第62話:パシリスキルレベルMAX
この時期ってエアコンをつけるかどうするか一番悩みます。
ってことで続きをどうぞ
―――フォレストタウン内
フォレストタウン生存者の女性陣を集め作戦会議を行う。
まずは避難所の確認。
これはまず、避難所に避難民が居る事の確認。
そして、その候補に太刀川の自衛隊駐屯地を挙げる。
その理由として、単純に大規模でここから近いと言う理由だ。
太刀川の自衛隊駐屯地周辺地域の偵察をドローンで行う事を提案。
これも基地の周りには高層マンションがあるからドローンの電波が届きやすいだろうと言う理由だ。
人が居れば受入の可否を問い、受入が了承されればどのように避難場所に行くか。
人が居ない場合、別の避難場所を探す事になるがそれまでどうするか。
そこでまずはドローンの手配。
やはりと言うべきか、玩具売り場に残されていたドローンは小型で室内用だったようで、玩具売り場から拝借してきたドローンと室内用RCヘリ。
宏樹はそれらで遊んでいた。
宏樹曰く
「玩具で練習しておけば本番に失敗しなくて済むだろ?」
その横ではハルちゃんが「飛んでる飛んでる」と盛り上げ、キヨシが「宏樹さん上手いっす!」と煽てている。
うん、完全に練習を名目に遊んでいるようにしか見えない。
その光景を見て良いことを思いついた。
この室内用のラジコンヘリやドローンの電波がどこまで届くか分からないが射撃練習に使えるのではないか?
そう言う事で、どうせなら室内ではなく屋上で電波の届く範囲の検証を試してくれと宏樹に提案した。
それを聞いた宏樹も「そう言う事なら仕方がないな」と言葉とは裏腹にノリノリでラジコンヘリと小型ドローンを複数個買物用カートに入れて行った。
その中にRCカーが含まれていたが敢えてツッコまなかった。
ハルちゃんには周辺の様子、特に生存者の存在に注意するように釘をさす。
空返事で「はーい」と答えるハルちゃんに
「宏樹を守るのはハルちゃんなんだからな」
と指さししながら言ったら目つきが変り、真剣に返事をした。
何て現金な…しかも扱いやすい!
これで周辺の警備も一安心だろう。
「さて…」と女性陣に振り返る。
やっと本題に入れる。
「まずは私たちが偵察用ドローンを模型店から調達しますので、その間に皆さんは移動用の車や物資搬送用のトラックなどを調達して下さい」
その説明から否定的な質問は無かった。
否定的な質問は無かったが、これから危険な作業が待っていると思うと一人一人が難しい顔をする。
自分たちだけ平和に暮らして危険な作業は俺たちだけって話も無いだろうに。
「ドローンが見つからない場合はヘリコプターのラジコンになりますが、ヘリコプターのラジコンは完成品がない場合、組み立てる期間もそれなり必要になります。」
無いとは思うが、ダメ元でみんなに聞いてみる。
「この中でラジコンヘリとかドローンとか詳しかったり操縦したりしたことがある人は居ますか?」
「………」
ですよね~。
女性陣はお互いがお互いの顔を観ては首を左右に振る。
「それでは車の運転を出来る人は居ますか?」
流石、秋志摩市民。
車が無いと色々と不便ですもんね。
免許を持っていない人は1人だけだった。
その1人に「今後は色々と必要になるから車の運転方法を教わって下さい。」と言っておく。
「次に―――」と言いかけた所で、免許を持っていない女性が手を上げる。
それに気が付き「はい、何でしょう?」と答える。
「あの…避難所に行く話になっていますが…ここで生活してちゃ…ダメなんでしょうか?」
「ちょ、ちょっと!」
と俺の横に立っていた美智子さんが一歩前に踏み出すが、俺は美智子さんを制止する。
「他の皆さんも同じ意見ですか?」
そう言いながら女性陣を見渡す。
その表情は『避難所には行きたいけど危険を冒してまで…』と明確に訴えていた。
まゆゆとユウコりんは小さく溜息をつくと
「宏樹さんを迎えに行ってきますね」とその場を後にする。
「じ、自分も色々準備してくるっス」と言ってキヨシもその場を後にする。
美智子さんは皆の言ってる事に腹を立てているのか、俺が制止しなければ今にも飛び掛からんばかりに体を震わせている。
もう美智子さんは俺たち側の考えと同様だ。
だから、何でも人任せで危険を避けて何もしない人たちに腹が立ったんだろう。
それよりも、キヨシがこの人たちを殺すと言った後に、俺の考えを聞いて美智子さんも嬉しさを滲みだすように喜んでいたと言うのに…キヨシの心構えも俺の考えも水泡に帰す。
ついでに言うと、俺たちの好意を無にする物言いにも腹立たしさを感じているようだ。
更に言わせてもらうと、俺はもうここの人たちに関わらないと決めた。
「そうですか、分かりました。みんなの意見を尊重します。皆さんはここで今まで通り生活して下さい。」
俺は爽やかに仄暗い笑顔を向ける。
そんな俺の表情に気に留める人はおらず一同は安堵の表情を浮かべる。
