第20話:ミッションコンプリート
仕事が減り、平日と休日の区別なく鬱憤を晴らすように執筆しております。
では今回も調子に乗って連投してみます。
それでは続きをどうぞ
音をたてず、ゆっくりと廊下を確認して階段を下りる。
幸いにも降車入り口で放置した3体のゾンビも見当たらない。
ゾンビが出す音にゾンビも釘づけなようだ。
中学生トリオもおっかなびっくりで俺に付いてくる。
まゆゆとハルちゃんはどんな些細な音でもビクビクと体を震わせている。
ユウコりんも一番年下だから周りを気にするように…確かに気にはしているが、警戒していると言った方がしっくりくるような目つきだ。
あの目は俺達も良くする。
そう、サバイバルゲームの時などは常時発動中なので見慣れた顔つきだ。
俺達のサバイバルゲームは本当に文字通りサバイバルなのだ。
草木も眠る丑三つ時。
何処からか飛んでくる「キュン」だか「ピヒュン」だかって空気を切り裂くような凶悪な音を奏でる重量BB弾に最大限警戒する為に。
そしてそんな凶悪なBB弾を発射する射撃主に。
ユウコりんの目はそんな警戒心MAXな目だった。
最年少なのに…とその時はあまり気にも留めなかったのだが……。
大したイベント(戦闘)も無く職員室に入り、窓を開ける。
この辺の学校は、縦田基地の騒音問題の影響で、窓が二重となっている。
それでも、うるさい時は意味ないんだけどね。
でも、その防音設備のおかげなのか、避難民が寝泊りしていたであろうこの学校にもゾンビは集まっていない。
イメージでは、校門やフェンスに溢れんばかりのゾンビが犇めき合っているんだけどね。
どうやらゾンビは人間の息吹が感じられなければ違う場所に移動するらしい。
それでもひねくれたやつは別行動をとるのだろうか。
早速、俺たちは校舎入口の庇に降り立つ。
俺がそ~っと体を乗り出し、下を見るとゾンビがワラワラと蠢いている。
最初に見たときより数が増えている。
ゾンビはゾンビの出す音にも魅かれてくるようで、放置しておくとどんどん数が増えるようだ。
これが俗に言われる『負の連鎖』なのだろうか。
俺は早速ユウコりんに指示を出し、職員室に誰か入って来たら知らせるように言った。
黙ってユウコりんは頷く。
ユウコりんの右手にはボールペンが握られているが、まさかゾンビが入って来たらボールペンで…何て考えすぎか。
やはり最年少の少女。手に何か持ってないと不安なんだろうな。と自己完結しておく。
続けてまゆゆとハルちゃんに、あの辺に空き缶を投げるように指示を出す。
二人も黙って頷いた。
宏樹と目が合い互いに頷く。
まゆゆとハルちゃんに合図をすると空き缶を指定した方に投げる。
女子の投げる距離はたかが知れてはいるが、それでも2階から投げられる空き缶はそれなりに飛び着地音を盛大に奏でる。
音が消え去った静寂の世界に空き缶の音だけが響き渡る。
カラーーーン カラカラ…
思った以上に大きな音をだし空き缶が転がる。
再びまゆゆとハルちゃんに合図を出し空き缶が投げ込まれる。
カンカラーーーン カラカラ…
その音にゾンビも扉を叩くのを止めて、ユラユラと空き缶の方へ歩き出す。
すかさず宏樹がゾンビ目掛け鉛玉を発射する。
俺も負けじと撃つべし! 撃つべし!
今度はこっち! と合図を出す。
カランカランカラン…
今度はそちらにノソノソ歩き出すゾンビ。
そのゾンビ目掛け撃つべし! 撃つべし!
何度か空き缶を投げたがもうゾンビは出てこなかった。
すかさず職員室を出て校舎入口に到達する。
校舎内の3体は相変わらずガラスをペチペチ叩いている。
今度は外しても特に問題ない。
下駄箱の陰からそれぞれ狙いを定め2体を倒す。
振り向いたゾンビに宏樹が鉛玉を発射するが鉛玉はガラスを突き破って飛んでゆく。
お~い! あんた、思いっきり外しましたね?!
