第11話:チートと魔法幼女
誤字があればご報告お願い致します。
それと誤字報告ありがとうございます。
さて今日も頑張るぞと席についた所で邪魔が入る。
「今日も空いてたら検証作業お願いします。ついでにバグ修正もお願いします」
むむむ、今日も作業が出来んではないか(いや仕事しろ!)
ってな事で1話だけ改修。
俺はアリスの様子が心配で部屋に付いて行った。
「君がアイリスだね? 加護付ですでにヒーリングマスターExだとか? Exと言うのは良く分からんが、すでに法王の器を持ってるとはの~…そういえば自己紹介がまだじゃったの? わしはアルトマンと言ってな、アイリスが入学する学園の学園長をやっておる」
何かチラリと未来の話をされたようだが、俺はアリスが心配で上の空だったようで、社交辞令的な挨拶しか返答できなかった記憶がある。
「アイリスです。…宜しくお願い致します。」
==========
この世界では、6歳から教育を受けるのが義務化されている。
生活が貧しくとも、国が子供の教育費用を負担しているので、安心して学校へ通わせることが出来る。
それでも子供を教育機関に預ける事が困難な場合は、領主が負担を和らげるため、公務員を派遣し、子供の替わりに従事する場合もある。
国にしてみれば、子供は宝であり、資産であり、軍備でもある。
大抵の街や村には学校があるが王都の学校はその各学校の頂点に当たる。
当然、勉強のレベルもトップクラスであり、魔法や、各種武器の使い方、兵法や生きる為の術を学ぶ事が出来る。
==========
アルトマンと名乗ったじいさんは、俺の頭の上に掌を乗せて、クシャクシャと撫でる。
「ああ、宜しくな。4歳とは思えない程、落ち着いて礼儀正しいの。話に聞いた通りの様じゃ。」
そんな会話をしながらアリスの部屋に入っていった。
アリスは呼吸も安定し、本当に普通に寝ているようだった。
その横でアルトマン学院長がアリスに魔法をかけようとしている。
先程の魔法より魔力の動きや規模が小さいが、やはり体内で魔力が螺旋を描きながら流れているのが分かる。
「キュア」
再び緑色の光がアリスを包み込む。
そして、今度はアルトマン学院長の魔力が回復系の魔法とは違う螺旋を描き両掌に集中する。
「デトキシケート!」
薄紫の光が掌から発せられ、アリスの体中を覆う。
「これで殺菌や毒は浄化されたから感染症も心配いらんぞ」
テイラーはじいさんから安心できる言葉を聞き、目に涙を浮かべてお礼を言う。
「ありがとうございます!」
そう言いながらアリスの頭を愛おしく撫でているテイラーを見ていると、やっぱりテイラーも母親なんだなと実感する。
そして俺を抱き寄せ頬づりしてくる。クッ! 油断した! このビッチ! と思っていると
「アリスを守ってくれてありがとうございます!」
と言ってきたので、俺も体の力を抜きながら謝罪する。
「僕の方こそ、アリスを守れなくてごめんなさい…」
アリスは僕が見ているからと、テイラーとアルトマンを母の居る部屋に送った。
アリスが心配だったから起きるまで俺はベッドの横で看病しようと思った。
俺が何の躊躇もせず、こんな事態は避けられたのに…アリスとテイラーには本当に申し訳ない事をした…。
俯いてそんな事を頭の中でグルグル考えていると、手の甲に滴が垂れる。
それは、止めどなく頬を流れ手の甲にいくつも流れ落ちる。
思い浮かぶのは野犬に噛まれた力ないアリスの姿…。
全て自分のせいだと言う事を反復し、せめて自分でアリスを治したい衝動に捕われる。
そして、先程見ていた回復魔法を見よう見真似で試してみた。
魔力をアルトマンと同じような波長で螺旋を描き…
アリスに向かって手のひらを開き…
「キュア」
そうすると、掌より濃い緑色の光が発せられアリスの体内に吸収された。
暫くするとドタドタとけたたましい音を立てながらアルトマンが部屋に入ってきた。
母とテイラーは何? 何ごと? って感じで遅れて部屋に入って来る。
俺は何事なのかと、アリスの手を握りながらアルトマンを眺める。
と同時にアリスが目を覚ました。
「アリス!!」
テイラーがアリスを抱きしめ泣いていたので、俺たちは部屋の外に出て応接室に戻った。
そこにはちょうどギルドから帰ってきた父が居た。
「とりあえず野犬討伐依頼を出して、町の住民にも注意するよう警告しておいた。」
「お疲れ様でした。」
そう言いながら、黒い液体の入ったカップをテーブルに置くと父の隣に座る母。
ロックは湯気の出ている黒い液体を口に含むと「ハァ…」と小さめの吐息の後、じいさんに質問した。
「アリスは無事なのですか? アルトマン学園長」
絶えず俺の顔を見ているじいさんはロックの質問にも俺から視線を外さなかった。
「…学園長?」
「あ……ああ、アリスはもう問題ない。先程、意識が戻り、今はテイラーさんと一緒じゃ」
「本当に助かりました。アルトマン学園長が居なかったらと思うと…」
俺の手を握り礼を言う母に
「いや、礼には及ばんが…」
流石にアイリスの顔を直視し過ぎているアルトマンにロックはやんわりと
「…どうしたのです? 学園長」
その雰囲気に我に返ったのか、やっと俺に全力で向けていた視線をロックに向け
「あ、いや…実はアイリスなんじゃが………」
「アイリスがどうしたんです?」
俺はハッとした。と同時に不味いか? と心がよぎる。
あれか? 魔法を使ったからか?
