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神様?いいえただの悪魔です。  作者: 次元
第3章:死者の星
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第71話:不自由の中の自由4

壁にも苔が生えてジメジメと嫌な季節です。

暑くなったら高圧洗浄機で一気に綺麗にしよう。

と毎年思って早数年。


そんな訳で続きをどうぞ


―――あれ?


―――――あれれ?


ここ、さっきも通ったよね?


そんな想いの中、私は景色を眺める。


少し疑問に思った。


裕子ちゃんが運転する自動車が、低速運転で同じ場所をグルグル周っているように思う。

まさか、裕子ちゃんがが道に迷うとか?

そんな訳ないかとキョロキョロとしながら運転する裕子ちゃんを観察する。



「―――もしかして……ここに?」



裕子ちゃんがが何度か同じ道を辿った時、ぼそりと小さく口にする。

その声は私にも聞こえるか聞こえないかと言う程に小さい一言。


私も裕子ちゃんが眺めている回りとは一線を画す作りの高く、そして長い壁を見る。


壁の至る所に防犯カメラが設置されている事からもどこかの金持ちの家なんだろうな。とは容易く想像がつく。


こんな背の高い壁なのだから中の様子を窺い知る事も出来ない。

でも大きな家だという事は容易に想像できる。

でもその家を確認しようにも周りに大きな建物自体が無い。


まるで狙撃から逃れるように…

そう思ったところで、私はハッと思いつき『総理大臣の家?!』と見当違いな事を口にすると裕子ちゃんがハンドルから手がズルッとズッコケる。


「麻由先輩、何気に天然なんですね」


と裕子ちゃんに突っ込まれてしまった。

自分では自覚してないけど…天然なのかな?

天然って自分では分からないと言うし…


と、少し悩んでいると裕子ちゃんがヒントをくれる。


「1.人に狙われる程の人が住んでいたかもしれません」


それはこの壁の作りを見ればわかるわ。

普通にはあり得ない位の長い壁だし、仰々しいし…


「2.ここだったら武器が在るかもしれません」


え? それは重要人物を守るSPと呼ばれる人が居るからそうなんじゃないの?

そう言ったら再び裕子ちゃんがズッコケる。


「3.地域住民にはあまり歓迎されていませんでした。寧ろ、普通の人は関わりたくないと言うのが本音でしょうか」


むぅ…確かに『先生』とか呼ばれてる人に普通の人は関わらないと言うか…

あ、でも、それだったら歓迎されていないには当てはまらないか。


…この地域の大地主の人だろうか?

ほら、大地主の人って普通の人には高圧的な態度って言うか、そう言うイメージあるじゃない?


あ、裕子ちゃんが顔を赤くしてる。

…笑いを耐えているような…


「4.この家の持ち主はある組織の一員で、その組織内では『先生』と呼ばれている人です」


―――――どうしよう。


全然分からない。

全く思いつかないわ…


家を見れば、家主が普通の人でないとは分かるのだけれども。

頭を抱えて考え込んでいたら、不意に車が停止する。


顔を上げると、目の前に大きくて立派な門が佇んでいる。


裕子ちゃんは銃を構えながら車を降りると、何やら地面を確認している。

私も車を降りると、裕子ちゃんの様子を見ながら辺りを確認する。


私は小声で


「どうしたの?」


と、裕子ちゃんに問いかけると、裕子ちゃんは左手を顎に当てて考え込んでいる。

少し考えた所で辺りを見渡すと、裕子ちゃんは自動車に乗り込む。


私も自動車に乗ろうと思ったところで制止させられる。


裕子ちゃんはそのまま自動車を壁ギリギリまで寄せると降車する。

私はただ眺めているだけだったが何となく予想はできる。

自動車を足掛かりにして壁を越えようと言うのだ。


でもでも、ちょっと待って!

この壁、普通に2m以上はあるのよ?!


裕子ちゃんは出来ても、私では無理じゃない?


仮に屋根みたいな壁の天辺に昇れてもそこから飛ぶって、ちょっと難易度高いわよ!?


この家の壁はまるで日本家屋のように瓦が乗せてある。

それだけでも、壁は丈夫で分厚いと想像できる。


しかも一般家屋の2階に相当する高さなのよ。

2階の部屋から地面に飛べと言われても戸惑ってしまう。


こんなやり取りをしていても誰も門から姿を現さない。

現に目と鼻の先には防犯カメラがこちらに向いているのだから。

赤いランプも付いてるから壊れてるわけでは無いと思う。

と言う事は、本当にこの屋敷に人がいない事を示している。

いや、人は居るかもしれないが『先生』と言われる人はいらっしゃらない様だ。

だって、誰も出てこないって事は監視カメラを見てないって事でしょ?

いや、もしかしてゾンビがウヨウヨしてるから出てこないだけなのかも。


そんな事を考えていると裕子ちゃんが壁を登り始める。


「ちょ、ちょっと待って。その前に、ここに何の用事があるの?」


さっきはここに武器が在るかもしれないって言っていたから、それが目当てなのかしら?

