第55話:道中
主人公の黒歴史を少し公開。
是も青春の1ページという事で
それでは続きをどうぞ
フォレストタウン
秋志摩駅前の再開発に伴い建設されたショッピングモール。
広大な土地を利用し、テニスコートやアイススケートリンク、ゴルフコースや対面型ゴルフ打ちっぱなしもある。
他にもゲームセンターに映画館や大型家電量販店やアインズなどのホームセンターにホテルもある。
騒動が始まって今現在、フォレストタウンに逃げ込んで生存している人は女ばかりの集団+男1人と言う男にしたら夢の空間だが実質、男は女性たちの奴隷と化している(はず)。
と言うのもこの男、フォレストタウンを襲撃し女性を襲った集団の一人だからだ。
女性連中には言ってないが、言ったら只では済まないだろう。
しかもその強姦集団の頭(リーダー含む幹部連中)が俺たちの同級生って言う落ちだし、その後輩って言うだけでも『ご愁傷様』って感じだ。
そんな俺達も珍走団が元同級生と言う事は公言していない。
被害者である女性たちに何を言われるか分からないし、同じと思われたら心外だ。
あ、当然強姦魔集団はあっという間にハチの巣状態であの世へ旅立った。
同級生と言ってもほぼ敵対関係みたいな?
群れれば狼だけど一人だったらチワワみたいな小心者集団。
中学生の頃、何度か円陣の中心に据えられて恫喝されたのはいい思い出だ。
当時、空手を少し嗜んでいた俺と柔道を嗜んでいた宏樹はその円陣を切り崩し大立ち回りを演じ事なきを得るのだが、その後、先輩に呼び出され、そこでも大立ち回りをやらかし、気が付いたら12人VS2人と宏樹が俺の後ろを守り俺が宏樹の後ろを守っていたとか。
向こうはケンカだがこっちは殺し合いと言う意識の違いで辛勝したとか。
当然、俺も宏樹も顔面ボコボコで体で痛いところは無いと言い切れる程にボロボロだったが。
今考えれば若気の至りと言うか、黒歴史と言うか。
その後の中学生生活は何と言うんでしょうか。
友達は少なくなり、ヤンキーと言う訳ではないが先輩相手に一歩も引かないから怖いと言うレッテルが張りつく。
普通の同級生にしたら、極力関わりたくない人間と言う所だろう。
それは先輩達も同じようで、ケンカ=殺し合いを地で行くような俺達に関わらなくなっていた。
当初は先輩達も属する珍走団の連中にお呼ばれされる事もあったが、相手が刃物を出せばこちらも負けじと飛び道具(違法ガスガン)で対抗すると言っためんどくさい人間だったのである。
その内、複数対2名(もしくは1名)でも徹底抗戦する気概から、もっと大きな組織のボス(笑)に気に入れられた事もあり、抗争は縮小してゆく。
気が付けば17歳の時には、関わり合いになると面倒な2人となり集団にも属さないハグレ者と見なされてゆく。
それでも生きていたのは俺達が根っからの悪人でも無く、普通の人だったからだろう。
うん、普通だった。
普通に合気道と空手、宏樹は合気道と柔道をやってただけの普通の人だ。
まあ警察沙汰になったとか、宏樹が警察の柔道部に通っていたから警察官兼先生にこってり絞られたとか、もう完全な黒歴史だ。
だからこんな黒歴史を誰かに言う事も無いし語る事も無い。
それに今も昔も俺は誰がどうなろうが知ったこっちゃないし、他人に関わるのもご免だ。
ただ今回はその後のフォレストタウンの様子と物資の調達と言う名目があるから行くだけだ。
俺の中では近くのステーキハウスの肉目当てと言うのもある。
いや、それがメインかな。
肉は真空パックされ冷凍保存されているはずだし、ステーキだよ!
ステーキを喰わずして力がでるか? って所だ。
生き物にしたら俺たち人間がゾンビのようなものだが…
今は人間の上位にゾンビが君臨しているってだけ。
最近は飛行機も飛ばないから米軍基地や自衛隊の駐屯地もどうなってるんだろう?
米軍は本国に戻ったのかな?
そうだとしたら、早めに行った方が良いかな?
なんせ武器が置いてあったら他の生存者が武器を携帯するから危険が伴う。
フォレストタウンを襲った同級生のように…
そうでなくても警察官や自衛隊から奪った可能性や、俺たちみたいに避難所にいた自衛隊や米軍の武器をGETした連中も居るはずだ。
人間は本来集団行動を行う動物だし共に行動するに多いに越したことはないが、多くても災いの元と為りうるのも人間だ。
そう言う事も含め、俺と宏樹は他人との接触を極力避けていたわけだし、何より少人数の方が気楽だしな!
降りかかる火の粉は全力で払うが、基本的に俺は血の気が多いわけでは無いんでね。
出来れば敵なんか作りたくないし、馴れ合いもしたくない。
他人と関わりを持ちたくないというのが本音だ。
こんなゾンビが蔓延する世界は地獄なのだろうが、こうなったおかげで不謹慎ではあるが何とも悠々自適な生活が送れていますよ。
本当に俺達は気楽に生きていければ何よりも幸せなんですよ。
え? 無責任? ん? 何の事? 生きたければ自分で知恵を絞って生き抜くべきでしょ?
なんで他人任せなの? そんな人たちが死のうが生きようがどうでも良い。
寧ろ、生きてて俺たちの敵になる方が厄介だよ。
まぁ、そんな生活も1年や2年で終わるのは目に見えてるけどね。
最終的には自給自足で生きて行かなきゃダメな訳で、そうなったらどこかの田舎か、親のいる北海道の孤島に行けば良い訳だがなんせ遠いのだよ。
北海道の冬は『シバレル』が、ゾンビも動きが遅くなったりしてね。
もしかしたら冬眠するかも?
