第50話:ハートフルケア
後始末等を考えてたから少し長いです。
話を二つに分けても中途半端になりそうだったので辞めました。
それでは続きをどうぞ
俺と宏樹は珍走団B君の処遇を考えていた。
まゆゆ、ユウコりんは頻りに「「殺しちゃえば?」」と冷ややかな流し目で冷ややかな顔で言われていた。
当然視線はB君に向けられている。
そのまゆゆとユウコりんハルちゃんは、生存者の女性たちに付き添いスタッフ用シャワールームに行ってる。
生存者は女性のみ10人で若いのはユウコりんと同じ13歳で上が42歳。
流石にハグレとはいえ同級生のやらかした問題に関して傍観者として過ごすことは出来ない。
今すぐには無理だと思うが何とか傷を癒してもらいたい。
どうやらハルちゃんは宏樹の頼みなら聞くらしい。
まぁ宏樹に付き従うのは自分の命の危険も無いと分かったから従ったか定かではないが。
俺は「ふむ~」と声を洩らしながらB君を見る。
宏樹も「んん~」と声を洩らしながらB君を見る。
B君も「お願いします。何でもします! 殺さないで!」と涙と鼻水を垂れ流し神に祈る様に懇願している。
俺としては、こんなゾンビの蔓延る地獄の中で涙と鼻水と涎まみれの顔をして生きたいとは…まあ……思うか。
考えた結果。
まずは彼の実績を見ても遅くは無いだろうと判断する。
「では、まずは君に仕事を与えます。この元お仲間や3階の元先輩の死体を荷台に乗せて屋上から捨ててきなさい。その際は出入り口と逆の方に捨ててね。そうそう、燃やされている人たちの供養も忘れずに。蝋燭とお線香と花…はさすがに無いか? とりあえず造花でも売り場に行けばあるでしょ。」
「はい! …そうしたら助けてくれますか?」と懇願してきたので
宏樹から溢れんばかりの笑顔で「やらなければ確実に死ぬね」と言われると、機敏に足を引きずりながら死体を台車に乗せ、何往復も行き来している。
婦人服売り場で洋服を調達してきたのか、生存者に混じって中学生トリオも着替が完了している。
こんな世界なので普段はスカートとか推奨していないんだけど……眩しすぎる。
30歳のおっさんには中学生の生足は眩しすぎます!!
まゆゆとユウコりんは俺の方に来て、「「どう?」」とその場でクルリンまわり出す。
「ん…すごく可愛いよ」と言われて先程とは比べようもない程キラキラ笑顔を俺に向けてくる。
宏樹の方を見たら俺と同様にハルちゃんに何か言ってる。
あの二人は今夜お熱い夜になるのでしょうか?
別に羨ましくないし。
コッチには天使が2人も居るんだぞ~(時々鬼になるけど)
「あ…あの、助けて頂きありがとうございました」
生存者を代表して一人の女性、と言うkマダムが話しかけてくる。
マダムって言っても20代と言われても分からない位に若く見える。
「いえいえ、私は何もしてませんので」
俺はお礼を言ってきた生存者の女性に手を振りながら答える。
まゆゆとユウコりんは、同い年位の生存者を色々と宥めている。
中学生には相当つらい経験だろうね。
あの子には男である俺たちは極力接近すべきではないな。
俺は生存者の女性に疑問を投げかける。
「今後はどうするんですか? ここで暮らすんですか?」
俺ははっきり言ってハーレムを作りたいわけじゃないし団体行動も出来れば遠慮したい。
「…お二人は…」
そう言われて、そう言えばまだ名乗っていなかったなと思い自己紹介する。
「俺は武志って言います。あっちは宏樹です。」
宏樹とハルちゃんがこちらにやってきて自己紹介する
「宏樹です。宜しく」
「私が宏樹の妻の晴美です」
ハルちゃんの言葉を聞いて生存者の女性たちが目を大きく見開く。
中には眉間に皴を寄せてる人もいる。
「私が武志さんの彼女で麻由と言います」
