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神様?いいえただの悪魔です。  作者: 次元
第3章:死者の星
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第42話:青春の始まり?

何度も言いますが未成年の飲酒は法律で禁止されてます。

良い子のみんなは飲んじゃダメです。


それでは続きをどうぞ


当面、酒の心配がなくなった宏樹はご満悦だった。

しかし俺を含む4人には些か不評。


ハルちゃんは時々宏樹に付きあって晩酌してるが…成長期に酒を飲んでも良いのかい?

国が崩壊し警察機構や法律が無くなった現在、何をするにも自己責任。

それを分かっていれば俺は何も言わないし宏樹も同じようでハルちゃんを咎めたりしない。

現に江戸時代などはお子様でも酒は飲んでいた。


まゆゆとユウコりんが止めるがハルちゃんはお構いなしに飲んでいる。

そして俺たちはその度に『自己責任』と言って完結する。


今は子供でもゾンビに『食料』と認識されているのだから、自分の命は自分で守る必要がある。

戦国時代だったら13歳や14歳は十分成人女性として見られていた。

時代は変われど人は変わらない。

寧ろ今の方が戦国時代よりたちが悪い。

相手は話の通じる人間ではなく、問答無用で襲い掛かってくるゾンビだ。

一族郎党死に絶える事はあっても、種族全体が滅びる事は無いが、今は人間という種族存続の危機なのだ。


いつ死ぬかもわからないこの時に、出来る事はやれと言いたい。

酒に酔って判断がつかなくなり、死にそうな目に合えば酒とはどう言うモノか学ぶだろう。

死すればそれまで。


他にも人を殺すなら自分も殺される覚悟を持て。

人から奪うなら他人に奪われる覚悟を持て。


人とは須らく(すべからく)平等なのだ。

今は生きる為に学ぶ事と生きる為の覚悟が必要なだけ。


さて、野菜類が手に入らなかったので昨日の晩は焼肉だった。

肉と酒だけは山ほどあるからな。


朝起きて周りを見渡す、うん。酷い有様だ。


珍しく昨日は全員が酒を飲んだ。

飲んだくれた。

まゆゆとユウコりんもビールは苦い、バーボンはキツイ、焼酎のグレープフルーツ割はジュースみたい!

と言う事で珍しく飲んだ。

いや、初めてではないだろうか。


極力薄目に割ってだが…何だかんだ十分酔える量は飲んでいたようだ。


何で酒って普段は飲めない程の量が飲めるんだろうね?

アルコールで胃か脳がマヒしちゃうのかな。


劃して(かくして)して、部屋は焼肉臭いし、ビールの缶はテーブルに山のように転がってるし、何ですかここは。大学生の下宿所ですか!?


おい…宏樹さん? その股のシミは…あなた…漏らしてません? おじいちゃんか!


宏樹の怪しいシミは見なかった事にして片づけをする。

ゴミ収集車は来ないがここをゴミ屋敷にする訳にはいかない。

とりあえずゴミは分別してビニール袋に放り込む。


時刻はお昼の12時を回っている。

時間に追われる事の無くなった世界でも時計を気にするのは現代人なんだなと思う。


朝はちゃんと起きるまゆゆでさえ泥の様に寝ている。

今日はみんな使い物にならないポンコツなので、そのまま寝かせておこう。


俺は宏樹特製ライフルハンガーからM4A1タケシカスタムと双眼鏡を手に持ち屋上に上がる。


さすがに初夏のお昼過ぎ。

日光に程よく熱せられた屋上のタイルと爽やかな風が気持ちいい。


俺は「ん~~~」と伸びをすると辺りの景色を窺う。


遠くの方では何か所かで黒煙が薄く上がっている。

パニック発生当時から黒煙が上がっていたが消防も機能していない今、炎は確実に人間の文明を消滅させている。

今年の夏には草木が伸び放題になるんだろうな。

10年後には? 20年後には? 100年後には人類は滅びているのだろうか?


俺は双眼鏡を覗くのを止めて屋上で大の字に寝転がりどこまでも碧い大空を眺めながら思いに耽った。



―――何でゾンビは発生したのか?



今の世界は俺の望んでいた世界。

今の世界は俺の恐れていた世界。

今の世界は俺が想像していた世界。


何でゾンビは発生したのか?


