表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様?いいえただの悪魔です。  作者: 次元
第3章:死者の星
160/384

第45話:未来への種

動物愛護者にとっては少し可哀そうな描写があります。


それでは続きをどうぞ

俺達は今、秋志摩駅前にあるアインズホームを近くの団地の屋上から双眼鏡で眺めている。

ゾンビパニック直前に物資を集めたホームセンターだ。


「あれ、店舗正面入り口や駐車場入り口にバリケードが設置されてるな……しかもゾンビもバリケードやフェンス周りいると言う事は、あれ、生存者いるだろ」


宏樹の言った通り、大群では無いにしろゾンビが聖者を求めて彷徨っている。


「流石にゾンビが発生したらホームセンターは立て籠もる場所の定番だもんな~あとはショッピングセンターか」


宏樹は複合ショッピングセンターのフォレストタウンに目を向ける。

ここからではフォレストタウンの様子は伺えない。


みんなは双眼鏡でアインズホームを確認する。

双眼鏡を覗いたまゆゆはこちらに疑問を投げかける。


「で、どうするんですか?」


「突撃ですか?」


まゆゆの疑問にユウコりんが物騒な事を言ってくる。


「俺は略奪とか強奪とかしたくない。あそこに人が居るならそのまま放置しようと思うのだが、どうだろうか?」


宏樹は目を瞑り腕を組みながら持論を述べる。


「そうだな…わざわざゾンビを倒してまで行く必要も、生存者と関わる事も必要ないと思うな」


「そうですね。行っても安全と言い切れませんから」


小学校での出来事を思い出したのか、まゆゆが納得している。

俺達は銃器を持っているから、その気になれば皆殺しできるかもしれないが、俺達は快楽殺人者でも無ければ略奪者でも無い。

俺達の安全は高水準で満たされているのだが、その安全も100%では無い。

生存者と争えば音はでる。

その前に群がるゾンビを退治するにも銃は使わざるを得ないので轟音が響くだろう。

それにつられるのがゾンビだ。

今は人間を捕食する天敵。

そんなのを相手にしてられない。


「でも…本当に生存者が居るのでしょうか?」


突撃を却下され少し残念そうなユウコりんが言うと、俺はそれに異を唱えた。


「まさか、確認しに行こうとか言うの? あのゾンビの数、ここから狙撃するにも結構な弾を使うよ?」



「矢が無駄になるかもしれませんが、これを使いましょう」


ユウコりんはリュックから分解されたクロスボーを取り出す。


「「「「????」」」」


ユウコりん以外もみんなが首をかしげる。


「もう、分からないんですか? 矢に紐をつけて、発煙筒か何かを括り付けて飛ばすんですよ」


発煙筒は車に付いている。

何だか分らんが俺は、発煙筒を取ってくると言うとユウコりんは「水の入ったペットボトルもお願いします」と言ってきた。

車から発煙筒と水の入ったペットボトルを持ち屋上に戻る。


俺は階段を勢い良く上がって来たため、ペットボトルの水を飲みながらユウコりんに渡す。


「ちょ、何飲んでるんですか!?」


「え?」


「も~……」


と言いながらユウコりんご立腹。


しかし、ユウコりんが作業をすると、一同納得した。


発煙筒と同じ重さに調整したペットボトルを紐に結び、アインズホームのフェンス内に矢を射ると思いのほか飛距離が伸びず、失速する。

その失速具合を確認する為のペットボトルだった訳だ。


「流石軍曹! 伊達じゃない!?」


「軍曹じゃありません!」と射抜くような視線を向けられ、危なく先程飲んだ水が下から出てしまう所だった。


発煙筒は一条の煙を伴ってアインズホームの駐車場に見事落下する。


発煙筒の煙が濛々と辺りを曇らせる。


僅か5分足らずの煙幕だったが、十分に目立つだろう。

ゾンビも発煙筒の音に反応したのか煙に反応したのか、ゲートに阻まれて侵入できないが、一生懸命駐車場に入ろうと頑張っている。


その反応を見るに、アインズホームの中にゾンビが侵入してるとも思えない。


生存者が居るのであれば煙を確認する為に、安全な駐車場まで来ていてもおかしくは無い。

とすれば、アインズの中には生存者はいないのか?


