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神様?いいえただの悪魔です。  作者: 次元
第3章:死者の星
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第59話:納得と拒絶

女性の気持ちは男には永遠に分からない。

男性の気持ちは女には永遠に分からない。


それでは続きをどうぞ

まゆゆの、ノンたんの提案。


フォレストタウンの女性陣を我が家の近所に受け入れる。


俺は確かに許可は出した。


彼女たちがご近所さんになるのも吝かではない。

問題は彼女たちがそれに賛同するのか。

俺達におんぶに抱っこしないか。

自分の事は自分で出来るのか。

俺達の非人道的な行動や態度を理解できるのか。


当然許可を出した手前、生きる為の最低限の心構えや、それに付随するノウハウを教えはする。

教えはするが、俺と宏樹の反感を買うようなら無慈悲に見捨てる方向だ。


その事はまゆゆ、ユウコりん、ハルちゃん、ノンたんに事前に説明すると皆も勝手知ったるって感じで了解する。

こちらは門扉を開け放って歓迎の意を表しているが、相手がそうは思っていないかもしれないからね。


しかも俺たちの生存方法は結構無慈悲だと自覚してるし、それを拒否するのも理解は出来る。


さて、どうやってみなさんに話をするか。

事と次第によっちゃ俺たちを非難するだろうからね。


俺は何を言われても我慢できるよ? 大人だから。

でも宏樹が耐えられるかね~?

俺は大人だから大丈夫よ?


「ん~」と頭を掻きながら別室の扉を開けると、最長老…いや、美智子さんが扉の前で立って腰を深く折っている。


前屈姿勢のまま動きが止まっている。

その後ろを見るとキヨシも前かがみになっている。


両コブシは腰の後ろ置かれ、今にも『押忍!』とか言いそうな雰囲気だ。

さすがにストレッチをしているわけでは無いよな?


「あ、あの?」


「立ち聞きをするつもりはありませんでしたが…話の内容が聞こえてきてしまい、聞き入ってしまいました。申し訳ありません」


腰を折りながら美智子さんが言ってくる。

ああ、その為の謝罪のお辞儀だったんだな。

別に気にする事じゃないのに、と思っていると、


「ありがとうございます。本当に、私たちを助けて頂き…本当に…ありがとうございます」


ああ、感謝のお辞儀でもあるんだな。


「ああ、いえいえ、感謝ならこの子たちに言ってください。この二人が言い出さなければ、私達はこのまま帰る所でした」


美智子さんは顔を上げると涙を流し、まゆゆとノンたんに感謝の言葉を投げかける。


まゆゆとノンたんもハニカミながら目から涙が流れる。

それは恐らく、美智子さんから言われた感謝の言葉ではなく安堵の気持ちなのだろう。

特にノンたんに至ってはこの騒動から今まで一緒に乗り越えてきた人達の安否に関わる事だからな。


俺は美智子さんの方へ声をかける。


「それでは、今後の予定と私たちの心構えを共有して頂きますので、皆を集めてください」


―――ショッピングセンター2階(元フードコート)


「それでは私から提案したいと思います。疑問や異議のある人は挙手をお願いします。」


フォレストタウンの生存者である女性陣が固唾を呑んで俺を見ている。

ホント、俺ってリーダータイプでもないしカリスマがある訳でも無いから発表会とかこういう雰囲気苦手なんだよね。


良く考えてよ。

男は俺と宏樹とキヨシだけだし。


女子高に男子が混ざってる~♪

みたいな雰囲気…はっきり言って苦手です。

キラキラした女性陣の視線が痛い。


「そ…それでは、皆さんに提案します。住居をショッピングセンターから私達の家の近所に移す…と言うのを提案しますが、どうでしょうか?」


その提案を聞いて皆から笑顔が溢れる。

女性陣も敢えて言わなかったのだが、本心では俺たちの所に来たかったようだ。


否定を口にする人は居ない。

その様子を見て俺は肝心の心構えを説明する。


「異議が無いようなので話を進めます。まずは、私たちがここに来た時にも言った事があるかもしれませんが、自分の身は自分で守って下さい。人に助けを求める前に助けを求める様な状況を作らないと言った方が分かりやすいでしょうか?」


話を聞いているみんなは、『自分の身は自分で守る』が身に染みて分かっているのか異議を唱えてくる人は居なかった。

さらに話を続ける。


「今のこの状況で間違いなく生き残る方法は『撃たれる前に撃て』です。」


その言葉を聞いてみんなの目に影が陰る。


あれ? 中二病みたいなこと言ったかな? 言ったな。

知ってる人が訊いたら間違いなくツッコむだろう。

『お前はアンタレスか』と。


でも本当なんだから仕方がない。


俺がそう言いながら女性陣に目を配ると、女性陣はお互いがお互いを見回している。

しかし、助けを求めた挙句が最悪の結果となった事も事実だし伴侶を失った人もいる。


俺の言葉を理解すれば、事が起きる前に何とかしたはずだ。

ノンたんが我が家に来て落ち着いた時、何の気なしに質問した事がある。

その話を聞く限り、元同級生も最初は『助け』を求めに来たそうだ。

その結果、何の疑いも無く招き入れ殺され凌辱された。


女性陣は俺の言う事に理解を示すが、人を殺す。

殺さないと生き残れない事実にためらいを感じる。


皆はまだ目が泳いでいる。

まぁ『撃たれる前に撃て』なんて言われてすぐに実践できるような人、居ませんけどね。


百歩譲って喰われるかもしれないゾンビには出来るかもしれない。

でも、現在生きている人間、所謂生存者を撃てるか。

簡単に言えば殺人ですよ。

普通は出来ないよね。

平時での普通ですけど。


今は撃たれる前に撃たなければ食い物にされる、もしくは、撃たなければ撃たれる世界と言う事を認識した方が良いと思う。


みんなの顔を見る限り無理だと思うけど。


仕方なく質問形式にする。


「そこのあなた、男が助けを求めて来ました。どうしますか?」


俺に質問された女性は先の事件を思い出したのだろう。

少し眉間に皴を寄せながら答える。


「…助けを求めて来た男性に質問します」


まあ、普通だよね?

