第109話:アイリスよ永遠に
今回もちょっと短いです。
閑話休題程度に流して頂いても大丈夫。
そうそう、私の痔なんですけど、おかげさまで完治したようです。
でも再発し易いらしいので長時間のトイレや限界を超える気合は気を付けなくてはいけません。
皆さんも気を付けてください。
アケミの一方的勘違いから寮の一室で休憩を摂ってたアルとアケミが帰ってくる。
休憩と言ってもイカガわしい休憩ではなく、本当の休憩な訳だが。
それでもアケミには物足りなく、アルには長い時間だったようだ。
アイリスから過去の話を聞いたことがあるアケミであったが、アルの口から全てでは無いにしろ聞いた話はアイリスから聞かされた話よりも具体的で現実味があった。
その事を鑑みるに、アイリスは口下手でアルは話し上手。
兄があんなだから弟が反面教師で優秀になった。
アケミはそんなイメージをするが、凡そのところで間違ってない。
優秀なアルに心惹かれるアケミであったが、みんなの特訓の様子を見に外へ出たのだが今までの桃色の思考が白紙になる。
桃色の思考をしてないアルはその光景を目に呆れ、大きく息を吸うと鼻から吐きだす。
アルは"やり過ぎ"と言う言葉が頭に浮かぶ。
アケミは"大惨事」"と言う言葉が頭に浮かんだ。
砂浜に下半身が埋まっているハッシュ
その脇で横たわるスージー
大分離れた木の幹を背に凭れるコリー
その後方で横たわっているミーシャ
直径5m程のクレータの中心に横たわるイーサとノルン
そのクレータは表面がガラス状になっていて、相応の熱量が発生している事を物語っている。
そんな惨状を尻目にアリスはカインとカノンの二人と話をしている。
アイリスの姿が見えな…あ、少し沖の方に浮かんでいるのが見える。
あれ、うつ伏せに浮かんでるけど―――死んでるんじゃないの?
みんな微動だにせず、とても生きているようには見えなかった。
アケミは個の惨状に"鬼だ、鬼が居る"と言葉にはしないが表情が物語ってる。
確かに生き返らせることは可能なのだろう、しかし本当に殺す?
アケミがそんなことを思ってるとアルがボソリと口にする。
「うわ…カノンが剣を持ってるよ」
バツが悪そうな感じでアルが呟く。
「え?」
アケミはオズオズとアルに問いかける。
「カノンは普段、寡黙であまり話すタイプじゃないんだけど、剣を持つと人が変わると言うか、容赦しないと言うか、戦闘狂になるんだよね」
その言葉を聞いて再びアケミは周りを見渡す。
そしてアルの言葉に数回首を縦にゆっくりと降る。
「ああ…」
私は何となく納得してしまった。
「みんなにはカノンの相手はまだ早いんだけどなぁ…良かった、みんな辛うじて生きてるね」
え? 生きてるの?
どちらにしろ辛うじてって…いろんな意味でやばいんじゃない?
アイリスに至ってはあの状態で生きてるの?
海面から顔出てないよ?
息してないんじゃない?
完全に息してないよ?
窒息してるよ?
そう思いながらアイリスの方を眺めながらアルに付いてカイン、カノン、アリスの所に行く。
「全く、カノンは容赦ないね」
そうカノンがアルに言われると、剣を背の鞘に納めながらドヤ顔で答える。
「手を抜く事は覇王流の教えには無い!」
と完全に言い切った。
それにしても、この大惨事の元凶であるカノンが一切ダメージを受けていない。
私はアイリスやアリスも、こと闘いに関しては怖いと思っていたが、上には上がいる事を思い知った。
この3人は本気になったら私の空間操作でさえ無効にされて殺されるんじゃないか?
本来の能力に戻ったらアイリスやアリスも同じくらいの強さになるのだろうか?
そりゃそうだよね。
何たって神と戦う位なんだし。
この5人には間違っても敵対しないようにしよう、そう心に決めたアケミだった。
そして、いつかアルを虜にして見せるわ!!
