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神様?いいえただの悪魔です。  作者: 次元
第3章:死者の星
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第2話:始まりは突然に、やってきた。

今までの世界観とまるっきり違うので

戸惑っている方もいらっしゃるでしょうが

章でも分かる通り、別の世界の物語です。

で、せっかくの新章突入なので連続投稿しました。

毎朝のありきたりで単調な光景。

替わる事の無い駅のホーム。


ホームへ到達する電車に乗り席を確保する。


隣に並ぶいつものじいちゃんが正面の席に座るのが日常。

俺は早速、短い睡眠を摂ろうと目を瞑る。


ここまでは約10年続けていた行動だ。



目を瞑って数分した頃だろうか。


電車が出発して2駅目に差し掛かる手前で周りの怪しいざわめいた雰囲気に重い瞼を開ける。



見ると対面のシートに座っていたじいちゃんが隣に座るサラリーマンの肩に頭を乗せてぐったりしている。


頭を乗せられたサラリーマンが頻り「大丈夫ですか! 大丈夫ですか!」とじいちゃんの体を揺すっている。


2つ目の駅を出発した頃、俺はそのままじいちゃんと周りのやり取りを見ていたのだが、不意にじいちゃん達の座るシートの窓に目が行った。


その路線は高架を走る為、窓の外はマンションでいう所の4階程の景色な訳で、それなりに遠方まで見渡せるのだが、遠くの方で煙が上がっているのが見える。

その煙も1箇所であればどこかの畑が焚き火でもしてるのか程度の認識なのだが、煙の上がる個所は5~6箇所は確認できる。


田舎の方では焼き畑農業等で煙が数か所から上がる事も珍しくは無いのだが、煙の上がる個所は住宅街だ。



俺は、ふとあのグロ画像が頭を過ぎるのと同時にゾンビパニックを連想した。



俺は向いのじいちゃんの方へ視線を移しすぐさま席を立ち、座っていた場所から極力離れた場所に移動した。

俺の行動は「非現実的」だが、頭の中は「現実的」だった。


心の中で、『は~立っちゃった…こりゃ終点近くまで立ちか?』とも考えていた。


この時までは、何で席を立ったんだ? と言う後悔の念しかなく、つり革を握りしめながらただ煙の上がる景色を眺めていた。


次の停車駅を知らせる室内アナウンスが流れたと同時に俺の座っていた方から悲鳴が上がる。

と同時に「車掌を呼んでくれ!」と怒号が響く。


車両の端には、乗務員と直接会話のできる呼び出しボタンが設置されており、近くにいたサラリーマンがボタンを押す。


直後、乗務員が「どうしましたか?」と聞いてくる。


呼び出しボタンを押したサラリーマンが状況を聞こうと「どうしたんですか?」と車両の端まで聞こえるように聞くと「女性が噛まれた! 血が止まらない!」とややパニック気味で答える。


