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神様?いいえただの悪魔です。  作者: 次元
第3章:死者の星
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第76話:逸る想いと後ろ髪

今回は少し長めに。

1本だと長いが2本に切ると少ないし、話が繋がらないって事で1本にしました。


それでは続きをどうぞ

「わお!」


俺は宏樹からのメールを読んで思わず心の籠っていないセリフを吐く。

俺の両隣りにまゆゆとユウコりん。

こう言っては何だが俺の天使だ。(場合により鬼にも夜叉にも阿修羅にもなるが)

見た目は正に可憐な雅少女と活発明朗な飛少女。


こんなご時世だからってのもあるが俺を慕ってくれる愛すべき存在。


そうそう、宏樹からのメールを確認。


===============


拝啓

武志様には、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。

平素は、格別のお引き立てにあずかり厚くお礼申し上げます。

日頃一方ならぬご厚情を賜り誠にありがとうございます。


つきましては、縦田の方が俄に騒がしくなり謝肉祭、もとい収穫祭と相成りました。

混迷を迎えるご時世では御座いますが『チチキトクスグカエレ』とでも申すのでしょうか。

皆様の更なるご支援を賜れますよう、衷心よりお願い申し上げます。


親愛なる武志様へ宏樹より愛をこめて。


草々


===============



「ね? ビックリと言うか予想通りと言うか」


「そ、そうね…裕子ちゃん意味わかる?」


「多分、縦田基地にゾンビが侵入して基地が放棄されたと思うから早く帰ってこいって意味じゃない?」


「さすがユウコりん! たぶんそう言う事だね」


「何で縦田基地がゾンビに襲われたから早く帰らなければいけないのでしょう? まさか基地の人たちを救出するなんて…考えてますか?」


まゆゆの言い分もとってもよく分かる。

俺もゆっくり気楽に過ごせて漫画があってアニメDVDが大量にあるここから出立するのは非常に忍びない。

序で(ついで)に言うと、ここだったら二人とイチャイチャしても他人(宏樹達)の目も気にならないし。


「ま、人間の救出はしないかな」


「え?」


まゆゆは理解が追い付きません。って顔をして首を傾げながら俺を見る。

その顔でその角度、はっきり言って反則です。

ん~も~まゆゆは可愛いな~!

俺のドストライクの表情をナチュラルに向けてくるなんて。

…ナチュラルだよね?


「多分、宏樹さんも武志さんも武器を手に入れる事しか考えてないんじゃないですか?」


ユウコりん正解。

その言葉にまゆゆも納得してる様子だ。

ってか、最も望んでいるのはユウコりんでしょ?

って俺の顔に出たのかな?

ちょっと怖い気配がユウコりんから発せられた。


「何ですか?」


言葉と同時にほっぺたを抓られる。

引っ張られて抓られた頬っぺたそのままで説明する。


「うん。ユウコりんの言う通り。もし銃器が放置されて生存者がそれを奪ったら俺たちにも危害が及ぶかもしれないからね」


まゆゆも「なるほど」と納得する。

で、ユウコりんに抓られたほっぺを軽くスリスリしてくれる。

まゆゆマジ天使(エンジェー)

