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神様?いいえただの悪魔です。  作者: 次元
第3章:死者の星
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第35話:帰宅

イレギュラーに当日掲載なんてしてみた。

こんな日があっても良いじゃない?


【注意】

作中、未成年者の飲酒描写がありますが、皆さんは未成年の飲酒はダメですからね。


それでは続きをどうぞ。

考えに考えて現状を考慮し、一時帰宅する事を提案する。


「帰るのかよ!」


俺の言葉を受けて宏樹が突っ込んでくる。

おれは大きく頷き言葉を返す。


「帰ります」


「まだまだ私は大丈夫だよ!」


ユウコりんのやる気スイッチがずーっとONになってるようだ。

元気が有り余るユウコりんを尻目に小さく返事をする。


「いや無理」


それにこの一時帰宅案はまゆゆの気持ちを落ち着かせる意味合いもある。


「弾が無いし私はもう疲れてダメです。だから今日は帰ります」


ユウコりんは尚も食い下がる。


「なんで? あそこに武器が在るんだよ? やっちゃおうよ?」


誰か、ユウコりんのやる気スイッチを切って下さい。

略奪者が手にした武器に弾が無かったのか発砲されなかった訳だが。

簡易テーブルの横には俺たちが武器を手に入れたときと同じ箱がまだ積み重なっている。

しかしあそこに武器が在るかと言われると100%あるとは断言できない。


そうは言ってもユウコりんは


「行って見なきゃわかんないし!」


と身を乗り出してくる。

どうにかしてユウコりんの気を削がなければ、皆がユウコりんに賛同したら面倒臭い。

エサを目の前にぶら下がってるこの状態。


どげかせんといかん…。


そうだ、ユウコりんのやる気スイッチを切る方法を思いついた!


「ユウコりん武器ないじゃん?」


「大丈夫! まだこれがあるもん!」


そう言ってP220を出してきた。

そう言えばユウコりんも持ってたんだね。


てっきりMINIMIだけかと思ってたよ。


ユウコりんは『フンス』と鼻から息を出す。

しかしマガジンに入ってる弾でどうしろと?

ユウコりんはP220の予備マガジン持ってないでしょうに。


さてさて、ここで軽く牽制のジャブを放つ。


「でもな~…家に帰ればまだMINIMIの弾あるんだよな~」


と言ってチラリとユウコりんを見る。

その言葉にすかさずユウコりんはP220をリュックの中に仕舞い込むと「さて、帰りますか」とMINIMIを担いで非常階段の方へ歩いて行く。


「「「「………」」」」


俺達はユウコりんの行動に呆気に取られてしまった。

牽制のつもりがドストレートだった件について。


非常階段を一段降りるとこちらに振り向く。


「早く! 帰るんでしょ?」


ユウコりんが手招きしている。

それに続いて宏樹と、宏樹にべったりなハルちゃんが付いてゆく。


「いい?」


俺はまゆゆに訊いた後、中学校をチラリと見る。

少し沈黙の後、憂いな顔を上げる。


「―――はい」


まゆゆは消え入りそうな声で返事をする。

せっかく意を決したまゆゆの気持ちを空回りさせてしまった事に「ごめんね」と言うと


「武志さんの判断は正しいと思います。弾の数よりゾンビの数が多いかもしれないし、あそこに弾があるとは限りませんし」


そう言って悲しそうに中学校を一瞥(イチベツ)にすると、綺麗な黒髪をなびかせながら非常階段の方に歩いてゆく。


非常階段を下り道路に出てもゾンビが見当たらない。

俺達は苦も無く、来た時に使用したワンボックスに乗るとそのまま家に進路を取る。


しかしやる事が一つある。


彼方ではサイレンがまだ鳴り響いており、お食事を終えたゾンビも相も変わらず音のする校門のゲートに張り付いている。


俺はせめてまゆゆの両親がこの校舎から出ないようにしないといけないと考えた。


そう言う事で俺は今、2tトラックを運転している。

後ろには宏樹の運転するワンボックスがついてくる。


少し彷徨っているゾンビをなぎ倒し、サイレンが鳴ってる方向の逆の門に向かって走ると、勢いそのままにサイドブレーキを引く。

後輪がロックされ車体がスライドするがそのまま車体を門に当てて校門を塞ぐ。


すかさずワンボックスに乗り込むと次のトラックを物色する為に彷徨う。


開いている門は残り1つだけ。

特に苦も無く作業を終えるとまゆゆから「ありがとうございます」とお礼を言われる。


「いやいやまた一からまゆゆの両親を探すのは骨が折れるから仕方なくだよ」


と美少女の笑顔+お礼の言葉にツンで返す。

ツンで返したのにまゆゆは笑顔を濃くする。

何ユウコりん、その顔は。


別にやりたくてやったんじゃないんだからね!

