表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様?いいえただの悪魔です。  作者: 次元
第3章:死者の星
143/384

第28話:避難場所へGO!

今回は少し長くなるかも?

とりあえず言っておく。

作者は女の子には優しいです。


それでは続きをどうぞ。

―――武器は渡せない。


今までのんびりマイペースで優しかった宏樹に突き放されるように言われてハルちゃんは顔を伏せる。

その様子に余りにも不憫になり一応フォローは入れる。


「まあ武器を持たない代わりに俺たちが守ってあげるよ」


語尾に"大人だからね"と付けようと思ったが、大人げないので辞めておく。

案の定、まゆゆとユウコりんも


「「私も」」


とハルちゃんに笑顔で答える。


大人ではない同級生と後輩に守られてハルちゃんはどんな気持ちなのだろうね。

大人だから子供を守って当然と考えるハルちゃんを守るのも子供なのだが。


その光景を横目に俺は大まかな作戦の内容を皆に提示する。


「それじゃ避難場所までの移動については、ご近所さんのワンボックスを使わせてもらう」


当初の予定では"静かにゆっくり"任務を遂行する予定だったのだが辞めた。


「車での移動って大丈夫か? ってか、当初は通路上の民家に入って物資を拝借しながらって言ってなかったか?」


案の定、宏樹が意見を言ってくる。


「家の外はゾンビは疎らだし、速攻で移動したら大丈夫だと思う。それに危険な行動は臨機応変にだな…ま、早く避難場所に行った方が良いかな? ってね」


そうなのである。

面倒事は早々に片づけてしまいたい心境なのだ。


「ま、そうか。マジでいつも行き当たりばったりだな…でも、通りとか、車で塞がってるんじゃ?」


宏樹も特に反対する事も無く肯定してくれる。


「自衛隊とか米軍とか装甲車出してたでしょ? 大通りは車で塞がってる事は無いと思う」


「なるほど、さすが先生。考えてないようで色々と考えてる!」


考えてるようで何も考えてないぞ。

でも、実際ゾンビの大群が現れたら速攻でUターンするけどな。

グルグルMAPを見ながら道順と目的地を指示する。


「一先ず、避難場所に行く前に確認する事がある。第一に避難場所の中のゾンビの数、第二に避難場所周辺のゾンビの数、第三に避難場所近辺に生存者が居るかの確認。その為に、このマンションの屋上を第一目的にする。」


避難場所である学校の周りは一戸建てが多く密集しており、比較的古い街並みの為、マンションなどの屋上からだと校庭が一望できる。

しかも、目的地であるこの学校は中央線の線路沿いに位置する事もあり、このマンションからだと線路を挟んだ対面に位置する。

指示したマンションは避難場所から30m程離れた場所に位置する。

まさに目と鼻の先だ。


ここからだったら、安心して確認作業も出来るだろう。


車から降りたら、俺が先頭、中三トリオが真ん中、宏樹が殿。

初めて我が家に案内した時の布陣だ。

そして、恐らく生存者が居る場合、ゾンビも大量に居るはずだ。

しかも、生存者は武装している可能性が高い。


「もし、生存者が居たとしたら、俺たちが接触を図るのは極力避けたい。しかしハルちゃん一人にゾンビを突っ切って生存者に合流しろとはとても言えない」


俺はハルちゃんを見つめながら真剣に言う。

ハルちゃんは不安な顔で目には涙を浮かべている。

何で涙目?


