第19話:君の名は
連休どうお過ごしですか?
リモート出社してる方に於かれましては無暗に外出できないので平日と何ら変わりはないかと存じます。
そんなときは小説を見て楽しんで頂けたらと存じまず。
では今回も調子に乗って連投してみます。
それでは続きをどうぞ
さて、仕事時間だ。
打合せ通り、ゾンビは扉を開ける事はしても閉める事はしない。
この辺は犬や猫と同じで、中に入りたいから扉を開けるが、扉を閉める理由がない限り、閉める事はしない。
そう言う訳で引き戸の閉まってる教室は無視して、開いている教室を調べていく。
念の為、引き戸に設けられている小さなガラス窓から仲は確認するが。
ここは三階の端。
素早く足音を立てない様に廊下を反対へ駆け抜ける。
三階には扉の空いている教室は無い。
俺達はそのまま階段を下りる。
二階に到着し、宏樹は階段と廊下の壁際でパチンコを構える。
俺はその場で廊下に耳を付ける。
ひんやりとした廊下に耳を付けると、少し興奮した脳内も冷やされていく感覚になる。
「ひた…ひた…」
微かに聞こえる足音を確認し、宏樹にジェスチャーする。
俺も壁際を背にパチンコを構える。
感覚で言うと10mくらい先に居る感じだった。
顔半分を廊下に出し、確認する宏樹。
すぐに顔をひっこめ、こちらに指を二本立てる。
俺も顔を半分だし確認する。
小声で「あれ、狙える?」と聞くと宏樹は首を縦に振る。
俺も首を縦に振り宏樹に任せる。
体を半分廊下に出し、ゴムを思いっきり引っ張る。
勢い十分狙いバッチリ!
手前に居たゾンビの頭に鉛玉が命中しゾンビが倒れる。
奥に居たゾンビは俺達の存在を確認し「アウアウ」言いながら歩いてくる。
俺も、すかさずゴムを引き狙いを絞るとそのまま右手を放す。
ゾンビの右目に命中し力なく倒れる。
最初の扉の空いている教室に入る。
ここも三階の様に毛布やペットボトルが散乱している。
次の教室も…その次の教室も大体似たような状態だ。
あ、ここが職員室だ。
静かに職員室に入る。
ここにもゾンビは居ないようだ。
端の教室まで確認し、残るは一階。
階段を下り、再び廊下に耳を付ける。
色々な音が聞こえて、ゾンビの足音は確認できなかった。
それもそのはず、ゾンビ達が校舎入口に集まり扉を叩いているからだ。
用心しながら各教室を見回る。
特に何もない。
出来れば校舎の中に武器が在ったらよかったのに…
準備室なる所にはバットやサッカーボール等があったが、今の俺達には不必要な武器だ。
遂に校舎入口のへと到達する。
二人で壁際にゆっくりと顔を出すと、多分頑丈であろう学校の扉を叩いている。
扉にはガラスの部分もあるが…多分、ガラスも丈夫だろ?
今は惰性でガラスをペタペタと叩いている程度だが、姿を見せるとゾンビが興奮して本気で叩きに来る。
そうするとあのガラスも割れない保証はない。
なんせ、ゾンビが本気を出すとリミッターの外れた腕力を振りかざしてくる。
ある世紀末の拳法家が言っていたが「人間は普段30%の力しか使っていない」との事だ。
俺は神拳を極めている訳でも習った訳でも無いから良く分からないが、ゾンビは残りの70%も使えるって事らしい。
そうなったら、間違いなくガラスは割れるだろ。
小学校に防弾ガラスなんて使ってないだろうし。
まあ唯一の救いはガラスの中に鉄線が入っており、ガラスが割れても穴が開きにくい構造となっている事だが。
俺達は見つからないように様子を見ると、扉の内側、つまり校舎内に3体のゾンビがいる。
そしてそのゾンビは外に向かってガラスをペチペチしている。
外と中のそれぞれの叩く音にゾンビは集まってるようだ。
本当、行動だけ見たらバカ丸出しなんだけど、そんなバカでも集まるとシャレにならない。
残りの3体をどうするか考えたが、姿を晒してガラスを突き破られる可能性もあるし、万が一外れてガラスを打ち抜いたらそれこそゾンビの侵入を助ける事になりかねないので放置する事にした。
俺達はそのまま、音をたてない様に、そして、まだ居るかもしれないゾンビを警戒しながら三階の音楽室に向かう。
音楽室の扉をノックすると、安心したような顔の麻由ちゃんが開錠し扉を開ける。
「ありがとう」と言いながら音楽室に入り、状況説明をする。
「それでは作戦を伝えます。その1、まず音をたてないように職員室に向かいます。」
職員室の場所の地図をその辺にあった紙に殴り描く。
その地図を見て全員で頷く。
「その2、職員室から庇に出てゾンビを倒します。以上!」
開いた口が塞がらないとはこの事か! と言わんばかりに皆一様に呆けている
余りにも端的だった作戦会議に麻由ちゃんが声を絞り出す。
「あ…あの…誰が…どうやって倒すとか、その…」
「あ~そうだね。まず、役割分担から」
「はぁ」
麻由ちゃんが訝しげに頷く。
「俺と宏樹がゾンビをぱちんこで倒すから、まゆゆとハルちゃんはこれを投げてゾンビを誘い出して」
そう言いながら俺は空き缶を袋から取り出す。
調べた教室に空き缶が散乱していたので、それを同じように散乱していた袋に入れて持ってきたのだった。
「ま…まゆゆ…ですか」
「は…ハルちゃん?」
いきなりあだ名で言われた事に二人は目を丸くしてる。
「そ、まゆゆとハルちゃん。で、ユウコりんは職員室にゾンビとか入って来ないか監視」
「ユウコりん?」
裕子ちゃんは含みのある親しみやすい笑みを浮かべる。
「…あれ? 嫌だったかな?」
「「「いや…じゃないです」」」
「んで、ヒロポンは俺と一緒にゾンビを撃退」
「ヒロポンは嫌です!」
ヒロポンっていつの時代の麻薬だ! と宏樹が謀反を起こした!!
「あ…嫌ですか? そうですね…他に候補と言えばヒロリン、ヒロヒロ、ヒロキン、ピロシキ…何がいい?」
「…どれも却下だ!」
「え~…他に候補が無いんだけど」
「たーけーし!」
ああ、すいません。
その言い方、俺のお母さんにそっくりでホント、勘弁して下さい。
「全く、タケタケは」
「あ、却下で」
中学生三人トリオも俺たちの漫才に苦笑いをしている。
「って事で良いかな?」
「「「はい」」」
三人もすっかり和んだようで屈託のない笑顔をする。
「それじゃ、行くよ?」
俺が先頭で間に中学生トリオ、殿に宏樹だ。
次回も出来れば連投します(切望)
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