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神様?いいえただの悪魔です。  作者: 次元
第3章:死者の星
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第34話:悲報

気持ち少し長くなりました。


てなわけで続きをどうぞ

―――現状報告―――


大立回りをやらかした俺たちは小学校から脱出し、予定通り最初に中学校を観察する為に訪れたマンションの屋上に来ている。

その間、ゾロゾロと小学校のサイレンに惹かれたゾンビ達に遭遇したがこの大音量の中、多少銃を使っても問題なかった。


一段落して俺は煙草に火を付けながら宏樹を見る。


宏樹の横にはハルちゃんが寄り添うように座っている。

もちろんハルちゃんの手には宏樹が渡したP220が握られている。


まゆゆとユウコりんは汚物でも見る様な眼差しを宏樹に向けている。

宏樹は二人の眼差しに心折れたのか、俺の方へ懇願するような目をチラリと向けてくる。


「は~………宏樹くん? 中学生に向かって『お前は俺を守れ!』だって? それじゃ奴隷かメイドですよ?」


事のあらましをまゆゆとユウコりんに聞いた。

その内容を俺の中で噛み砕くと、宏樹はハルちゃんを置いていくことも見捨てることも出来ず、悩みに悩んだが、だんだん面倒くさくなったんだろうね。

最適な言葉も何も浮かばず、で、口から出た言葉が”お前が俺を守れ”と。

言葉足らずにも程がありますよ。


結果的に思考を放棄したハルちゃんにもその言葉が一番心に響いたって事か。


「アイヤ~……なんでだろうね?」


宏樹はバツが悪そうに後頭部を掻く。


「本当ですよ。宏樹さん!? 何であんなことを言ったんですか? そんな事じゃあそこにいた男たちと何ら変わらないじゃないですか!」


まゆゆが宏樹に捲し立てる。

確かに、自分の欲求の為に他人を使う。他人を利用する。そんな風にまゆゆの目には映っているのだろう。


「晴美ちゃんも、そんな事で良いの?」


まゆゆは憐れんだ目でハルちゃんを見る。


「いい。私は宏樹さんを頼るの! その代り私が宏樹さんを守るの! 奴隷でもメイドでもいいもん」


その言葉を聞いて再びまゆゆは『このゴミめ!』という目を宏樹に向ける。

今が完全に暗闇だったらまゆゆの瞳は紅く、朱く輝いていただろう。

その瞳に宏樹も完全に怯え状態となっている。


そんな宏樹に憐れむような眼差しを向ける。


「会話の全容は|『これ』(受信機)で聞いてたけど…それにしても…宏樹先生は大胆ですな~。ま、何にせよハルちゃんは宏樹に任せる」


俺の言葉を聞いてハルちゃんが両手に握り拳を作る。


「任せて下さい! 私が宏樹さんを守りますから」


俺も頭が痛くなってきた…もうこの話題に触れるのは止そう。

とりあえず宏樹を擁護するとすれば、宏樹はハルちゃんと依存関係を結んだんだな。

そうでなければ俺がハルちゃんを見捨てると確信していたんだろう。

と思っているとハルちゃんは自分で話題を作り出した。


「宏樹さん。私は奴隷だから、宏樹様と呼んだ方が良いですか? それとも…ご主人様?」


あざとくなのか天然なのか分からんが、コテンと頭を横に倒すハルちゃん。

ハルちゃんも何と言うか吹っ切れたのだろうか?

こんな古典的なお約束的冗談を言うようになった。

…冗談じゃない?


まゆゆとユウコりんが鬼の形相で宏樹を見る。

二人は完全に呪術とか魔術とか使えるんじゃないか?

そう言うオーラが俺にも感じられたぞ!


そのオーラを当てられ宏樹も更に委縮する。


「い、いや…普通に、宏樹で良いから!」


「分かりました。宏樹さん」


そう言われて宏樹は俺達に顔を向けるが、まゆゆとユウコりんはプイッと顔を逸らす。


ユウコりんは、我関せずと早速MINIMIに搭載されている分解用工具を使ってメンテナンスしている。

ってか、そんな分解用工具がMINIMIに搭載されていたなんて俺も知らなかった。


この子は…怖い。

俺たちさえ知らなかった銃の構造なのに何で知ってる?

