第16話:王立アルフレート学園
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さて今日も頑張るぞと席についた所で邪魔が入る。
「急なんですが打ち合わせ参加してください」
「え、いや、俺も設計書書かなきゃいけないし」
「新プロジェクトだから参加してと…社長命令です」
むむむ、今日も作業(執筆)が出来んではないか(いやだから仕事しろってば!)
ってな事で1話だけ改修。
父、母、俺、テイラー、アリスは朝から馬車に揺られ王都を目指している。
アリスは家族と別れる寂しさよりもこれから俺との学園生活が送れる事に心を踊らされている。
その後ろでテイラーが悔しそうにハンカチを噛んでるのが容易に想像できたが出来る男はそんな事に頭を悩ませない(ようにする)。
幸いにもアリスからの視線に危険察知スキルは発動していない。
テイラーの眼差しからはビンビン反応しているが。
今回、俺が学園に行く事に一番悲しんでいるのは"パパ"であった。
もう、馬車に乗ってる間中、何かと言えば抱きついて離れてくれない。
髭が当たってむず痒いし、暑苦しいわで本当に勘弁してほしかった。
しかし、俺ももう5歳だし、今さら赤ちゃんスキルを発動する年齢ではない。
ここは大人が我慢すればいい。
そう、我慢だ…(涙)
やっと生まれた跡取り息子と今後は離れて暮らさなくてはいけないロックの気持ちも分かるしな。
しかも予定を繰り上げての入園である。
ロックの気持ちが分かるだけで、俺は泣いてないから! 泣いてなんかいないんだからね!
お昼を過ぎたあたりで周りが賑わう様な景色に変わってきた。
もうすぐ王都なのは容易に想像できる。
道端で商売をする面々。
本日の宿を探す冒険者。
肉とタレが程よく炙られた香りの漂う露天で買ったであろう骨付き肉のバーベキュー…あれ、マジで旨そうだな、今度買に来よう。
もう慣れてはいるが、異世界転生ものであれば異世界を実感する瞬間だろう。
それより故郷アルテリアから馬車で数時間走っただけで、これほどまでに故郷と違いがあるんなんてある意味カルチャーショック!
残念ながら俺の実家は田舎の部類に入るのだろう。
それでも生活するのに何の支障も無いし、住民からの嘆願書も田舎を嘆く内容ではない。
それに若者が土地を離れることもそうそうにない。
それだけに故郷アルテリアは過ごしやすい場所だと実感は出来る位に好きな場所だ。
しかしそれでも改めて窓から風景を見るに、賑わい方が半端ない。
田舎者にしたら今日は祭りでもあるのかと勘違いしてしまう程に人の活気が溢れている。
ここなら色んなアイテムもあるんだろうな~でも、武器は要らないな…タブレットに世界中のありとあらゆる伝説級で反則級の武器が格納されているし。
そもそも俺、剣とか正直、苦手なんだよね。
ほら、俺って剣士ってガラじゃないし、どっちかと言えばヒーラーだし、聖職者とかの方が似合うと思うの。
それに剣って野蛮でしょ? ほら、剣士のカイン。
もう、脳筋って感じだし、努力は筋力とか言っちゃうし。
ん? 友人の悪口言うのかっこ悪いって? 悪口じゃないし、事実だし。
しかも、何年一緒に居ると思ってるの? それこそ、銀河が生まれて崩壊して位の間柄だし。
まぁ、カインの話はまた今度と言う事で。
フォローするつもりではないが、あいつらが居なかったら今の俺が居ない。
それは、カインにもカノンにもアルにも、そしてアスラにも言える事なんだけど、それぞれお互い様かな。
そう言う事を含めると、もう俺たちは一心同体少女隊って感じだね。
ん? 意味が分からない?
ググれカス
街の中をしばらく走り、森の中を越えたところに湖があり、湖の畔にお城の様な建築物が見えてきた。
ヨートスのお城を思い出す。
実はあの後、アリスと共に何度かヨートスのお城に遊びに行っていた。
もちろんお忍びでだ。
実は湖の方からお城に行ったから分からなかったが、お城を挟んで向こう側の街(湖⇒城⇒街)はそれなりに活気ある街になている。
何でも湖の水が溢れないようにお城が堤防の役割をしているらしい。
しかも水門も兼用している様で、街の方は水道も設備されているとのこと。
4歳の子供に話す事ではないが、おじいちゃんのご先祖様の偉業を聞かされたのは記憶に新しい。
おじいちゃん、おばあちゃん元気かな~?
