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神様?いいえただの悪魔です。  作者: 次元
第3章:死者の星
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第80.1話:小さいまゆゆの物語

今回は幼女が少女へ成長する"ちいさいまゆゆ"の物語。

やっぱり幼女が幼女のまま生き残るって難しいと思うの。


そんな訳で続きをどうぞ

私は麻由、今年小学校に入学した小学1年生の6歳です。


小学校に入学して数か月。

学校にも慣れて新しい友達も出来て毎日学校に行くのが楽しみ。


勉強は好きじゃないけど授業は簡単。

簡単すぎて眠たくなっちゃう。


でも友達と小さな手紙を回しっこしていると時間が経つのすごく早いの。

時々先生に見つかって怒られるけど手紙の回しっこは止められない。

そんな楽しい毎日だったけど、ある日を境にそんな楽しい時間も忘れてしまう事が起きたの。



その日も友達と手紙を回しっこしていたら、少し怖い内容の手紙が届けられたの。


"ゾンビが出たから授業は中止になるかも"って書いていた。


手紙を出した張本人はクラスの男子の一人で私の隣の机の男子。


最初、ゾンビって何か分からなかったのだけれど、その子に聞いたら"人を食べるお化け"って言ってた。

私は笑いながら信じなかったのだけれどその子が


「兄ちゃんからのLINEで早く家に帰って来いって言ってたし、マジじゃね?」


と声量小さめなのに得意げに話している。

私としては小学1年でスマホを持ってる事に注意が向いてしまった。


「もうスマホ持たせてもらってるの?」


私も先生に見つからないように小さく質問したのだけど、その言葉に余計得意げになった顔を向けてるく。


―――ウザい。


そんな時だった、校内一斉に放送が流れ今日の授業は中止することとなった。

で、送迎してくれる6年生が教室に来ると言っていた。


「な? マジでゾンビが出たんだよ」


件の男子が得意げにウザい顔をしている。

でも急にゾンビと言われても誰一人実感していなかった。


先生の指導で、掃除の時みたいに6年生と一緒に机と椅子を教室の後ろの方へ集める。


と校内放送でこの学校が避難所になったと言っている。

だから校内に残ってる生徒は放送で呼ばれたら指示に従い親と合流するようにと言ってた。


その日から学校の中に警察官が何人も居るようになった。

何日経っても親に会えていない人も居る。


大人たちは慌ただしく動き回り、ピリピリとした雰囲気。

スマホを持ってる男の子が動画サイトを見て青い顔をしているのが印象的だった。


体育館はけがをした人が運び込まれているみたいで関係のない人は入れない様になっていた。


「ねえ、いつまでここに居るの?」


私がお母さんに質問した時だった。

体育館の方から叫び声が聞こえたのは。


そこからは無我夢中だった。

お父さんに手を引かれて学校から逃げて家に帰ろうとした時だった。


お化けが人を襲うようになってお父さんとお母さん、そして近所のおじさんたちと逃げていたんだけど、お母さんがお化けに捕まって、助けようとしたお父さんも齧られて…

お母さんはその場でお化けたちに殺されて食べられて、私が泣いてたらお父さんが手を掴んで一緒に逃げたの。


私はお母さんが死んじゃってずーっと泣いていたら、近所のおじさんがお父さんと一緒に宥めてくれた。


お父さんも近所のおじさんも好き。

でも泣いてる私を怒鳴るおじさんは嫌い。


翌日、お父さんが汗をいっぱい掻いて苦しそうにしている。


私は心配になってお父さんを呼び続けてたの。

近所のおじさんも一緒にお父さんの看病をしてくれてたのだけれど、私の泣き声にまた怒鳴るおじさん。

ホントこのおじさん大っ嫌い。


「黙れよガキ! 騒いだら奴らがやってくるだろ!」


私たちはカギが開いていた民家に避難したの。

誰のおうちか分からないけど少しだけ食べ物もあったから朝になるまで隠れてようって言われて隠れてたの。


だから煩くしたらダメなのは分かってるんだけど、お母さんが死んじゃってお父さんが苦しんでて…


私には泣くだけしかできなかった。


私が泣くとおじさんが怒鳴る。

その声で余計に怖くなり更に泣く。

完全に悪循環に嵌まった所で怒鳴ってるおじさんが痺れを切らせたのか私を乱暴に掴む。


そこへお父さんがおじさんの腕を握る。


「てめーのガキがうるせえからだろ!」