目に涙を浮かべるハルちゃんを横目に、30歳男子としての自分が訴える。

お前は本当に14歳の中学生を見捨てるのかと。

しかし、もう一人の自分が俺の前に立ちはだかる。

悪魔『誰も見捨ててないし?』

天使『現にハルちゃん泣いてるぞ?』

悪魔『そんなの言わずも分かるだろ? 俺達の態度が冷たいからだよ』

天使『じゃあ優しくしてやれよ』

悪魔『あ? 優しいじゃね~か。一人にしないだけ十分なのに、避難所まで案内してやるんだぞ?』

天使『そんなのどこが優しいんだよ。この家に置いておいてやっても良いだろ』

悪魔『自分の事も自分で守れない人間に、俺達に何かあっても何にもしないんだろ? 逆に俺達が助けてやらなきゃいけないなんて足枷じゃね~か』

天使『そんなの言い訳だろ。大人が子供を守るのは当然だろ』

悪魔『子供だから守る? 大人だから守らなきゃダメ? 誰が決めたそんなの』

天使『決まってるだろ! 正しい心だよ! 正しい心が決めるんだ』

悪魔『じゃあ、正しいって何だよ? 正しい? 正義? そんな曖昧なものを押し付けるな』

天使『正しい事を押し付けて何が悪いんだよ!』

悪魔『正しいの判断基準は、定義は何だ? 人間が2人居れば2通りの正義があり、正しさがある。その中で相反する正しい意見の場合、何が正しい?』

天使『そんなの、自分の判断に決まってるだろ』

悪魔『その自分の判断でハルちゃんは俺達と別れて避難所に行くって言ってるんだが? その尊重されるべき本人の判断を曲げてここに居ろと? それこそエゴだろうが!』

天使『ウグッ…』

悪魔『ハルちゃんは避難所が良いって言ってるその意思を尊重するのも正義だろうが』

天使『…』

と、俺の中の悪魔と天使が戦っていたようだが軍配は―――


俺は銃を手に取る。


「さて、準備はいいかな?」


「はい!」


異様に高いテンションのユウコりんが答える。

ここで自宅待機を言い渡すとどうなるか分かったものじゃない。


確認のため、と前置きをしてとりあえず聞いてみる。


「みんなで行くのか?」


「え? 全員で行くんだろ?」

「当たり前じゃないですか! 私は行きますよ!」


遠征組は宏樹とユウコりんだけでいいんじゃないのか?

もう、この二人を放置しておけばこの辺のゾンビとか全滅させちゃうんじゃないか?

弾も無くなるけど。


「まゆゆは? 一緒に行くのか?」


まゆゆはハルちゃんの顔をチラリと見ながら、少し間を開けて俯きながら「はい」と小さく返事をする。


「生存者と戦闘になるかもしれないんだぞ? ゾンビが居たら撃つかもしれないんだぞ? 大丈夫か?」


「…私…行きます! だって…」


そう言って再びハルちゃんを見る。


「私も晴美ちゃんを守るって約束しましたし、それに…」


まゆゆは一呼吸おく。


「相手がどんな人でも…晴美ちゃんを保護してもらうんですよね?」


そう言って渡された銃を握りしめる。


「…ああ、そうだな。例えどんな人間だろうとハルちゃんを生存者に託す。どんな人間だろうとだ。」


そりゃそうだ。

どんな人間でも…殺人者だろうが強姦魔だろうが構わずだ。

生存者にしてみたら、食い扶持が減るのは歓迎できない。


しかし、助けを求めて来たのが幼い中学生だったら?

真っ当な人間だったら受け入れるかもしれないがこのご時世、どう転ぶか分からない。

悪人だった場合、性欲の捌け口の為に喜んで仲間に迎えるだろうが。

俺に人間の善悪の判断は出来ない。

だからどんな人物であっても託す。

ハルちゃんは無法と化した街に住む人間に何を期待しているのか。


もしかしたら本当に保護してくれる人もいるかもしれない。

しかし、もはや俺には関係のない事だ。


「…あ…」


何か言いたげなハルちゃん。もしかして、私やっちゃった? とでも思っているのか?

時すでに遅し…でもないんだけどね。ただ単に『他人任せ』の考えをハルちゃんが辞めれば事は済む話なんだけど。

結局は考えられないだろう? 分かってないだろ?


