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神様?いいえただの悪魔です。  作者: 次元
第3章:死者の星
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第77話:害意には悪意

ラブライブスーパースターが放送されたので

やっぱりμ'sの偉大さを改めて思い返す。

やっぱりライブは最高だぜ!


そんなわけで続きをどうぞ

俺とまゆゆは国道を直走っていた。

国道に出ればそれなりにトラックは散乱している。


そう、散乱しているのだ。


バイクでこの辺に来る時もそうだったが、道の端に止められているなら未だいい方。


ゾンビパニックで自衛隊や自治体、警察や消防の迅速な対応で人間は避難出来たと思う。

現に俺たちの住んでいる住宅地では自衛隊によるローラー作戦で1件1件虱潰しに住民の安否と移動を行っていたほどだ。

それが住民の自主性を優先したものでは無く、強制的な避難所移動だとしても。


まあ理由は分かる。

ゾンビが人間に噛みつけば噛付かれた人間もゾンビになる。

ゾンビを増やさなければ退治も簡単になると言う事なのだろうが…


しかし、こと車両に関しては住民の避難や自衛隊、その他の団体にとって邪魔者以外の何物でもない為、無理やり道路の端に追いやられている。

その行為に、損傷と言う概念は考えていないようで、端に追いやられている車両は軒並みボディが潰れ車軸が狂っている物が多かった。

中には転倒していたり車の上に車が乗っていたりと、本当に散乱していた。

酷いものでは、どう見ても重機、もしくは戦車で踏んだのかと思われるようなキャタピラーに踏みつぶされた車などもある。

わざわざ重機で踏む遊びが出来る程、パニックまで余裕があった訳でも、パニック中に遊びでやる様な酔狂者も居ないだろうに。

ましてや、この非常事態に自衛隊がおふざけで態々踏み潰していくと思えない。

国道に残る車はそんな状態だった訳だ。


と言う事で、仕方なくどこかの運送会社のトラックを拝借しようと走行していた。


幸いにもこの辺の高速道路と並行して走る国道には流通センターらしき建物が多く立ち並び、そこにはトラックなども搬入出のために並んでいた。

幸か不幸かゾンビもチラホラと散歩しており、長閑な風景が広がる。


バイクの音に惹かれてやってくるゾンビは集団になれば恐ろしいが、チラホラいるだけでは冷静に対処できれば脅威ではない。


しかし組み付かれれば、脳のリミッターが外れている状態な訳で、自身の筋肉で骨を折ろうが、無理な体勢で筋を痛めようがお構いなしな状態で噛付いてくる。

極端な話、噛みつければ奴らは良い訳で…。

満腹と言う概念も無いんだろう。

殆んど食欲を満たすような本能で行動しているのだろうが、こればっかりはゾンビに聞いても答えがある訳ではないので想像の域を出ない。


とりあえず、鍵の付いているトラックを物色する。

見れば全てのトラックにキーが挿入されており、選ぶとすれば燃料満タンに近い箱車だ。

箱者は雨に降られても中の荷物は濡れないで済む。

で、出来れば2t位がベスト。


搬入中なのか搬入終了なのか分からないが、燃料も満タンで比較的新車に近いと言う理由で一台のトラックを拝借する。


エンジンを掛けるとトラック特有の振動が頭を揺さぶる。

辺りを窺っていたまゆゆも助手席に乗り込むとこちらに笑顔を向けてくる。

俺はその笑顔に見惚れる蕩ける~!


なんて、そんなおっさんの心情はどうでも良いか。


早速トラックをユウコりんの待つ屋敷に向け出発させる。

残念ながらここでバイクとはおさらばだ。

今まで心地よい風をありがとう!

積載車が手に入ったら迎えに来るね!!


って心の中で思っていると、まゆゆも何かを察したのか。


「またバイクに乗りたいですね。でも、今度は裕子ちゃんが後ろの席なのかな? 余りべったりしてデレデレしてたら嫌ですからね? そんなん見たら…撃っちゃうかもしれませんよ?」


ベレッタを頭の横に立てて片目ウインクにテヘペロ頂きました!!

何ですか? 俺はもう死んだのですか?

これは現実ですか? あれはゾンビですか? はいゾンビです。


デレデレ顔でまゆゆの頭を撫でるとスルスルと運転席側に寄ってくるまゆゆ。

そのまま、艶々として光沢があり瑞々しくしっとりとした黒髪を撫でていると、不意にインカムから声が聞こえる。


「先輩! あまり武志さんとイチャイチャしないで下さいね!」


ビクンとした二人は思わず周りの景色を確認してしまう。


「何をキョロキョロしてるんですか?」


「ゆ、裕子ちゃん!? や、屋敷から出たの? 何処に居るの?」


「あ~やっぱりイチャイチャしてたんだ! ズルいですよ! 抜け駆けです! 独り占めです!」


「わ、わ、わ、ご、ごめんね裕子ちゃん!」


「後であたしもイチャイチャしてもいいですか?」


「う…うん」


「いえ~い! なんてね。私は武志さんも好きですが麻由先輩も好きですから、先輩が悲しむような事はしませんから安心して下さいね。ところで収穫はどうでした? いいトラック見つかりました? 音から察するに今こちらに向かってる最中ですよね。」