何かを言われた訳でもないのに言い訳の様にお父さんを怒鳴るおじさん。

でもお父さんは掴んだ腕に無言で噛みつく。


噛みつかれたおじさんが必死に振りほどこうとしたがお父さんの指はきつくおじさんの腕を握る。

お父さんは爪が剥がれてもその腕を離すことは無かった。


私は呆気に取られて泣く事も忘れ、腕に噛みつくお父さんを眺めていた。

そんな私を近所のおじさんが抱き抱えお父さんの近くから引き離す。


そんな状況でも私にはただ見ている事しかできなかった。


お父さんの手が怒鳴っていたおじさんの顔を掴むと指が目の中へ入ってゆく。

と同時に眼球が飛び出した。


お父さんは噛みついている腕から顔を離すと今度は首に噛みつく。


私を抱き留めているおじさんの腕に力が入り私は苦しくなる。

と同時に我に返ったのか泣きながら「お父さん!」と叫んでいた。


私の言葉に反応したのかお父さんはゆっくりとこちらに顔を向ける。


差し込む朝日に照らされたお父さんの顔は無表情で顔が血で真っ赤になり、優しいお父さんの面影も無かった。


それでもお父さんはお父さん。


怒鳴るおじさんから私を守ろうとしたのだと勝手に解釈してお父さんに近寄ろうとしたのだけれど、近所のおじさんがそれを許してくれなかった。


「麻由ちゃん、逃げるよ!」


おじさんにそう言われた時、お父さんから逃げなきゃいけないと思いつつもお父さんを置いてはいけないと矛盾する考えに体が硬直していた。


もう全然体が動かない。

ここでも私はお父さんと叫びながらも泣く事しかできなかった。


そんな状況が長いようでいて本当は短かった。


お父さんは近所のおじさんの肩に血が滴る口元を当てると服のまま噛みついた。

服が破ける音とお父さんの歯が床に落ちる音に私は身動きが出来ず、泣きながら眺めていた。


そんな状況でおじさんは私を突き飛ばし「逃げろ」と何度も言ってくる。


おじさんの声に反応したのかお父さんはおじさんの喉に噛みつくと、血しぶきが私に降り注いだ。


おじさんのか細い声に無我夢中で家から飛び出す。


外に出ると周りはお化けばかり。

そんなお化けが私を追いかけてくる。


私は泣きながらも懸命に走る。

どこをどう走ったのか分からない位、息が続く限り、足が動く限り道なき道を走った。

壁を乗り越えて民家の庭から壁の上。


どれくらい逃げたのか記憶がない。

本当に無我夢中だったと思う。

目的も無くお化けが居ない壁を進んでいると目の前に人が現れた。


それが武志さんと呼ばれるおじさんだった。

生きている人に出会えたことに安堵もした。


でも最初の頃は武志さんが恐かった。

お父さんも武志さんに撃たれてしまうのではないか。

お化けになったお父さんを殺してしまうのではないかと考えると無性に恐かった。


でも、お父さんも怖かった。

優しい近所のおじさんを食べてしまうお父さんが…


おじさんも怖かった。

優しかったおじさんは人が変わったように私を怒鳴る。

そんなおじさんも私を逃がしてくれたおじさんもお父さんに食べられた。


気が付いたら泣く事さえ忘れていたことに気がついた。

でも怖い感情だけは思い出せる。

思い出すと泣くのではなく唯々震えるだけだった。


建物の中には女の人が2人居た。

まゆ姉さんとユウコ姉だった。


二人は私の姿を見ると優しく頭に手を乗せて撫でてくれ、優しく包み込むように抱きしめてくれた。

ユウコ姉が私をお風呂に入れてくれた。


お風呂なんて何日ぶりだろう。


学校にはお風呂も無く、でもそこもすぐに酷いことになってお父さんとお母さんと逃げ出して。

何日も何日もお化けから逃げる生活をしていたからお風呂なんて夢のよう。


そんな時だった、武志さんが危険な外に出て行った。


あんな怖いお化けが一杯居る外に出てったら…


お風呂で安心したのか…お風呂の中でお母さんとお父さんの事、お父さんが近所のおじさんを食べてしまったことを思い出す。

さっきまでは震えるだけだったのに、お風呂の温かさとユウコ姉に抱かれている暖かさと安心感で涙が止まらなくなった。


私が泣いてる間、ユウコ姉は何も言わず抱きしめてくれた。


でも少し落ち着いて考えると、怒鳴るおじさんみたいに怒られると思い、ユウコ姉に「ごめんなさい」と言った。

するとユウコ姉は眉間に皺を寄せて私の顔を真っ直ぐ見た。


「麻由ちゃん、何か悪い事をしたの?」


私は何も言えずユウコ姉の目から視線を外す。


「何も悪い事してないでしょ? だったら謝る必要なんか無いんだよ」


「でも…私が泣いて困らせた…」


