第14話:ミッション再開
週刊にすると言ってたけどあれは嘘だ
投稿できるときは投稿しようってスタンスで行く。
だもんで投稿が早い時もあれば長くなってしまう場合もある。
ってことで続きをどうぞ
翌日、すき焼き供養をしたあと、前川さん一家を川で埋葬した。
いや、流葬した。
始めはリビングでお弔いをしたんだけど、さすがにご近所で遺体を放置と言うのは…ね?
だって、この時期、死体を放置していたらすぐに腐るよ。
そうしたら虫が発生しますよ。
ハエや黒く素早い奴らが!
それに近所に顔見知りの惨殺死体があるのも目覚めが悪いし。
で、火葬という事になったのだが家を燃やすわけにもいかず、火葬場に持って行く訳にもいかず、とりあえず流れて頂きました。
え? 下流の人に迷惑?
バカお前! 上流で小便したとして下流の人が咎めに来るか?
つまりは…そう言う事だよ。
うん、それに橋を壊されて野良ゾンビが川を渡っても同じ事でしょ。
◇◆◇◆◇◆◇◆
前川さん宅の食材をゲットしてから1週間が経つ。
何か忘れてるんじゃないかって?
ちゃんと覚えてますよ。
1週間が経過しても俺達は当初の予定だった避難所見学のミッションをクリアしていない。
と言うのも、まずは近所を探索しようと相成った。
決してヘタレたわけでは無い。
何故なら、何度か元住民ゾンビを仕留めているからだ。
まぁ、それは自己防衛の為なのだが。
地域住民の血と汗と努力の結晶で購入した食材を腐らせるなんて、俺には出来ない。
手厚く供養してあげなければいけないと思う。
うん。
あ、当然ご近所さんは皆さん流れて頂きました。
これが俺達にデキル最大限の供養です。
こんな事なら自衛隊のトラックを捨てるんじゃなかった。
最初はお弔いの為に軽トラに載せて運ぼうよって提案したのに宏樹は即答で断りやがった。
まあ血だらけで脳みそが出てるゾンビを愛車に載せるのは流石に嫌か。
"ブルーシートを"と提案しても即答で断りやがった。
仕方が無いのでご近所の畑から拝借した手引きリアカーを拝借する。
幸いと言うかこの辺は農家さんも多いからこの辺の納屋にはトラクターに接続されて仕舞われていたりする。
車と違って人力だから音も出ないし、という事である。
ゾンビ感染からかれこれ2週間と少し。
流石に引き篭もるにしても普通の家庭にそんな備蓄は無いだろう。
あれから毎日屋上で監視はしているが、ゾンビを見かける事があっても生きてる人を見てはいない。
みんな避難場所に移動したのかな?
あ、そう言えばここ数日ヘリや飛行機も飛んでいない事に気が付く。
事件発生から連日、防災無線で緊急避難場所に移動しろと放送していたが、その放送も今は無いが定時に流れる防災無線のおかげでゾンビを攪乱できているのが有難い。
寝てるときやゲームをしてる時は煩わしいけどね。
粗方、この付近の民家にはお邪魔した。
結論から言うとゾンビは居ても生きてる人は一人も居なかった。
いや、ペットは居たんだけどね。
そのまま放置するのも忍びないのでエサをあげて窓やドアを開放しておいた。
中には既に亡くなったペットも居たのだが、そんなペットももれなく流葬としておいた。
だって人間と同じで虫の発生源になるでしょ?
それに、疫病とか怖いし。
人間が居なきゃ医師だって居ないんだよ。
生憎と俺達に医療の知識なんて無い。
ネットが使えるから知識は得られても理解できん!
だから痛め止めとか腹痛に効く市販薬だったら分かるが、薬局で扱うような薬剤師が居ないと提供されない薬は基本分からない。
ネットで調べれば効能など分かるが、かと言って薬を調達するのも問題がある。
薬局があるのは駅前などの繁華街。
そんな危険地帯にノコノコ行くなんて有り得ない。
それに俺達と同じような考えの人が居てもおかしくないと思ったんだけど、さすがのアウトローもゾンビにはビビったか?
それともゾンビに喰われたのか?
略奪行為は1週間前に少し騒いでた程度だ。
そう言えば、自衛隊や警察、消防や自治体の人たちが各家を虱潰しに尋ねて避難場所に集めてたんだっけか。
それも最初の1回だけ。
まぁ、ここから大通りを確認できるのも微々たるものだが。
車さえ通らず今やゾンビ専用道路と化している。
生憎、ここは大通りから脇に入った路地に面しており、大通りが確認できるのは僅かでしかない。
そのおかげでゾンビも大群では来ないだけかもしれないが、そもそも生者が居ないのならゾンビだって生者を求めて移動してるだろう。
そう思うと、避難場所にゾンビが群がっていてもおかしくないのだが、それにしては近所を徘徊するゾンビの数が少ないように思える。
屋上で様子を見る限り、ゾンビの大群を見ていなければゾンビ大移動も見てない。
避難場所である学校は目と鼻の先ではあるがここからだと様子を伺うことは出来ない。
精々確認できると言ったら3階部分と屋上位なものだ。
屋上と言っても手すりが確認出来る位なので見えるというレベルで殆ど確認が出来ないのと同じ。
我が家は避難所と思われる学校から比較的近所なのだから、生者を求めてゾンビが群がっているはずなのだが…?