「生存者は恐らく居ない。とすれば、物資を調達するまでだが…」


「ここから出来る限り狙撃をするしかないだろうな」


と言うと、宏樹を含め、ユウコりん、まゆゆ、ハルちゃんはSR-25を構える。


そんなに距離が離れていないのと、M4A1の練習と思って俺も構えると


「くぉら!」とユウコりんに怒られる。


「何で私たちがこれを使ってると思ってるよ!」とSR-25を前に出す。


「あ、そうだったね。音を出さないようにしないとね。テヘペロ」


「も~テヘペロじゃない~!」


「まぁまぁ、色々考えてるように見える武志先生はある時突然アホになるから、俺たちが注意すればいいんだよ」


うむ…的を得ているだけに反論できない。


「流石、長年行動を共にしている人の言葉は重みが違いますね? 麻由先輩」


「ホントね。今度、武志さんの取扱方法を教えてください」


「了解した」と宏樹は親指を立ててサムズアップ。


ユウコりんとまゆゆは宏樹に言っているが、目は完全にこちらを射抜いている。

俺は完全に怖気付いて「宜しくお願いします」と宏樹に一礼する。


『パシュ…パシュ…』と音がするので、そちらを見てみると、ハルちゃんが一生懸命狙撃している。

その射撃音はサイレンサーのおかげで消音効果は絶大。

それでも空気銃やガス銃の射撃音位は音を発する。


ハルちゃんは早々に20発を撃ち終え、マガジンを挿し替えると「私がやっておくから、宏樹さんは休憩しててください」と再び狙撃し始める。


「わゎ…晴美先輩に全部取られる!」


とバイポッド(二脚)を展開し、ユウコりんも撃ち始める。

このゾンビの数を全部取られるって…


「武志さんは周りを監視しててくださいネ」


と言いながらまゆゆも狙撃を始めた。


「女の子は逞しいな……」と言いながら宏樹も狙撃に参加する。


俺は、狙撃に集中しているみんなの代わりに、空になったマガジンに弾を詰めながら辺りを警戒する。


何故なら、ここは駅前でイスパと言うスーパーを含む複合施設が軒を連ねる一角と言う事もあり、いつ生存者が現れるか分からない場所でもある。


狙撃手は狙撃に集中するので、相棒が替わりに索敵をするのは常識だ。

アインズ周辺よりも総合施設のある方を念入りに監視していた。


みんな2個目のマガジンを撃ち終わると、銃身を冷却するついでに一息つく。

ユウコりんは、みんなが狙っても当たらない一番遠くのゾンビ担当なようで、集中して撃っている。

3つ目のマガジン内の弾を撃ち終えた所で、粗方片付いたようだ。


俺、結局撃てなかった……。

俺がやらなくても、強力なスナイパーが居るんだからまぁいいか。


アインズの方を見ると、ゲート前にゾンビが倒れているのだが車が通れるくらいのスペースがある。


何なのこの人たち、どんだけ射撃スキルが高いの!?

倒した後の事も考えてるなんて絶対普通じゃないよ。


周りにゾンビが居ない事を見計らって、すぐに車でゲート前まで行くと、宏樹が車を降りてワイヤーカッターで番線や鍵を切り終えるとゲートをスライドさせ車が通る程に開く。

ハルちゃんも阿吽の呼吸なのか、宏樹が降りるとすぐに一緒に降りて銃を構えて辺りを窺っている。


本当にハルちゃんは宏樹を守る事に命を懸けているみたいだ。

一時のハルちゃんからは想像できない位、迅速に対応している。

ユウコりんに銃の扱いや作戦行動中のレクチャーとされてるとはいえ人間って変るものだな~と眺めていた。


宏樹の作業は早々に終わり俺は迅速に車を駐車場に入れる。

宏樹はゲートが開かないように、鍵の付いていた箇所に番線を鍵替わりにすると宏樹とハルちゃんはすぐに車に乗り込む。


すぐに店舗正面入り口に車を付けて簡易バリケードが作られている方を眺めた所で絶句した。


自動ドアの向こうに人が居るのだが…それは元人間が自動ドアのガラスをペチペチと叩いている。


「あ~…やっぱり…」


ユウコりんは小さく呟く。

自動ドアは電源が落とされているのか、開く気配が無い。


園芸コーナーからもガラス越しに覗くとフラフラとゾンビが正面入口の方へ歩いている。


「…どうしよう…」


「コッチの方にゾンビを集めて反対側の入り口から入りましょうか?」


「そうだね、それしかないとは思うんだけど…」


「考えたって仕方がない。俺とハルちゃんで反対側から入って狙撃してくる」


宏樹はハルちゃんを伴って反対側の入り口に到達する。

俺はバリケードを越えて自動ドアの方にゾンビを集める為、自動ドアのガラスを軽く叩く。


俺たち(餌)を確認したゾンビは狂ったように自動ドアのガラスを叩きはじめる。

俺はその勢いに何か嫌な予感を感じ、まゆゆとユウコりんが待機しているバリケードの向こうへ戻る。


「侵入出来た。撃つぞ」


「ヨロシク!」


自動ドアに集まっていたゾンビは、自動ドアの方と、宏樹たちの方に分かれて歩いてゆく。


その様子を見ていると『ビシッ』と音がして、自動ドアのガラスに弾痕が出来た。

悪い予感的中!