「おうユウコりん。この2tほぼ新車だよ! しかも箱で冷凍車!」


「おお! これからの季節重宝するかもしれませんね! もうすぐ到着しますか?」


「あと3分位だから、迫撃砲の準備お願いね!」


「りょ~かい! あと、私が居ない所であまりベタベタしない様に!」


「す、すいませんでした」


程なく、彼方の方で黒煙が立ち上る。

ユウコりんが迫撃砲を打ったのだろう。

道中ゾンビも疎らだったが、屋敷の門の前も静かになった事だろう。


ってか、ユウコりんはこちらの様子を見ていたのではなくただのカン?

って思ったがどうやらインカムで話を聞いてたらしい。


ユウコりんの砲撃のおかげで俺とまゆゆは何の苦も無く、大きな門をトラックで潜り抜けるとユウコりんが門を閉ざしてくれる。


意気揚々と荷台の扉を開き思わず嘔吐(えず)いてしまう。

ゾンビ騒動から早数ヶ月? こんな世界になって日数なんて頭から消えていた。

毎日が休日みたいなもんだし、毎日が仕事みたいなもんだしな。


ま、分かっているのは肉が腐るには十分だと言う日数が経過している事だ。

このトラックは冷凍車。

自ずと冷凍するべき物を運ぶトラックな訳で、あそこが何の工場なのか物流ターミナルなのか知らないが、今、このトラックで異臭騒ぎを起こしているのは吊り下げられた牛数頭分にも及ぶ超熟成されすぎた生肉だった。

お前とはもっと早くに出会いたかったぜ。と心の中で思ったが、今ではゾンビと同様にただ臭いだけの邪魔者だ。


早く宏樹(祭り)の所に帰らなきゃいけないのに、また一仕事増えた。


「私は武器を運んでくるから、これ(腐り肉)の始末、お願いね。あ~あ、か弱い中学生が重い武器を運ばなきゃいけないなんて災難ね」


鼻をつまみながらユウコりんが屋敷の中へ入って行く。


「ほ、本当は手伝いたいのですけど…裕子ちゃん一人に重労働させるのは可哀そうだから裕子ちゃんを助けてきますね」


と、鼻をつまみながらユウコりんの後を追うまゆゆ。

さっきまでの蕩状態はどこへ行った!


運び出すにしても解体されたとしても牛って重いんだぞ?

鼻をつまみながら途方に暮れていると、弾薬を肩に担いだユウコりんが玄関から出てきた。


「あれ、まだ何もしてないんですか? 早く処分して下さいよ」


何とも天使とは思えない言葉に泣きそうになる。

あ、そうだ! 良い事考えた!