すると、裕子ちゃんは私の顔を真剣に見た後に、驚きの言葉を発した。


「ここに、武志さんが居るかもしれません」


その言葉を聞いて私は目を見開く。

その言葉を聞いた後では躊躇していた壁の高さなど気にもしていなかった。


逆に私は壁を見上げて裕子ちゃんに『早く』とジェスチャーを送っていた。


  ◆◇◆◇◆



「―――!! ………??」



俺は読んでいた漫画から視線を外し、顔を上げる。


………何か、何と言うか、何か違和感を感じる。

いや、気配と言うのだろうか?


俺は分厚い座布団から腰をゆっくりと上げ銃を構える。


物音ひとつしない庭。

と言っても、ここの庭は無駄に広いから良く分からない。

しかも家屋を取り囲む様に周り全て庭なのだ。


俺は身動き一つもせず神経を四方の庭に集中する。

具体的には言えない違和感。


銃を構えたまま微動だにしない事数分。

いや、もしかしたら数十分は経っているのだろうか?

静寂の中で意識を集中しすぎて時間の感覚が無くなる。


こんな感覚は俺の天敵…あの黒く素早く予想不可能な動きをするコードネーム"G"と呼ばれるモノを前にした時と同じ。


―――ここまで何の動きも無し。


と言う事は、ゾンビでは無さそうだ。

ゾンビは一か所で無動と言う事は無く、何かしら動いていたり移動しているからだ。

とすると、生きてる人間か?


そうなるとこんな屋敷に用があると言ったら、普通に考え付くのが家主の登場だと思うのだが。


こんな家に住んでるのだから当然アウトローだ。

そんな人たちが素直に避難なんかするとは思えない。


俺は気配を殺し、と言っても『絶』を使える訳でもないから気分的にと言うか雰囲気的にだが。

なるべく足音を出さない様、服の衣擦れ音を出さない様、慎重に廊下を歩き監視部屋に入る。


12個あるモニターの画面が順次切替わって行くと、ある一つのモニターに違和感を感じた。

そのモニターに接続されているカメラを手動で一つづつ切り替えてゆくと、1台の車が壁に横付けされている映像が映る。


車が横付けされている方の庭に設置されているカメラを全て順番に見てゆくと、所々で画面が警備とは無関係な方向を向いている。

恐らく稼働はしているが肝心な警備を満たさない様にモニターが動かされたのだろうと判断する。

と言う事は、この車に乗っていた人物は既に庭に入り込んでいる…。

しかも隠しカメラの場所を瞬時に判断できる人物。


横付けされている車の大きさから、最低でも1人。

最高で5人乗っていてもおかしくない。


と考えていた所で、不意に映っていたモニターがいきなり方向転換する。

何と言う事でしょう。

家屋に入って来る前に勝負をつけたかったのに、今消えたカメラは建物に設置されているカメラだ。


と言う事は、家の中で銃撃戦か?

しかも、相手は偶然、安全な場所を求めた素人ではないような用意周到さ。

完全に家主だろう。

しかも本職!


「くそっ」


思わず口に出てしまった。

こんないい物件、そうそうないと言うのにこんな所で騒いだらゾンビに囲まれてしまう。

そうなっては脱出も困難だし…。


せめてサイレンサーを持っていれば…と思うと残念でならない。


なぜSR-25を持ってこなかったのかと自分を叱ってやりたい。

5分ほど正座して説教したい気分だ。


まあいくらサイレンサーやサプレッサーが付いていても音は出る。

射撃音はガス銃位に減音されるが、それでもこの静寂だったら響かなくても聞こえはするかも。

そんな中でも無いよりはあった方が良いだろうが。

そんな事は今考えても仕方がない。


俺の思考も一気に加速し、ある結論に至る。


ここまで快適な環境はすごく気に入っていたのだが………仕方がない。

退散するか…。


俺はここの主でも無ければ管理人でもない。

未練は山程あるが後悔は無い…とも言い切れないが断腸の思いで出発しよう。


何より自分が生き残れればいいのだ。


心残りは漫画と武器だが仕方がない。

バイクは玄関に入れてあるからそこまでたどり着ければいい。


問題はそちらの方から侵入者が来ていると言う事だ。


家主だったらそもそも正面入り口から来るよな?

って思いこの侵入者が家主ではないと思った瞬間である。


そんな侵入者は律儀にも玄関から入って来るとも思えないしどこか侵入しやすい所から入って来るだろう。


早歩きで廊下を歩いていると、後方からガラスを叩く音が聞こえた。

しめた! 侵入者は家を周って反対側から侵入する予定か!?

俺は駆け足で玄関に着くとリュックを背負いバイクに火を入れる。


ついでに、武器を渡したくないからこの家を燃やそうと新聞紙に火を付けた所で意識が途切れる…。


気を失う一瞬の刹那に思った事。


それは『あ、俺、死んだな』だった。


誤字脱字や矛盾等がありましたらご報告お願いします。

あと、こう言う風にしたら良いとかこんな展開も希望等ご意見ご感想もお待ちしております。

評価など頂けたら嬉しい限りです。


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