第54話:予感2
居眠りした、なんて日だ!
それでは続きをどうぞ
フォレストタウンに行くのはあくまでも様子見と生存者の確認だけで、長居はする予定はないと言う事を指示する。
ゾンビが大挙している場合は、そのまま無線で連絡を取り、確認が出来たら撤収をする。
他にも、生存者がどこかに居るのか、隠れているかの確認。
こちらから積極的に接触する事は憚れるので、出来る事だけを安全圏内で行うを徹底する。
俺達の基本スタンスは"無理はしない"がモットー。
生存者が居て助けても、結果としてこちらが全滅したら何の意味もない。
しかも俺と宏樹は"他人に厳しく自分に甘く"がモットーその2なのだ。
その事を皆にも伝え徹底させている。
無理をしてゾンビを倒す必要なし、とか無理して生存者を助ける必要なし、とかね。
それにしても今現在、ゾンビが出現したにも拘らずゾンビが出現する前より寛いでいるのは俺たちだけなのか?
ゾンビが大量に居る所では物資が不足し混乱が起きてるだろうし。
場所によってはゾンビに全滅させられてる避難所とかある。
あの中学校のように。
しかし今の俺たちは中学生の夏休み程度にのんびりと暮らしている。
寧ろ、休みが長くて持て余してる感もある。
何しろ夏休みは有限だが今の状況は無限なのだから。
人が増えたからそれなりの物資調達は必要となったが、ここは避難所ではないので自分たちの食い扶持だけ確保できれば困る事も無い。
「今日はお休み」と言い切った後のダラケ具合と言ったら、休日のおっさん以上にグータラしている。
それでもまゆゆとノンたんは水耕農園に勤しんでるし、ユウコりんは有り余る銃器の整備に余念がない。
ハルちゃんは宏樹と一緒にグータラしてるが、宏樹を守る為と言う名目で宏樹から離れずも偵察していたりもする。
そんな状況で本気でグータラしてるのは実質おっさん2名だけなのだ。
そんなグータラダメ親父2人なのだが動く時は動く。
「さて、それじゃ午後になったらフォレストタウンに向かおうか! みんな準備しておいてね」
「「「はーい!」」」
宏樹はバカみたいにストックのある酒の倉庫からバーボンを3本だけ取り出すと鞄に入れる。
道中飲むのかと思ったら以外にも生き残った彼女たちに分けてやると言ってる。
ケチとは言わないが、宏樹は「俺って太っ腹だろ?」とトンチキな事を言ってる。
俺は若干引き気味に「太っ腹とも言い難いがな。」と呟き、俺は俺の準備を始める。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ここは洞窟の中だ。
それは分かる。
自然の洞窟に器材を持ち込み研究施設を設置したような不思議な建造物。
階段は無く、上り坂、下り坂、そして坂の分岐で存在する部屋。
この洞窟は『蟻の巣』と職員から言われている。
この施設を縦切りにすると『蟻の巣』の構造そのままだからだ。
いつからこの施設が在るのかは分からないが広大なこの施設内である日突然、被験者の一人が狂った。
この研究施設は凡そ人類の道徳やモラルからかけ離れた実験を繰り返している。
その名は人体実験。
人の為になる薬物を人で実験する。
その結果如何により研究は飛躍的に進化するのだが人を救う新薬開発過程では人を殺している。
この施設では本末転倒な実験が日々繰り返されていた。
この研究施設はある薬品の開発に躍起になっていた。
ウイルス、菌、細菌の融合体。
ウイルスの増殖に遺伝子書換え能力。
菌糸による成長力。
細菌による毒素生成。
そのすべてを兼ね揃えた『何か』を作り出す為の研究施設。
―――――逃げろ!
誰かが叫んだ。
と同時に研究施設内に非常を知らせるサイレンとアナウンスが流れる。
ある人が叫ぶ!
「バイオハザードだ!!」
研究施設内で発生したバイオハザードにより、研究員が急いで地上に出ようとしている。
そんな混乱の中で一人、また一人と狂った人の餌食になり狂人が増えてゆく。
そんな混乱から数時間後、俺達は狂人から身を守るべく施設内を逃げていた。
脱出用エレベータが目の前に見えるが、後方に狂人の壁が押し寄せてくる。
―――――はやく!
エレベータから差し出されたその手を掴むとエレベータの中に引きこまれる。
宏樹もエレベータの中に入り、扉が閉まる寸前に押入ってきた狂人の頭めがけショットガンを放つ。
頭を吹き飛ばされた狂人は後方に迫ってきていた狂人を巻き込み吹き飛ぶとエレベータの扉が完全に閉まる。
「ああ、危なかった! 助かったよ~」
とエレベータの女性と握手を交わすと、俺の腕に歯形がありそこから血が滲みだしている。
「お…俺も噛まれてたのか……」と痛みを感じない腕を眺める。
宏樹は気難しそうな顔をしている。
女性も目を瞑り落胆の表情だ。
「「「………」」」
無言がエレベータ内を包み込むと数秒後、エレベータが地上に到着する。
しかし、そこでも既に阿鼻叫喚の地獄絵図だった。
地上でも狂人に喰われる職員。
喰われ絶命したと思われた職員が別の職員を襲う。
職員を襲った狂人がゆっくりとこちらに振り向くと立ち上がる。
倒れた職員の破れた腹部から腸をつかみながらこちらに歩いてくる。
職員は自身の体内から腸を延長コードのようにズルズルと抜出される様を見ながら声にならない声を出す。
狂人は更なる食欲を満たすためにその腸を食みながらこちらに歩いてくる。
周りも銃声と悲鳴が辺りを埋め尽くしている。
まさにこの世の終焉が始まったかのようだ。
俺は刻印のように刻まれた歯形を眺めていたその時、何かが覚醒したかのように細胞一つ一つから熱を感じると、目の前に迫りくる狂人に掌を向ける。
教えられてもいないのに掌から炎球が飛び出すと炎に包まれた狂人達を炭に変えてゆく。
その炎はまるで生きているかのように狂人から狂人へ伝達し全ての狂人を飲み込んで消滅させてゆく。
「どうやら俺はここまでだな…後の事は任せろ!」と言ったその直後、エレベータで手を差し伸べてくれた女性に頭を叩かれる―――…
いつの間にかソファーで寝ていた俺の頭部をユウコりんがMINIMIのストック部で軽く小突いた。
「はやく! 準備終わったの? 行くんでしょ」
「―――…あ、そうだね」
重い体をソファーから起こすと一つアクビをする。
前も見た夢。
こんな世界だから、ゾンビの夢ばかり見るのは仕方がないよね。
しかし、毎回思う。
あの夢の続きを! と。
そして、毎回ユウコりんに後頭部を叩かれて目が覚めるんだけど…
しかし、あの研究所の女性は誰だったのかな?
見た事ないけど、見た事ある様な?
夢ってそんなことあるよね。
俺は、準備していたリュックを肩に背負いワンボックスに乗り込むとフォレストタウンへ向けて出発する。
察しの良い人はタイトルで分かってしまったと思いますが
夢の中の自分って結構カッコいいところあるよね?
って話パート2でした。
誤字脱字や矛盾等がありましたらご報告お願いします。
あと、こう言う風にしたら良いとかこんな展開も希望等ご意見ご感想もお待ちしております。
評価など頂けたら嬉しい限りです。