「私が武志さんの2号で裕子です」
まゆゆとユウコりんも被害者中学生の頭を撫でながら、自己紹介をするのだが……
俺は自分の手をオデコに当てながら溜息を一つこぼすと天井を眺めながら後頭部を掻く。
すいません。皆さんの目が痛いです。
「あ…いや…強制はしてませんよ!? 洗脳もしてませんので!!」
「俺もです!」
俺と宏樹は言い訳をしてみるが余計みんなの目が鋭くなった気がする…。
「そ、そんな事は良いので、皆さんはどうするんですか?」
無理矢理と言うか強引に話題を元に戻す。
「あの…武志さんと宏樹さんは、避難場所から?」
「救援隊とかではないんですか?」
複数人の女性から疑問の声が出る。
俺と宏樹は顔を見合わせ即答で答えてやった。
「「違います」」
「え? では皆さんも避難場所とかに向ってる最中ですか?」
「「違います」」
その言葉を聞いてみなさん犯罪者を見る様な目つきに変る。
そりゃそうだよね。
こんな若い子たちを囲って新婚さんゴッコさせていれば、そんな目つきにもなるよね。
「何でですか? 彼女たちを安全な場所で保護したいと思わないんですか?」
「女の子にピストルを持たせて、良く大丈夫ですね」
「そんな年端もいかない女の子に妻とか、彼女とか2号とか恥ずかしいと思わないんですか?」
強引に話題を戻したのに元の木阿弥。
うん、予想はしてたけど凄い言われ様だね。
今までの世界だったら完全にアウトな犯罪者だもんね。
現にこの女性たちは信行たちに良い様に扱われていた訳で…
仕方ない、俺流の論破のお時間ですね。
「……では聞きますが、あなた達は何故避難所に避難しないんですか?」
こういう時は口調も表情も極力優しく、柔らかにがモットーです。
「それは、ここが安全だと思ったので」
俺はショッピングセンター内を見渡して質問する。
その視界にはセッセと死体を運ぶB君の姿が。
「安全でした?」
「………」
生存者の女性たちは互いに互いの顔を見合わせた後、一様に頭を垂れる。
「俺はね、彼女たちに強要している事は何一つ無いんだよ」
そう言うと、まゆゆとユウコりんがこちらに向かってくると、女性たちを見て話を始める。
「私たちは大丈夫と言われた避難場所でゾンビに襲われたんです。命からがらそこを脱出して、もう一つの避難場所である中学校に逃げ込みましたが、そこもゾンビがいっぱいでした」
そんな話を聞いてみんな顔に影がかかる。
「唯一、扉が丈夫な音楽室に立て籠もったんですが、食料も水も無く、半ば諦めていた所に武志さんと宏樹さんに助けられました」
ユウコりんに半ば諦めかけていたと言われても実感がわかない。
恐らく、本当にダメだと思ったら音楽室に在る道具全てがユウコりんにとって武器になるんだから。
ま、そんな事は心の片隅に留めておこう。
そう決めて俺は彼女たちの話を黙って聞く。
「私たちも、最初は…その…犯されると思ったんです…でも!」
「武志さんと宏樹さんは私たちに手を触れるどころか、飲み物と食料を提供してくれたんです」
「私は『この人たちが守ってくれる』と安心していると、『一緒に住めない』と言われました」
ハルちゃんが参戦。
まあ、確かに言ったけどここで今その話を出したら逆効果じゃない?
「中学生の私たちを守るのが大人の義務だと言ったら、怒られました」
それを聞いた女性達は眉間に皴を寄せこちらを睨む。
中には顔を赤くし今すぐにでも絞め殺してやると言った雰囲気の人さえいる。
「何様なのよ! 中学生を守らない男なんて考えられないわ!」
「やっぱり体目当てなのよ!」
うん、少し殺意が湧いてきた。
この女ども殺しちゃおうか?
俺は良い人ではなく、どちらかと言えば悪い人の部類だぞ?
