第29話:はじめてのピンチ
お約束と言うか予想通りと言うか。
チート持ち登場です。
それでは続きをどうぞ。
宏樹は学校側、俺は周辺の民家を探る。
その結果、学校には100体以上のゾンビが居るようだ。
校庭はおろか校舎の中にも居る様で全容を把握できない。
そして俺の調べていた方角は避難民が立て籠もっている家らしき場所は無かった。
何故かと言うと、家に逃げ込んでいたらその周りにはゾンビが居るはずだからだ。
しかしゾンビが包囲している家はどこにも見当たらなかった。
俺たちと同様に静かに暮らせている人などはそう居ないはず。
しかも自衛隊や警察、消防に自治体の皆さん総出で各家を回って避難を指示していたのだ。
避難途中の人も漏れなく近くの避難所へ強制収容しているようなので、避難所から勝手に逃げ出すことも難しい。
逃げ出せたとしても周りはゾンビで溢れているのだから帰宅するのも容易ではない。
そう言う事も含めて自衛隊や警察官も居ただろうし避難所にいた避難民は小学校に逃げたのだと推測する。
そこで第1回屋上作戦会議を始める。
このまま小学校の方に移動する事を提案した。
宏樹の民家を虱潰しに家探しする案は、どう考えても酒目当てだろ? 今は却下だ。
今はだが。もちろん最優先事項が済み次第行動に移すよ。
そう言う事を言うと宏樹も納得した様子。
ユウコりんの『学校に行って武器を調達する案』は即却下しておいた。
どうやって校庭にいる100体は下らないであろうゾンビを相手にしろと?
とりあえずここまで来たのだからと小学校を目指す案を採用する。
俺はその為の作戦と小学校にいる住民の行動を予想した。
「まず、ここから見るに小学校までは500m位かな? 避難してる人が居るなら相当数のゾンビが居ると思われる」
宏樹が無言で手を上げる
「はい、宏樹君」
「先生は何でゾンビが大量に居ると思うんですか?」
「はい、いい質問ですね。まずは中学校に居るゾンビは元々学校の中で発生したゾンビ、もしくはゾンビ化した人たちだと思われます。何故かと言うと、そこに食料である人間が大量に居たからでしょう。では、学校の敷地内に大量にゾンビは居るのに学校の外に居ないのは何故だと思いますか?」
「…はい」
ユウコりんが静かに手を上げる。
「はい、ユウコりん」
「多分、逃げた人たちを追って行ったから?」
「はい、正解です。だから、一番近い避難場所である小学校にゾンビも大量に向かったと思われます。」
まゆゆとユウコりんはその話を聞いて眉間に皴を寄せている。
ハルちゃんに至っては、ここに来る前からずっと俯いている。
ここから小学校までたどり着く方法と、小学校へ入る方法を模索する。
「あの、まず、中学校の方で大きな音を出して、ゾンビをこっちに誘導するのはどうでしょう?」
まゆゆが最初に提案してくる。
確かに良い案だ。
しかし、それだと小学校まで届くだけの音量を長時間鳴らす必要がある。
小学校以外からもゾンビが来る可能性もある。
それに…
「まゆゆ、俺はハルちゃんを小学校の生存者に託したら、中学校の中にも行かなきゃいけないと思ってる。」
「何故ですか?」
「ここは最後に両親と逸れた場所だよ? 最悪…あそこには…」
あ、っという顔をした後にまゆゆの顔に影がさす。
「…そうですね」
ハルちゃんは一瞬こちらを窺うが、まゆゆが俯いてしまうのと同時にハルちゃんも俯いてしまう。
両親に生きていてほしい。でも、あの騒動では…ダメかもしれない。
まゆゆはそう思っているのだろう。
ハルちゃんに至っては、避難民の力を借りて探してください。
俺達が力を貸すのは避難場所までです。
「だから極力、中学校にゾンビを集めたくはないんだ」
まゆゆは返事をしなかったが俯いたままで首を縦に振った。
「正面からゾンビを倒していくのはどうでしょう?」
そんな案を出したのはユウコりん。
「はい、ユウコりんはゲームと勘違いしてますね? 当然却下です。」
「ブー」と唇を尖らせる。
「その方法だと時間が掛かり銃声も響くし危険度も増します。地道に小学校の周りを調べてゾンビの手薄な場所から侵入するのがやっぱり堅実だと思うのですが、どうでしょう?」
「…まぁ、無難だな」
「分かりました」
「襲われそうになったら撃っていい?」
「………そんなに撃ちたい?」
「だって、MINIMIなんて撃てるとは思わなかったし~」
「だよな?」
ユウコりんが宏樹の援軍を伴って暴走気味ですが今はその時ではない。
「まぁ、その時が来たら好きなだけ撃たしてあげますよ」
「イエイ」と小さくガッツポーズをするユウコりん。
この空気を完全に読んでないよね?