いつまでも解けない問題を考えていた。


事の始まりはアフリカ大陸から始まったと思われる。


最初に見た動画がアフリカだったからそう思っているだけで確証はないが。

フェイクと思われるグロ動画が出回っていたが、日毎にゾンビと思われる動画の投稿が増えていき、アメリカ、ロシア、中国とゾンビの風が吹いた。


日本国内でも別段取り上げるほどの事も無く、ワイドショーで海外のニュースを報じる時に出ていた位だったが。

そもそも、誰もがゾンビと思わず、疫病や集団ヒステリー、暴徒程度の情報しかなく。

日本国民は例えそんなの見ても『対岸の火事』程度の認識しかなかった。

それは、ベトナム戦争、湾岸戦争、そして昨今増加したテロ。

それらにも自分たちは無関係と思っていた。

戦後70年を過ぎ、戦争経験者も少なくなり危機管理能力が薄れた日本人がゾンビに即対応出来る訳もなく、結果、道路を当てもなく彷徨う元人間の大量発生と成り果てた。



――ゾンビ――

ゾンビの元となったのはブードゥー教が最初と言われる。

農場主の意に操る為に労働奴隷を仮死状態にしたとの事だが、死人にドラキュラの要素を掛け合わせただけの安直なキャラ設定。

元祖ゾンビ映画通りのゆっくりとした動作で人を喰う。

因みに、犬や猫などの動物は食わないらしい。

作品によってその辺の設定はまちまちである様だ。


近所探索で侵入した民家で、痩せ細った犬や猫がゾンビとなった住人と一緒に生きた状態で家の中に居た事が多々ある。

ペットたちは飢えの問題から野に還したが、動物園ではどうなっているのだろう?

さすがに動物園に行って檻を開放するのは難しい。

残念だが俺達にはどうする事も出来ないので頑張ってくれとしか言いようがない。

動物園は動物の保護の観点もあるので絶滅する種が居そうだ。


そもそも動物が死んだらゾンビになるのだろうか?

ゲームではゾンビになって登場していたが…今の所リアルでは見た事は無い。


飼い主はゾンビになっていたが、ペットが餓死してゾンビになっている様子も無い。

始めは凄く疑ったんだけどね。


最初に保護した犬のおかげだろう。

民家に入りゾンビを仕留めた後、そこで飼われていた犬がゴロンと腹を見せたのである。

エサをやると無我夢中で平らげたのを見て動物はゾンビにならないと結論付けた。

そうでなければ、全ての犬猫を殺さなくてはいけなかった。

こう見えて動物は好きなんですよ。


それに最大脅威であるゾンビにも救いがあった。

奴らの動きは怠慢なんですよ。

後世のゾンビ映画のように走らない。

スタミナ無尽蔵の走るゾンビが蔓延したら確実に死ねる気がする。


そんなフィクションで空想上のキャラだったはずなのに…。


大空に鳥が飛んでる。

平和だな~少し現実逃避していると誰かが屋上に上がってくる音がするので上体を起こす。


「ここだったんですね。」と言いながらまゆゆが屋上に上がってきた。


「ああ、おはよ~。みんなは?」


「まだ寝てます。ゴミ、少し片づけてくれたんですね」


「あははは、酷い惨状だもんでね。まゆゆは二日酔いになってないの?」


「私は寝過ぎたんですかね? 少し頭が痛いだけで大丈夫です。」


「それ、二日酔いでしょ」


「そうなんですか? お父さんの言ってた二日酔いと違うからそう思わなかったです」


お父さんの思い出を語るにまだ早いと思うんだけど。

案の定、まゆゆは家族を思いだしたのか笑顔の中にも少し暗い表情を浮かべる。


「「……」」


ヤバい、会話が続かない。

変に慰めても話題を変えてもダメな気がする。


空気を変えるために「は~」と言いながら俺は再び体を寝かせ空を見る。


「まゆゆも横になってごらん? 多少は楽になるよ。」


「そうですね…」


そう言いながらまゆゆは俺の傍で横になる。


「…空だけは何も変わらないですね」


「本当に、空だけは平和だね~」



「「……」」



再び沈黙が俺を追い詰める。



「…武志さん」


「ん?」


「これから…わたしたち…どうなるのでしょう?」


「そうだね…」


俺にも即答できない質問をまゆゆはしてくる。

一応、考えているんだよ?

1年後を見据えて今を生きるとか。

今を生き抜くためにどうするか? とか。


でも、まゆゆの質問はそんな事ではない気がして、答えられなかった。


「「……」」


重い沈黙に口火を切ったのはまゆゆだった。


「あの…」


「ん?」


「こんな時だから…」


「ん?」


「いつ死ぬか分からないし…」


「え?」


「は…はっきり言います!」


「ん? うん?」



「私、武志さんが好きなんです!」


思考が停止する。

そして再起動。

…E!? 思わず日本語でない言葉が口から出てしまい、慌てて上体を起こし、まゆゆの方を見る。


まゆゆも静かに上体を起こすと真っ赤になった顔で俺を見てくる。


なに? 聞き間違い?


