人が揃えばSクラスに匹敵すると言う事と同義になる。


Aクラスの黒狼リーダーであろうとSクラスに太刀打ちする術は無い。

程なくして黒狼の群れがリーダー諸共討伐された。


「…あなた達…」


こう見えても副学園長で王都にも籍を置く現役の王都専属魔術師団付でランクA。

その副学園長でもハッシュとスージーの技量を見抜けなかった。


「何です? 副学園長?」


「あの二人より強いんでしょ?」


「どうなんでしょう? ね? アリス」


「そうね?」


俺とアリスは仲良く首を横にしておどけると同時に"スフィア"を解除する。


「―――――」


副学園長は底の見えないアイリスとアリスの実力にハッシュとスージー以上に戦慄する。


当のハッシュとスージーは「「いえ~い!」」とハイタッチしている。


つい今しがたまで命を懸けていた戦いを演じていたとは思えない。


「お~い! 終わったぞ~!!」


まるで何でも無かったようにハッシュがこちらに手を振っている。

討伐されたモンスターが魔素に変換されていくがリーダーの魔素だけが少し違う。

いや、厳密に言うと群れ全体が普通の黒狼の魔素とは異なる。


結晶化された魔素を副学園長が手に取り、良く観察する。


「これは!」


「どうしたんです? 副学園長?」


「この魔素の結晶は!?」


「え? 結晶って?」


「「なになに??」」


討伐して落ち着きを取り戻した二人も副学園長の言葉に反応する。


「昔、モンスターの魔素を強くしてモンスターを操った人が居たの」


ギクッ!

俺は悟られない様、平静を装う。

しかし、汗だけは異様に流れ出ている…が、幸いにもその事に気が付いているのはアリスだけ。


「「え?」」


ハッシュとスージーの頭に『?』が浮かぶ。

しかし、その疑問に答えるよりも続きを話し始める。


「そのモンスターを倒すと魔素の代わりに結晶が出たって…しかもその結晶は魔核と呼ばれるほど高純度の結晶だったの、それが自然に発生することはありえないわ…」


「それって…魔王ですか?」


流石博識のスージー。

この話を聞いていた事があるようで想像していた内容を口にする。


「え? スージー知ってるの?」


余り昔話に詳しくないアリスがスージーに視線を向ける。

わざとらしく、こちらをチラチラ見ながらのアリス。


「大昔、魔王が現れてモンスターを使って人間に対して宣戦布告したのよ。それに対して人類も存続をかけた戦争をしたの。そこで勇者が現れて魔王を倒したって話だよ? おとぎ話にもなってるのに知らないの?」


「へ~? アイリス知ってた?」


クッ…アリスめ…ワザとらしく聞きやがって…


「いや…ぐりとぐらなら…」


「アイリス、それどんな話?」


魔王の話をうまい具合に逸らすつもりで思わず大きな卵からカステラを作るって話を言いそうになったのだが色々ツッコまれそうだったので話を逸らす様にした。

出来る事なら魔王の話は触れないでもらいたい。

しかもスージーの語った話は捏造たっぷりの人間に都合の良い解釈だから。

何だったら本当の事実を話してやろうか!


「とりあえず帰りましょう! 学園長とギルドにも報告が必要です。」


「「「「はーい」」」」


この子たち…間違いなく冒険者レベルSでは?

あの黒狼のリーダーだってAクラスはあったはず、でなければB+の冒険者が全滅するはずない…


しかもアイリスとアリスなんて測定不能レベルよ…?

冒険者レベルSオーバーの生徒なんて聞いたことないわよ。


帰りの道中、なぜか考え込むような、暗い雰囲気を醸し出す副学園長に触れない様に帰路に付く。


こうして調査依頼だったのに討伐をしまったハッシュとスージーだったが、実はすごい事をやってしまったなんて本人たちはまだ気が付いていないのであった。

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