しかし、どっちの魔法だ??
「アイリスが魔法を使ったんじゃ」
ああ、やっぱり
「アイリスが魔法? アルトマン学園長、それは本当ですか? この屋敷で魔法を使えるものは居ませんので誰もアイリスには魔法を教えていませんが?」
それは分かっていると首を縦に振りながら答えるじいさん
「だからロックは我が学園にアイリスを入学させるために今日来たんじゃからな。しかし…先程、魔力の放出を感じてアリスの部屋に向かったんじゃが…そこにはアイリスしか居なかった。そしてアリスが目を覚ました。これはアイリスが魔法を使ったからだと思うが…どうじゃ? アイリス」
再び射抜くような視線を俺に向けるじいさんの気迫に少しドモる感じで返答する。
「あ、は…はい…魔法を使ったんだと思います。でも、アルトマン学園長の様に薄い緑色の光ではなく、濃い緑色でした。口にしたのは『キュア』だったんですけど、違う魔法を出したのか心配で…でも、アリスが目を覚ましてくれて安心しました。」
その言葉を聞いてただでさえ射抜くような視線だったのに更に目を見開き刺視性が30%アップする。
「キュアじゃと!? 4歳で教えてもらっていない魔法を使えた事も驚異じゃが…」
魔法を使ったと聞いたロックはいつもの顔になる。
さすがにアリスが重傷状態で野犬の群れが出てパパも冒険者の顔と領主の顔をしてたのに。
「さすがアイリス!! 天才だな~! 可愛いな~! うりうり!」
抱きつき頬づりし、相変わらずな親バカぶり、さすがにウザい。
「パパ、苦しいよ!」
少し時間を置いて、アルトマン学園長が真剣な眼差しで話をする。
「ロックよ、少しアイリスと話をしても良いか?」
あまりの親バカぶりに若干引き気味のアルトマン学園長に向かい何を言われるのかビクビクな俺は、至って平静を装う。
「はい。何でしょうかアルトマン学園長?」
「…魔法はどうやって覚えた?」
ここで嘘を言っても仕方がないと思い、在るがまま、感じたままを説明する。
だって…じいさんの目が怖いんだもの~
電脳展開型タブレットの事を言われたら誤魔化すけど爺さんがやった事と同じことをしただけだし。
「アルトマン学園長が魔法を使う時に感じた魔力の流れを再現したんです。」
「な…なんと!! おぬしは魔力の流れが分かるのか?」
「はい」
「では、わしの魔力の螺旋を再現しキュアを使用したのか?」
「そうなんですが…」
アルトマン学園長はアイリスが先程、キュアと違う類の魔法と言ったのを思い出したのだろう。
そして、その魔力の大きさ、強さを総合して…解を導き出す。
「アイリスよ、よくお聞き…アイリスが使った魔法は恐らくフルキュア―じゃ」
「ふるきゅあー?」
端から聞いていたロックの頭上に『?』が見えるほど『?』な顔をしている。
何てわかりやすい人間なのだろう。
そう思ってる俺もパパと同じ顔をしてるわけだけど。
「アルトマン学園長、フルキュア―とは?」
アルトマン学園長はロックの顔を見ると軽く溜息をつき質問に答える。
「ロックも団長をやっていた時や、冒険者として討伐を行う際に、回復者も同行するじゃろ? その回復者は、キュアを使えて一人前、ハイキュアを使えて上級者と言われる。しかし、フルキュア―は王都でも使えるものは居ない。唯一使えるのが法王のみじゃ、しかも、その法王でさえ、使用する時は凄まじく精神を集中する為、何日も準備をすると言う………それを4歳の、ましてや初めての魔法でフルキュアーを使うなど……」
あの魔法はそんな魔法だったのか。
どうりで、ごっそり魔力を消費したと思った。
消費はしたけど倦怠感も疲労も何も感じないが。
でも、見よう見真似のキュアは失敗だったんだな…。
そう思うと改めてもう一回、アルトマン学園長の魔法を見たいと思った。
「ロックよ、2年後にアイリスを学園に差せると言っておったがすぐにでも入学させんか? 早々に入学できるようその段取りも儂が全てやるがどうじゃ?」
「大変光栄な話なのですが、アイリスは6歳で入学させます。それまでは私たち親子に育てさせて下さい」
「そうか…うん、そうじゃな…分かった……残念じゃがあきらめて2年後に待つとしよう」
