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神様?いいえただの悪魔です。  作者: 次元
第3章:死者の星
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第37話:チートは誰だ

義務教育から離れて早数十年。

今はこんな教育をしてるんだ?(妄想)


それでは続きをどうぞ

―――中学校前のマンションの屋上


朝の騒動は無事冤罪という事で事なきを得た。

ま、いいよ。

ええ、良いですよ、気にしてませんから。


それよりもここに至る経緯よ。

ここまで来るのに本当に結構な障害をクリアしてきた。


まず第一にサイレンの音に惹かれてくるゾンビの群れ。

奴らは注意を問わず移動してるからね。


大通りを車で通るには些か(いささか)ゾンビの数が多すぎる。

映画で観たようにゾンビを薙ぎ倒していくのは無理がある。


なぜならばそう、ゾンビには骨があるからだ。

人間の骨は意外に硬く鋭くなる。


タイヤに巻き込めば駆動系のどこかが壊れるし、踏めばタイヤがパンクする可能性もある。

そもそもワンボックスカーは30~40cmの段差を駆け抜ける様に設計されていない。

タイヤだってパンクしにくいタイヤな訳ではない。

速度を上げて突進すればボディは歪み、ガラスは割れ、走行に支障をきたすし低速運転すればあっという間に囲われる。


1体2体ならいいが、100体200体が一か所に集まれば相当な圧力が加わるし、そうなると車のガラスなんていとも簡単に割れて車内に侵入されてしまう。

最悪の場合、横転する可能性もあるしそんな状態から逃れる方法も思いつかない。


逃れられないのであればそんな危険を冒す必要が無い。

そんな訳で大通りを通らず、可能な限り川沿いの道を走り、大通りに出る前に徒歩で偵察をする事にした。


まずは俺とユウコりんが斥候としてマンション周辺を調査する。

盗聴器として活用した受信機はハンドレシーバーにもなる優れもの。

これで連絡を取り合い安全に車を移動させるようにする。


殆んどのゾンビは未だに鳴り響くサイレンに吸い寄せられるように移動している。

行きたくもないがあの小学校周辺ではオールナイトのお祭り騒ぎとなっている筈だ。


さほど距離も離れていないこの中学校周辺もゾンビの群れの中に入っていると思っていたのだが、彷徨ってるゾンビを目にして予想に反して突破できない距離でも数でもない。


俺とユウコりんは出来るだけ隠密に塀の陰や民家の中からパチンコを使用してゾンビを倒し進んだ。


時間は掛かったが無事に屋上に到達し、今はマンションの下に残ったゾンビを狙撃している。

俺のM4A1タケシカスタムはレーザーサイトとスコープによる遠距離射撃が可能だ。

道中は用心に越してパチンコを使用していたが、この大音量のサイレンの中、屋上だったら使っても問題無いだろうと言う事で使わせてもらう。


そして、このタケシカスタムに飛びついたのがユウコりん。


作戦方法を聞いた時に「私も狙撃する」と目を輝かせていた。

あの時(今朝)の『暗闇よりも暗い暗黒と呼べるほどの瞳』と比べると清々しい程に爽やかだ。


俺はすんなり了承した。

そうでなければMINIMIで全滅させると言い出したからだ。


ユウコりんは射撃性能に優れた89式を肩に背負って付いて来ていたのだが、屋上に上がるや否や俺のタケシカスタムを奪い取った。

そしてスコープやレーザーサイトの微調整を行っている。

もうユウコりんは平和な世界になったらアメリカに渡ってガンスミスでもやりなさい。

いや、寧ろ今の世の中の方が重宝するか?


ユウコりんはセミオートでゾンビを標的に1発1発着弾位置を調整する。

この子M4でも1キロ先から正確に狙撃できるんじゃないの?

本当は凄腕の元マフィアの殺し屋で、暗号名が『ガラスの心臓』とか言われてない?

