第75話:好きライブ
今回の話題も専ら石鹸じゃないスクールアイドルです。
そう言えば9周年なんだよな~と考え深くなりました。
それでは続きをどうぞ
俺は今、気怠い達成感と、悲しみを纏っている。
横を見ると、まゆゆとユウコりんも俺の渡したタオルで堪えられず溢れ出る涙を拭く。
「うう…あたしもライブ行きたかった~(涙)」
「私も10番目のメンバーになる~(涙)」
最初の蔑んだ目はすっかり無くなり、俺と同じ気持ちを味わっているようだ。
俺はその光景に非常に満足する。
この部屋の光景を見た人はお忘れではないだろうか?
いま、こう見えて世界は破滅に向かっていると言う事に。
現在進行形で死者が闊歩するファンタジーな世界を。
人間の命の軽さを。
今のこの3人は完全に忘れている。
「もしかしたら、数年後設定で再び登場したり?」
「いや、それは無いでしょ。」
「でもでも、解散したバンドが再結成する事だってあるし」
「それは生活や過去の栄光が…」
「いや、そんな大人の事情出されても」
所謂、ライバーとなった二人だが残念ながら今後、コンテンツとして展開されない事に非常に残念がっている。
それはラストライブと言う事とゾンビ発生と言う二重苦からの結論だった。
3人は世界終末を完全に忘れている…訳でもなかった。
「ふぅ…さて、次は―――」
「え!? まだ観るんですか?」
「あたし、もう飽きた~!」
再び蔑む眼差しを復活させる二人だった。
何だ、女と言うのはこうも現金なモノなのか!
せっかく感動して涙まで流したと言うのに数時間前と同じ目を向けてくる。
この後、見終わったら最初の文句が嘘のようになるのに、同じアニメなのだぞ? なぜ分かろうとせん!
武志に乙女心、いや女性の考えなんて理解できるわけもなく民主主義に則った多数決と言う弱いものいじめを提案し即採決を取ってきた。
結果"今日は寝る"と2対1で押し切られた。
くっそ…まぁいい。
時間は腐るほどあるんだ!
明日は物語シリーズ全制覇だ!
武志の意気込みとは裏腹に、物語シリーズを観る機会は訪れなかった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
―――何と言うか…まるで暴発するロケット花火?
それは俺とハルちゃん、美智子さんとキヨシで縦田基地偵察を敢行しようとした矢先の出来事。
キヨシがドローンを操作し、上空から進路上の安全確認をしながら縦田基地まで残り数百メートルと言う所に立地するマンションの屋上に辿り着いた時だった。
約百メートル先では死者が縦田基地と言う屋台のオープンを今か今かと騒いでいる光景だった。
え? 分かり辛い?
基地のフェンスにゾンビが押し掛けてるんだよ!
その光景を望遠鏡で観察している時だった。
銃声に混じり、辺りに鳴り響くような爆音とジェット機特有の甲高い轟音と、プロペラが高速で回転する風切音が聞こえた。
数分後にはけたたましい爆発音と黒い煙が小さいキノコ雲のように立ち上ると、再び爆音が轟き再び小さな黒いきのこ雲がのろしを上げる。
「HolyShit! OH!! NO! GOD!!」
思わず欧米風にショックの声を上げてしまう。
ゾンビの群れは爆発音の方角へ我先にと移動する。
基地に隣接する国号はゾンビの大群で埋め尽くされ押し潰されるゾンビ。
倒れ踏みつぶされるゾンビ。
色々と凄惨な光景なのだが、爆音が聞こえる方角は更に地獄絵図だと言うのは想像に容易い。
そんな状況でも「早く助けなくては」と一言も誰も発しないのは、この世の常識。
常識…なのか?
まぁ、元が良い人じゃない俺と武志。
それに賛同する奇特な、いや、希少な人材が揃ってるからね。
余程の事が無い限り、簡単にボランティアなんてしませんよ。
ええ、しませんよ?
俺たちが救出するのは、使用者をただひたすらに待ち焦がれている銃器の皆さん。
もし凄い銃が手に入ったら武志に自慢してやろう!
