第32話:突撃3秒前
まだまだまだまだぁブッコんでいくんで夜露死苦ぅ!
てなわけで続きをどうぞ
相変わらず無線からは声が聞こえてくる。
「キミたちは疲れただろう? 部屋へ案内するから休んでいなさい。おい、この子達を案内してあげなさい」
「うぃ~…まだ、ダメですか? もうやっちゃってもいいだろ?」
「もうちょっと待ってろって、ほらまずは案内しろ!」
「ほ~い」
な? 俺の予想当たっただろ?
俺の特殊能力とは言わないが、予感はあまり外れた事がない。
特に悪い予感は。
でここの連中は完全に真っ黒クロスケDETH!
俺たちが聞こえたという事はまゆゆにも聞こえているはず。
「…私も確定だと思う」
ユウコりんが眉間に皴を寄せて盗聴器に聞き耳を立てている。
「もう…悪党には容赦しないわ」
と言いながら入念にMINIMIとP220を丹念に磨いている。
んま~~怖いわ、この子。
とても13歳には見えない。
この子幼く見えて、もしかしてどこかの紛争地帯に居たんじゃないの?
「それでは、作戦を…宏樹には送信機を渡しておく。俺は来る時に放置されていた消防車の所まで行って始動できるようにしておく」
作戦はこうだ。
①俺が消防車を確保し、いつでもスクランブル発進できる様に待機しておく。
②恐らく何人かが中学校に行ったところで、残った男がまゆゆ達を襲うと思う。(宏樹持ってるの受信機で連中の何人かが中学校に行くのは確認済)
③宏樹とユウコりんが『発砲音(もしくは受信機で危機的状況か察知)』を確認したら校舎に侵入してまゆゆ達を確保する(最優先)
④俺はもう一つの受信機(無線機)で「GO!」を聞いたらサイレンを鳴らしながら消防車でフェンスを破って小学校に突入する。
⑤それまでに宏樹たちには2人を確保して、この家に戻ってくる。無理な場合、早急に合流し撤退。
⑥俺もこの家に退避するから合流したら先に偵察で使用した中学校の前のマンションの屋上に避難。
「以上だ。ゾンビが大量に小学校に押し寄せるからスピード勝負だぞ?」
宏樹とユウコりんは力強く頷く。
「しかし、何で武志さんと宏樹さんは無線機まで持ってるんですか?」
至極まともな質問だね。
俺達は昔、盗聴バスターをやろうとして勉強のために購入した訳だよ。
なに? その怪しい者を見る目は。
信じて下さいよ。
「よぉ、一人で大丈夫か?」
消防車が放置されているところまで距離はさほどない。
しかし先程の騒動でゾンビも集まって来てる事だろうから迂回に時間がかかる。
当然抜け目なくキーシリンダーにキーが挿入されている事は確認済み。
「おお! 宏樹さんが心配してくれてる!!」
「念のためだよ。念のため」
「も~こいつは可愛いの~どれ、チューしてやろうか」
「うわ、いいよ! 気持ち悪い」
あ、あれ? ユウコりんの俺達を見る目が…痛い。
◇◆◇◆◇◆◇◆
避難場所(小学校サイド)
さっきの男の人の発言で私は武志さんが言っていた事に確信を持つ。
警察も何もない無秩序な世界で甘い事を言ってられない、武志さん達のいう事にやっと実感が湧く。
晴美ちゃんもさっきの事が聞こえたから先程からずっと俯いている。
「晴美ちゃん…大丈夫?」
力なく晴美ちゃんはこちらに顔を上げると、今にも泣きだしそうな顔をする。
「うん…なんで麻由ちゃんは武志さんと宏樹さんを裏切って残ったの?」
そうか。
晴美ちゃんは私も両親を探したいが為に、武志さん達と別れたと思っているのか。
その事はもちろん晴美ちゃんにも裕子ちゃんにも言ってない。
当然、武志さんと宏樹さんにも。
「え? 私は裏切ってないよ?」
私は笑顔で晴美ちゃんの疑問に答える。
「え? だって…ここに残って…」
「ここだけの話…晴美ちゃんはあの人達の事、信じられる?」
さっきの話を聞いてまだここの人たちのいう事を信じていたら…
「だって、さっきも中学校を助けに行くって言ってたじゃない」
晴美ちゃんの言葉に私は軽く眩暈を覚える。
そうか、武志さん達が昨日、晴美ちゃん異感じた事はこういう事だったのね。
「…晴美ちゃんには『中学校を襲う』とは聞こえなかったの?」
「え? なんで? そんなこと言ってないじゃない」
「そっか………晴美ちゃんももうすぐ分かるよ」
「何が?」
晴美ちゃんもさっきの人たちの言葉が聞こえてない訳ない。
晴美ちゃんは分かっているのだけれど、分からない振りをしているのかもしれない。
認めたくないだけなのかもしれない。
私も晴美ちゃんを信じているから…。
◇◆◇◆◇◆◇◆
何か、二人で言い争ってるみたいだ。