と思っていると俺の頬っぺたスリスリ争奪戦から気を抜くと貞操争奪戦に切り替わるので言葉と裏腹のやり取りは早めに終わらせる。


うん、俺的にはイチャイチャも捨てがたいんだけどね。

って事で急を要するようなのでいつもの言葉をかける。


「では作戦会議を始めます」


議題に上がるのは以下の通り。

①帰宅方法。

②物資の輸送


まず①は置いておく。

それは何故かと言うと②によって大きく岐路が変るからだ。


議題の②について、ここに置いてある物資の搬送が議題だ。


まず、ここにある武器弾薬を放置して一目散に帰ると言う意見は話している最中、やや被せ気味にユウコりんにより即却下となる。


俺もその却下に即納得し、ユウコりんの熱い要望でこの屋敷に囚われている武器についてどうやって運搬するかと言う事だ。

居心地と言い、広さと言い、エンジェルハウスより数段上なので、こっちに戻ってくるかもしれないと言う事を念頭に愛しきDVDたちは暫しお留守番。


さて、銃器の問題に戻すと結構な数の武器弾薬がありユウコりんには涎垂モノだっただろう。

実際、裏世界の人たちはこんな武器を何に使うのかと思ったりもする。

ま、本来は主に対立組織との戦争なんだろうけどね。

何でゾンビに使わなかったのか些か腑に落ちない。

でも忘れてはいけない。

ここは日本だと言う事を。


拳銃(SIG228P・92F・M1911・M28・M10)なんていっぱいあるし弾薬もアホみたいにある。

サブマシンガン(MP5)もそれなりにいっぱいあるし

ショットガン(M500・M870)もそれなりにあるし弾薬も百数十ケースはある。

アサルトライフル(AK-47)もいくつかあり、弾薬も数百はありそう。

重機関銃(ブローニングM2)が2挺と帯弾状になってる12.7mm弾が10ケース(1100発)

ロケットランチャー(RPG-7)もいくつかあるし

対人地雷クレイモアもそれなりにあるし

手榴弾もあれば何に使うのか分からないが迫撃砲も3つほどあり砲弾も1ダースある。

ベルトリンクを接続する器機まで揃ってる。

もう少し探せばガンパウダーとかあるんじゃないか?

ここ、軍事施設じゃないよね?


と言う事で、これらを輸送するのにトラックは必須なのだがそこで問題になるのが①である。


河川にかかる比較的大きな橋は悉く壊されている。


俺は荷物も無く軽量だったのでバイク(モトクロス)で川も走破してたのであまり深くは考えて無かった。

と言うか帰る気もサラサラ考えて無かったのは内緒だ。


橋まで行って、向こう岸に渡って向こう岸からまたトラックを調達して荷物を持って川を渡って…って中々に無理ゲーじゃね?

まるで戦争時代の輸送部隊並みに武器があると、それなりに大きなトラックが必須となるし重量だって半端ない。


さてシンキングタイム!!


橋に到着して対岸でトラックを確保し積み替える。

これが最も確実かつ堅実。

しかし、動かせる状態のトラックを見つけ、積み替えるにしても重量の問題もあり作業に相当の時間を取られる。

それを地図を見る限り少なくとも大きい河川で3箇所、小規模の河川で6箇所、計9箇所の橋を渡らなくてはいけない。


小規模の河川だったら渡れる場所を見つけ出せばトラックのまま渡れるかもしれないが、大きい河川はとても無理。

そうなるとここまでたどり着いた方法として遠回りだが山間部(上流)へ向かい、無理やり渡る方法だろう。


しかし、山間部の橋は渓谷が基本。

水深は浅くてもそこまでたどり着くためには草をかき分け木を伐採し…なんて現実的ではない。


バイクだったら渓谷もなんのその。

難無く渡れる川でもトラックだと厳しいんじゃ?


そう思っているとユウコりんが俺の肩を叩きながら「平気平気」と軽く言ってくる。

確かに、考えたって仕方がないよな。

成る様になるさ! って思っていると、ユウコりんは「いや、本当に平気だから」と再び軽く言ってくる。

俺はそのまま、まゆゆの顔を見ると小さく頷く。


はて、どういう事だろう。


「私達、一度も車を乗り換える事なくここに来たんだよ」


え?


「ああ、バイクは…いや先輩あれはノーカンですよ」


え?