それも知ってるって感じではなく精通してるって感じだし。

それに何の躊躇もせず、あの男たちを撃ち殺したそうだ。


一緒に撃ったまゆゆは、その光景に体が固まり放心状態になっていたそうだが…


俺は、ユウコりんに俺達と同じ()()()を感じる。


多分、13歳の中学生と言う事を度外視したら、この子は自分の力だけで生き抜こうと思っているのかもしれない。

だから自分の基準で悪い奴は躊躇いもなく撃つし、その事について感傷的になる事もない。


寧ろこのような世界規模での人類終了のお知らせを…望んでいたんじゃないか?

俺達と…同じように。


考えすぎか?


俺は中学校の状況を見る為、中学校の校庭が一望できる方へ進む。

それにまゆゆが付いて来て俺に質問する。


「あの…少し疑問に思ったんですけど…」


「ん? なに?」


「ここに、もしかしたら私たちの家族が…居るかもって言ったじゃないですか」


まゆゆは中学校の方へ顔を向ける。


「ああ…最悪の場合は…」


「でも、消防車のサイレンに釣られてここを出てしまうと…」


「ああ、安心して良いよ。消防車を発進させた時、ついでに中学校側のゲートを閉めておいたから」


「え?!」


「ほら」と言って学校の方へ顎を向けると、それに合わせてまゆゆが中学校の方を凝視する。


「ゾンビって音のする方に一直線に向かうんだよ。だからゲートに足止めを食らってると思うよ」


ゾンビは音のする方角へただ向かうだけ。

音のする方角へ行きたいが校門が閉じてるから別のゲートへ向かうなんてことはしない。

だから音のする方角の校門を締めることによりゾンビを足止めする事が可能なのだ。


「本当だ…そこまで考えて…」


「ね? 予想通りゲートに群がってるでしょ?」


俺はそう言いながらまゆゆに双眼鏡を渡すと「あっ!」と言ってその場で崩れ落ちてしゃがみ込む。


「…武志さん…ありがとう…ございます…」


いきなりお礼を言われたぞ?

どういう事だ?


俺は意味が分からなく頭の上にはいっぱい『?』が浮かんでいたが、声を殺しながら泣くまゆゆの姿に何となく察した。

まゆゆの様子を見てみんなもこっちに歩いてくる。


「麻由先輩どうしたの?」

「麻由ちゃん?」


「…まさか、お前も俺の奴隷だ! とか言ったのか?」


「ンな訳あるか!」


ハルちゃんとユウコりんに慰められてまゆゆは落ち着きを取り戻す。


「麻由先輩。『お前も奴隷』って言われたんですか? 私が代りに撃ちましょうか?」


すっごい物騒な話が聞こえるんですけど。

いや、ほんと、ユウコりんの目がマジなんですけど…


「大丈夫、そんなんじゃないから」


まゆゆは落ち着きを取り戻すと、俺に向かって再び「武志さんのおかげです」と一礼してくる。


俺は何となく察しゾンビが犇めく校庭の方へ顔を向ける。


「あ~…あそこに…?」


俺は学校の方を指さす。

まゆゆはコクリと力なく首を縦に振る。


「そっか…」


そう言うと俺も小学校の方を向く。


「…意味が分かんないんですけど?」


銃をこちらに向けユウコりんが凄んでくる!?

銃口を人に向けてはいけません!

イヤ~この子怖いわ~~~!! 目がマジですわ!


