第46話:環境整備
私事であれなんですが、父親が入院しまして、もしかしたら投稿に日数を頂く可能性があります。
時間を見計らって投稿するつもりではありますが、その時はご了承ください。
それでは続きをどうぞ
2日目のアインズホームでの物資調達が滞りなく終わり、俺と宏樹は屋上で部屋の内装を思い返し一息ついていた。
我が家の内装も乙女チックになっているのだ。
俺と宏樹が住んでいた時は、武骨と言うか、機能性重視だったため、至ってシンプルなデザインで必要なものしか無く部屋も広く感じていた。
良く言えばシンプル。
悪く言えば生活感のない部屋だったのだが、今現在、女子中学生トリオ色に染まりつつある。
リビングには銃が立掛けられたりして中々にミリタリー色が強いのだが、各部屋はもう完全に中学生女子の部屋となっている。
各部屋と言うのも、殆ど物置にもなっていない空き部屋だったのだが何故か俺と宏樹の部屋にも女子中学生チックが侵食してきている。。
年中シャッターが閉まっているのでお披露目こそないが、カーテンが変りチェストが加わりカーペットがふわふわになり…自分の家じゃないみたいだ。
広く感じていた部屋も何か手狭に思う。
それでも、各部屋には必要最低限の武器が在るのがまたアンバランスだ。
この家の中で唯一変わらない部屋がある。
いや、ゾンビパニック以降と言う限定期間であるならばであるが。
パニックルームやセーフルームと言われる部屋だ。
何で日本に住む俺がこんな部屋を用意したかと言うと、ゾンビが現れであろう事を想定し隠れる為です。
はい、嘘つきました。
自称セーフルームは単に趣味であるドラムやギターを演奏する為の部屋なのだ。
そんな防音に優れた部屋でも、音が完全に無くなる訳でも無い。
時折3階に居る宏樹に『うるさい』と言われたからなのだが、3階に居る宏樹に聞こえると言う事は、近隣住民にも聞こえる訳で、完全に『近所迷惑』な家と噂されてしまう。
只でさえ、男二人で一軒家に住んでると変な噂が流れるのに、さらに変な噂でも上乗せでもされようものなら……。
そう考え、宏樹の仕事道具・工具置き場になり備蓄倉庫に変貌していき、なぜかモニターと防犯カメラが手に入ったので、気が付けばセーフルームへと遷移した。
今では武器庫に様変わりしたのであった。
この部屋だけが乙女チックとかけ離れたミリタリールームなのだが、そこの主はユウコりん。
ガンパウダーが在って、旋盤やフライス盤、溶鉱炉など様々な器具が在ったら、この部屋で凶悪な銃や弾が作られていたのは間違いないだろう。
そんなユウコりんは本当に不思議な存在だ。
アニオタ・ガンマニアとしての顔を持ちゾンビを躊躇せず倒す。
初めて会った時の、ハルちゃんに寄り添う様に居たのも、ハルちゃんを落ち着かせるための演技だとしたら精神構造がとても13歳とは思えない。
小さい体なのにも拘らず、射撃スキルも異様に高くMINIMIやバレットM82を難無く扱う射撃技術。
バレットM82なんて、ちゃんと構えてなければ相当な反動があるんだけど、その反動をものともしないで、超長距離射撃を行う。
反動が抑えられなければ最悪、肩が外れる事もあるそんな諸刃の最終兵器。
ストックが当たる場所によっては骨折する事だってある。
とても初めて撃つようには思えない。
俺の30年を生きる人生において知る限りこんな13歳を見た事が無い。
いや、聞いたことならある。
幼少時からマフィアに育成された殺し屋、グラスハー………いや、それはいいか。
何にしてもユウコりんに関しては親が自衛隊員と言う事以外何一つ分からない。
この家の内装を鼻歌交じりで乙女チックに張り替えていく様子は13歳の中学生そのままなのだが。
宏樹に言わせれば壁紙の張り方が職人だそうで…
―――そんなユウコりんに関して唯一分かる事と言えば『ツンデレーション』と言う事だけだ。
もしかして地下室で『ムフフフフ』と怪しい声を上げながら魔法の薬でも作ってるのでは?