「あ…危なかった…あそこに居たら、俺撃たれてたよ…」


一つ、二つとガラスに穴が開いてゆく。


穴の開いたガラスは非常に脆くなるため、ユウコりんは弾道が宏樹たちに向かない様、ゲートの右側に移動し、穴の開いた自動ドアごとゾンビを狙撃する。


既に強度の無くなったガラスは大きな音を出しながら割れてゆく。

その隙間からゾンビがこちらにやって来る。


バリケードに塞がれゾンビはこちらに来ることが出来ない。

50体は居ただろうか。全てのゾンビを倒し店内を通りながら宏樹とハルちゃんも歩いてくる。


とりあえずの安全が確保できたので俺たちも店内に侵入する。

やはりこの中を避難場所として使用していた様で、ベッドが置いてある所には怪我人でも寝かせていたのだろうか?

血の付いたタオルやバスタオルが散乱していた。

恐らく、ゾンビに襲われた怪我人を介抱している内にゾンビ化して中から全滅したのだろう。

店内には人体の骨が散乱し酷い匂いを発している。


ペットコーナーには餓死した子犬や子猫が横たわっている。

この状態を見る限り、やはり動物園でも希少動物たちが檻の中で人知れず死んでいるのだろうと思うと、居た堪れなくなる。

俺はこう見えて動物は好きなんだよ。

人間が嫌いなだけで。


ん? 言っておくが俺は聖光気とか纏ってないし、探偵じゃないし、多重人格者でも無いからな!


早期に避難民はゾンビに全滅されていた様で、食料や酒、ジュースは消費されていてもその殆んどが残されていた。

食料と言っても、せんべいや酒のおつまみであるお菓子類、所謂酒の肴であり、おつまみが殆んどだ。


「ここでも、お酒を補給とか……この世の中、どれだけ酒が有り余ってるんでしょう?」


ユウコりんが「はぁ」と溜息つく中、大型カートで意気揚々と往復してる人物が二人いる。

宏樹とハルちゃんだ。

宏樹に感化されてテンションが上がっているのか、それとも齢14にして酒に目覚めたのか?


先程ガラスが割れる音が大きく響いたと思うから迅速に餞別する必要がある。


俺とまゆゆ、ユウコりんは最優先の園芸コーナーに行き野菜の種を確保する。

他にも水耕栽培で使える道具をネットで調べていたので、それらもカートの中に放り込む。


宏樹とハルちゃんがやたらと往復してるんですけど…?


案の定、ワンボックスの中は酒で満たされていた。


「お~~い! これ以上乗らないじゃんかよ!!」


まゆゆとユウコりんは頭を抱えている。


「あ~そうだな~…キャリアに乗せるか」


そう言いながら、キャリアのサイズを測ると、木の板をキャリアに取り付ける。

ホームセンターだけありDIY用の木材などはバリケードに使用されているものから拝借する。

ドリルやネジと言った物も、より取り見取りの取り放題使いたい放題。

そしてそれを扱うのは職人さん。

もはや俺から何かを言う事は無い…。


「もう…任せた」と宏樹に投げる。

ここからは宏樹さんの工作技術の見せ所。

工作道具を持った宏樹は、その瞬間から脳内に設計図が出来上がるのだ。


して、出来上がったのは………。

キャリアにスノコが張ってありその上に収納ケースが乗っかっているだけの超簡単ケース。

時間が無いから仕方がないが。


「大丈夫なんかよ? こんなんで?」


「平気平気」と能天気に言う宏樹。

最後はこれで縛るからと、ラチェットベルトを見せる。

それで締めたらキャリアより収納ケースが壊れるだろ…。


不安になったので、ビール関係を全て収納ケースに入れて収納ケースの上に木を乗せると宏樹はラチェットベルトを締める。

ほら、収納ケースが変形してるじゃん…


もう見なかった事にしよう。

散々、道具を扱わせたら宏樹の右に出るモノはいないとか(言ってない)、宏樹に任せれば大丈夫(言ってない)とか、工作技術の見せ所(言った)って、結局出来たのはこれかよ。

工具関係ないし、道具も関係ないし、脳内設計図はどこへ行った?!

脳内設計図と何ら差異が無いとしたらとんだポンコツだ!


そうは言っても気軽に来れないので車で乗せられるだけ乗せて、ゾンビが入り込まない様に、ゲートを南京錠で閉めて家に戻る事とする。


帰り道、後ろの三人も「今度はあのチェストを持って帰る」とか「部屋を模様替えして、カーテンはあれで」とか盛り上がってる。


気軽に来れないって言ってるのにどうやら明日もここに来ることは決定事項の様だ。


誤字脱字や矛盾等がありましたらご報告お願いします。

あと、こう言う風にしたら良いとかこんな展開も希望等ご意見ご感想もお待ちしております。

評価など頂けたら嬉しい限りです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