今は神宿とかで凄腕のスイーパーとかやってない? 依頼には『XYZ』とか書くとか。


ここでは銃声よりもサイレンがうるさい為、狙撃も可能だし銃声にゾンビが寄ってくることも無い。

ま、屋上からの狙撃だから下から姿を見られることも無い。

満面の笑顔で弾道を調整する姿は…何でもないです。

『あん?』と言う目で見られてしまったので咄嗟に視線を逸らす。


「宏樹に合図を送る頃合いかな?」なんて誤魔化しを入れたりもする。


するとユウコりんはスコープから視線を外しM4をこちらに差し出す。


「サイトの調整をしてみたので、武志さんも見てください」


と言われてM4を受け取る。


100m程先にゾンビが居るのを確認しスコープを覗き込む。

ゾンビの頭部にレーザーサイトから照射する赤い点が確認できた。


そのまま引き金を引くが思った位置に着弾しなかった。

ゾンビ自体は倒せたのだけど、少しずれた…。


「あれ? 少しずれてない?」


とユウコりんに言うと「ハァ…」と溜息をつかれた後に


「射撃姿勢が成ってないから弾道にズレが生じるんですよ」


と真顔で言われた。

こう見えてもサバイバルゲーム暦15年ほどのデェベテランなんだけどね。


「いいですか? グリップは力を入れないで握り、肩で反動を受け止める感じです。あと、撃つときに変な力が入ってますよ? その状態だと弾がバラケてピンポイントショットはできません」


思った以上に的確なご指導だった。

ユウコりんが生まれる前からやってるとか思ってしまってすいません。


「す…すいません…」


ユウコりんはニコリと笑顔を浮かべると親指で下を歩くゾンビを指さす。


「あとは練習あるのみですよ。はい、撃って下さい」


まるでグアムの射撃場でレクチャーを受けたような適切な指導、ありがとうございましたサー!

うん。完全に闇の人間確定ですね。

この子には逆らわないようにしよう。



30発マガジンが2つ空になるほど撃ちました。

その結果と総評としてユウコりんから有難いお言葉を頂きました。


「まだまだですけど、大分()()になってきましたね。ゾンビも少なくなったし、もう宏樹さん呼んでも大丈夫じゃないですか?」


「sir Sergeant sir」


「…何ですか? サーって。何ですか? 軍曹って」


ジロリと睨まれたので誤魔化す。


「え? そんなこと言ってないデス。では宏樹を呼ぶ事にしまッス。軍曹は車が来る方を見張ってて下さイ」


「やっぱり軍曹って言ったじゃないですか! それになんですか? その片言の敬語は」


「あははは、冗談冗談。さて宏樹を呼ぼうかね」


やっぱり普段は13歳の可愛い女の子なんだよね。

あるスイッチが入るとそりゃ~もう…危険ですが、ええ。


「宏樹~! 聞こえるか~静かに来いよ。」


「OK」


ユウコりんには俺の思考が読めるのか? 暗黒面の目を向けられたのを誤魔化すように宏樹を呼ぶ。


程なくして静かに車がマンションの下に停車すると三人も屋上に上がってくる。

まゆゆは学校側へ目を向けると少し悲しそうな顔をしてこちらに向かってくる。


「作戦を説明します」


そう言うと一斉にみんながこちらを向く。


まゆゆ大丈夫?

って表情を浮かべてまゆゆを見る。


「まず、まゆゆはここから両親を…」


多くを語らないがまゆゆは察したのか


「…わかりました」


と小さい声を返してくれる。


「サポートにユウコりんが付いてまゆゆに狙撃を教えてくれ」


「はい」


「宜しくね、裕子ちゃん」

「いえ、麻由先輩こそ辛いのに…」

「私は大丈夫だから」


多分ユウコりんがサポートしてくれればここからの距離なら大丈夫だろう。

早速、ユウコりんはまゆゆに狙撃の方法をレクチャーしている。


「宏樹はまゆゆとユウコりんの殿(シンガリ)についてて。俺が連絡をしたら速攻で車を中学校の校庭入れて積み込み作業、侵入ルートは追って指示する。で、俺とハルちゃんで中学校の周りを調査する。場合によっては小学校の生き残りが居るかもしれないからこれも殲滅する」


「無理です」


「ん?」


「私には無理です」


ハルちゃんは首を横に振り真顔で「無理」と言ってくる。

そうか、小学校で酷い目にあったんだよな、そりゃ…その生残りが居たら憎いだろうが生きてる人間を撃つには無理でも…


「宏樹さんとは、離れられません」


そっちかよ! 気を使った俺がバカだったよ! オイ宏樹、何で俺から目線を逸らす?


