第65話:向き不向き
気が付いたら6月も終わりです。
毎年同じことを言ってますが、年を取るのは早いですね。
それでは続きをどうぞ
はてさて、模型店からドローンだの音速攻撃戦闘ヘリだのを収穫してから早1ヶ月。
未だに駐屯地の偵察に向けた行動も、準備さえも出来ていない。
と言うのも、宏樹の操縦性能が未だヘッポコだからなのだが、彼の腕の名誉のために言っておこう。
超ヘッポコなのだ。
いや敢えて言おう「カスである」と。
恐らくユウコりん辺りなら本物のヘリとか操縦できそう(思い込み)だから頼んだのだが、敢え無く却下された。
ユウコりん曰く
「エアーウルフに本当に銃の発射機能つける?」
そう言って目を一瞬輝かしたのだが宏樹の"無理"って言葉に
「じゃあ興味なし」
と相成ったわけだ。
念の為言っておく。
フォレストタウンの女性たちは俺たちに避難場所への移動催促なく呑気に生活している。
そんなこともあってマイペースで作業をしているのだがいい加減、のんびりし過ぎの感もある。
そのことで宏樹に問い詰めた。
「宏樹君、いつになったら偵察に行けるのかね?」
俺は腰に手を当てて見下げた態度で宏樹に問う。
「ああ、多分もうすぐだ。最近調子が良いからな」
宏樹は恐縮した態度も無ければ殊勝な態度も無い。
威風堂々としたドヤ顔を向ける。
なんて堂々とした姿なのだろう…ってバカ!
何の調子がいいのか回答用紙に500文字以上1000文字以下で答えて欲しい。
何がもうすぐなのか温泉に浸かり、頭にタオルを乗せながらトクトクと問い合わせたい。
「…なるほど、で、残りのドローンは何台なのかな?」
「あ~…6台かな…」
「ふーん、元々何台在ったっけか?」
「―――7台…? いや8台かな?」
この子は数も数えられないのかしら。
1…2…3……あとイッパイってどこの部族ですか!?
「12台だよね?!」
「あ~……そう言う時もあったかな」
「宏樹さん? はっきり言ってもいいかな?」
俺のにこやかにも仄暗い笑顔を向けるとさすがにバツが悪くなったのか
「な、何でしょう?(汗)」
と苦笑いで言葉を受ける。
「あんた―――操縦下手ね」
"ガーン"そんな擬音が聞こえるほど宏樹の表情が百面相。
「そ、そんなこと、そん…うえ~ん、武志が苛める~」
「ああ、可哀そうによしよし」
一回り以上年下の中学生に縋りつくんじゃない!
「ハルちゃんも宏樹を甘やかさない!」
その俺の表情に下を小さく出し「へへへっ」とお道化る。
ああ30歳のおっさんが中学生に救いを求める光景の何と滑稽な事でしょう…。
ハァと軽く溜息が出てしまう。
チラリとユウコりんを見る。
ユウコりんは鼻歌交じりで銃のメンテナンスに勤しんでいる。
もしかしてこの子、その気になれば本物のヘリもマジで飛ばせるんじゃ?
一度は否定されたけどもしかしたら…
「な~に?」
うっ、俺の心を読んだのか、冷たい笑顔を張りつかせてこちらに目を向ける。
「ユウコりん、ドローンとかラジコンヘリ位なら飛ばせるかな~って」
「嫌よ面倒臭い。それにラジコンに興味ないし」
そう言いながら再び銃のメンテナンスを始める。
え~? 出来るならドローンが無くなる前にやって欲しいんだけど、と言ったら、スクッと立ち上がり、ある一点を指さす。
そこには未だ完成の目途が立たない組立途中のヘリが鎮座している。
「あれ、誰が組み立てるの?」
「ユウコりんが出来るんだったらユウコりんに頼みたいな~…なんて」
「メンドクサイ! 却下!! 本物だったらまだしも、何でおもちゃを組み立てなきゃいけないのよ」
おい、やっぱり操縦できるんじゃないか?
その気になれば戦闘機も操縦できるんじゃ? と思ったところで再び心が読まれたようだ。
氷結笑顔を浮かべるユウコりん。
今回は負けじと無言でユウコりんを見ていると『ツツッ…』と擬音が出る位、ユウコりんは目を細めた。
細めると言うのか? 目が座ってきたと言えばいいのか?
ユウコりんの背後に見えるの。あれ、間違いなくスターダストだよね?
寒い、ユウコりん凍えそうだよ。
いや、ドズル中将が発した怨念が顕著した幻とでも…?
まさか、そんなものが見えるなんて…俺もニュータイプに覚醒したのか!?
俺はサッと目を逸らし力なく「俺が頑張ります」と小さく呟いた。
どうやら俺はニュータイプに目覚めたらしい。
だって、心身に関わる危険だって察知できたし、物凄いプレッシャーを感じたから。
そんな中で騒々しくリビングにやってくる。
「武志さん見てくださいよ!」
大きな箱を複数個抱えながら階段を下りてくるキヨシ。
その箱は模型店でパクった、いや、徴収したラジコンカーの箱だった。
その箱にはキヨシが作ったラジコンカーが入っている。
「これで全部出来ましたよ! レースですねレース!」
「おお、もう全部完成させたのか! 待ちに待ったレースだな!」
と言うと、音も無くユウコりんが立ち上がり俺の真横に来ると、再び指を指す。
「キヨシ君に作って貰ったら?」
俺だけに聞こえるように小さく呟くと、ダイアモンドダストを纏って再び自分の席に座る。
そ、そうだね…と背筋に寒いものを感じながらも小さく答える。
「き、キヨシ君? これもお願いできるかな?」
俺が夢半ばで挫折した組み立て途中のヘリ。
キヨシはそのヘリを見てさわやかな笑顔を浮かべる。
「良いっすよ!」
何と清々しい返事なのだろう。
宏樹さん、これだよ、この笑顔。
実績に基づく笑顔ほど気持ちのいいものも無いよね。
ね? 宏樹君?
調子に乗った俺はそのままの流れでキヨシに頼む事にする。
「ついでに、今日からキヨシ君はパイロットです」
大きく目を開き唖然とするキヨシ。
罪悪感からか俺はキヨシと目を合わせずにポンと肩を軽く叩く。
俺はシズシズと自分の席に座りまゆゆの淹れてくれたコーヒーに舌鼓を打つのだった。
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