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神様?いいえただの悪魔です。  作者: 次元
第3章:死者の星
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第67話:逃げ出した日は

今日は間に合いました。

明日も間に合わせるようにしないと。

さらにはストックも増やさねば!


そんなこんなで続きをどうぞ

空からの目があるだけでこんなにも行動が広がるものかと実感する。


なにせ、移動先を先見できるのだ。

こんなにもアドバンテージが出来るものかと感動すら覚える。


地を這う俺達が気を付けるのは障害物となる家屋等に潜むであろうゾンビや生残りに気を付ければいい。

しかしマンションなどの高層建造物はベランダからドローンを使って覗けるのだから拠点にするべきか。

もしくは屋上が安全かなどの確認も容易くなる。


そして、それを実現させているのがキヨシの操縦テクニックだ。


何故か、キヨシにはドローン操縦のテクニックが開花したらしい。

そして、それはドローンに限らずラジコンヘリの操縦にも及ぶ。

機体を目視できなくとも、ドローンに搭載されているカメラで操縦が可能なのだ。

何とも隠れた才能だった。


そして、その様子を見ていたユウコりん。

「ふーん」と鼻を鳴らすと残されたモーター式のヘリに電源を入れると颯爽と上空へ羽ばたかせる。


まるで二羽の猛禽類がランデブーをしているかのようだ。


俺はユウコりんをジト目で見つつ半泣きになる。

やっぱり…やっぱりユウコりんは操縦できたんだ…。


と言うか、この子は何でもアリなのか!

年齢の割に経験値を積み過ぎだ!

一体どういう生活をしているとこのような経験をするのだ?


ユウコりんの横でまゆゆが微笑ましく


「裕子ちゃんも上手だね」


とか言ってるし、ユウコりんも「簡単簡単」と得意げに宙返りをやってのける。


ヘリで宙返りとかどういう事?

ユウコりんは物理法則無視属性まで取得しているのか?!


みんながワイワイと騒ぎながら盛り上がっている。

俺に対しても何か言ってる気がするが、話の内容は覚えていない。

ただ、疎外感しか胸に無い。


俺はそのまま人知れずリビングでコーヒーを嗜む。

ついでに銃の整備をするが、目の前がぼやけてるのは気のせいだ。

これは、あれだ、アクビが出たんだよ。うん。


暫く霞む目で銃の整備をしていると、ゾロゾロと階段を下りてくるパイロット御一行。


そのまま目を軽く拭い銃の整備を進める。


御一行はドローンのカメラ映像を見て色々盛り上がってるが、俺はそのまま輪に入らず銃の整備に勤しんでいる。


俺はその声を背にそのまま1階へ降りてベットルームでネットを観る。

調べる内容は、一人で過ごすに丁度良い環境。


誰にも知られず、一人落ち着く環境を模索していた。

簡単に言えば捻くれたのだ。

言ってくれていい。

罵ってくれていい。

俺はガキだ。


ガキだが、変な所で大人な部分も残っている。


俺が抜けても宏樹とキヨシが居るんだし、何より銃の扱いに長けているユウコりんとまゆゆが居るのだ。

生存に何の支障も無いだろう。と打算した。


そうと決まれば検索開始。

極力、危険から程遠い小規模建造物。

しかし木造はダメ。


そして、確保しなくてはいけないのが一人分の食料。

幸いにも武器は幾らでもある。


適当にリュックへ9mmパラと5.56mmの弾薬箱を詰め込む。

脇のポケットにはサバイバルナイフ。

念のため、カロリンメイトを何箱か一緒に詰める。


ネットで検索しても良い場所が中々思いつかない。

ゾンビの定番と言えばショッピングセンターなのだが、思い付いて即却下を下す。

しかし思い付くのはあそこのショッピングセンターやここのショッキングセンター等々。


即却下なのだが、ふと思った。


自給自足が可能でゾンビや生存者の居ない安全の確保できる場所と言えば…

海か! と心の中で叫ぶ。


外洋に出ないで近海を漂っていれば早々と時化(しけ)にも遭わないだろう。

当然、ゾンビは泳げない。


その放浪中にでも適当に小さな小島に辿り着ければ御の字か。

まぁこのご時世だ、ゾンビに喰われるのか生存者に殺されるのか。

はたまた原発事故により残留放射能で知らない内に被曝しているかも知れない。

そう、いつ死ぬか分からないのだ。


今は死がとても身近にある。

そんな環境なのだ。

自分の好きに生きて死ぬのなら後悔も少ないだろう。

と自分で納得する。


俺の中では壮大な家出が計画される。

その感覚は、初めてゾンビが出現し、世界中がパニックになるだろうと想像してから、生き残る事を模索していた時に通じるものがある。


未来に対しての不安と絶望と希望がごちゃ混ぜになったドキドキ感。


最初はほんの少し拗ねていたのだが、いつしか本格的に独り立ちのビジョンを浮かべている。

そしてそこに希望を見出している。


俺ってば何ともその場を都合の良い様に取り繕うのだろう。

宏樹達と別れるのは寂しいが、それはそれ。

今は自分が独り立ちする事しか頭にない。


玩具で遊べない自分と、自分にできなかった事で喜ぶ他人。

その思考、まさに子供(ガキ)