そんな訳ないか。
実は使っていない銃たちの整備をしてるだけなのだが『ムフフフフ』と怪しい声は出しているのは確かだ。
ハルちゃんとまゆゆは、今現在何をしているのかと言うと隣の家を改装中だ。
この家の中で水耕栽培は手狭過ぎる。
と言う事で、隣の民家を拝借しようとなった。
宏樹がアインズにあった足場パイプや足場板で隣の家の塀を拡張して、安全性を高めている。
本当は塀を壊してブロック塀を作るのが強度的にも作業的にも楽なのだが、如何せん取り壊すにも音が出てしまうので止むを得ない。
隣の家の中はLEDライトが絶えず照射しているのでドアや窓は光が漏れないようにしている。
電気代も必要ない今のうちに、ビニールハウス並みに温かくし季節も関係なく栽培できるようにしている。
と言っても成長速度が早くなるわけでは無いので、それまでに今の食材事情を凌ぎ切る事と俺たちが生き残る事が前提だ。
ついでと言うか一仕事と言うか、隣の家にも防犯用のセンサーを取り付けておいた。
これによりセンサーに反応した場合、対象者の周りにライトが付く代わりに俺たちの居る部屋の中でライトが付くので、侵入者に俺たちの存在を知らせる事も無く且つ、迎撃準備も万全となった。
監視カメラも起動し『ユウコりんの部屋』でモニターを確認する事も可能。
まぁ、その前にこの区画に立ち入った時点で警報用ライトが付くから無用と言えば無用なのだが、用心に越したことはない。
そして始まる本日の献立問題。
飢えている人たちには大変顰蹙なのですが、本日も肉料理で悪戦苦闘。
鶏のから揚げ、チキン南蛮、豚の角煮、かつ丼、親子丼、ローストビーフにステーキ焼肉……肉づくしの毎日。
本当に野菜って偉大なんだなと思った。
幸いにも、卵は養鶏場から拝借できるので不自由はない。
動物性蛋白質のみ摂取してるからなのか……最近、便秘気味。
早く野菜が欲しいものです。
あ、因みにこの養鶏場の鶏たちは野に還しておいた。
と言うか、勝手に野に還っていた。
ほら、鶏ってうるさいじゃん?
うるさいとゾンビ来るじゃん?
そのゾンビは鶏たべないじゃん?
でもうるさいから徘徊するじゃん?
そうこうしている内に、ゾンビが力無き無限突進を繰り返す内に柵を壊しまわってたんだよね。
そのゾンビ達、自分で柵にツッコんで、むき出しになった柵の端(太い針金を想像してくれ)で自爆してた。
相変わらずバカですね~。
さすがに養鶏場の鶏を絞めて頂くと言う事は俺には出来ない。
食材管理をしているまゆゆも首を横に振る。
ハルちゃんは目を合わせてくれない。
宏樹も無理と言う。
ユウコりんは「今はやりたくない」そうだ。
うん、その時が来ればやってもらえそうだな。
でも、卵には不自由しないので鶏は諦めて放置プレイだ。
放置プレイと言っても逃げ出さないように囲いはしてある。
狭い範囲の放牧と考えてくれ。
ここからもう少し山の方とか行けば畑が在るのだが、橋が破壊されて渡れなくなってる。
仕方がないので宏樹に今度は橋でも作ってもらうか提案したら「パジェロとか四駆が有れば良いじゃん」と真顔でユウコりんに言われた。
俺と宏樹はお互いの顔を見て「「パジェロか!」」とハモった。
最初の武器を手に入れたときに使ったパジェロを川の土手に下に捨てた事を思い出す。
「あれ、使えるかな?」
「横転してなかったら使えるだろ」
俺はその時の状況を皆に話す。
ユウコりんに至っては「勿体ない……」と手をおでこに置いて首を振っている。
でも、幾ら四駆でも川なんて渡れるのか? NETでポチポチ見てみる。
フムフム……川幅も無いから行けそうな気がしてきた。
明日は早速、パジェロが生きてるか確認だな!