「だから、トラックでも大丈夫よ」


何と言うか、良く分からないがユウコりんが大丈夫って言うのだから大丈夫なんだろう。



議題に上がった問題点①はユウコりんに丸投げだ。



早速帰る旨をメールで返信する。


ユウコりん曰く5日もあれば余裕との事。

道順は普通であれば日帰りドライブ程度の工程なんだけど、予想外の困難に遭遇して5日って事だ。

基本的にスピードを出す事はしない。

スピードが上がれば危険も比例して上がって行くし、単独事故なんて罰せられないが怪我が怖い。

しかも気絶しようものならゾンビがすぐに迎えに来るし。


さて、やる事が決まれば行動あるのみ。

まずはトラックの手配。


その辺の国道に乗り捨てられたトラックがあればベストなんだけどね。


俺は左右に仁王像でも鎮座していてもおかしくないような巨大な門ののぞき穴から辺りを窺う。

もちろん外に出る為だが。


あ、あれ?

俺は目をゴシゴシと擦って再び覗き穴から外を見る。


俺の勘違いか?

今日は何の日だ? どういう事なんだ?


俺は覗き穴を狭い範囲で見回すと、そこにはゾンビ、ゾンビ、ゾンビ…恐ろしい程のゾンビ達がユラユラとしている。

何だ、ゾンビの大移動か?


ユウコりんとまゆゆも覗き穴を除くとウワ~…って目をこちらに向けてくる。


俺は音を発しない様に二人に手招きすると家の中へと入る。


「あれ、どういう事?」

「あんなんじゃ出られないじゃん!」


まゆゆとユウコりんが頬を膨らませて文句を言ってる。

美少女中学生が頬を膨らませている。ああ、何てご褒美なんでしょう!


と、冗談はさておき、とりあえず外へ出てトラックを調達する為の作戦を練る。


「私が全部狙撃しようか?」


と、意気揚々とSR-25を抱えるユウコりん。

確かにユウコりんの狙撃に関しては圧倒的な信頼感はあるし、不可能ではないだろう。

しかし、門の前や壁の前に大量に蠢くゾンビの後片付けを考えると現実的ではない。


だって、狙撃したらその場で倒れる訳だよ?

しかも大量のゾンビーノ達が。

そんな状況でトラックなんて乗り入れられるわけもなく、片付けなきゃいけない訳よ。

あの腐った死体たちを。

実際は腐ってないんだけどね。

腐って崩れ落ちて機能停止してくれたらどんだけ楽な事か。


倒したらゴールドが貰える世界じゃないし、気が付いたら消えてる世界でも無く、土に還るまでそこに居る訳で。

俺達にそんな時間的余裕はないのだよ。


その事をユウコりんに説明すると「確かに! さすが武志さんですね」と褒められた。

うん、もっと褒めて!