好き放題言われて呑気に笑顔を返せるほど大人じゃない。
それに今は日本の法律が無効で、文字通りここは無法地帯なのだよ。
俺は銃のグリップに少し力が入る。
「でも!! 違うんです!」
女連中はハルちゃんの剣幕に押し黙る。
誰かがヒートアップするのを見ると、周りは落ち着きを取り戻すって言うけど正にそれだった。
俺も沸いた殺意が若干薄まって行く。
「二人は、私に『自分の身は自分で守れ』と言いました。最初は全く意味が分かりませんでした。子供を守るのが大人だと思ってたのに…でも、今は分かります。」
ハルちゃんの言葉にまゆゆとユウコりんが後押しをする。
「そうです。『自分の身は自分で守れ』と言う事は、自分を守る事が他人も守る事だと知ったんです」
「誰かに助けて貰らってしか生きてゆけないのなら、それは生を、生きる事を放棄している事だと教えられました」
「私は二人の話が理解できず、納得も行かなかったので、他の避難所に連れて行ってもらいましたが…そこの生存者に犯されそうになりました。その時、自分を守るのは自分なのだとハッキリ気が付きました。そして、それが他人も救うことだと分かりました。だから私は宏樹さんを守ると誓ったんです。だから私は自分の身は自分で守るために銃を手に取りました」
ハルちゃんの話を聞き女性陣は驚いた顔をした後、次第に項垂れてゆく。
「生き方を教えてくれた大人だから、私たちは進んで武志さんと宏樹さんに同行しているんです」
「今までの大人はその事を教えてくれませんでした。親も先生も自衛隊の人も…でも武志さんと宏樹さんはこんな世界になっても生きることを諦めず生きる術を教えてくれました。そんな人だから私は2号でも良いと言ったんです」
ユウコりんは既に一人でも生きてゆける気がするのは俺だけではないはずだ…いや、寧ろ俺たちより生き残れる可能性は高いだろう…と言う事は心の中に沈めておこう。
「でも…未だに、武志さんは何もしてくれないんです」
「本当に…こんなにピチピチの美少女が何度も誘惑してるのに…」
と二人は俺の顔をジト目で睨んでくる。
うん、完全に肉食獣にロックオンされた草食動物です。
そう、一緒に寝てはいるのだが未だに俺は二人を抱いていない。
彼女たちは凄く魅力的だ。
中学生と思えない位、魅惑的で誘惑的で猟奇的だ。
でも、何か、何と言うか、まだダメな気がする。
ヘタレてる訳じゃないからな!
それに男が好きな訳じゃないからな! 男は好きじゃないぞ!
大切なので2回言っておく。
「そうなんですか…お二人とも珍しいくらい誠実なんですね」
誠実かどうかは分からんけど。
自己分析をするに誠実では無いと思うぞ?
「理由は分かりました…色々言ってすいません。」
「……ドウテイナノカシラ?」
おい、後ろの方、聞こえてるからな!?
俺は宏樹の顔をチラリと見ると、バツが悪くなったのか宏樹が視線を逸らす。
あちらはやってるもんな! そうだよな相手は"妻"だもんな!?
俺と宏樹のやり取りで女連中は察したのか苦笑い。
そして沈黙が襲う。
生き残った女性たちも思う所でもあるのだろうか? 殺された旦那、彼氏を思い出しているのだろうか?
「みなさん、ゾンビは女だから子供だからと関係なく、私たち人間は等しく食料なんです」
「そんな世界で、まだ助けを求めるんですか?」
まゆゆとユウコりんが女性陣に疑問を投げかける。
まぁ、分かる人には分かるし、分からない人は分からない。でも問題ない。
唯一であり、絶対な事は、何をしても生きると言う意思。
そして、その意思を可能にする知識。
それさえあれば、聖人だろうが外道だろうが生き残るだろう。
寧ろ外道の方が生き残れるんじゃないか? この世界は映画とは違うからな。
でもフラグだけは立ててはダメだ。
現実世界では影響はないが精神的に縁起が悪い。
うん、影響は無いはずだ。
「そうね…確かに、私たちは、ゾンビが出ては『誰か助けて』。男たちに襲われては『誰か助けて』と言ってたわ…ね……」
中学生の言葉に心打たれたのか女性陣も過去を思い起こす。
「最初から、自分たちで何とかすれば、『誰か助けて』なんて言わないものね…」
女性陣の言葉を聞くと、マダムはこちらに体を向ける。
「武志さんと宏樹さんは、三人を絶えず守っていたのね…」
「いやいや、俺たちは何もしてませんよ」
俺は手を振りながら答える。
いや、本当に。
この中学生、何か違うんですよ。
見てよ、どこの世界に軽機関銃を肩に担ぐ女子中学生が居ますか?
どこにアサルトライフルとスナイパーライフルを背負う女子中学生が居ますか?
