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神様?いいえただの悪魔です。  作者: 次元
第2章:熱血学園編
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第106話:神秘が軽い

俺のエガヒップアタックがカインにヒットし、のた打ち回ってる所で再びアルに問いかける。


「話を戻すが、このままで天界に行けるのか?」


「仮想天国を経由すれば、肉体が変換されてるはずだから問題ないよ」


確かに仮想天国に行くときに、通常の転移とは違い意識だけがそのままで体を構成する物質が粒子変換されたような、再構成されたような錯覚に陥ったからな。

って待ってくれ、みんなも仮想天国に行ってるんだけど?


「ああ、その事な。元々精神生命体に近い二人だから可能な訳で、本来だったら精神生命体で無ければ天界には行けない」


そう言うとアルは周りを見渡す。


「って事は、ハッシュ達には無理って事か?」


「無理かどうかと言ったら、無理かな。行けるのはアスラが構築した仮想世界だけ」


なるほど、確かにあそこはアスラが構築した世界だし、何とでもなるのだろう。

しかし本当の天界はそんな訳にはいかない。

例え仮想世界と構成が同じだとしても、天界のセキュリティで引っかかるって訳か。


ハッシュ達をこの世界に残して俺たちだけで天界に行くことに若干の抵抗があったのだが、腰を擦りながらその解決方法をカインが提示してきた。


「その為にこの武器があるんだろ?」


カインは神々しい光を放つ槍を手にする。


「…おい、まさかみんなをこれ(・・)で刺すのか?」


カインの手には伝説の武器である『ロンギヌスの槍』が握られている。


その槍は、肉体に死を与え、精神に新たな生まれ変わりを促す。

通常は肉体が滅んだ時、記憶の保持は出来ない。

場合によってアストラルに記憶が留まり、断片的に記憶の保持をしているが、あくまでも一時的なものであり、宇宙の浄化作用で次第に魂のみとなり、記憶も無くなる。

そして、魂のみになると生まれ変わり別の生命へ輪廻転生となる。


この槍は、魂に直接記憶情報を書き込むため、肉体が滅してもアストラルが浄化されても、魂のみで存続が可能な状態となる。

そして、精神構造体となる為、肉体を持たずして存続が可能となる。

魂は永遠の存在なので、肉体の存続が不必要なので文字通り不老不死となる。


それは世界中の王が求め、世界中の神職僧侶や錬金術師の最高到達点。

神に至る道だ。


確かに…この槍を用いれば天界に行くことは可能だが。

俺は槍の使い方と使った場合、どうなるのかを皆に説明した。


みんなそれぞれに顔を合わせながら考え込んでいる。


それはそうだろう。


槍で刺せば、文字通り”死ぬ”訳だ。

当然、心臓を刺された時の痛みはある訳だし、それによって死にもする。

そして、俺はこの槍を皆に刺したくはない。


アリスだって同じだろう。

それは、長年一緒にいた仲間たちを殺すと言う事に他ならない。


確かに生まれ変わりを促すにしても、殺すことには躊躇いが生じる。

死んで生き返るのと、殺して生き返るでは違うのだ。


俺もアリスも項垂れていると、カインが槍を静かに受け取る。


「まぁ、天界に行くも行かないも自由だ。こんなにすぐに決められる事でもないだろう。何だったら俺がやってやろうか?」


暗くなっている空気を察してカインはそう言ってくれる。

ただ、あまり考える時間が無い事も事実なわけで、そんなにも簡単に決断が出来る事でもないだろうが。


「なぁ、アイリス、ひとつ教えてくれ。その槍に刺されて精神生命体になったとしたら、どうなるんだ?」


ハッシュが事もなげに聞いてくる。


「え?」


「天界にも行く、オーリオンも倒す。それはいい。しかし、その後だよ」


「あ~………ただ、死なないだけかな」


「ハッシュって人格が永遠に生きるって事だよな?」


「うん、そうなるね。永遠の命を望んでる人からしたら、喉から手が出るほど欲しい事なんだけどね」


しかし…


「でも、俺の周りは俺を置いてみんな死んでいくんだろ?」


ハッシュはこの呪いを理解している様だ。


「まぁ…」


俺は永遠の生は苦痛以外の何物でもないと思っている。

死を恐れる人には、永遠の生命は憧れなのだろうけど。

その代償として死の痛み、恐怖、苦痛。

そして孤独。

これが永遠に続く訳だ。


