第17話:成功報酬は少女3人?
連休どうお過ごしですか?
調子に乗って連投してみます。
それでは続きをどうぞ
「他にも誰か居るの?」
宏樹の優しい口調で安心したのか、音楽室の鍵を開けてくれた子は小さな声で答えてくれる。
「準備室に2人…」
どうやら他にも2人生存者が居るようだ。
こういう時の意識しない爽やかイケメンは効果抜群。
警戒している女の子の心の戸口を簡単に開ける。
どうして同年代の女性にこのスキルを使わないのか甚だ疑問だ。
宏樹は準備室の方に歩いて行くと女の子が「あっ…」と声を漏らす。
俺は安心させるように「大丈夫だよ」と声をかけたと同時に女の子も準備室に入って行く。
予想は大当たり。
他の生存者2人も女の子だった。
準備室の隅っこで2人固まって座りながらこちらを見ている。
ドアを開けてくれた女の子が準備室に居た「助かったよ」と2人に言ってるが、怯えているのか動こうとしない。
俺は状況を察して、鞄から食料を出す。
と言っても、気の利いた食料ではなく保存食としてのカロリーメルトだ。
「お腹空いてるんだったら食べな」
そう言いながら隅で座ってる2人に投げる。
一人が一目散に箱を開け食べ始めると、そのまま一人の女の子に開封したカロリーメルトを差し出す。
差し出された女の子は無言でモグモグと食べだす。
もう一人もその様子を見て肩から力が抜けた様に笑顔で食べ始める。
俺はもうひと箱を鍵を開けてくれた女の子に渡すと、この子も一目散に食べだす。
ウミャウミャ言いながら食う姿はまるで子猫だ。
案の定、お約束のように3人は咳き込む。
俺は予想していたかのように用意したペットボトルを鍵を開けてくれた女の子に渡す。
宏樹も奥の2人に同様にペットボトルを渡している。
カロリーメルトはビスケット状で一気に口の中の水分を奪い去って行く。
ある意味危険な非常食だ。
3人が食べ終わり落ち着いたところで話をしようと思う。
念のため、もうひと箱ずつカロリーメルトを渡しておくが、3人はあっという間に平らげてしまった。
「落ち着いたら話をしたいんだけどいいかな? 俺たちは向こうの部屋に居るから待ってるね」
俺と宏樹は準備室を後にして、煙が教室内に溜まらないよう窓を開けて煙草を吸い始める。
一段落したところで宏樹と目が合い、どうするか小声で相談する。
「どうするよ…連れて帰るか?」
宏樹は準備室の扉の方へタバコの火種を向ける。
「どうしよう…俺には嫁も居ないのに…子育てはまだ早いと思うの…どう思う? あ・な・た。」
「そう言う事じゃね~」
「あの子たちが望むなら…仕方がない」
「ああ、そうだな…どちらかが母親になるか…後で家族会議だ」
「そうじゃね~よ」
二人して紫煙を開け放った窓に向かって吐き出す。
下の方では相変わらず校舎入口を叩くゾンビが居る(確認は出来ないが)
程なくして準備室の扉が開かれる。
「あ、あの…ありがとうごいざいました」
奥で固まっていた2人も鍵を開けてくれた女の子の後ろに付いて出てくる。
「とりあえず、自己紹介しようか。俺の事は武志って呼んでくれ。こう見えて30歳だが心は16歳のナイスガイだ」
俺は親指を自分に向ける。
「俺は宏樹30歳。武志とは同級生なんだが心は17歳、武志よりは大人だ!」
そう言うと宏樹は指をVの字にする。
「「「………」」」
この無言が痛い…
気を取り直したのか鍵を開けてくれた女の子が最初に自己紹介をする。
「私は麻由って言います。14歳の中学二年です」
「私は…晴美っていいます。さっきはお菓子をありがとうございました。麻由と同級生の中学二年です」
「あ、あの、お菓子ありがとうございました。私は裕子です。麻由先輩と晴美先輩の一学年下で中学一年です」
「「おう! 宜しくね」」
麻由と晴美は同学年で裕子が後輩と…インプット完了。
「3人はこれからどうするの?」
お~っと宏樹さん!
単刀直入すぎます!
ど真ん中の直球過ぎます!
案の定、3人は俯いて言葉を発しない。
幼い女の子に対してコミュ症を発揮した宏樹君でした。
「あ~…宏樹の聞きたい事は、ここから逃げて他の避難所に行くか、それとも俺達と行動を共にするかって聞きたかったんだよ」
「そう、そう言う事」
「はぁ………心は17歳で俺より大人ね?」
俺は宏樹の方へ向くと小さく溜息をつく。
それを受けてテヘペロをする宏樹。
男のテヘペロなんて見たくね~!
「私は…」
そう言いだしたのは麻由ちゃんだ。
「ん? なに? 麻由ちゃん」
「私は…お父さんとお母さんを探したい…けど…」
「けど?」
「私だけじゃ、無理なので…助けてください」
「「私も」」
「「「お願いします」」」
何と! 最終的には息の合った合唱を俺たちに披露した少女たちだった。
「探すと言っても…」
煮え切らない表情で宏樹を見る。
宏樹も思う所があったのか俺と目が合い。
「「どうしよう」」
今度は俺たちが3人にデュオを披露する。
「お願いします」
「お願いします」
「お願いします」
今度は3人の輪唱を見せつけられた。
ヤバい、2人では輪唱に勝てない!
「…とりあえず…作戦会議! 三人はこれでも食べてて」
そう言って俺は立ち上がり、三人に残りのカロリーメルトと飲み物を渡し、宏樹を準備室の方へ呼ぶ。
準備室に入り、大人になった体には少し小さく感じる生徒が使う椅子に腰を掛ける。
「どうするよ。家に連れて帰るか?」
宏樹も椅子に座ると大股を開いて再びタバコに火をつける。
ここは窓がないんだけど? と思いながら釣られて俺もたばこに火をつける。
「とりあえず、ここじゃ不味いだろ?」
「でも、家をバラして何かあったらどうする?」
「…まぁ、その時はその時だろ」
宏樹らしい楽観的な答えが返ってきた。
多岐にわたる予測不能な事に悩んでも仕方がない。
宏樹の持論だ。
「まあ、な、こんな所で悩んでも仕方がない。少女3名お持ち帰りだな」
「ちょ、言い方!」
ま、なんにせよ悩んでも前に進めないので俺も宏樹の持論に賛成する。
悩んでも仕方のない事に悩んでも意味が無い。
宏樹の持論でもあり俺の持論でもある。
だからその事に異論も反論も無い。
こんな考えだから行き当たりばったりの旅行しかしないんだよな~俺達って。
次回も出来れば連投します。
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