「俺も…人頼みでした…怖い先輩に言われて従ってて…大人数だったら何とかなると思い込んでました」
ふと見るとB君が泣きながら立っていた。
「本当に…すいませんでした!!」
土下座を生存者の女性たちにするB君。
「処分は出来たの?」
俺はB君に質問する。
「…はい。全部捨てて来ました」
生存者の女性たちを見るが、この子、誰? みたいな目で見てるので俺は少し思案する。
俺と宏樹は土下座しているB君の横に座り腕をB君の肩に乗せ円陣を組み、内緒話をする。
「お前、彼女たちを見た事ないのか?」
「はい、先輩たちがすぐに囲ってたので…」
「良かったな、お前、殺されないかもしれないぞ?」
宏樹はB君の肩を『ポン』と叩くとB君は「え?」と言って目を白黒させている。
俺はその仕草に軽く笑うと女性陣に向き直る。
「皆さんがココに残ると言うのならこいつを置いて行きます。好きなように使って下さい。」
「「「え?」」」
女性陣は驚きの表情で俺を見る。
「こいつが殺された人の遺体を屋上で荼毘に伏せて線香を手向けておきました。皆さんも後で手を合わせて下さい」
そう言うと、女性陣の中から嗚咽が聞こえ出す。
「あと…これ」
と、俺と宏樹はリュックから元同級生が持っていたM37と自分たちのP220を出し女性達に渡す。
俺は警官御用達ニューナンブと思っていたんだけど、どうやらその後継に当たるらしい。
銃身が短くて俺のストライクゾーンから外れていたからあまり興味はない。
ベレッタの方がかっこいいじゃん? と言う中二病が顔を覗かせる。
ユウコりんは俺や宏樹から銃を受取った女性達にM37やP220の使用方法や取扱い方法をレクチャーする。
使用方法は良いんだけど、ニューナンブとか関係ない銃の解説まで入って…凄く長くなりそうな雰囲気だったので話を打ち切る。
女性たちも苦笑いで助かったと言う安堵の表情を浮かべる。
本来、女性はこう…ミリタリー系とかウンチクとか興味ないよね。
ユウコりんは頬を膨らませながら同い年の子に肩に背負ったM4を渡すと使い方とかをレクチャーしている。
え? ユウコりんM4をその子に渡すの?
本当はここにいる全員に銃を渡そうと思えば渡せるくらいに銃のストックがあるからM4の一丁位は、ま、いいけどね。
俺は女性達に注意を促す。
「あと…あれ? お前名前なんて言うの?」
これから死ぬであろう男の名前に興味無かったし、聞かなかったんだよね。
「き…キヨシっす」
「あと、こいつには、銃を極力渡さないように。でも、渡すも渡さないもあなた達次第です。ここで生活するのも避難場所に行くのもあなた達次第です」
女性たちは凄く納得したように首を縦に振ってる。
「ここで会ったのも何かの縁です。私から生きる為の知識を簡単に教えておきます」
銃を渡された女性陣は固まって俺と宏樹の話を聞いている。
「良いですか? 今の世の中、全ては自己責任です。避難場所に行くのは否定しませんが、そこは本当に安全なんでしょうか?」
「避難場所に行っても生存者が居るとは限りませんし、居たとしても正しい人間が居るとは限りません」
「人間は多くなればなるほど、尊大になったりして争いの元になりますので気を付けてください」
「銃は身の安全を守るだけの物であって、略奪の為の道具ではありません」
「生きる為の知識を身に付け、少し先の未来を予想して色々な可能性を考え行動して下さい」
「人と意見を違えた場合、違う道を行く方が安全な場合もあります」
「後はこいつをうまく使ってください」
「「「殺しても良いです」」」
最後の言葉を聞いて、B君、いやキヨシがビクンとする。
はは、冗談だから真に受けるな。
「それでは、頑張って生きてください」
女性たちはマシンガンのように語られる俺、宏樹、まゆゆ、ユウコりん、ハルちゃんの言葉を目をパチクリさせながら聞いた後にお礼を言ってくる。
「そうだ!」
と俺は思い出したかのように女性たちに振り向くと
「彼女たちの着替えと、俺たちの着替え…少し貰ってもいいですか?」
そう言われると、銃を受け取った女性達が微笑ましく言ってくる。
「ここにある物が全て貴方達の物です。ご自由に持って行ってください」
「ありがとうございます。食料品は持って行かないようにしますんで!」
女性陣から嬉しい言葉を頂くと体を翻し、右拳を高々とあげる。
「さて! ショッピングだ~!」
中学生トリオも「お~」と歓喜の声を上げる。
「私が武志さんの洋服を選んであげますね」
「あ! ずる~い! 私も選んであげるからね~」
とまゆゆとユウコりんは爽快な笑顔で俺の腕に掴まる。
その様子を見て私もと声を上げたのはハルちゃん。
「では、私が宏樹さんの洋服を選んであげますので! これも妻の務め!」
「あははは、ありがとう。行こっか!」
宏樹も満更でもない様子で腕を引っ張られる。
こうして、洋服や下着など必要な物資を手に入れて岐路に着くとするのだが…。
誤字脱字や矛盾等がありましたらご報告お願いします。
あと、こう言う風にしたら良いとかこんな展開も希望等ご意見ご感想もお待ちしております。
評価など頂けたら嬉しい限りです。