ユウコ姉は俯く私の頭に手を乗せて撫でてくれる。


「それは麻由ちゃんが勝手に思ったことでしょ。私は逆に嬉しかったんだよ」


私はユウコ姉の顔を見た後、なぜか抱き付いてまた泣いていた。


「大丈夫、まゆお姉ちゃんも私も武志さんも居るんだから。だから大丈夫。」


「ホント?」


ママも、パパでさえお化けに襲われてお化けになった。

優しかったおじさんも私が泣くと怒鳴る。

それなのにお姉ちゃんは本当に平気なのだろうか。


泣いて怒鳴られる恐さとパパとママを想い出しまた涙が溢れそうになる。


「あまり長くお風呂に入ってるとのぼせちゃうからもうそろそろ出ようか?」


涙が溢れだす寸前にユウコ姉が私を湯船から出して最後にお湯をかけてくれる。

しかも頭から。


ユウコ姉はきっと分かってたんだろうな。

私が涙を流しそうだったのを。

それを誤魔化してくれるためにお湯をかけた事を。


誤魔化すように脱衣所に出ると新しいパジャマが畳まれて置かれていた。

もともとこの建物には無い洋服。


「本当に外に出て…大丈夫だったんだ?」


「ね? 言ったでしょ?」


私は安堵して笑顔をユウコ姉に返す。


「ちゃんと武志さんにありがとうって言うんだよ?」


「うん!」


お風呂から上がって色々ユウコ姉とお話して泣いて笑って綺麗なお洋服を着て。

本当に夢のようだった。


お風呂を出たら武志さんが疲れたように座りながらコーヒーを飲んでまゆ姉と笑顔で雑談している。


武志さんに向かってお礼を言おうとしたら


「薄汚れたガキだと思ったら…天使だったのか!?」


とマジマジと見られて動きが止まってしまい、お礼の言葉も出なくなってしまった。

でも、ユウコ姉とまゆ姉と武志さんの会話に私も笑顔が出てきた。

笑顔が出て、武志さんにお礼を言ったらなぜかとても眠くなって寝てしまった。


目が覚めたら自動車の中でユウコ姉が私を抱っこしながら周りの様子を伺っていた。

どうやら家に帰ってる最中らしい。


道中、ユウコ姉とまゆ姉が色々教えてくれた。

私は笑顔で返答していたのだけれど、武志さんは途中で車を停めると笑顔の私にピストルを渡してくる。


「我が家の家訓を教えてあげよう。"撃たれる前に撃て"だ、たとえ小さくても生きる為には"できる"ことは"しなくてはならない"。俺の目の前で小さいまゆゆが泣きそうだったら俺が守ってあげる。でも一人だったら自分で生き延びなければならない。あとは二人に聞いてね」


真剣な眼差しで少し怖かったが、最後は笑顔でユウコ姉とまゆ姉に聞けと言われた。


そして手にはズシリと重いピストル。

武志さんから渡されたピストルが近所の男の子が遊ぶような玩具じゃないことが分かる。


「いい? 打ち方教えてあげるね?」


「いきなり軍曹が教えるのか!?」


と武志さんは驚いていたけど、ユウコ姉とまゆ姉の教え方はとても覚えやすかった。

武志さんは何か不満顔だったけど…なぜだろう?


色々話していると家に着いたみたい。

これからは私もユウコ姉とまゆ姉と武志おじさんの仲間と一緒に暮らすらしい。


みんないい人だったらいいな。



みんなと生活するようになって数か月。

車の中で武志さんが言ってたこと、やっとわかったよ。


ある時悪い人が来たの。

でねのぞみ姉とアブナイ状況になったんだけど、武志さんの言った事を思い出したの。


「撃たれる前に撃て」


私ね、のぞみ姉を助けるために無我夢中でピストルを撃ったの。

胸がドキドキして涙が出そうになったけど、のぞみ姉が生きてるって思ったら、私でも誰かを守れるんだって思えて。


私が泣いてるだけだったからママもパパと近所のおじさんもみんな死んじゃったけど…

今なら、今の私ならパパとママも助けてあげられると思う。


ごめんねママパパ、私強くなる。

みんなを守れるよう強くなる。


泣いてるだけでは誰も助けられない。

だから私はもう泣かない。


泣く代わりにどうすればいいか、どうすればみんなを助けられるか考えるの。

そしてみんなが助かった時にいっぱい泣くの。


だから私は強くなるね。


ごめんねママ、パパ、おじさん、助けてあげられなくて………

連休だけど投稿してみた。

明日は………


誤字脱字や矛盾等がありましたらご報告お願いします。

あと、こう言う風にしたら良いとかこんな展開も希望等ご意見ご感想もお待ちしております。

評価など頂けたら嬉しい限りです。

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