「あの…俺、まゆゆと倍以上の歳の離れたおっさんだよ?」


「私は気になりません」


おお、はっきり言うな。

この強さが若さか!


「俺は自分でも言うけど良い人じゃないよ?」


「でも悪い人じゃないですよね? それに…誰よりも優しいです!」


「そ…そうかな?」


「武志さんは…私の事…どう思ってマスカ///」


俺の横に今、天使が舞い降りてます。

なんですか? この生き物は? こんな可愛い生物を見た事ないんですど?


「どうって…その…可愛いし、しっかりしてるし」


「///好きじゃないですか?///」


まゆゆは遠慮がちに上目使いでこちらの様子を探る様に見てくる。

もう本当におっさんには目の毒、いや目の保養です。

今、この破滅した世界に天使が舞い降りております!


「いや、す…好きだよ…」


「///本当ですか///」


まゆゆは俺の方へ身を乗り出してくる。

俺、30歳のおっさんだよな? 14歳の女の子に告白されてキョドってる。

なに? 俺の青春は今始まったばかりだって?

何だ、世界が崩壊すると青春が始まるイベントなのか?


まゆゆはシドロモドロになっている俺の手を繋ぐ。


ハッとまゆゆの方を見ると、まゆゆの顔が目の前にある。


目を潤ませて頬を紅潮させた天使が目の前に居る!!!

いや、いいのか? 中学生だぞ!? 俺大丈夫か!?


潤んだ目が閉じられる…


左手はまゆゆに握られている。

残った右手でまゆゆの頬に触れ、軽くキスする。


まゆゆは俺に抱きつく。

俺はまゆゆの頭を滑らかな髪と共に撫でている。


…と、視線を感じる。


「はうぅ!」


俺は屋上の入り口に顔半分を出してこちらを見る目に金縛りにあった。

あの視線は全てを凍らせる絶対零度の目だ。

現に俺の時間さえ止めてしまった。


まゆゆは何が起きたのか分からず俺の顔を見上げているが、俺の目線を確認するように後ろを見る。


「あっ!」


先程の抱擁が嘘のように『ササッ』と離れる。


俺は無表情でこちらに歩いてくるユウコりんに戦慄を覚える。

それはあの日の朝を思いださせるからだ。


ユウコりんはまゆゆの後方に立ち、こちらを見下ろす。


「あの…裕子ちゃん…」と言いながらまゆゆはユウコりんの方に姿勢を変える。


ユウコりんのシルエットはさしずめ大魔神の如く直立不動。

そして全身からはプレッシャーをヒシヒシと感じさせると、その場にしゃがむ。


「私は愛人でもい~~~」とまゆゆと俺を抱き込み飛びついてきた。


「いたっ!」

「はぐっ!」


俺はその勢いで押されるまゆゆの後頭部に鼻を打ち付ける。


俺は鼻を押さえ涙目になりながら何が起きたのか確認する。

まゆゆは後頭部を、擦りながらユウコりんを見てる。

ユウコりんはまゆゆの胸に顔を沈めながら俺を含めて抱き締めている。


うん。理解が追い付かない。


これは女学園にありがちなガラスの花園?!

と言うことは…俺はユウコりんにしたら敵か? 敵なのか!?

だから、鬼軍曹のように俺に接していたのか!?


「私は愛人でも2号でもいい~」と言いながら、まゆゆの脇を滑るように移動したと思ったら、ユウコりんの右腕が俺の首に巻き付くと同時に俺にキスしてくる。


ユウコりんは左腕にまゆゆの首を抱え込んでおり、俺の頬にはまゆゆの頬を、唇にはユウコりんを感じている。


もう完全に思考回路がフリーズしていた。

それはまゆゆも同様のようで、まさに成すがままだった。


どうやらユウコりんの恋愛対象はまゆゆではなく、俺だったようだ。

ユリでない事にホッとしたり、戦慄したり、憩いの場が一気に慌ただしくなってきた。



誤字脱字や矛盾等がありましたらご報告お願いします。

あと、こう言う風にしたら良いとかこんな展開も希望等ご意見ご感想もお待ちしております。

評価など頂けたら嬉しい限りです。

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