ゾンビがこちらに一歩踏み出したところで、俺が狙いを定めて鉛玉を発射し、ゾンビを活動停止させる。
後ろでは様子を窺っていた中学生トリオが口を押えている。
俺はそのまま走り出し、校門のゲートを閉めようとするが、ゾンビ4体が校庭に入ろうと歩いてくる。
そのゾンビは俺の姿を確認したのか手を前に突出して早歩きで迫ってくる。
「宏樹!」
とっさに宏樹を呼ぶと、宏樹も走ってくる。
俺は走りながらパチンコを撃つが全く当たる気配が無い。
そうこうしている内にどんどんゾンビは近づいてくる。
俺は一旦立ち止まり、狙いを定めてゾンビを倒す。
直後、宏樹が撃ったであろうゾンビも倒れる。
俺は後ずさりしながらゾンビを狙うが旨く当たらない。
少し焦ってきた所で、宏樹が最後のゾンビを倒す。
それを確認して急いでゲートを閉める。
「ふぅ…」
軽く息を吐き後ろを振り向くと宏樹がゾンビに止めを刺している。
さすが、基本に忠実ですな!
さっきヘルプを呼ぶために叫んでしまったので、周りを確認する。
辺りは静けさを取り戻し、聞こえるのは鳥の囀りのみ。
校舎入口に行き、手を振ると足早に三人が駆け寄ってくる。
「作戦終了です。自衛隊の荷物を調査するから付いて来て」
三人は倒されたゾンビに視点が集中するが、俺と宏樹が歩き出すとキョキョロと辺りを見回しながら付いてくる。
ん~今回は大した収穫が無かった。
慌てて逃げると言うよりも、予定通りの移動と言う事で、粗方必要な荷物は全部引き上げたんだろうな。
その時だ、ガリガリと何かを引掻く音と、何かが蠢くような気配を感じた。
―――体育館だ。
負傷者を体育館に集めたのだろうが、ゾンビ化して閉じ込めたのだろうか。
悪い予感しかしないので、確かめもせず校庭を後にする。
だって、体育館の扉に思いっきり紐が巻き付いて開けられない様になってるし。
あれは絶対近寄ってはいけない。
あんな状態で「大丈夫だ」なんて近づこうものなら完全にフラグだ。
三人も何かを察したのか体育館の方を頻りに窺っている。
帰りも来る時と同じように大通りまでは素早く道路を走り、大通りを渡った後は、民家の庭へ逃げ込む。
中学生トリオも息を切らしながら付いてくる。
角の前川さん家の庭を見たときは、その血の海状態に三人とも口を覆ったが、一生懸命付いてくる。
我が家の縄梯子を登らせ、無事に到着。
何気に簡単なようで長いミッションだった。
俺が我が家へ入る様に促すと「おじゃまします」と遠慮気味に靴を脱いでリビングに入っていく。
「今は異常事態だから寝るとき以外は靴を履いてて、じゃないととっさの行動に移れないでしょ」
「あ、わかりました」と言いながら、三人は靴を履き直す。
ユウコりんは俺の言葉に感心する表情だったが気のせいだろう。
殿の宏樹がベランダに上がったのを確認し、ゾンビもしくは生存者が付いて来ていない事を確認するためベランダで様子を見る。
その間に宏樹は中学トリオに「寛いでて」とソファーに座らせる。
暫くベランダから様子を見ていたが、変化や物音が無いので俺もリビングに入りシャッターを閉める。
シャッターが閉められたことでリビングが暗闇に覆われるが俺が電気を点けた事で三人が「ホッ」と緊張の顔が解ける。
「楽にしてよ」
と言いながら俺は荷物を下ろす。
「本日の収穫ぅ~!」と言いながら荷物の中から荷物をテーブルに出してゆく。
トイレットペーパー16ロール
ビール5本
高級コニャック ヘネスィーVSOP1本
高級コニャック ヘネスィーXO1本
ヘネスィーをテーブルに出した時、宏樹とハイタッチした。
そして「中学生三名ご案内!」
と、パチパチ手を叩きながら俺は握りコブシを宏樹に向ける。
宏樹も同様にコブシを握りながら俺の拳に合わせる。
所謂『グータッチ』だ。
俺と宏樹はそのままコブシを三人に向ける。
三人は含羞んだ表情で俺達と『グータッチ』をする。
「さて、三人には無事に我が家に来たわけだが、これから生活する上で注意点を挙げたいと思います。」
そんな言葉で再び表情を硬くする3人。
平気だって、俺達が鬼のような要求をするわけないでしょ。
次回も出来れば連投します(願望)
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