「パパとママがが…いたの…」


「え?」とまゆゆの方へ振り返るユウコりん。


何となく空気を察したのか、ハルちゃんもまゆゆの手を握っている。


「学校にね…」


「「「………」」」


宏樹はススス……と俺の横に来ると小声で「どうするんだ?」と聞いてくる。

主語は無いが宏樹の言いたい事は分かる。


「まゆゆには無理だろ…? 俺がやるか…」

「そうか…まあ無難だな」


物資(恐らく武器)を手に入れるには学校に行くしかない。

しかしその為にはゾンビを殲滅させる必要があり…そこにはまゆゆの両親も含まれている。


俺は中学校を見ていると、校庭に生存者の影を捉える。


「あ、あれ…中学校の生存者か?」


宏樹が中学校の方を見ると首を横に振る。


「いや、あれは小学校に居た連中だ…俺たちが中学校に帰るって言ってたから奪いに来たんだ」


そう言うと、宏樹が小学校に取り付いた時に訊いた話を教えてくれた。

その話を聞いていたのか、まゆゆも中学校の方を見て俺に顔を向ける。


「私たちも学校に行くんですよね?」


「あ~…その予定だったんだけど…」


「私なら大丈夫です。行きましょう! あんな連中に武器を奪われたら…」


「そうだな。でも……」


校庭の簡易テント、そこに設置されたテーブルの上に無造作に置かれた銃に一直線に走る連中。

それに校門に群がっていたゾンビが気づきゾロゾロと歩き出している。

連中は銃がある事に喜び笑っていた。

自分たちに向かって来るゾンビ余裕の表情を浮かべて引き金を引くが発砲されない。


「おい! 弾が無いぞ! 弾はどこ…うわ~~」

「こっちもない! どこだよ! 弾ぁ~~~~」


残った3人はバラバラに逃げ出したが四方八方から歩いてくるゾンビに一人、また一人と覆いかぶさられ喰われている。

校舎の中に逃げ込んだ一人も、悲鳴が聞こえた事から恐らく喰われたのだろう。


まゆゆはP220を震えた両手で握ると「両親は…私がやります!」と力強く言う。


「まゆゆ?」


宏樹が驚きの顔でまゆゆを見る。

俺は「いいの?」としか言えなかった。


「だって……見てください。お父さんとお母さん…人食べてるんですよ? 私がちゃんと成仏させないと…人なんて食べて欲しくない…」


そうだな。

中身は違えど両親の姿形で人間を貪る姿なんて…見たくも無いだろう。

ゾンビを活動停止にすることを『成仏』と言う事もまゆゆの優しさだろうか。


俺はまゆゆの肩を叩き首を縦に振ると、それを見たまゆゆも同じく首を縦に振る。


さて、作戦を考えるが…校庭には60体程のゾンビが確認できる。


校舎の中に至っては予想もつかないが…校庭よりは少ないだろうか。

そう考えると、凡そ100体前後のゾンビを倒さなければいけない訳だが…。


「なぁ、宏樹? 校舎の中にも物資ってあると思う?」


俺が作戦を考える為、宏樹に質問してみると「どうだかな?」と返答する。


「でも、避難民が居た所に物資が無いとは考えにくいわな」


そう、分かってるよ。そう答えるよな。うん分かってる。俺だって物資が校舎の中にあるとは思う。

でも、何体いるか分からないゾンビを相手にするほどの事か?


校庭にある物資だけだったら、60体+αを倒せば手に入ると思う。

ゾンビを倒して数が少なくなってきたらゾンビ殲滅と同時に車で校庭に侵入し、速攻で物資を車の中に入れて退散すればいい。


「物資は校舎の中にもありますよ。殆んどが保存食だと思いますが」


ユウコりんが校舎を見ながらそう言ってくる。


「なるほど…」


あそこから逃げ出したユウコりんの言葉だ。

説得力が違う。


「では作戦会議です」


俺達は円陣のように丸く座る。


俺はマガジンポーチからマガジンを出す。


「まず武器を確認しよう。俺はM4の弾は…マガジン1個と3発で33発と、P220のマガジン2つで30発とバラで9mmが9発か」


俺の弾はまゆゆと折半したので実質0に近い。

宏樹も空マガジンを並べて


「89式には…3発残ってた! P220は…あら、これしかない。」


9発が収められたマガジンを置く。


ユウコりんは「全部撃ち尽くしてやったわ!」と誇らしげにドヤ顔する。


「…そ、そうか…」


俺と宏樹は『良くやった!』と、とても言ってやる事は出来なかった。

帯弾の100発を全て撃ち尽くしたと言うその光景が目に浮かんでしまった。

まゆゆの持っていたM4とP220の分で実質俺の持ち分は0に近かった。

ハルちゃんも銃を前に置くが弾は残っていなかった。


「ふむ…それでは作戦です」


皆が、弾は残り少ないが”何とかなる!”と思っているような顔をして俺を見る。

半面、何とも出来ないと頭を抱えて蹲りたい気分だ。


「まずは、家に帰りましょう!」


そんな提案しかできなかった。



誤字脱字や矛盾等がありましたらご報告お願いします。

あと、こう言う風にしたら良いとかこんな展開も希望等ご意見ご感想もお待ちしております。

評価など頂けたら嬉しい限りです。


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