乗務員も多少聞こえていたのか「女性がどうしたんですか?」と問い合わせるのと同時にまたもや悲鳴が上がる。


今度は若者の声で「何してんだよ! このじじい!! おい!」と怒号が聞こえる。


サラリーマンも状況が掴めないようで「女性が誰かに噛みつかれた様です」と答えていた。


乗務員は「次の駅で係員が参りますので」と通信を切った。


その間にも悲鳴や怒号が響き渡る。



こういう場合にも平和に慣れ過ぎた人間はシートで寝ている奴も居れば、スマホを見ている奴もいる。


所謂『無関心』や『動じない』ってやつだ。


時々、気にはなるのか叫びや怒号の声に顔は向けるがすぐに目を瞑るかスマホに向かって何かタイピングしている。

SNSやLINEに今の状況を打ち込んでいるんだろうか。


時折スマホのシャッター音が聞こえる。


中にはヘッドフォンをして騒動に気が付かない人も居る。



俺は最悪の場合を想定し、心臓が激しく鼓動しているのが分かるくらいになっていた。

俺も平和しか知らないおっさんだ。

しかし、常に災害やゾンビパニックを想定していたのが役に立ったのか…いや、違うね。

噛まれた人から噴出する血が列車のドアを赤く染め上げる。

それだけでも異常事態なのに、首から血を噴水のように吹き上げる女性は力なく倒れると、介抱していた別の女性の腕を噛んだ。



俺は恐怖からなのか振るえる手にスマホを持ち、小さく溜息して心を切り替える。


駅まで数分の所で宏樹にLINEを送った。


『仕事を放棄して家に集合! 大至急だ!』


この短い文章を打ち終えた所で駅に到着し電車のドアが開く。


一目散に電車を降りトイレの個室に入る。

駅の放送では「急病人が発生した為、少し停車する」と言っているのが聞こえる。


運転を停止って事はこのまま増える可能性も…それを想像しトイレに入って大きく息を吸い込む。

失敗した…駅とは言え公衆トイレで大きく息を吸ってはダメだ。

ツーンとした刺激臭が鼻を襲う。

トイレだから臭い訳なのだがそれでも一息つく。

それも特大の大きな溜息だ。


何にせよ気持ちを落ち着かせなければ只のパニックを起こした群衆と何ら変わりない。


臭い中に深呼吸をして気分を落ち着かせる。


今すぐパニックにはならないだろうが用心に越したことはない。

そもそも、本当にゾンビなのか? と疑っている自分もまだ居る。


その時だ、宏樹から返信が来た。


『どうした?』


その文章を見て宏樹も電話が出来る状況だと判断しすぐさま電話をする。


「おお、どうしたんよ?」


「俺、今電車だったんだけど、目の前でゾンビが出た!!」


「おいおい……え………………マジか?」


宏樹も朝の通勤時間帯にふざけて話す内容でない事に理解した。

なにより俺の慌て具合が電話越しにも伝わったようだ。


「ああ、多分…前から言っていた事が現実になった」


「あの動画が本物?」


「目の前で人が喰われるの見たらお前だって信じるぞ。あの動画…恐らく本物だろうな…宏樹今どこ?」


「今日の現場は冨中(フチュウ)だ」


宏樹は塗装業。

所謂町のペンキ屋さんだ。

器用な宏樹は『手に職』的な業種が向いている。

まさに職人さんだ。


「足場を登ると結構周りを見渡せる?」


「ああ、今屋上の足場に来た」


「その家の周り、どう?」


「どう? って、特に?」


「煙とか上がってないか?」


「あ~向こうで焚き火でもしてるのか? 煙がちらほら見える」


「俺も電車で見た。俺の見た方角は東群山(ヒガシムラヤマ)田梨(タナシ)方面だったけど煙がかなり上がっていた。あれ焚き火じゃなくって火事だと思う」


「え~? …あ、微かに消防車の音が聞こえるな…いや、複数台か? 消防車とか救急車とか何かイッパイ出動してる感じ」


若干、半信半疑の宏樹だったが、緊急車両の多さに現実味を帯びてきたのか、「どうする?」と聞いてくる。


「パニックが起きる前に移動した方が良い。 俺もバイクでもチャリでもパクって家に戻る」


「何でバイク…って、渋滞してたら車じゃ逃げられないか、…マジで仕事行かないの?」


「今日は具合が悪いから有休って言ってでも無理やり休む。まぁ明日か明後日にはパニックになって仕事どころじゃないだろ。そっちも1日位現場空けても大丈夫っしょ」


「まぁ、お前が土日に手伝ってくれんなら大丈夫だぞ?」


「分かった。何も無ければ手伝うわ」


「よし、じゃ、お家に戻るわ。ってその前にお前今どこ?」


「ああ、俺は黄金井(コガネイ)の駅」


「近いじゃん! じゃあ迎えに行くよ」


「あ~…そうだな、お願いします。」


「先生も相当パニックだな?」


「そりゃ、目の前でゾンビが出たらそうなるわ」


「本当にゾンビなんかね? まぁ、ここからなら10分位で着くから近くになったら電話するわ」


「ああ、お願い…いや! ダメ! 電話切っちゃダメ!!」


「ん?」


「本当にゾンビパニックの兆候が出てるんだったら電話切ったら電話が繋がらない可能性がある」


「あ~なるほど。じゃどこかで待ち合わせするか…俺その駅周辺って良く知らないんだよな~」


車移動がメインな宏樹は現場までの場所は把握しているのに、その近辺に関しては相当疎い。

お昼はいつも自家製弁当と言う事もあり、現場近くの商店もお店も把握していない。

唯一分かるのは、現場の近くの自動販売機かコンビニ(休憩用の飲み物調達の為)と最寄駅位だ。


「試験場は分かるでしょ?」


「ああ、今、試験場の近くだ」


「じゃあ、黄金井街道を駅の方に来て、交差点の角のコンビニで待ってるよ」


「分かった。 近くだから…道具片すのは後で良いか…んじゃ今から向かうわ」


「ああ、お願いします」


俺はコンビニで必要最低限の物資を買い込んで外で煙草を吸っていた。

その間も目の前を消防車や救急車、パトカーなどが通り過ぎてゆく。


程なくして、宏樹と合流し、一先ず安心感と紫煙が胸を満たす。



誤字脱字の報告やご意見ご感想をお待ちしてます。

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