第60話:あめとムチ
この小説をどこかの社長さんが観てくれて
この作者気入ったから仕事だそう!
とか言ってくれないかな~
今回のタイトル、飴とムチ(鞭・無知)をかけてみました。
どうでもいいですね。
それでは続きをどうぞ
俺は手を上げる人たちを確認すると4人がゆっくりと静かに手を上げる。
うん、これは仕方がないね。
俺は意見の対立を最も嫌う。
こんなご時世だ。
何か些細な原因でも命取りとなる。
敵対者が身内とゾンビなんて、戦争時よりも最悪な状況だ。
只でさえ供給がストップしているのだから、生存者から略奪なんて日常に起こり得る。
でも撃たれる前に撃てとか、殺人推奨は参考にもならないしドン引きだよな。
賛同できない人は確かに居るだろね。
でもこんな状況下において、俺達に賛同できない人は即刻退場願おう。
別に俺は彼女たちの保護者じゃないし正義の味方でもない。
俺は確認のために再度問いかける。
「他に賛同できない方は挙手をお願いします。」
そうすると美智子さん以外は全員オズオズと手を挙げた。
俺は美智子さんに目配せすると美智子さんは少し項垂れるように視線を下すと小さく首を振る。
それを確認すると俺は女性陣に向き直る。
「分かりました。挙手をされた皆さんの意見を尊重し、皆さんをそのうち避難所へ連れて行きたいと思います。」
そう言われ女性陣に安堵の溜息が漏れる。
俺は横に居た宏樹に小さな声で「後で話がある」と言うと、宏樹もアイコンタクトを送ってくる。
ふと視線に気が付きそちらに目線を合わせると、まゆゆとユウコりんがこちらを見つめている。
『私たちもその話を聞きますよ』ってまるでテレパシーでも発信しているような眼差しに、思わず小さく頷いてしまう。
再び女性陣に向き直り声をかける。
「それでは、皆さんを避難所に送る為の準備と作戦を考えるので私たちは一度私たちは帰ります」
その話を聞いて自然と笑顔になる残留女性陣は、本日の夕食の準備に入るのを確認して俺達は日が完全に沈まない時間に岐路へと付く。
―――我が家2階リビング
フォレストタウンから車で10分圏内に我が家がある。
今では渋滞も無く快適とは言わないまでも順調な道程で家に到着。
俺はゾンビが付いて来ていないか、生存者に見張られていないか確認すると車を降りる。
最初、車が到着しても誰も降車しない状況からキヨシと美智子さんは焦ったようだが、前途する理由を述べると納得したように降車する。
そう、美智子さんとキヨシを我が家に招いたのだ。
「ようこそ我が家へ」
俺は美智子さんとキヨシを家の中へ招き入れる。
リビングに飾ってある銃器を呆気に眺める美智子さんとキヨシ。
こんなので驚いていたら、ユウコりんの部屋(セーフルーム改めユウコりんROOM)を見たら腰抜かすぞ?
まゆゆは早速、本日の夕飯の為に隣の家から野菜を取ってくる。
美智子さんも夕飯の準備を手伝ってくれる。
流石、主婦なだけあり本日の献立をまゆゆから聞くと手際よく料理が作られる。
キヨシはどうして良いのか部屋をキョロキョロ見回している。
まさに借りてきた猫状態。
初めて会った時とはエライ違いだな。
俺達から銃を渡したりは出来ない状況だったが、美智子さんから銃を渡しても問題なかったようなので、キヨシに対する認識を改めて銃を渡そうと思う。
そう言う意味を含めて俺たちは食事の後、美智子さんとキヨシに疑問をぶつけよう。
その日の晩御飯であるまゆゆと美智子さん合作の料理は格別だった。
まゆゆは良いお嫁さんになるだろうし、美智子さんは良いお嫁さんだったのだろう。
何故わかるって?