アルを見つめながら口角を上げ微笑するのだが、目は笑っていなかった。
アルはアケミの気配に"ビクッ"と反応するのだが、誤魔化す為に声を出す。
「こ、これじゃ、今日の特訓は終了だね。本当は寝なくても大丈夫なんだが、みんなも精神体に慣れていないんだから仕方ないか」
アルの言葉に対して頭に"?"を浮かべるアケミ。
「え? 寝なくても? その前にアイリス…あれ、死んでない? それに他のみんなも…」
沖に流されるアイリスを見てニコリと笑みを浮かべるアル。
「ああ、兄ちゃんなら大丈夫だよ。精神体に呼吸は必要ないし。ああやって休んでるだけじゃないかな?」
「ええ!? 呼吸が必要ない?」
アルの衝撃発言で思わず大声を出してしまった。
その声にアリスがこちらに歩いてくると
「まぁ、海水浴に飽きたら戻って来るわよ」
アリスは目の上に手を廂のようにし、太陽光線を遮ると遠くを漂うアイリスを見る。
アリスの声に若干の棘を感じた。
なに? 何があったの?
「多分、アリスは心配してるんだよ」コソコソ
「え?」
「でも、みんなが居る手前、強がってるのさ」
コソコソと内緒話をしているのに
「アル! 聞こえてるわよ!」
アリスには筒抜けなようだ。
「おっと、ゴメンゴメン。 まずは、みんなを寮に連れて行こうか」
「ん? 回復させれば済むのにか?」
頭を傾けカインがアルに問いかける。
「まぁ、今日いきなり精神体になって、まだ肉体に依存してる感じだし、これ以上やったら、精神体もダメージが残りそうだからね」
「なるほどな」
カインは納得したように頷く。
カノンはまだまだ暴れ足りないようで顰めっ面だ。
その顔の向かう先はアリスなのだが、アリスは完全無視を決め込んでいる。
決め込まなくてはみんなと同じ状況になってしまうのは目に見えているからだ。
アリスだったらカノンさんにも向かって行きそうな気もするが、他のみんなの状況を見るに相当凄惨なものだったんだろうしアリスもその辺は弁えてるのかな。
私にもその辺は理解はできる。
だって、こんな凄惨な現場を見てしまったら誰だって引腰にもなる。
しかもアリスはその惨状を目の当たりにしたんだろうしね。
実は私は精神体になっていない。
と言うのも、槍を刺そうにも刺さる瞬間に槍の穂先が別の空間に現れ、私を貫く事が出来なかったからだ。
だから精神体と言うものもイマイチ理解できないでいた。
その前にみんなが天界に行った場合、私はどうなるだろうか?
この世界で生きて行くしかないのかな?
無敵の能力であるが、自動発動であるため、自分にはどうする事も出来ない。
初めてこの能力が疎ましく思った。
私は答えが怖くてアルにもアイリスにもアリスにでさえ聞けずにいる。
アル、カイン、カノンは皆を集め、アリスがスフィアで覆うとそのまま城に帰って行く。
寮のベットにみんなを寝かせる。
「気休めだけどね」と言いながらアリスが回復魔法をかける。
本当にみんな生きてるのだろうか?
あんな状態を見た後だからなおさら思う。
アリスも含めみんなが大丈夫って言ってるんだから大丈夫なんだろうけど。
どうやら精神生命体に回復魔法は意味無いようだ。
まぁ、みんな精神体であり肉体を回復する回復魔法は意味をなさないのかもしれない。
みんなを寝かせ私を含む4人は大広間で寛ぎながら雑談をしているのだが…。
ねぇみんな、アイリスを忘れてない? と心で小さく思ったのだったが、
アルの淹れてくれたミルクティの美味しさに、そんな考えも砂糖と共に溶けて行った。
タイトルからも分かるように、この物語も終わりです(ウソです)
まだまだ皆さんからの意見をお待ちしております。
次回作に乞うご期待!(大嘘です)