俺達は小学校の周りに移動する。
途中、パラパラとゾンビが散歩していたので鉛星を喰らわす。
音が静かなので集まってくることも無い。
ユウコりんとまゆゆにも練習の為に撃たせる。
まゆゆはゾンビと言えど、元人間に対して、人間の姿形をしている食人鬼に対して、若干抵抗があるのか発射を躊躇う。
それでも意を決し力一杯にゴムを引く。
流石に女の子の腕力じゃパチンコはキツイのか、弾が明後日の方に飛び、ゾンビに当たる気配が無い。
仮に当たっても倒す事は望めない。
威力が"ビュン"じゃなく"ピュ~"や"ヒューン"って感じだったからだ。
危ないと思ったらすぐにパチンコを受け取り仕留める。
これを何回か繰り返している内にまゆゆがゾンビに命中させる。
「うわ…当たった…」
まゆゆは初めてゾンビを倒した事で、現実世界に還って来たのか口を押えながら震えている。
その様子を見た俺達も音の出ない拍手で「おめでとう」といって激励した。
ユウコりんと言えば、パチンコを受け取った瞬間から、まるで和弓を扱う様に筋力では無くテクニックでゴムを伸ばすとそのままゾンビに命中させる。
色々テンションの上がっていたユウコりんはゾンビに次々と鉛星を命中させる。
俺と宏樹、まゆゆでさえ目が点になってしまうほどに100発百中の精度と安定した連射を披露した。
なんだこの子は?
一つ上とは言え、一番しっかり者のまゆゆでさえゾンビを始めて倒した時は人を殺めたかと思うほどに憔悴していたのに…。
ユウコりんの快進撃も手伝い順調に計画が進む。
そうこうしている内にここから小学校の正面ゲートが見える。
案の定、ゲートにはゾンビが群がっている。ゾンビに柵を乗り越える知能が無いのか、ゲートやフェンスに手を叩きつけたり顔を押し付けたりしている。
という事は、間違いなく生存者が小学校である避難所に居るという事を示唆している。
しかしあのゾンビの数にさすがに正面からは入れない。
見るからに200~250体は居ると思う。
その光景は無秩序な学年集会って感じかな。
そのまま小学校の外周を巡ると校庭が民家の敷地に面してる場所がある。
そこなら民家の庭からフェンスを越えられるかも?
と思った時、太刀川の防災無線が鳴り響く。
『こちらは太刀川市役所です。現在、非常事態宣言が発令されております。市民の皆さんは慌てず最寄りの避難場所にお集まりください。また、夜間禁止令も…』
お~い市役所!! こんな状況でどうやって避難場所に行けばいいんだよ!
そもそも、目の前の避難場所にはゾンビが大量に居ますが!!
こんな状況でも時間が来たら放送するようになっているんだろうけど。
まったく…あ! ゾンビがこっちを見てる!!
…来た! ゾンビ来た!! 大量にやって来る!!
「ヤベ! 走れ!」
俺は短く言うと学校と隣接している目的の民家へ入る。
幸いにも鍵がかかっていないので、全員逃げ込めたところで殿の宏樹が鍵を閉める。
一息つきたいが、ここからは時間との勝負。
家のリビングを駆け抜け庭へと出る。
「小学校のフェンスを登れ!」
高さは2m程だろうか?
まずはまゆゆを金網のフェンスを登らせる。
と、逃げ込んだ家の脇を抜け庭の方へゾンビが侵入してくる。
幸いにもゾンビが一列で来るのがやっとのスペースしかない為、一気に押し寄せるのは不可能だが…こりゃ、いよいよ不味い!!
さすがに俺もM4を構える。
と、俺の発砲より宏樹の発砲より、誰よりも早くユウコりんが発砲する。
「タタタ」
「タタタタタタ」
「タタタタタタタタタ」
次々とゾンビの頭に風穴が空いていく。
なんでMINIMIで連続してヘッドショットが可能なの??
「早く!!」
ユウコりんが叫ぶと、俺達も我に返ってフェンスを登ろうとするがゾンビが多い。
さすがに荷物を持っていないハルちゃんはすぐフェンスの向こう側に辿り着くが、ず~っと「キャー」とか学校に向かって「誰か助けて」とか言ってる。
最初にフェンスに登ったまゆゆもフェンスの向こうからゾンビに向かって発砲している。
当たる、当たらないは抜きにして、さすがまゆゆ。
いざとなったらちゃんと行動してくれる。
宏樹が89式を撃ちながら「俺は殿だから先に行け! そして俺を助けろ!」と、こんな時でもいつものように軽く言ってのける。
俺もそれに答えなきゃな! と、発砲を止めてフェンスを登り、フェンスの上で援護する。
「ユウコりん! 早く登れ!!」
MINIMIなんて重火器を持ってるから、そんなの持ちながら登れるわけないだろ!
スグにMINIMIを受け取ると、ユウコりんは身軽にフェンスを登りきる。
「宏樹!!」
そう叫ぶと俺はフェンスの上から援護射撃。
小学校の敷地からまゆゆとユウコりんが援護射撃を始め何とか全員小学校の敷地に入る事が出来た。
暫くフェンスに戯れているゾンビを倒していたのだが、埒が明かないのと、弾が少なくなってきたので放置する事にした。
やばい、フルオートにするとすぐに弾薬は無くなるのね…
マガジンクリップにセットされている30発×30発マガジンが空になる。
残りはポーチに入っているマガジン3つ(90発)
小学校の方を見てると、校舎入口や教室の窓からこちらを見ている人影が確認できる。
「さて、生存者が居るようだね。それじゃ…じゃあねハルちゃん。」
俺はハルちゃんに軽く手を挙げて挨拶する。
「あ…」
縋る様な目で力なく右手を出すハルちゃん。
さて、ここからどうやって逃げるかね。
ちょっと大人げないが逃走方法で頭がいっぱいでハルちゃんの事はもう考えていられなかった。
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