まゆゆにも俺の苛立ちが理解できたのか、最後の「大丈夫、晴美ちゃんは私が守ってあげるから」以降はもう余計な会話をしなくなったのかその後は受信機から特に何も聞こえなくなった。
辺りも暗くなってきた所で作戦を開始する為に俺は静かに外に出る。
目には暗視ゴーグルをかけている。
これを鞄から出した時「そんなものまで…」とユウコりんは呆れ顔だった。
この暗闇に無謀に外を散歩できますかってんだ。
「生き残る為のアイテムです!」
そう言うと「今度私にも貸して」と言ってきやがった。
この子は、まゆゆとハルちゃんが居なくても中学校から避難できたのでは? いや、もしかしたら中学校のゾンビ位、全滅できたのでは? と俺は心の中で密かに思った。
意を決して俺は二人に「頼むよ」と声をかける。
「そっちもな」と宏樹が喝を入れてくる。
お互い頷き、俺は足早に消防車の所まで走って行く。
最短距離で行くと小学校の正面の道路を行けば早いのだが、正面ゲートにゾンビが溜まっている。
とてもじゃないが小学校の壁際を走る事は出来ない。
しかも、ゾンビに見つかり民家に逃げ込んでフェンスを乗り越えてと結構なアクションを披露してしまった為に、昼間よりもゾンビが増えている。
少し遠回りになるが極力来た時と同じ道を行くがゾンビが増えているので更に遠回りを強いられる事も覚悟する。
所々にゾンビが徘徊しているが、集団で無ければパチンコで十分対応できる。
しかし…ハハ~ハ~ハ~ハ~ハ~ハ~~…疲れる。
30のおっさんに走らせるとか…ハ~…普段…ハ~ハ~…しない事ハ~ハ~するもんじゃないハ~ハ~な…ハ~
もう、タバコやめるか?
いや、今のストックが無くなるまで吸ってやる!
ゼハ~~~…はぁ…俺はマンションの下まで到着した。
あとはこの道を真っ直ぐ行けば…げっ…団体さんだ。
15体程がマンションと消防車の間で散歩している。
なんで? どこから湧いて出た?!
昼間のドンパチで引き寄せられたのだろうか?
にしてはタイミングが悪すぎる。
消防車の近くの家まで裏から行くか…
その前に俺はマンションの2階に登る。
手には空き缶。
意を決して、俺は今来た道の方へ空き缶を投げる。
ゾンビ達は音に釣られてこっちに歩いてくる。
その隙に消防車のある民家に連なる家の庭に侵入する。
幸いにも、壁と言うのも烏滸がましい程の柵で土地を仕切っているだけだ。
この辺の人たちは近所付き合いが良いのだろうか?
こんな小さな柵だけでプライバシーは守れんよ?
丁度、消防車が停車している横の民家に辿り着いた。
俺は庭から家の外周をまわり、門扉を出るとゾンビが目の前に登場した。
15体のゾンビは空き缶の音の方に行っていたのに…こいつは外れゾンビか!?
すぐさまゾンビは『お食事~』と言わんばかりに俺に覆いかぶさろうとする。
掴まれたらヤバいのでとっさに俺はゾンビの腹を蹴って半歩ほど後退する。
ゾンビは多少よろめいただけで、またまた『お食事~』と俺の方に向かってくる。
パチンコを用意する余裕もなく。
最終手段の引き金を引く。
「パン」と乾いた破裂音が静まり返った暗闇に響く。
目の前のゾンビは倒れるが、銃声に釣られて30m程先の団体さんがこちらに引き返してくる。
消防車にキーが差さってる事はマンションに来る時に確認済みだ。
念のためイグニッションを回す。
「ギュルン」とセルが回ると同時にエンジンも始動した。
俺は一安心してドアを閉めドアキーをロックする。
お約束の後部座席にゾンビが…居ない。
そのまま後部座席のキーもロックしてエンジンを停止させる。
ガン! バン! ドン…ドン…バン…
ゾンビは消防車の周りに到着し、車体を叩きまわる。
消防車と言う事でガラスが高い位置にあるのが救いだった。
だってこいつら、俺の姿を確認したら自分の骨が折れるのお構いなしに車体を殴るんだもん。
側面のガラスなんてすぐに割れちゃうんじゃない?
知能が無い事に助かってるようなものだ。
サイレンのボタンを確認し、ゾンビに見られない様に運転席に深々と腰かけると大きく溜息をし受信機に聞き耳を立てる。
「あとは頼むよ? 宏樹さん」
「お疲れさん。思ったより早かったな。あとはゆっくりしててね」
そう言って無線での会話は終わる。
ゆっくりって言ったって外にはゾンビの大群が車を叩いてるんですよ?
ゆっくり出来ますかって!
愚痴っても仕方が無いのでゾンビに見られない様に背を低く、ケツがシートに座れない位寝そべる。
リュックから水を取り出し喉に潤いを与えるとタバコに火をつけると宏樹の「GO!」の合図が来るまで俺は静かに目を閉じる。
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