出来れば氷漬けになってくれると助かる。
虫も出ない、ゾンビも居ないし人もいない。
うむ! まさに俺が拙い頭で考えられうる桃源郷ではないですか!
まぁ俺たちが冬を越せるかの不安もあるけど、危険な存在が居なければ生きては行けるでしょ。
そう思いながら車を運転する。
毎回思うが、宏樹と外出するとなぜ俺が運転手なのだ?
北海道へ旅行した時も10時間連続で運転してたし…
あの時は宿泊したホテルの空気が乾いていていたのか喉に違和感を覚えた翌朝、熱を出したんだよな~
でもスノーボードをやりたい宏樹に無理やり起こされてスキー場まで運転したっけ。
はしゃいでいたら知らない内に熱も下がっていたんだよね。
あの時は思ったね…宏樹は『鬼だ』って。
そんな状況でも一緒にスノボーをやる俺も大概だけど。
そう言えば、体調が悪いのにも拘らず河口湖に釣り行った時もあったな~
強風でルアーが飛ばないし、釣れないし…結局釣果0で家帰って熱測ったら39度の高熱に魘されたっけね。
あの時も思ったね…宏樹は『鬼だ』って。
京都に行った時も8時間連続で運転してたし…
わざわざ八つ橋を買う為だけに最初は向かったんだよな~
ついで? に、大阪でたこ焼き喰って…
事あるごとに運転するのはいつも俺だったな。
まぁ…いいか!
自分で運転していた方が安心できるし、宏樹も俺に運転させた方が気楽なんだろ。
道路に放置されている車を横目にゾンビの有無を確認しながら極力安全運転に徹する。
そう言えば今日は日曜日だったか。
いつもならこの道路もフォレストタウンやショッピングセンターへ向かう車で多少渋滞する道路だ。
車内だけ見ればショッピングセンターに向かう引率の先生と部活動の買い出しに借り出された中学生って感じで、後部座席では女子中学生が談笑しているホノボノした光景なのだが。
稀にゾンビが散歩をしている道路をゾンビに衝突しないようのんびりと走行している。
まぁ、ベレッタを片手に談笑している中学生もいないか(汗
エンジン音を極力立てないで走行しているのでゾンビも興奮したように迫って来ない。
音を立てないと言っても、人間が生活をしている音が一切なくなった代わりに、風のせせらぎや鳥の鳴き声が良く聞こえる。
そんな中で低音走行をしていてもエンジン音は嫌でもよく聞こえる。
音が近づくにつれゾンビも音の発生源が分かるようになるのか、時折振り向いては車の方に向かってくるがそんなのをヘッドショットをかます訳でも無く、轢き殺すでもなく淡々と避けてゆく。
音を立てないのならスリングショットでもいいのだが、俺たちはハンターではないし、倒したゾンビの処理も面倒だし心が荒むほどに病んでも居ないから放置しておく。
やっぱり人の形した元人間を笑顔では撃てませんよ、正直。
そうこうしている内にフォレストタウンに到着した。
相変わらず正面玄関にはゾンビがうろうろ……いや、ウヨウヨと大挙している。
俺達が倒したゾンビ以外にも倒れているゾンビが増えているし。
そう思っていると…
―――――タン! タン! タタタン!
不意にどこからか銃声が聞こえる。
うわ! また面倒事だ。
いつもの俺ならそのまま回れ右で帰宅するのだが、まゆゆとノンたんは銃を構えて辺りを警戒するが顔色優れない。
ユウコりんはSR-25を後部座席から取り出し肩に背負うと何故か歪な笑顔を湛えている。
ハルちゃんも宏樹の前に出てユウコりんと共通する笑顔を覗かせている。
うん、この二人に何か言うのはやめておこう。
「宏樹さん、どうしますか?」
俺はいつもの口調で宏樹の方を見て質問するが、宏樹も答えは出てるでしょ? と言った表情とみんなの顔を眺めて口には出さないが、顎をショッピングセンターの入り口にクイッと向ける。
「ですよね~」
仕方がない、行きますか。
まずは皆に確認を取る。
第一に状況確認。
その為にみんなはインカムをセットし通信テストを行う。
第二に極力戦闘を行わない。
状況分からず、無暗に放銃し戦闘に参加するなって事。
その辺をユウコりんに念を押す。
ユウコりんは「分かってますよ!」と頬を膨らませ口を尖らせて抗議して来るが
「でも、攻撃を受けたら反撃するからね!」と逆に念を押され、俺も首を縦に振り「当然だ!」とサムズアップする。
その時に口元の歯がキラリと輝いたかどうかは俺には分からんが。
ユウコりんはこの言葉を受けて、鼻歌交じりにもう一つの兵器を背負う。
俺達の所有する武器の中で最強の威力を誇るバレット M82。
対物ライフルとして圧倒的な火力と狙撃性能を誇る。
しかし、ユウコりんにしてみたら対物では無く対人にも使用するところが怖い。
そして、これを正確に扱えるのはユウコりんだけだ。
何で若干13歳の中学生がこんなのを扱えるのだろうか?
甚だ疑問だ。
俺はユウコりんの背に聳える矢印型のマズルブレーキを見ながら、アインズホームで狙撃された人間が目に浮かぶ。
腕が頭が胴体が吹き飛ぶ光景がはっきりと俺の脳裏に映し出される。
完全にグロでホラーでスプラッターで……トラウマです。
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あと、こう言う風にしたら良いとかこんな展開も希望等ご意見ご感想もお待ちしております。
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