逆に俺は彼女たちに背を向け無表情となる。
俺の中で、ここの人たちは死んでいるのと同義になった。
2度も襲われ、その都度俺達に助けられ、1度目は強姦され、2度目は殺される状況に陥っていたのにそれでもまだここに居ると言う彼女たち。
もう何も言う事が無い。
3度目の救出は無いのだから。
その事を悟ったのか美智子さんの体の震えも止まり、溜息しか出ていない。
俺はそのまま屋上に向かうと美智子さんも付いてきた。
念のため、全員にインカムを持たせているので俺が屋上に向かっている事もみんな理解している。
ついでに言うと俺の心情も状況も。
キヨシにも「準備が終わったら屋上に集合」と言ってあるので、少ししたら屋上に来るだろう。
ノンたんと美智子さんは頻りに謝ってくる。
何故かインカムの向こうでまゆゆも頻りに謝ってくる。
「念のため伺いますが、美智子さんもここに残るって言います?」
即答で「まさか!」と言ってくる。
その言葉を聞いて俺は思わず無表情な顔から笑みが零れる。
「でも、私が武志さんたちに付いて行って、迷惑じゃないですか?」
不安な表情で俺を窺う美智子さんであったが、俺はさっきの仄暗い笑顔とは正反対に満面の笑みを向けながら
「美智子さんの料理はまゆゆと合せれば世界一美味しいんです。だからこちらがお願いしたいくらいですよ」
と言うと、目を少し潤ませながら「ありがとう」と笑顔を返してくれる。
後ろでノンたんが『私は…?』と物言いたげな顔をしていたから無言で頭をクシャクシャしておいた。
屋上に着くと、相も変わらず室内用ヘリで遊んでいる宏樹が目に入る。
さっきの話を聞いてない訳ないだろうに。
フッと足元を見ると床にはプロペラが割れてるヘリが2機…。
子供用の室内ヘリを屋外で飛ばして2機も壊すとは、随分と卓越した操縦技術だ事で―――。
「話は聞いていたな?」
「おう」
空中に浮かぶヘリを見つめながら返事をする宏樹。
ヘリはぐんぐん上昇を続けるが、20~30m程上昇するとあらぬ方向に飛んで行ってしまった。
恐らく電波の届く範囲から外れたのだろう。
これで撃墜数3にカウントアップ。
「ま、仕方がないわな」
と言ってこちらに振り向く宏樹。
それはヘリの事を言ってるのか、女性陣の事を言ってるのか…
恐らく両者なんだろうね。
「そうと決まれば必要な物資を運びこんじゃおう」
そう言うとインカムから通信が入る。
相手はキヨシだ。
「何を運べば良いっスか?」
「お前は何か欲しいものは無いのか?」
「自分、布団が欲しいっス。やっぱり見知らぬ人の布団はちょっと…」
キヨシがそう言うと美智子さんもそれに同意。
「キヨシ君。私の分の布団もお願いね」
「了解したっス!」
何気にキヨシは使える。
俺は各々欲しいものを持って非常階段前に集合するように声をかける。
ただ、普通のワンボックスカーに積めるだけの量を考えろと前ふりをしておくとキヨシから再び通信が入る。
「トラックを1台用意したから問題ないッス!」
と軽めに応答が。
それを聞いて美智子さんが「そう言えば」と言い出す。
「この前キヨシ君と避難場所とかを探していた時にトラックを1台見つけたのよね」
ナルホド。
これで荷物も色々積み込めるし車内も余裕が出来る。
今日のキヨシは何気に高得点だ。
洋服や工具、諸々の雑貨を各自買い物用カートに乗せて非常階段入口に到着すると、突然ドアが開かれる。
咄嗟に俺と宏樹ユウコりんが銃を構えると、そこに現れたのはキヨシだった。
「驚かすな!」と銃をしまうと「すいません! スイマセン!」と頻りに謝ってくる。
そのまま土下座する勢いだったから「外で何してたんだ?」と聞くと何とビックリ。
階段にトラックが横付けされていた。
しかも、既に美智子さん用の布団と念のためベッドが積まれた状態だった。
何だこいつは。
いつからこんなに使える人間になったんだ?
心を入換えたレベルじゃないぞ?
後から分かったのだが、俺たちから銃を受け取った時、認められたと思い、自分は何をすればいいのか? ではなく、俺たちみんなの為に何をするべきかを念頭に考えるようになったらしい。
本当に心を入換えてやんの…
そう言う訳で、美智子さんとキヨシが俺達のファミリーに本格参戦した。
そうそう、キヨシは何と俺たちが女性陣に預けていた銃器も没収したらしい。
しかも、彼女たちに気づかれる事なく。
隠密行動で俺たちがやろうとしていた事をキヨシは既に実行に移していた。
俺は素直にスゲーと思ったし、今後はこいつも対等に接しようと決めた。
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あと、こう言う風にしたら良いとかこんな展開も希望等ご意見ご感想もお待ちしております。
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