面倒臭い大人で、たちの悪い子供。

その両方が生息しているのが俺だ!


自分で自分を評価出来ていてその評価が間違いなく正しいのが、そもそも面倒臭い人間として成立している。

しかも基本、良い人じゃないと来ている。

もう、どうしようもなく救いがたい。


そんな人間がグループの中で生活できる筈もなく、そう言う事も含めて大人数が嫌いなのだ。

その事を自覚している自身がはっきり言える事がある。


「俺は人間として最低だ」と。


団体行動や協調性とは何ぞや?

いや、俺にも団体行動位出来るよ?


でもそれが長時間続くなら…?

基本、俺はワガママで自分勝手だ。

良心的な人間から見たら、間違いなく悪い方の人間だし。

良い人間でも善良な人間でもない。


そういう所も含めてまゆゆやユウコりんに心が開けなかったのだとも思う。

それが例えこじつけだろうが言い訳だろうが。


と言う事で、自由気ままな一人旅だ!


そうと割り切れば行動は早い。

如何にしてここから抜けだし海に行くか。


普段だったら慎重に事を進めるのだが、荷物を持って玄関から外に出る。

そうすれば後は、車に乗って「Let'sGo」と軽く口にするが、フッと思い出す。


「そうだ…海側へ通じる橋は全て壊されているんだった…」


果たしてどこまでの橋が破壊されたか分からないが、此処から上流、下流共に隣接する橋が破壊されている事は確認済み。

しかしもっと遠方の橋は未確認なのだし、今は目的地の無い気楽な一人旅。


問題は市を跨り、区を跨り、何キロ下流まで橋が破壊されているのかが分からない。

となると…ここから()海に辿り着く橋は一体いくつあるのだろう?


そう思い再度、海に至る道順を確認する。


今のご時世、都内に近づくのは自殺行為だ。

人が多い=ゾンビが多いと言う事になるのはバカでも分かる事だろう。


と言う事は自ずと川幅も狭く、人も少ない上流に向かう事になるのだが、そこまで上流にも行けないだろう。

海を目指しているのに山を目指すとは本末転倒だからだ。


―――仕方ない…川を渡る毎に車を調達するか…


数時間後、食事の用意が済んで武志を呼びに来たまゆゆは、どこにも姿の見えない武志の姿を懸命に探す。

隣の水耕農園の家を。

キヨシと美智子さんの家を。


このブロックに隣接する家屋を。


しかしどこにも武志の姿を捕える事は出来なかった。

焦りと共に懸命に探すまゆゆはフッと思い出す。


そう言えば…数時間前に玄関の開く音が聞こえた気がする。

あの時は深く考えなかったが…


―――あの時、武志さんは出て行ったんだ…


無性に涙が溢れ出るまゆゆ。


皆で武志をバカにした自覚がある。

それはいつものバカげたお遊び程度と認識はしていたのだが、武志さんの捕えた認識は違ったのだろう。


『何故あの時武志さんを放置していたのか』と言う自責の想いと、『ごめんなさい』と言う想いと『子供か!』と言う責め立てる想いで頭がパニックになる。

そして、止めどなく流れ出る涙。


―――まゆゆは思い出していた。


理不尽にも暴威に晒された自分たちの境遇を。

残された両親の姿を。


そして、その絶望から救ってくれた人を。


まゆゆは決して武志に捨てられたと思わなかった。


逆に、私たちが武志さんを捨てたと思っている。

武志にそう思わせてしまったのだと―――。


現にみんなで笑いものにした自覚がまゆゆの胸を締め付ける。

声も無く泣き崩れるまゆゆをユウコりんが、ハルちゃんが介抱する。


宏樹が武志の寝室で見たのは、武志が検索したと思わしき画面。


そこに残されていたのは横須賀のマリーナだった。




誤字脱字や矛盾等がありましたらご報告お願いします。

あと、こう言う風にしたら良いとかこんな展開も希望等ご意見ご感想もお待ちしております。

評価など頂けたら嬉しい限りです。

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