俺ならそんな事しないけど。


「そうですか。何て質問しますか?」


「ど、どうしましたか? と…」


俺は目を瞑り首を縦に振り「なるほど」と返答するとまた同じ質問を隣の人に質問する。


「それではあなたはどうしますか?」


突然質問されて一瞬キョドる女性だが少し考えて同じような答えをする。

俺はその答えを聞いて再び目を瞑り首を縦に振り「なるほど」と返答する。


「そうですか、では美智子さん。あなたならどうしますか?」


そう言われて女性陣最年長であり、このショッピングセンターを仕切っていた女性に同じ質問をする。

他の女性たちも美智子さんの方へ顔を向ける。

美智子さんは少し俯き思案した後に顔を俺に向けて答えを口にする。


「男性を撃ちます」


俺は笑顔になり「正解です」と答える。

俺の言葉に安堵の表情を浮かべる美智子さん。


とは対照的に暗い顔をする女性陣。

そんな女性陣の表情を見て俺は言葉を付け足す。


「確かに今の私の質問なら皆さんの答えも、美智子さんの回答も正解です」


そう言うと、暗い顔をこちらに向ける皆さんの顔を見て

「しかし」と前置きをし


「私だったらそもそも、そんな男に出くわさないように行動します」


皆も、ある意味半ば強引に納得できたように頷く。

その光景は、新興宗教の洗脳に近い光景だった。

始めにどん底の想像と回答を示し、少しでも心安らぐ回答を出す。


「いいですか? 行動する時は常に周りに気を配り行動します。どこに誰が居るか分かりませんからね。悪意のない人間ならまだしも悪意の塊である人間やゾンビだったら目も当てられません。」


うんうんと頷く皆さん。


「ですので、屋外の行動は極めて慎重にして下さい」


一様に皆が頷く。


「それと、屋内での行動も考える必要があります」


俺の言葉に疑問の表情を浮かべる人が居るので、すかさず俺はその人を指さし疑問に思った内容を聞く。


「そこのあなた、なぜ今の内容に疑問の顔を浮かべるんですか?」


名指しをされた女性は一瞬戸惑いながらも、質問を述べる。


「あの、屋内に居るのになぜ行動を考える必要があるんですか?」


その質問を聞き、疑問の表情を浮かべた他の女性も頷く。


「答えは簡単です。その建物に人が生存していると思わせない為です」


俺の答えを聞き、ナルホドと表情に浮かべる。


「いいですか? 今は電力が通っているので、空家でも電気が点いていますので電気を使うのは問題ありません。しかし、他にも気を付けなければいけない事があります」


皆は俺の言葉に耳を傾けている。


「まずは、食事の準備をする場合、火を使います。火を使うと言う事は換気扇を回します。皆さん、普通に考えて下さい。換気扇が回っている空家は沢山ありますが、匂いを出す換気扇はありません。」


それを聞いて皆は「あ」って顔をする。


「そうです、人が住んでいないと起こり得ない現象は他にもあります。たとえばお風呂の音、トイレの水洗の音、皆さんは普段気にもしないでしょうけど、些細な事で生存者を確認する方法はいくらでもあります。」


みんなは各々考える表情をする。


「私は敢えて皆さんに酷な事を言います。」


その言葉を受けて一斉に俺を見る。


「皆さんは女性です。少なからず、見つかっても俺と宏樹のように殺されはしないでしょう。しかし…」


みんなは俺の言葉の先を理解したのか、既に経験済みだからなのか、それとも忘れていたのか。

ある女性が「武志さんの言う事、理解しました」と小さな声を上げる。


「私も、最初は何故生存者同士で殺し合わなければいけないか疑問に思いましたが…」


「そうね、私達、何を期待していたのかしら…」

「そうよ、今の世界に何を期待していたのかしらね?」

「生存者同士で争わない様、気を付けて生活しなきゃいけないのね?」

「でも、見つかったら、躊躇わず相手を殺さなければいけないのよね…」

「ええ、そうしなくては、私たちはまた…」


皆も理解したらしい。

今の世界は、今までの平和に満ちた世界では無い。

死に満ちた世界なんだと。



皆が俺の言いたい事や心構えを理解はしてくれた。

しかし、人間が10人集まれば10人の考えがあるはず。

そこで俺は最終確認としてみんなの方に向き直ると一つの提案をする。


「私からの最終確認をします。皆さんの中で俺たちの考えに賛同できず、避難所に行きたい方は挙手をお願いします。」


最初はお互いの顔を見合わせて様子を窺っていが、少し時間を多く取る。


その時間約3分。

3分あればラーメンだって食べられるし、人間の思考も冷静になる。

そうすると、静かに手を上げる人が現れる。



誤字脱字や矛盾等がありましたらご報告お願いします。

あと、こう言う風にしたら良いとかこんな展開も希望等ご意見ご感想もお待ちしております。

評価など頂けたら嬉しい限りです。

いや、評価ください!(切実)

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