毎回、何の連絡も無く遊びに行ってたんだけど、その都度貰ったお菓子は格別だった。
学園生活が落ち着いたらまた遊びに行こう。
当然、アリスも一緒に。
何でか知らないが、俺よりアリスの方が可愛がられていた。
ああ見えて、アリスは人付き合いが上手いのかもしれない。
考え事をしていたら大きな門が見えてきた。
両側にガーゴイルの様な翼竜の様な像が飾られた立派な門。
その大きな門をくぐり、馬車で走る事数分。
ついにお城の様な建物の前に着いた。
しかし、大きい。
やっぱり王都の城は凄いんだな~と、アリスと一緒に上ばかり見ていた。
完全に田舎者丸出しである。
でも、お城の周りに城下町と言った賑わいが無い。
普通は貴族たちのお零れに肖ろうと、人が集まったり、人が集まれば商人たちが居たり、城下町と言うのは色々賑わっている筈なのだが。
キョロキョロしていると、ガン〇ムでも通れそうな重厚な扉の横の小さな扉が開き、人がやって来る。
「ようこそ王立アルフレート学園へ。さっそく学園長室に案内いたします。申し遅れました。私、当学園の副学園長をしておりますハーグと申します。学園長の補佐等をしてますが、時々講師としても教壇に立ってますので頻繁に会うと思いますよ」
ここは王都の城じゃなかったんだな。
通りで静かな訳だ。
なるほど、納得した。
すらっとしたウエーブのかかった金髪が背中まで伸びている。
じいちゃん…いや
アルトマン先生好みのやり手の先生をイメージさせる。
俺とアリス2人仲良く「「よろしくおねがいします!」」と元気に答えた。
5歳だもん無邪気にハキハキとね♪
上の人に好印象を与えなければ、集団生活をするには大変なのだよ。
これも人の世界に生きるコツかな。
俺達はハーグ副学園長と名乗ったやり手先生の後ろに付いて行く。
「こちらが学園長室です。」
やり手先生が静かにコンコンとノックする。
流石にやり手先生だけあり、ノックの音色も上品でいて、それでいて良く響き渡る様な音だ。
「お連れしました。」
「よく来てくれたの、アイリス、アリス、疲れてないか?」
そう言いながら満面の笑顔で迎え入れてくれるのはアルトマン先生だった。
本当にこのじいちゃんは偉いんだな…と改めて思った。
だって、実家で魔法を習っていた時ってじいじの癖に結構子供っぽかったし、俺が先生を立てた事もあったし…
「「大丈夫です!」」
「元気じゃの~ロック達もご苦労だったな」
「いえ、アルトマン学園長。アイリスたちを宜しくお願い致します。」
ロックが柄にもなく深々とお辞儀をする。
余りロックの畏まった姿を見た事が無いので、魅入ってしまった。
「うむ。ロック達もアイリスとアリスの成長を見届けられなくて申し訳ないの」
「いえ、アイリスとアリスの才能は、私たちの手のひらには収まらないほどです。ここで2人の才能を伸ばしてください。」
ロックの言葉に、皺だらけのアルトマン学園長が更に皴を深くして笑顔で答える。
「わしもそのつもりじゃ。さっそくじゃが、副学園長にこの学園を案内させるがアイリス、アリス大丈夫か?」
「「はい!宜しくお願いします!」」
副学園長に連れられ学園内を見て回る。
ここは本当に広い
1日では回りきれないほどの広大な敷地だ。
廊下の壁には絵画や彫刻が飾られて本当にお城みたいだ。
某映画の学園だったら絵画のモデルとか彫刻は勝手に動いたりするのだが、残念ながらそんなことは起きなかった。
「ここが大広間。主に食堂として使用していますが、式典会場やパーティー会場になったりもします。明日の入学式もここで行いますよ。」
「「おおぉ~」」
入学式と言葉に出されて、胸がドキドキした。
多分、アリスも同じ気持ちなのだろう。
「ここが薬学室。主に薬の授業や調合を勉強する部屋です。」
「ここが魔法史学室。魔法や世界の歴史を勉強する部屋です。」