旦那を繋ぎ止めておくには胃袋を掴むのが一番。
そして、そんな料理を作れるのはいついかなる時でも料理を食す人の事を考え創意工夫しないと完成しない。
食材が無いから、調味料が無いから、あれが無いから、これが無いから…妥協をする料理に愛情が感じられないと言う事は、旨くないと言う事なのである。
『料理は愛情』とはそう言う事なのだ。
俺達は二人の料理に心を洗われると、今後の話を始める。
俺は、美智子さんとキヨシ以外に前もって説明してある内容を話す。
俺は宏樹が言ってくれればいいのに…と、宏樹に目線を合すが、サッと避けられる。
全く…損な役割だよ。
「さて、美智子さん、そしてキヨシには酷な質問をする。それを聞いて二人の意見を聞きたい」
俺はそう前置きして二人に真剣な表情で話す。
「フォレストタウンに残ってる人たちの事だが…」
その事を聞いて美智子さんは表情を暗くする。
恐らく、俺たちの提案を蹴って避難所に行きたいと言った事に負い目があるのだろう。
俺は話を続けようとすると、「ちょっといいですか?」とキヨシが話に割り込んでくる。
「ん?」と俺たちはキヨシの方に目を向ける。
「あの…その…」
キヨシの煮え切らない態度にイラッとしたのか宏樹が眉間に皴を寄せる。
こう見えて宏樹はイケメンで強面だったりする。
その表情を見て、余計に体を強張らせるキヨシ。
俺が仲裁に入ってキヨシに話を促す。
「凄く考えたんです…凄く考えて、でも、こんな事、言っていいのか、凄く…迷って…」
「だから何だよ!?」
元々、職人気質の宏樹は、簡単に言えば短気だ。
キヨシの物言いに苛立ちを隠せないでいる。
「まあまあ」と宏樹を宥めるついでにビールを勧める。
ビールを口にした宏樹はご満悦の様で、眉間に寄っていた皴もハの字になってリラックスしている。
「キヨシも言いたい事があるなら早く言え」
「は、はい! すいませんでした」
キヨシは椅子の上で土下座の体勢をしている。
わざわざそんな体勢を取らなくてもいいのに。
「んで?」
俺はキヨシの考えを聞くと驚きの発言をする。
「今、フォレストタウンに居る人たち…」
キヨシはそこまで言うと、美智子さんの顔を窺う。
美智子さんにもキヨシの考えは伝わっているようで『仕方がありません…』と言う様な表情で目を静かに閉じる。
「俺が…殺してきます…」
俺を含めた全員が驚きの表情をするが、誰一人として口を開かなかった。
いや、開いた口が塞がらなかった。
少しの沈黙の後…
俺はユウコりんに目配せするとユウコりんは"コクリ"と頷き階段を下りる。
すぐに階段を昇ってくる音がして、ユウコりんがP220と89式をキヨシと美智子さんに渡す。
キヨシと美智子さんは渡された銃を手に取ると"ゴクリ"と生唾を飲み込む。
俺と宏樹、まゆゆ、ハルちゃん、ノンたんは今日使った銃の整備をしている。
もう、俺も宏樹も多少酔っていても、目隠しされても銃の分解が出来るほどにユウコりんに仕込まれた。
おかげでビールを飲んでほろ酔い気分の宏樹でさえ鼻歌交じりで整備している。
その横で、ユウコりんがP220と89式の取り扱い方法を美智子さんとキヨシに教えている。
一通り銃の扱い方を教えたユウコりんは自分愛用の銃器の整備を始める。
俺は自分の整備が終わると美智子さんとキヨシの方へ向く。
まゆゆは温かいコーヒーを淹れて来てくれる。
俺はそのコーヒーを頂きながらキヨシの肩を叩く。
「明日は本当だったら射撃の練習をしたかったんだけど、みんなに明日行くって言っちゃったから、ぶっつけ本番だぞ?」
キヨシも美智子さんも真剣な表情で返事をする。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
俺は銃器を二人に与えた。
もともと美智子さんには渡していたのだが、キヨシにも与えたのは『自分の身は自分で守る』と言う事の心構えを確認したからだ。