と、変な妄想に憑りつかれ、脳内お花畑の宏樹が驚愕の光景を目の当たりにする。
それが、先に比喩した暴発するロケット花火だった。
いやリアルロケット。
射出されているのは正にロケット。
正しくはロケット砲やロケットランチャー、はたまたミサイルと呼ばれる部類なのだろうが…
数が尋常じゃない。
縦田基地の司令官は狂ったのか? と言わんばかりに上空へミサイルが飛翔する。
飛翔するのだが、本来長距離戦闘を想定した武器なのに、殲滅対象は当然の如くゾンビなのだろう。
襲撃者が居たとしたら、このゾンビ祭りを切り開くほどの猛者なのだから関わらないのが無難なのだが、そんな無双武将は現実には居ないだろう。
上から見ていると水平発射もしているようだ。
基地内の建物が爆破されゾンビも一緒に爆散している。
ミサイルの爆発音と混じって銃声が"タタタタタタッ"と繰り返し聞こえる
でも、この行為って完全に基地を放棄してないか?
ん~良く分からん。
武志じゃないんだから頭を使う事は苦手なんだよ。
でも分かる事もある。
ミサイルやロケットは確実に周囲にまき散らされている。
爆発音が轟きまくって銃声も聞こえる事から、確実に基地は緊迫して終了直前なのかもしれない。
もう少し落ち着けば武器収穫祭か? でも『今はただ単に危険なだけ』だ。
みんなの方に顔を向けると、一様に爆炎に目を向けたり、飛翔するミサイルを眺めたりとキョロキョロしている。
俺は皆に「撤退!」と声をかけると、反論なく撤収準備を整える。
帰りも同じように、轟音漂う基地に向かうゾンビを回避する為、上空からのドローン偵察を怠らない。
団体ゾンビには遭遇しないが、それでも少数のゾンビは徘徊しているのでこれを打倒し家路に急ぐ。
一目散に家に到着し、屋上で監視を行うが数キロ離れているとはいえ、静寂が支配する終末世界。
基地からの轟音は相変わらず花火の様に鳴り響いている。
ここから姿は確認できないが飛行機の音も聞こえるから本当に基地を放棄した可能性も有る。
とりあえず武志に今日起こった現状の報告をする。
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拝啓
武志様には、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
平素は、格別のお引き立てにあずかり厚くお礼申し上げます。
日頃一方ならぬご厚情を賜り誠にありがとうございます。
つきましては、縦田の方が俄に騒がしくなり謝肉祭、もとい収穫祭と相成りました。
混迷を迎えるご時世では御座いますが『チチキトクスグカエレ』とでも申すのでしょうか。
皆様の更なるご支援を賜れますよう、衷心よりお願い申し上げます。
親愛なる武志様へ宏樹より愛をこめて。
草々
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うん。
「完了、送信と」
横で見ている美智子さんがオデコに手を当てて盛大な溜息を吐いている。
その横に居るキヨシにも
「すごい文面っスね」と皮肉を言われた。
なんだ。何がいけなかったんだ?
「よくもまあ、こんな文面をスラスラと書けるわね」
大きく吐いた溜息の後、美智子さんもキヨシに賛同する。
「ホントっスね。でも、これを見たら武志さんもすっ飛んで帰って来るんじゃないっすか?」
「フフフ、そうね」
相変わらず美智子さんとキヨシは仲がいいな。
仲がいいと言うかラブラブ、いやラヴラヴなんだけどね。
美智子さんからしたらキヨシは二回り以上離れた子供だし、キヨシからしたら完全にお母さんの域なんだけどね。
唯一の救いが美智子さんが20代にしか見えないって所か。
下手したら姉弟でも普通に通じそうで怖い。
美魔女って実在知るのね。
まぁ、人の恋愛に口出しするつもりも無いけどさ。
とりあえず武志君お土産宜しくね。
誤字脱字や矛盾等がありましたらご報告お願いします。
あと、こう言う風にしたら良いとかこんな展開も希望等ご意見ご感想もお待ちしております。
評価など頂けたら嬉しい限りです。