「申し訳ございません」
「いや、それより、アイリスや……もうチョット魔法を覚えたくないか?」
「え、いいの? いえ、良いのですか?」
「アルトマン学園長! 宜しいので?」
「今回同行したのは、魔力9500でヒーリングマスターの属性を持つアイリスを見たかったのと、そのアイリスに少し魔法を教えてみようかと思ったジジイの気まぐれじゃからな。しかし、ワシの想像を遥かに超えた才能じゃ! 教師の血が疼いてしまったわ! ロックは魔法より剣術だったからロックより教えがいがあるわい」
「すいませんね、魔法の才能がからっきしで」
「それでも騎士団長まで上り詰めたのじゃから、大したもんじゃ」
こうして、昔懐かし話に花が咲き始めたので俺は寝る事にした。
しかし、森で使った魔法に対して問い詰められなくて良かった………。
翌日にはアリスも元気印100%で走り回っていた。
アルトマン学園長の回復魔法を2回受け傷口は完全に治癒している所へ、回復職を極めたアイリスダメ押しのフルキュア―を無傷な全身に受けたのだ。
遺伝子レベルでの治癒も行う奇跡に触れたアリスは昨日までのアリスと異なっている。
しかし、その事に気が付くのはアリスもアイリスも含め、まだまだ先の話。
そんなアリスもアイリスと共に魔法の勉強をしている。
と言っても、魔法の理論から魔力の理論の講義。
俺にとっては、早く知りたかった内容であるがアリスにとっては理解不能な高等学問。
何たって、4歳児だからね。
散々駄々をこねて一緒に勉強するって言ってても、4歳児に理解できる筈も無く、いつも様に船を漕ぐ。
と思っていたら、アリスの集中力が半端なかった。
そして、理解力も今までと別人のようになっている。
いや、別人なんじゃないのか?
昨日の野犬の牙がアリスの脳に達し、劇的な変化をもたらしたんじゃないか?
それとも、野犬の唾液に、人間の何かを劇的に変化させ、知能を退化させ、人間の肉を欲するようになるとか…いや、それだと、今の変化とは逆か。
アリスも理解できる事が喜びなのか、幼稚園児が戦隊ヒーローものを見るかの如く、瞳を光らせてアルトマン学園長の抗議に聞き入っている。
最も驚きなのは、ある程度話を聞いた後、理解しないと口にできない疑問や質問などを問いかけている事だ。
俺とアルトマン学園長はそんなアリスの様子に開いた口が閉じない。
俺もアリスに負けじと次々とアルトマン学園長に質問をぶつける。
我に返ったアルトマン学園長は真剣に話を聞き、質問してくる俺達に気を良くしたのか、ニコニコ笑顔で講義を進める。
真剣に聞いてるアリスの横で、少し思い出したことがある。
魔法の発現方法だ。
アルトマン学園長の講義を聞くに、魔法とは体内を巡る魔力を練り合わせ、体内より顕著させる。
それを聞いて、500年くらい前にこの世界に来た事あるんじゃないか? と記憶を遡ろうとしたところで、アルトマン学園長から話しかけられ中断する。
「…と言う事だ、アイリスは昨日やった事だから理解していると思う」
「は…はい!」
突然呼ばれて空返事気味に返事をしてしまった。
「それでは、私の後に続いてキュアを発動させるんじゃ。アリスはその様子を良く見ておくんじゃぞ?」
「ハイ!」
いつになくアリスがハイテンションだ。
しかも、難しい魔術の話なのに、寝るどころか体を前のめりにさせてる…。
「…キュア」
アリスを治療した時と同じように、アルトマン学園長の掌から薄い緑色の光が発現する。
「さ、やってみるんじゃ」
「ハイ!」
張り切ってドラ〇ンボールの孫〇空みたいに、両手コブシを握りしめ、気を溜めるポーズをする。
「ン~…キュア!!」
頭上に掲げた両掌から眩いばかりの光が発生し、部屋の中を煌々と照らし出す。
「アイリス…それはフルキュアじゃ……」
何の準備も無く、いとも簡単にフルキュアを発現するアイリスに、アルトマン学園長の額から一筋の汗が流れた。
「そ、それじゃ今度はアリスの番じゃぞ」
「ハイ!」
横では一生懸命アリスが自身の魔力の流れを掴もうと頑張っている。
その光景を横目に自分の頭の中のタブレットを開き魔法の確認をしてみた。