とお約束を言った車内はなぜか笑い声が満ちる。


大通りに出ると行きとは違う数のゾンビに驚いたが、ゾンビを避けるように脇道を入りそのまま川沿いの道を走る。

川沿いの道はゾンビが居ないので思いのほか楽に帰る事が出来た。


ワンボックスは我が家の道路に面してるところに斜に停車させゾンビが通らない様にした。

ゾンビも入って来なければ生存者も入って来れない。

それにお出かけして分かったが、放置車両が普通にあるので車が斜めに停まっていても違和感が無いと分かった。


この辺には家に籠っている住民は居ないのを確認したので地域住民やゾンビが居ないのであればと言う事でそのまま玄関から入る。


普段だったらワンボックスからアサルトライフルや軽機関銃を持った少女を見たら度肝を抜かれるだろう。

そしてご近所さんは俺の家についてまた良からぬ噂を立てるんだ…

でも大丈夫、そんなご近所さんも既に居ないから安心。


みんなそれぞれ荷物を持ち、一様に疲れた表情で家の中へ入って行く。


俺は念のためにゾンビが来ていないか周りを確認し扉を閉める。

外は静まり返った風景の彼方で鳴り響いているサイレンの音が聞こえていたが扉を閉じるとその音も消える。



■□■□■□■□■□■□■□■□■□



家の中に入ると、荷物そっちのけでみんな「ふぁ~~~~」と言いながらソファーに座りこむ。


宏樹は既にビール片手で「みんな好きなの勝手に飲んで」と言いながらビールのプルタブを開ける。


「俺にもビールくれ」


と言うと宏樹はビールを投げ渡してくる。

難なくキャッチするが


「だから蓋を開けたら泡が出るって言ってるべ」


といつものように文句を返すと宏樹もフフンと笑い返す。

いつもの光景なのだが、今日一日を鑑みると何て長い一日だったのだろう。


両親が見つかったのは僥倖だったが、同時に両親がゾンビと変質しており、あろうことか人を食うという場面に出くわしたのに、まゆゆも気丈に振る舞っている。


ハルちゃんは…何かが壊れたのか? 宏樹と一緒にビールを飲んでる。

宏樹と同じペースなので潰れるのが目に見えている。

ってか、飲むの?

飲んじゃうの?

いや止めはしないけどさ。


ユウコりんはMINIMIを整備しながら頻りに「弾くれ! 早く! 早く!」と意味不明な呪文を俺に掛けてくる。

良からぬ薬を要求するジャンカーの様だ。


「みんな、風呂入っちゃいなよ」と言いながら、風呂の給湯ボタンを押す。

もうこの辺にゾンビが入って来れないようにしてあるし生存者も居ないから多少の生活音は気にしない。

急騰の「お湯張りをします」のアナウンスも気にならない。


ハルちゃんが「宏樹さん、お背中流しますね?」と言った途端、ユウコりんは目からビームでも出るんではないだろうかと言う視線を宏樹に向ける。


宏樹もその眼を確認し「だ、大丈夫! 俺はゆっくり()()()入りたいから」と言いながらユウコりんから視線を逸らす。


「そうですか…いつでも声かけてくださいネ。私、脱衣所で待機してますから!」


今度はまゆゆの視線が宏樹に刺さる。


「あ…ああ…別に待ってなくていいから…」


宏樹はまゆゆの方から異様なニュータイプ並みのプレッシャーを感じたのか


「俺、屋上で見張りしてるわ!」


と逃げて行くと


「じゃあ、私も」


とハルちゃんも宏樹を追って上に上がって行った。


俺はその光景をビールを飲みながら傍観していた。


「「はぁ…」」


まゆゆとユウコりんは階段を上るハルちゃんの後ろ姿にため息を漏らす。

俺は音声しか聞いてなかったが、まゆゆとユウコりんはその場にいたのだから状況も理解しているだろう。

そう意味も含めて二人に聞いてみる。


「ハルちゃん…心と言うか精神的に壊れたのか?」


まゆゆはその時の状況を浮かべながらポツリと呟く。


「…多分違うと思います…」


何故か仄かに笑顔のまゆゆが俺に答える。


「え?」


「晴美ちゃん、誰かに頼りたかったのもありますが、頼っても欲しかったんだと思います」


「え? 頼って?」


「でも、こんな状況で、二人には『自分の身は自分で守れ』とか突き放されて…」


「いや、突き離したんじゃないんだけどな…」


いや、俺の言い方が一方的なのは認めるが…

やっぱり男脳と女脳は違うって事か。


「ふふふ、分かっています。でも、晴美ちゃんの心の拠り所が無くなっちゃって」


「誰かに頼って欲しいって…あ、後輩が居るじゃん?」


そう言ってユウコりんに目を向けると『何か?』みたいに見られた。

そうだよな、初めて会った時はユウコりんとビクビクしてたよな~

あの時は後輩のユウコりんを守らなきゃ! とか思っていたんだろうか?

その前にこの子、猫被っていたのか?

今じゃ進んで一生懸命みんなの武器をメンテナンスしてるし…

まさか…すべて見越して怯えた風を装っていたとか?


「もしかして、ユウコりん…」


俺は思わず聞きたくなってしまい、ユウコりんに問いかけるが「はい?」と言って振り向いたユウコりんに対して「あ、いや何でもない」と答えた。

うん、俺は答えを聞きたかったが、同時に答えを聞きたくなくなった。

今のユウコりんを見てると、どうも本気でゾンビに怯える状況が浮かばない。

どう育てたら13歳の女の子がこうなるの?

襲い掛かる生存者に対して戸惑いも見せずに発砲してたらしいし。


「二人に助けてもらって、安心できる場所に来たけど、別の意味で居場所が無かったんだと思います」


「ふむ…そこで宏樹の奴隷発言か…」


ムスッとしてまゆゆは俺の顔を見る。


「いや、俺をそんな目で見ないで~」


俺そこに居なかったでしょ?

俺に矛先を向けないでね。

いや頼むよ。


「まぁ、あの時の発言はどうかと思いますけど、でも、それで晴美ちゃんも吹っ切れたんだと思います」


「そう言うもんなのかな?」


「はい、形はどうあれ、結果オーライです」


「なるほどね」


何だか良く分からない状況から良く分からない言葉で救われたって事か。

思春期の女の子は難しいね。

おじさんには理解できないよ。


「武志さん! 弾ぁ!」


「その前に風呂入ってこい!」


ユウコりんは「ブー」と膨れたまま、まゆゆに連れられて風呂場に向かう。


ユウコりんってあんなキャラだったっけ?

俺は「は~」と溜息をつきながら、俺には『あの子(ユウコりん)が一番理解できないよ!』とビールを煽る。




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