川を渡った先には畑も近い。
これでまゆゆ料理のレパートリーが増えるんじゃないか?
翌朝、M4を背負い、パジェロを捨てた土手の下を見てみる。
―――………うん。
あれはどう贔屓目に見ても無理だね……。
パジェロは土手から落された勢いに、そのまま惰性で川の手前で停止しているが、残念な事に勢い余ってテトラポットの上に乗り上げて停止していた。
右と左のタイヤはあらぬ方向を向いてるし、完全にテトラに乗り上げてるし。
俺達にそれ以上パジェロに惹かれるモノは無かった。
俺達は苦笑いをしながら家に着き、パジェロの現状を報告すると、まゆゆとハルちゃんが「全く…」と呆れ顔。
ユウコりんに至っては「勿体ない……」と手をおでこに置いて首を振っている。
「「ホント、すいませんでした」」
結局話し合いの末、野菜をゲットする為に近くの密菱自動車に凸する事になった。
無論四輪駆動車目当てだ。
翌朝、俺と宏樹は車をゲットする為に密菱自動車販売に来ていた。
外で中古車を物色していると俺達同様に車を探していたのだろうか、こちらに近寄ってくる人影がある。
「ちょ、やめて下さい」と言っても「あ゛~」とか「お゛~」とか言って近づいてくるので、どうやら俺たちの事が気に喰わないのか、相手はケンカ口調で話にならない。
そうこうしていると、殴りかかって来そうだったので必殺鉛星を額に喰らわす。
まったく、客層が悪いなと思いながら店の中に入るとスーツ姿の営業マンが出迎えてくれるのだが、こちらも「あ゛~」とか言って話にならないので鉛星を額に喰らわす。
営業マンは『ふっ、負けたぜ、もってけ泥棒!』と言わんばかりに床に大の字に寝る。
出来れば水陸両用車が無いか大の字で寝ている営業マンに訊いても濁った眼を向けて「お客さん冷やかしですか!?」と言いたげだ。
「新車があるじゃん!」と宏樹が話していたら「お゛お゛~」と奥からスーツを着た元営業マンとつなぎを着た元整備員がやって来る。
奥から出てきたスーツ姿の人はどこか貫禄がありそうでエライ人っぽい。
整備員を従えてこちらにえらい剣幕で近づいてくる。
新車をベタベタ触っていたので癪に障ったのだろうか。
謝ってもなかなか許してもらず仕方がないので、すいませんと二人に鉛星を差し上げる。
二人のゾンビも『ありがとうございます~』と鉛星を額で受け止めると、嬉しさのあまり昇天したのか貫禄のある営業マンは大の字で寝てしまった。
つなぎを着た整備員は大の字で寝る営業マンに覆いかぶさる。
店長と整備員と言う関係の前に、この二人は…そう言う関係なのね。と俺も宏樹も納得して営業マンが来た方に足を運ぶ。
壁にキーケースが設置されており、その中に展示されている車たちの鍵が収まっている。
しかも親切にも車種、ナンバーが明記されており致せり尽くせりだった。
今後もこのディーラーを御贔屓にしようと宏樹と合意する。
先程の店長らしき貫禄のある営業マンも気持ち満足そうな表情に見えるから不思議だ。
カギを刺し込みエンジンの始動確認をしてガラスの大扉を開けて車出す。
そのまま家に帰ろうと思ったがガソリンが入ってないのでいつものスタンドで給油する事にした。
スタンドに向かっている車内の会話で
「密菱の営業マンも大変だよな。密菱の車でパジェロ以外に何を買うんだよ。他に欲しい車なんて無いよな?」
と何か密菱自動車に怨みでもあるのか宏樹が毒を吐く。
うん、確かにそうなんだけど…あんたが使ってる軽トラも密菱だよと心の中で突っ込んでみた。
誤字脱字や矛盾等がありましたらご報告お願いします。
あと、こう言う風にしたら良いとかこんな展開も希望等ご意見ご感想もお待ちしております。
評価など頂けたら嬉しい限りです。