第26話:それぞれの道
もうそろそろチートの片鱗を見せる人が?
それでは続きをどうぞ。
避難場所と状況を三人に聞いたところで今後の作戦を提案する。
「まず三人が逃げてきた避難場所に行こうと思います。これには色々な意味もあります。俺たちの為でもあり君たち3人の為にもなります。危険もありますがお互いWINWINな状況です。しかし一直線に避難場所に行くのは危険だと思います。なので避難場所への経路に連なる民家を安全確認しつつ物資を集めたいと思います」
さっさと家族を見つけたい気持ちが逸るハルちゃんが疑問を投げかけてきた。
「何で一直線に向かうと危険なんですか?」
ここから避難所までは約3km。
普通の散歩だったら30分程で着く距離だが、今は命がけの散歩になる。
「まずは逃げてきた避難場所付近はゾンビが大量に徘徊してるかもしれないし、近くには生存者が居るかもしれない。」
俺の説明を聞いてハルちゃんが首をかしげる。
「生存者が居て何が危険なんですか? 生存者が居たら助けて貰えばいいじゃないですか」
ハルちゃん…頭使おうぜ?
生き残るには頭をフル活用しないと生き残れないんだぞ。
しかも、まだ他人に助けてもらおうとしてるの?
宏樹を見ると軽く眉間に皴が寄っている。
「…今回、ハルちゃんを助けて保護したのが俺達だから良かったけど…そうじゃなかったら?」
まゆゆとユウコりんは大人しく俺の話を聞いている。
「どういう事ですか?」
ハルちゃんの言葉は敬語なのだが、少し含みのある言い方になって来たぞ?
俺もまた迎撃しちゃうぞ?
「避難所には自衛隊が居たんでしょ? って事は武器も携帯してたよね? って事は生存者が武装してるかもしれない」
「だったら、余計心強いじゃないですか!?」
俺は疲れたよ、何でいちいち説明しなきゃいけない?
そりゃ俺はテレパシーとか使えないから説明が必要なんだろうけど、考えの合わない人との会話ってこうも疲れるものかい。
「はぁ…宏樹君…バトンタッチ。俺はこれ以上、昨日と同じ話は出来ないし、したくない」
やれやれと言った感じで宏樹が引き継いでくれた。
俺は少しイライラしながら煙草を吸い始める。
「武志が言いたいのは、相手が助けを乞える人間か、そうじゃないかと言う事を言ってるんだよ」
「…? どういう事ですか?」
宏樹の堪忍袋小さすぎません?
ハルちゃんの言葉で若干苛立ち気味になる。
「ハルちゃんに人を見る目があるのかって言ってんの」
やっぱり苛立ってる。
言葉も少し強い口調になってるし。
「意味が分からないんですけど!」
ああ、ハルちゃんもイライラし出したし宏樹も口調が変わってる…
こりゃ、内部抗争勃発か?
と思った時、まゆゆが間に入ってくれた。
「晴美ちゃん、大人や男の人が全員、武志さんや宏樹さんの様な人とは限らないって事よ」
「何で? 他の人が生きてるんだったら…」
まゆゆの言ってる事が分からないと言った感じで答える。
「晴美ちゃん…昨日、武志さんが言ったこと忘れたの? 自分の身は自分で守るのよ?」
「…それは分かってるけど…」
俺はイライラの峠を越えました。
もう無理。
言いたい事を言わせて貰おう。
「分かった! はっきり言う。武器を持った男がハルちゃんを強姦しないって何で言えるの? 殺さないって何で分かるの? 昨日も言ったけど生き残った大人が助けてくれるって何で分かるの?」
「…それは…」
この子は避難所もしくは大人が多くいる生存者の所に保護してらうのが良いのではないか? と思っている。この考えが変わらない限り俺たちの足枷となりうる。
状況によっては敵対する事もあり得るぞ。
「まゆゆとユウコりんにも聞きたいが、避難所に避難してきてる人たちが居て、そこに行きたい?」
「…………私は…」
長い間をおいてまゆゆが自分の考えを話し出す。
「…避難所が怖い…だから、私は武志さんと宏樹さんと行動を共にします」
「ちょっと、何で? 麻由ちゃん! 何でなの!?」
まゆゆの答えにハルちゃんは詰め寄る。
そんなハルちゃんを無視して俺はユウコりんに顔を向ける。
「ユウコり 「私はここに残ります」 了解」
俺の発言の最中に言葉を被せてきた。
最年少なのに中々やるな…最年少だから怖い物知らずなのか?
