第107話:天を揺るがす超特訓
短いが早めに投稿できた(自己満足)
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「わたくし、生まれも育ちもアルテリアです。神田明神で産湯を使い、姓はイブニヒス、名はアーティリス、 人呼んでフーテンのアイリスと発します。わたくし、不思議な縁もちまして、生まれ故郷に草鞋を脱ぎました。あんたさんと御同様、トルスタンの空の下、ネオンきらめき、ジャズ高鳴る花の都に、仮の住居罷りあります。不思議な縁もちまして、たった一人の妹の為に粉骨砕身、売に励もうと思っております。西へ行きましても東へ行きましても、とかく土地土地のお兄いさんお姉えさんにご厄介かけがちなる若造です。以後、見苦しき面体お見知りおかれまして、向後万端引き立って宜しくお頼み申します。」
中腰で左手は腰の後ろ、右手は手のひらを上に向けアルに差し出す。
そして放たれる口上を受けて一つ溜息のアル。
「ちょっと、私が妹ってこと? 本当の妹じゃないし。てか、何で寅さんなのよ」
ツッコむアリス
「いや、これからの特訓を思うと、舐められてはいけないと言うのと気合の意味も含めての口上かな」
言い訳するアイリス
この場にいる全員が溜息を吐き出す。
カインは苦笑いで、カノンは言葉短めに
「ふっ、相変わらずだな」
「ああ」
と一言。
しかし懐かしむように笑っている。
「さ、始めますか」
何も聞いていない風を装いパンパンと手を叩き流すアル。
その扱い方を眺めて「ほう」と感心する一同。
恐らく昔からアイリスがボケてアリスがツッコミ、周りが観客なんだろうと勝手に解釈する一同。
そんなどうしようも寒いボケに対してアルの態度が正解とみんな納得であった。
さて特訓開始なのである。
城で特訓なんかした日には学園風の城が崩落の危険があると言う事で、みんなと砂浜にやってきた。
「まず、兄ちゃんの今の実力がどこまで戻っているのか試そうか」
俺を相手に随分と余裕じゃないか、アルよ!
「ふっ、兄より優れた弟など存在しねぇ!!」
開始からクライマックスだぜ!
と息巻いてアルに自分の最高を叩きつける。
・・・・・・
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チーン
「や、やるなアル。しばらく見ないうちに随分成長したものだ…しかしこのラオウ、天に帰るに人の手は借りぬ!!」
俺は出来うる限りの全開でアルに挑んだ。
「兄ちゃんはラオウじゃないし、この位じゃ死なないでしょ。それに俺が強くなったんじゃなく兄ちゃんが弱くなったんだからね」
確かに、全盛期の何分の1の力しかないが、これ程に差があるとは…
「もう、死にそう…全力全開だったのに」
ハッシュを筆頭に全員が信じられない事を目の当たりにして言葉が出ない。
アイリスのボケで引いているわけでは無い。
誰よりも強いアイリスが砂浜にうつ伏せで倒れているからだ。
今まで散々好きな事を好きなように行い、傍若無人に振る舞って全学園の生徒や講師、はたまた学園長たちを震え上がらせた張本人であるアイリスが何もできずに横たわっている光景に。
あのアリスでさえ驚きの表情を浮かべている。
「確かに今の状態では頑張ったんだろうけどね。でも兄ちゃん、元の状態に程遠いよ。」
「だから言ってるだろ、俺は後方支援だって」
確かに俺は後方支援組。
アルは中間。
攻撃も出来るし防御も高いし魔法も強い。
ある意味RPGの勇者や賢者的位置づけだ。
対して俺は完全支援タイプ。
全盛期でも負けることはあっても勝つことはそうそうなかった。
「それでも転生前の状態とは程遠いよね。あ、忘れてた」
「何だ? 昇天していいのか?」
俺は天に拳を向ける。
もう本当に天に還りたい。
そんな俺の命を懸けたボケを華麗にスルーするアル。
「多分、特訓が終了した後に全ての魔法が解放されると思うよ」
俺は天に上げた拳を下げてアルに向き直る。
「ほ、ほんとか!! 全ての魔法が解放されれば、アルにだってカノンにだって勝てるぞ! ふっふっふっ。この特訓はお前たちの特訓でもあるのだ!」
そう言う俺に苦笑いを浮かべるアル。
「いや、だから特訓が終ってからだよ って、あ、あれ? 兄ちゃん? 死んだの?」
「…」返事が無い、ただの屍の様だ。
俺とアルの戦いを見てみんなは顔が引き攣っている。
「マジか、あいつら、化け物じゃねえか」
ハッシュは蒼い顔をしてぽつりと小言を漏らしてしまった。
その小言を聞いてアルが答える。
「大丈夫だよ。最終的には僕たちと同じ強さになってもらうから、ね?」
「ああ」
カノンは腕を組みながら新しい玩具を手に入れた子供の様に顔が微笑んでいる。
その表情を見て全員の顔色が蒼くなっている。
『悪魔の微笑だ』
誰もが心の中で呟いた。
そして、砂浜に大の字で埋まるアイリス。
そして、なぜかやる気を出してるアリス。
・・・・・・
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チーン
アイリスの隣で大の字で砂に埋まるアリス。
「…今はお前の力が上だった ただそれだけのことだ そして魔界ではそれが全てだ」
「何故妖狐? いや僕は仙水じゃないから、楽にしませんよ」
おいアルよ。
なぜお兄ちゃんのボケにはスルーでアリスのボケには返すのさ。
お兄ちゃん嫉妬の炎で妬けちゃうよ。
「クッ…殺せ」
「何で女騎士なんですか? その前に僕がオークなんですか?」
アルよ。
お兄ちゃんのボケにも返してくれ。
今は何も言葉に出来ない位、グロッキーだけど。
蒼い顔をした集団はチート連中のしごき…いや、特訓に耐える事が出来るのか!!
「そうだ、アケミさん。 あなたには別メニューがあるからこっちにお願いします」
アルとアケミは城の方へと向かった。
おい、アル!
不純異性交遊はお兄ちゃん許しませんよ!
ダメなんだからね!
行くならお兄ちゃんを倒してから
「ブフォッ」
おお、アルよ。
お兄ちゃんの頭を踏んずけるとは、アルのツッコミも中々高度になって
「ブフォッ」
おいコラアケミ!
人の頭を踏みつけるとはどういう了見じゃ!
「兄ちゃんまだ元気そうだから、カイン後はお願いね」
「おう、任せとけ!」
むむむ、次の相手はカインか?
ふっ、お前には手加減なしだぜ!
「おい、アイリスだけじゃ話にならん。みんな一斉にかかってこい!」
そう言われて遠慮も無くみんな一斉にカインに挑む。
その頃の俺は砂に埋もれていました。