「………」


俺は言葉なくハルちゃんに顔を向けるが


「む・り・で・す」


と念を押されてしまった。


「はいはい、分かりました。じゃ宏樹とハルちゃんで中学校の周辺を調査、及びゾンビの排除。後は進入路以外のゲートが開いていたら閉める作業。」


「分かりました!」


何だよ、その満面の笑顔は。

無理と言った時とエライ違いじゃんかよ…。

何なの最近の中学生は? 生きる為のサバイバル術とか銃火器の取り合付か方法とか心の処世術とか教えてる訳?

まゆゆも何気に心が強いし、ユウコりんに至ってはヘリでも戦闘機でも操縦できるんじゃないの?


「俺たちはこっち面のゾンビを殲滅させておくから、進路が確保できたら呼んでくれ」


「分かった」


ハルちゃんはこれからデートです! と言わんばかりにルンルンで宏樹に付いて行く。


「なんか…あいつら見てるとバカらしいんですけど…」



後ろを振り向くとユウコりんがまゆゆにレクチャーして俺の話なんて聞いてない。


「一人って…寂しいんだね」


まゆゆは双眼鏡で両親を確認し、息遣いが激しくなる。


俺も双眼鏡で見たが、まゆゆの気持ちも分かる。

両親の口の周りには赤黒く血が付いており、昨日の連中を喰った事をありありと見せつけていた。


俺はまゆゆの肩に手を置き「大丈夫か?」と聞くと、無言だが目に使命感を宿し力強く頷いた。

ユウコりんも軽く首を縦に振る。

俺は少し離れ、煙草に火を灯す。


程なくして「タン………タン」とタケシスペシャルが発砲音を上げると、まゆゆはゆっくりと立ち上がり、俺の後ろの方で座り込んだ。

肩が小刻みに揺れているので泣いているのだろう。


俺はそのままユウコりんの隣で89式を構え、残ったゾンビを殲滅させるために撃つ。

撃つ…撃つ! あ~た~ら~な~い~!! ヘッドショットの難しさを痛感した瞬間です。


「ハァ…」と盛大な溜息をユウコりんが吐き出すと、タケシカスタムを俺に渡し、89式を俺から奪い狙いを定めて1発撃つと、ゲートのゾンビが倒れる。


なに? そのユウコりんの憐れみの目は!? ええ、どうせ初心者ですよ! BB弾を撃ってた位でいい気になるなって事ですね!


少しぼやけて見えるスコープを覗いてゾンビを倒していく。

決して泣いてるわけでは無い。泣いてない。

大切だから2回言った。


俺が1体倒す間に、ユウコりんは2体~3体倒していく。

泣いてない。俺は泣いてないよ! ただ、今日はなぜか少しスコープがぼやけて見えるだけだよ。



ユウコりんは淡々とゾンビを始末してゆく。

その光景は圧巻の一言だ。


そう言えば、まゆゆも『二発しか』撃って無かったような…?


そうだ、やっぱり最近の中学校では射撃も教えてるんだ!

何年か前ではパソコンを教えだしたって言ってたし、あれから数年、今では護身術や銃器の取り扱いを教えているんだね?

うん、そうに違いない!!



誤字脱字や矛盾等がありましたらご報告お願いします。

あと、こう言う風にしたら良いとかこんな展開も希望等ご意見ご感想もお待ちしております。

評価など頂けたら嬉しい限りです。

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