そして、自分の身は自分で守ると言う事は、時に『非情』にならざるを得ない。
キヨシからその心構えをこちらから誘導する前に確認できた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
話は沈黙の少し後に戻る。
「一つ聞きたい。なんでフォレストタウンの人たちを殺そうと思った?」
キヨシは俺の問いかけに一呼吸おく。
自分の発言で俺達に殺されるかもしれないと思ったのだろう。
若干、落ち着きが無くなって体を強張らせている。
キヨシの言葉に賛同した美智子さんも同様に手が震えている。
俺の質問に返答が無いので再び宏樹が口を出す。
「おい、質問に答えろよ」
その口調は普段と変わらない、穏やかな口調だった。
しかし宏樹のそんな普段の口調を知らないキヨシと美智子さんにしたら、宏樹の言葉に殺気が灯っていると思ったのかもしれない。
二人の体は先程よりも体を硬直させている。
宏樹が切れる前に早く言わなければ殺されると思ったのか、キヨシが恐る恐る口を開く。
「フォレストタウンに居るみんなを…生かしておくと、武志さんや宏樹さんの事や、この家の事、そして、フォレストタウンの情報が色々と漏れてしまうと思って…」
キヨシは俯き加減で静かに口を開く。
「だから、避難所に行く人たちを殺そうと?」
「…ハイ、しかも…みなさんを危険な目に遭わせるよりは……どのみちあそこに残った人たちはこの先、生き残れないと…思います」
美智子さんも顔を俯かせると、テーブルの上に滴が落ちる。
そんな重苦しい空気の中、俺の頭の中は『キヨシが~っス』って口調じゃないじゃんとか考えてた。
我ながらクズってると思う次第です。
俺は皆に顔を向けると目が合ったみんなは小さく頷いてくる。
キヨシや美智子さんにこれ以上質問しても、恐らく俺たちに質問された場合と変わらない回答が来ると思って俺も口を噤む。
その代りなのか、宏樹がキヨシの肩にポンと手を置き笑顔を向ける。
肩を叩かれたキヨシは大きく『ビクン』と反応すると宏樹の顔を見て硬直する。
あの宏樹が笑顔を向けていたからだが。
何度も言おう、宏樹は強面なのだ。
笑顔を作っていても強面なのだ。
笑顔を向けられたその瞬間、キヨシは『死』を覚悟したのかもしれない。
俺はユウコりんに目配せするとユウコりんは1階に降りる。
その間にキヨシと美智子さんに話をする。
「本当は、キヨシが言い出す前に、質問しようとしていた事があるんだ」
え? と言う表情でキヨシが俺の顔を見る。
「二人にフォレストタウンに残った人たちの処遇だよ」
二人はそう言えば俺の話に割り込んだったと思い返す。
「残った人たちを、『殺そう』って言おうとしていたんだよ」
そう言われ二人は大きく目を見開く。
「その時二人から『やめて』とか『助けて』って言葉が出るのであれば、誰一人助けるつもりは無かった」
「「え?!」」
俺の言葉に驚きの声を上げる美智子さんとキヨシ
そんな顔を見て俺も少し心に余裕が出来たと言うか、仲間が増えた事に内心、嬉しかったんだろうね。
俺ってば可愛い所あるよね?
あるよ、ね?
「でもキヨシから言われたからもういいや。これからも頼むな」
「「え?!」」
二人は鳩が豆鉄砲でも喰らった顔を向ける。
その時のまゆゆ、ハルちゃんは満面の笑み、ノンたんは目にうっすらと涙を浮かべて笑っていた。
階段を上がってくるユウコりんは聖母のように微笑んでいた。
ユウコりんは俺以外の人には優しい。
俺と宏樹の時は『鬼子母神』である。
そこにキヨシ参戦。
まぁ、美智子さんには優しいままなのだろうが、キヨシにはご愁傷様と言っておこう。
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