「これ処分して来るから門開けて」


とユウコりんに催促する。

俺は泣きそうになる匂いを我慢してトラックの天井からぶら下がっているビニールに包まった牛を降ろし、そのままトラックに乗り込む。

何となく何をするか察したユウコりんはインカムで


「いいですか? 開けますよ? 帰って来たらまた連絡して下さいね」


と言ってくる。

俺はその言葉にサムズアップし門をくぐると、さっき通って来た大通りまで車を進める。


静かにトラックを停止させると、0-400(ゼロヨン)を競うように急発進する。

すると、後ろの方から肉が荷台から落ちる様な感覚と音がした。


俺はもう一度アクセルを吹かし左足を瞬時に上げ、クラッチを繋ぐとトラックとは思えないような加速が俺の背をシートにめり込ませる。

と、再び荷台からいくつか落ちてゆく。


確認する為にトラックを降り荷台の中を確認すると中身が空となっている。

代わりに道路に腐り牛が散乱して道路を塞いでいるが、生憎と戻る道は逆方向なので気にしないで運転席の方へ歩こうとすると、脇道から声を掛けられた。


「ダメだよおっちゃん! 道路にゴミなんて捨てちゃ。」

「うわ! くっせー! これ腐ってんじゃん? 不法投棄ってヤツだべ?」

「新鮮な肉はねーの?」


「おっちゃん、さっきもここ通ったべ? そんとき可愛い娘乗せてたよな?」

「おっちゃん独り占めはねーべ? 俺らにもお裾分けくれなきゃな!」

「異論は認めねー!!」


そう言ってナイフを手に近づいてくる。

距離にして10m程か。


相手は3人。

手にナイフを持っていると言う事は、銃は持っていないのだろう。


俺は棒読みで


「うわ~助けてください! 殺さないで下さい!!」


と周りに染み渡る様に大声を上げる。

その声は生者よりも死者の方が過剰に反応する事だろう。


そんなふざけた芝居をした後、腰に差したベレッタのセーフティーを解除させ先頭を歩く男に照準を合わせ、有無を言わさず親指で撃鉄を倒すとその流れで引き金を引く。

頭蓋に穴をあけ、後頭部から脳漿と鮮血を吹き出しイヤラシイ笑みを浮かべたまま倒れる。


左右の男は何が起きたのか分からないのか倒れた男と俺を交互に見た後、俺の構えている銃にようやく意識が覚醒したのか叫びながら逃げる。

しかし、相手が逃げるのを待つほど悠長な俺ではない。


至近距離でも動く対象を狙うのは中々に困難を極めるので、その時はユウコりん直伝の『顔はヤバいよ。ボディにしなボディに(自己解釈)』が頭の中でリフレインされている。

その教えに忠実に体を狙い2発づつ打つと喚き散らしていた対象が声も無く倒れる。


それでも両者共に即死は免れているようで、短く荒い息をしている。

俺が倒れた二人に歩み寄っている最中に一人は呼吸を止めていたので、もう一人の方へ足を進める。


男は俺の歩いてくる気配を感じたのか、「はっはっはっ、うっくっ…くぅ…」と不規則な息を吐き出しながら俺から遠ざかろうとする。

本人は俺より遠ざかっている気分なのだが、現実はその場でただ悶えているだけだった。


俺はそのまま男の目線に腰を屈めると質問をする。


「お前らの仲間は他に何人いる?」


狙い通りわき腹に2発着弾しているようで腹を押えているが、弾はそのまま腹を貫通しているようだった。

臓器に致命的な損傷がないため、生きながらえているようだが、このまま放置すれば間違いなく待っているのは死だろう。

それを分かってか知らずか、男は俺に対してあからさまに反抗的な目を向けてくる。


「ん? お前今の世の中になっても甘い考えなの?」


俺は無慈悲に男の掌に銃口を向け打ち抜く。

掌を打ったはずなのだが、男が咄嗟に腕を動かしたため、掌への直撃は免れる。

しかし、弾丸は男の人差し指に命中したようで皮一枚で垂れ下がっていた。


腹の痛みより新しい指の痛みに悲鳴を上げるが、お構いなく俺は同じ言葉を口にする。


「で、お前らの仲間は他に何人いる?」


男は口角に泡を溜め、目には涙を浮かべ、先程の反抗的な眼差しは影を潜めていた。


「た、助けて。助けてください。すいませんでした。助けてください」


男はぶら下がる人差し指を大事に片方の手で覆うと横になりながら懇願してくる。


「助けるにしても仲間を呼ばなきゃダメだろ? 他に仲間は居るのか?」


男は懸命に首を左右に振る。


「お、俺達、今まで3人で…」


その言葉を聞き、俺は立ち上がるとトラックの方へ体を向ける。


「ちょ、た、助けてくれるんじゃ?」


「ああ、もう少ししたら助けてやるから車をUターンさせるまでちょっと待ってろ。」


俺はそのままトラックに乗り込みゆっくりと発進させる。

500m程進み、交差点でUターンさせ元の場所に戻ると、銃声に惹かれた野良ゾンビがお食事を開始していた。

反対車線でトラックを止め、中央分離帯を跨ぎ男の所まで戻ると顔を鮮血に染め上げウマウマと豪快にむしゃぶりつくゾンビの脳天を打ち抜く。


そして、腸を引き摺り出され痙攣している男の脳天も打ち抜く。

他に倒れている男の脳天も打ち抜く。

死んで蘇って来たら野良ゾンビが増えちゃうからね。


噛まれてもゾンビになるし、死んでもゾンビになるかもしれない(某アメリカドラマの影響)。

生憎と噛まれた人間がゾンビになるのは動画で見ていたが、噛まれていないのに死んだ人間がゾンビになる場面に遭遇した事はないから確証はないが、死人が歩くと言う非常識に常識で立ち向かっても意味はない。

出る杭は打つが、出そうな杭も撃つ。

これが非常識な現実の俺の中の常識。


俺は辺りを見回し、他に人間が居るか、ゾンビが居るか確認した後、振り返り


「約束通りゾンビになるのを助けてやっただろ? ああ、礼は要らないからね。バイバイ」


と言いながらヒラヒラと手を振る。

トラックを運転しながら、しみじみと思った。


「俺って相変わらず正義の味方でも無ければ、良い人でもないよな~。いや、あいつらが悪い奴だから仕方ないよね? うん、仕方がない!」


自身を擁護するその言葉は天使が待つ屋敷へと爆走するトラックのエンジン音と振動で霧散するのであった。


誤字脱字や矛盾等がありましたらご報告お願いします。

あと、こう言う風にしたら良いとかこんな展開も希望等ご意見ご感想もお待ちしております。

評価など頂けたら嬉しい限りです。

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