と言ったら、ユウコりんの目が若干細く変化したので慌てて話を戻す。


で、本格的な対策として、まずは迫撃砲による轟音でゾンビを散らす作戦。

これは外に出るのに有効だが、何か目当てがあってゾンビがここに集結したとしたら、バラケてもすぐに戻ってくる可能性も有る。

で、何で戻って来るのかと考えると他の生存者が居たんじゃないのかと言う事。


この屋敷周りは念のためにブービートラップを仕掛けている。

しかもクレイモアでの大歓迎会仕様。

簡単に言えば侵入者を知らせる糸を張り巡らせている訳でそれに引っかからないと言う事はこの敷地内には侵入者は居ない。

居るとすれば、近くの民家かビルなのだろうが、ここの家主はヒットマン対策なのか、ビルや建物から狙撃できない様にしている。

自ずと、屋敷から外の様子を窺い知る事も出来ない訳だ。


とりあえず高い塀の向こう側を窺い知る為に、長い棒に鏡をくっ付けた即席潜望鏡を作る。


ぐるりと壁の向こう側を調べた所、正面玄関以外にもゾンビは蠢いており。

どうにかできるレベルじゃなかった。


再び作戦会議で、迫撃砲で比較的遠距離に砲弾を打ってゾンビを散らす方法を採用する。

で、ただ闇雲に砲撃するのではなく目標を決める為、ググってみた。


出来れば火災が発生してくれれば可。

爆発してくれれば尚可。


そう言う事もあり、長時間ゾンビを足止めしてくれるようなイベントが発生してくれる建物を探す。


しかし流石は新興住宅地。

最近、高速道路が開通するかしないかの場所だけに、特にこれと言った建物も無い。

しかも地図を見ても古いようで、航空写真に至っては更地か緑が広がっているだけだった。

俺がここに来るまでにそれなりのビルやショッピングセンターがあったのだが、地図には反映されていないようだ。

こうなるとググっても意味はない。


出来ればこの集団を呼び込んだ生存者がどこかに逃げてくれれば、そいつを追いかけて再び民族大移動が始まるのだろうけど。

大移動が起きる気配も無く、生きていればそこに一斉に群がっているのだろうし、最悪、既に腐った腹の中に納まっている可能性を拭えない。


その前に、俺達は生者を助けるって考え自体、皆無だしな。


「そう言えばユウコりん。これの射程ってどれくらいなの?」


俺は迫撃砲の先端をポンポンと叩きながらユウコりんに尋ねる。


「私は普通の中学生ですよ? M224の射程なんて分かると思ってるんですか?」


「あ、これ、M224って言うんだ。で、どれくらい飛ぶの?」


ユウコりんは頬を膨らませながら胸の前で腕を組む。

本来の持ち主が腕を組んで睨んで来たらさぞかし怖いのだろうが、目の前にいるのは天使だ。


「大体…3キロほどですかね」


「あ、そんなに飛ぶんだ? だったら…俺とまゆゆがトラックを調達するから、ユウコりんが()()発射してもらえる?」


ユウコりんは砲手を務めると聞いて目をキラキラさせると、首をブンブンと縦に数回振る。

チョロい。


「頼むから俺達に当てないでね」


「当てる訳ないじゃない。反対の方角へ撃つんだし」


「よし、ユウコりん砲撃準備開始!」


「オッケー♪」


ユウコりんは手際よく迫撃砲の斜角を調整する。

普通の中学生が迫撃砲の斜角なんて合せられるわけないだろうに。

そのへんは流石のユウコりん。

鬼軍曹はいつでもブレません。


「とりあえず2~3発発射してみよ~!」

「お~!」


ニコニコ笑顔で砲弾を迫撃砲の発射口から投入すると『ヒュポン』と間抜けな音と共に砲弾が山並に飛んでゆく。

少しすると『ドン!』と腹の底に響くような炸裂音が響く。

無音に近い今の状況での大音響。


「とりあえず1km位で設定したから結構響くね♪」


その顔は早く次弾を打たせろと言わんばかりのとびっきりの笑顔だった。


着弾した方角を見ると黒い煙が立ち上っているのが確認できた。


俺とまゆゆは門周辺に居たゾンビ達を確認する。

案の定、音の方向にぞろぞろと移動を開始したようだ。


俺はユウコりんへ顔を向けると次弾発射の合図を送ると、再び間抜けな音と共に砲弾が発射される。

今度のは先程と比べると着弾に時間が掛かった。


「今度の射程は2km位」


最大射程を打たなくても良さ気なのでその事をユウコりんに伝えるとユウコりんも頷く。


ゾンビの大移動が粗方終わったので、俺とまゆゆはインカムをセットし、俺が乗ってきたバイクを門の前にセットする。

俺がバイクに跨りエンジンを始動させるとまゆゆがタンデムシートに乗り俺の腰に手を回す。

その光景を見たユウコりんは「いいな~」と呟いた後、「今度私も後ろに乗せてね」と言いながら閂を外し門を開ける。


門を出て辺りを見回し、俺はゾンビが居なくなっている事を確認すると、大通りまで静かに、それでいて素早く移動する。

その間にも反対側の方角で炸裂音がする。

ユウコりんが3発目の迫撃砲を発射したのだった。


待ってろよ宏樹!

抜け駆けはさせんぞ!!



誤字脱字や矛盾等がありましたらご報告お願いします。

あと、こう言う風にしたら良いとかこんな展開も希望等ご意見ご感想もお待ちしております。

評価など頂けたら嬉しい限りです。

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