「裕子ちゃんも何でなの? ねえ、麻由ちゃんも何で?」
2人の言ってる事が理解できないハルちゃん。
そんなハルちゃんにまゆゆは顔を向ける。
「あのね」
まゆゆはハルちゃんの目を見て真剣に答える。
「私たち元々は避難所に居たんだよ? その時運悪くゾンビが避難所に出ちゃったから、みんな大変な事になって…私たちも家族と離ればなれになって、でもその時、そんな状況で誰か助けてくれた? 私は晴美ちゃんの手を引いて逃げたけど、そこに居た大人や自衛隊の人たちは私たちの手を引いてくれた? 助けてくれた?」
「でも、そんなの…あの状況じゃ…どうしようもないじゃない!」
「そう、誰もが自分たちの事で手一杯で仕方がないわよね。でも誰も助けてくれなかったことは事実よ。大人が大勢いたのにね。そんな中で逃げるしか出来ない私たちに、生き残る術を武志さんと宏樹さんは教えてくれると言ってくれた。それは家族を探す為の力になると私は思う。」
「そう…だけど…でも…」
まゆゆの剣幕にハルちゃんはまゆゆから視線を外す。
「晴美ちゃんは家族を探したいんじゃなかったの?」
「そうよ! 探したいわよ!」
「避難所の人が晴美ちゃんの代わりに家族を探してくれると思ってるの? こんなゾンビがいっぱい居て危険な状況で」
「でも…」
「晴美ちゃん! 私は敢えて言わなかったけど………私たちの家族、本当に生き残ってると思う?」
「え?」
「何百人といた人達は襲われちゃったし…私の家族も…もしかしたら…」
まゆゆは声を詰まらせ目には涙をためて堪えている。
「それに…私たちの居た避難所に備蓄された食料、どの位保つか知ってた? 1週間も無いんだよ」
「え? だって、自衛隊の人は…1ヶ月以上はあるって…」
「それは普通の震災時だったら、備蓄は市が管理する保管庫にある分を計算しての事けど、こんな状況ですぐに取りに行ける訳ないでしょ。誰があのゾンビ達を相手に備蓄を取りに行けるのよ」
「それは…自衛隊の人たちが…」
「じゃあ自衛隊の人たちがゾンビにやられちゃったら、私たちはどうするの?!」
「…」
まゆゆの説得にも反論するハルちゃんに俺は埒が明かないと思ってハルちゃんを切り捨てる事にした。
宏樹に目を向けると俺の考えを汲み取ったのか小さく鼻で溜息を吐いた後、小さく頭を数回縦に振った。
「分かった。ハルちゃん、君はどこかの生存者が生き残っている避難所に連れて行ってあげる。そこで俺
たちとサヨナラだ」
「「え?」」
まゆゆとユウコりんも驚きの表情を向ける。
「あれ? 君たちも避難所に行きたかった?」
「え? いや、そうじゃ…ねぇ、晴美ちゃんいいの? 本当にそれでいいの?!」
ハルちゃんは黙って少し間を開けた後、首を縦に振る。
「分かった。本来だったらハルちゃんを殺す所だったが…」
「「「え?!」」」
驚きの表情を浮かべて三人いっぺんに俺の顔を見る。
「え? だって、この場所知ってるんだよ? 普通は情報が漏れない為の処置をするでしょ」
「ええ!?」
まゆゆは驚きの声を上げ、ユウコりんは納得の表情を浮かべる。
「でも、仕方がない。避難場所に連れてってあげる。そう言っちゃったからね。約束は守るよ」
安心した中三トリオ。
「あ、そう言えば、ユウコりんは何でここに居たいの? 避難所じゃなくていいの?」
「え~? だって、ここの方が気楽だし、居心地いいし~。私も強くなりたいし~」
ユウコりんは強くなりたいと言った時、軽くシャドーをして銃を構えるポーズをするが、何か俺たちより型にはまっている。
これ、絶対経験者だろ。
「君はどこの格闘家だ。でも、なるほど。それが自分の考えなら尊重しよう」
「さて、作戦変更だ。ハルちゃんを避難所に連れてく為の作戦を考えます」
まゆゆはハルちゃんに何か言いたそうにしていたが、言葉に出ないのか寂しそうにハルちゃんを見ている。
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