意を決して再度、避難場所である学校の様子を見る為にミッションを発動する。
今回は近所を事前に巡っているので1ブロック分は安全だと思われる。
念の為、我が家を含む近所の境界には水糸(建築工事などの際に水平線を示すために用いる凧糸のようなもの)を張っているので、誰かが侵入したら切れてるはず。
問題は道路を挟んだ向こう側だ。
道路と言っても車1車線分の幅しかない近隣住民か大通りが混んでる場合の抜け道でしか使用しない道なのだが。
道路を渡った民家にはまだ侵入(未探索)していないから十分に注意する。
サバイバルで培った相手の殺気や気配を探る。
しかし残念ながらそんなスキルは滅多に発動しない。
発動した時は食われてる場合かもしれない。
だから必要以上に周りを警戒しながら色々な想定をする。
学校は道路を渡って300m程。
俺達は難なく民家の中に入り各部屋の調査が完了し安堵して2階から辺りを窺う。
1時間程様子を見ていたのだが、道路に現れたのは1体のゾンビのみ。
宏樹と打ち合わせをして、目標の民家の手前までは民家の庭縦断より道路を突っ切る方向で進める。
無駄な音を出さなければ不意のゾンビも登場しないだろうと言う概算。
出来る限り音を出さないように歩きに徹する。
住民や略奪者が居る事も考慮し、一目で武器を所持してると思われたくないのでクロスボウやアサルトライフルのように嵩張る武器は置いてきた。
ホルスターにはP220が在るが、服の中に隠してあるので一目見ただけでは分からない。
万一取られそうになっても盗難防止用の紐が付いている。
そう言う事も含めてP220にしたのだが、この状況でパチンコを構えてる俺たちを見て、他に武器がある様に思えないだろ?
宏樹に関しては、俺の意図も汲んだうえで何故かフライパンを紐で結び首から下げている。
た、確かにこんな間抜けな姿の人間が銃を持ってるなんてお釈迦様でも思うまい。
警察や自衛隊の武器を奪った略奪者が居たとしても、間違いなく見下して来るだろう。
ある意味、それが狙いだ。
我が家の教訓に『撃たれる前に撃て』がある。
これは宇宙で生き延びる唯一の方法で真理だと言う事らしい。
哲郎はそれを怠ったからアンタレスおじさんが犠牲になった。
俺は『撃たれる前に撃つ』を実践してやる。
実際問題、喧嘩でも先手必勝だった。
そして、それはビジネスにも通じる。
市場に出回っていないものを商品化するだけで丸儲け。
オークションサイトだったり通販サイトだったり。
まぁ、そんな事を教訓としてるので『撃たれる前に撃ってやる』
これを実践する前に間違ってはイケない事がある。
それは相手がこちらに対して『損害を与えうる』人物なのかと言う事だ。
そこを間違わない様にしないといけない。
これも鉄則だ。
目標の民家の庭に来た。
何の障害も無くここまで来れたので、今までのウンチクは何だったのかと………。
何だよ『撃たれる前に撃て』って…恥ずかしすぎる!
恥ずかしいので今は心の引き出しに蔵っておこう。
そして、いざと言う時に取り出すのだ。
早撃ちは出来ないが必殺兵器を!
民家に侵入する為、リュックからガスバーナーを取りだ…ん?
「宏樹さん? シャッターが閉まってますね…」
「…どうしますか? 先生」
俺は家の外観をクルリと見渡す。
「二階のシャッターは…閉まってなさそうですぞ?」
「そのようですな」
シャッターに指を掛け上に持ち上げようとするがビクともしない。
早々にシャッターを開ける事を諦め、俺は人差し指を二階に向ける
「頑張って!」
「(=_=)」
宏樹から無言の圧力が齎された…仕方なく別の作戦を考える。
「…向かいの家から二階の様子を窺ってみますか?」
「そうしましょう」
シャッターを無理矢理開けるとかなりの騒音を撒き散らす。
轟音を立てて開けば良いが、開かなかったら無駄骨。
開いてもどちらにしろ撤退するけどね。
急遽予定変更して、まずは御向いさん宅に侵入を試みる。
あ、ここも雨戸が閉まってる。
宏樹が意を決して静かに雨戸を横にスライドさせ、戸袋の中に納める。
運のいい事に雨戸のストッパーはされていないので簡単にスライドした。
極力音を出さない様にする仕草、まさに泥棒!
ガラス越しに屋内を見るが誰か居る気配も無い。
遂にガスバーナーの出番です。
ガスバーナーのつまみを回しガスが噴出しているのを確認する。
点火用のボタンを押し『ボッ』とガスに着火する。
つまみを回し、青い焔へと調整していると…「カラカラカラカラ…」と音が聞こえた。
音の出どころを見ると宏樹がガラス戸を横にスライドさせている。
オウ! オープン・ザ・セサミ!
この家は不用心だ!
俺は無表情でガスのつまみを締め火を消す。
宏樹は上から目線でニヤケ顔のまま家の中に入る。
ツンになった俺もそのまま家の中に侵入する。
戸締りは忘れずに!
もう一度言う! 戸締りは忘れずに!!
ココ大切だから!
雨戸を閉めてガラス戸に鍵をかける。
これ基本!!
田舎だからと言っても鍵を閉めないとは不用心です!
決して俺の為ではない!
雨戸が閉まっているので部屋中真っ暗だ。
そんな暗闇に念のため、小さな声で「誰か居ますか~」と声をかける。
物音一つしない。
それでも声をかけながら各部屋を調べる。
隈なく探す。
風呂もトイレも探す。
トイレットペーパーはご拝借。
お約束で冷蔵庫を御開帳。
…何もない…
無い事は無いのだが、チューブ式のワサビとか1/3程の中濃ソースとか今は要らない。
声をかけながら二階に上がる。
やはり誰も居ない。
どうやらここの住人は避難場所に避難(連行)したようだ。
その際に、持ち出せる物や食料は粗方持ち出したのだろう。
ってか、避難場所って目の前じゃないの?
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