ハルちゃん一人の我が侭の為に俺たちが危険を冒そうとしている事に。


まぁ、俺にしたらここから追放するよりも、他人に頼って出て行ってくれた方が気持ちは楽だ。

もっと簡単な方法は始末しちゃえば良いんだが、約束があるから仕方がない。


「大丈夫。私は最後まで見守るよ。」


まゆゆがそう言った時のハルちゃんの頬を一筋の涙が伝う。


「よし、行くぞ!」


俺はベランダから降りて塀を登る。

ワンボックスが駐車しているご近所さんの庭へ入ると、そのままガラス戸をあけて家屋に浸入する。

前回の物資調達時に、車のキーがどこにあるのか確認してある。


キーレスシステムの為、このままドアを開けてしまうと「ピピッ」と車が鳴ってしまうので、差込み用のキーをキーレスから取り出す。

しかし、車のドアを開けたままキーを指した瞬間「ピーピーピー」とドア開閉の音が鳴る。

OH! 予想外の展開!

ワンボックスカーなんて乗らないしあまり興味も無かったから良く知らない。

慌ててドアを閉めエンジンを始動する。恐らく2週間以上ぶりのエンジン始動だからバッテリーが上がってたらどうしようと思ったが、問題なかった。


すぐに駐車場を出て裏の家の玄関前に車を停車させる。


打合せ通り、裏の家で待っていた宏樹が助手席、三人は後部座席に着席する。

行動は静かに迅速にが基本。



大通りに出てみると、予想通り車の数は少ない。

全て片側2車線道路の脇に寄せられており、楽々と車を走らせることが出来る。


時折、ゾンビが散歩で脇道から出てきたり、道路の真ん中に居たりするが、うまく正面で衝突しないように避けていく。


まゆゆは注意深く周りを見ている。


MINIMIを持ってるユウコりんは最後尾席に座り、後方を確認している。

避けたゾンビに銃口を向けた後に、薄く笑っている。

ユウコりんが怖いです! 頼むから、MINIMIは撃たないでくれ。と心の中でリフレインしていた。


家から避難場所まで車で10分ほど。

本当は無音で行きたかったが車を利用する性質上、無音は無理。

ならば時間をかけず最速で到着した方が良い。


あの信号を曲がれば目的のマンションの脇に出るはずだ。

信号を曲がり、すぐ前方100m程の場所に乗用車と消防車が道路の真ん中に停車している。

この道路は完全に脇道タイプで、車の行き違いも用心しなければ交互に通行できない。


そんな道路で車を30m程離れた場所に停車させ降車する。

辺りにゾンビのうめき声や物音がしないか様子を探る。


耳鳴りがするような静けさの中、俺が先頭になって歩く。

乗用車と消防車の下を覗き、向こう側に何かいないか確認をすると、消防車の向こうにゾンビが数体居ることが確認できた。


俺は音を出したくないから、必殺鉛星をゾンビに向けて放つ。


命中しゾンビ一体は倒れるが、他のゾンビは気が付かないのかユラユラしている。

向こうを向いているゾンビの後頭部に鉛星を喰らわせたところで、残りのゾンビが気が付いたようで、ゆっくりこちらに近づいてくる。


俺は後ずさりながら、消防車の横で一体、乗用車の横で一体を始末する。

もう一度消防車の下を覗き込んでも、何も居ない事が確認できた。

安心したところで襲われるフラグを立ち切る。


後200m程でマンションの敷地内に入る事が出来る。

なるべく音を出さないように素早くマンションに向かう。


マンションの敷地に入り正門から入ろうと思ったら、このマンションはオートロック式だった…。

仕方がないので、マンションの周りを調べ、非常用階段へ通じる門を乗り越える。


ユウコりんよ…こういう時MINIMIが非常に邪魔なんですけど…ほれ、寄こせ! と手を差し伸べると、ユウコりんは死んでも放すか! と言う表情で門を登る。

ユウコりんの原動力が何なのか分からなくなってきた。

そのまま俺達は静かに屋上に向かって上がる。


全員が屋上に上がったのを確認し、階段で少し待機する。

ゾンビの上がってくる気配も、誰かが居る気配も無い。


俺と宏樹は安心して煙草を吸いながら、双眼鏡で避難場所やその周辺を探る。



モチベーションが保たれてる間はどんどん投稿しますよ!


誤字脱字や矛盾等がありましたらご報告お願いします。

ご意見ご感想もお待ちしております。

評価など頂けたら嬉しい限りです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