「ここが音楽室。音楽を勉強する部屋です。」
「ここが皆さんの教室です。1学年2部屋で1クラス40人です。二人の教室はここになる予定ですよ」
「おおぉ! この教室で勉強するんだ~」
「アイリスとアリスの机はどこですか?」
「まあ、最初はAから始まるの名前の男女が隣同士ですから…アイリスがここで、その隣がアリスだと思いますよ。その後に生徒同士が慣れてきたら席替えをします」
「やった! アイリス隣同士だね」
「そうだな、まあ席替えがあるようだからずっとって訳じゃないみたいだけどね」
俺がそう言うと「む~」と頬を膨らませるアリスの頭を撫でる。
場所が変わってもやるとこは同じなんだな。
長い廊下を歩き、別の建物に入って行く。
「そしてここが魔導教室。ここで魔法の実地訓練をします。」
そこは広くまるで射撃場のようにもなっていた。
「ここだったらあの魔法一杯撃てるね」(小声)
「人が居たらダメだよ」(小声)
「他にもたくさんの教室がありますが、全てを周る事はできませんので学校が始まったら、その都度、講師が指示しますので従ってくださいね」
「「ハイ!」」
一通り説明を受けて学園長室に戻ってきた。
「アイリス、アリス、学園内は分かったか?」
「「ハイ」」
相変わらず元気に手を上げて返事をする。
子供らしく手を上げるのも飽きてきたから、今度は敬礼にでもしようかな。
「ふむ、元気が良いな。元気があることは良い事じゃ」
深い皺を更に深くし、笑顔になるアルトマン先生が俺とアリスをソファーに座るよう指示する。
そのまま着席しフカフカのソファーにのめり込むとアルトマン先生から質問される。
「アイリスとアリスの聞きたい事があるのじゃが」
「何ですか?」
「ここは全寮制の学園でな、生徒は皆、学生寮で生活をす事になっておるんじゃがアイリスとアリスはまだ5歳だからワシと住んでもいいんじゃが…わしの家と寮どっちで生活したいかの?」
「あたしはアイリスと一緒だったらどこでもいい~」
「僕は寮がいいかな~友達と一緒に生活するのって楽しそう」
「じゃああたしも寮にする! アイリスと同じ寮に住む~!」
若干残念そうな表情を浮かべたアルトマン先生が笑いながらアリスを咎める。
「アリスや…寮は男女別じゃぞ」
「え~! アイリスと同じが良い!!」
5歳にして赤ちゃん最終最強スキル「大泣き」を発動させる準備を始める。
初動に喉の奥からヒーンと音をさせ、エネルギーを溜めこんでいる。
次の瞬間を想像し、アルトマン学園長が折れる
「わ…わかった! 6歳まではアイリスと同じ部屋で良いから…」
さすが、最終最強スキル…どんな大人でも屈服させるスキルを発動するとはアリス恐るべし。
「ほんと!! よかった! ね? アイリス!」
「う…うん」
さすが5歳児。
最終最強スキルをフェイク版に使うとか…。
しかし、そんなの大人に見分けがつくはずもない。
そもそも、初動からスキル発動まで、フェイクかどうかなんて本人の気分次第だ。
「さて、入学式は明日じゃが、ロック達はどうする? 街に戻って宿を探すか? それとも学園で部屋を用意するか?」
「アイリスと過ごす最後の夜です。街の宿でゆっくりしたいと思います。」
「そうじゃな。2人とも親に十分甘えるんじゃぞ」
「「ハイ!」」
実際甘えてくるのはパパなのだが、それはツッコまないようにしよう。
明日は入学式。
そして、アリス以外では初めて友達呼べる同学年(1歳上になるが)との対面だ。どんな女の子が来るのかな~楽しみだ~な~
と思っていると、アリスとテイラーから冷めた眼差しを感じる。
アリスは分かるが、テイラーのそれは、文字通り親と子ほども離れた5歳児に向ける眼差しじゃないだろうに…。
その夜は、鬱陶しくも楽しい団らんだったと記しておく。