まぁ、そのために俺たちは面白おかしく、そして、俺たちが楽しめるような世界を作ろうとしている訳だがそれにハッシュ達を巻き込むのは違うと思う。


ハッシュはスージーに顔を向け、そして優しく抱きしめる。

スージーは顔を赤くして呆気に取られたように周りの視線を感じキョロキョロとしている。


「ちょ…ハ…ハッシュ!///」


ハッシュは意を決したように俺に向き直り、アイリスに笑顔で


「お前といると退屈しないからな、俺が永遠に遊び相手になってやるよ!」


その笑顔は、これから死ににいくものの顔ではなく、晴れ晴れとして一つの目標の為に(いただき)を目指す登山家の様でもあった。


「ハッシュ」


俺はハッシュと硬く握手をしようとした所で、完全に意表を突かれた。

いや、突かれたのはハッシュだった。


「流石、アイリスが見込んだだけの事はあるぜ!!」


カインはそう言いながら、清々しく槍をハッシュのわき腹から心臓目がけ差し入れた。


「ク…ッ」


言葉も無く倒れ込むハッシュ。


「あ…」


俺とスージーは倒れるハッシュをただ眺める事しかできず、右手を握手の為に差し出したまま、口を開けながらカインを見た。

カインは何故か納得したように、満足げに嫌になるくらいの笑顔だった。

その笑顔を見て無性にイラッと来て、エガヒップアタックをお見舞いする。


「おおおおぉぉぉいいいぃぃ!!」


俺の奇声&エガヒップアタックを発動と同時に、スージーがハッシュに駆け寄る。



「ハッシュ!」


スージーが倒れるハッシュを抱き留めると、ハッシュの体が眩い光を発した。


「ハッシュ!!」


スージーは必死にハッシュに呼びかける。

スージーの抱き留めているハッシュは光を放った後、跡形もなく姿が消えてしまった。


余りの出来事にみんな唖然として消えたハッシュとその場に跪くスージーを眺め、エガヒップアタックを喰らったカインは転げまわる。

呑気にカルボナーラを食べているアルとカノン、そしてその隣で毛づくろいをしているキャノン。

阿鼻叫喚とも自業自得とも意気消沈とも悠々閑々とも色々な意味合いが溢れる空間が出来上がってしまった。


ハッシュの体が光の粒子として消えてしまったその場所でスージーが未だに項垂れている。


他のメンバ―も余りの出来事に目の焦点が合っていないようにスージーを眺めていた。


誰も言葉を発しない状況が1時間も感じられる数秒だったが、唐突にアリスが意味不明な言葉を発する。


「お誕生日おめでとう! なのかな? それともおはよう?」


アリス、突然何を言って…そんな顔をアリスに向けるスージーだったが、思考が停止した。


「ああ、確かに生まれ変わったようなそんな晴れ晴れとした感じだな…」


そう言いながら、バツが悪いような顔で頭を掻いている。


「ハッ!」とスージーは思考が戻ると目の前に何事も無いように苦笑いをしながらハッシュが立っていた。

スージーは腰を抜かしてしまっていたのか、すぐに立ち上がる事は出来なかったが、ハッシュが手を伸ばし抱き寄せた。


ハッシュはスージーの耳元で何かを囁いているようだが、何と言っているのか聞かない方が良いだろう。


「あたたた…」と立ち上がるカイン。


皆の視線がカインに集中するが、カインはそんな事お構いなしにハッシュを見てサムズアップをする。


「無事に生まれ変わったんだな!」


相変わらず、空気を読まない人ですよカインは。

皆の視線が痛くないのでしょうか?

『俺のおかげだぜ?』とか見当違いの事でも思っているのでしょうか?


―――いるのでしょうね。


だって、今にも槍をスージーに向けて刺そうとしている所だし。


ハッシュはカインを見て慌てて止める。


「待て待て! 何で槍でスージーを刺そうとしてるんだよ! スージーが俺と同じになる事は無いんだよ!」


その言葉を聞いてカインが首を傾けた。

カインは声には出していないが『は?』という心の声が聞こえてきそうだ。


「お前も女心が分かんない奴だね~」


カインがそう言うと、スージーも


「本当に!!」


そう言い放つ。

そして次の瞬間、カインが槍をスージーに刺しこんだ。


当然、ハッシュはカインを罵倒するのだが、そんなの馬の耳に念仏状態。

で復活するスージーと熱い抱擁を交わすハッシュでした。





何だかんだで皆が槍に刺されていた。

まぁ、予想通りって言えば予想通りな訳だが…


「本当に皆、いいの? 神を倒すんだよ?」


と俺が言っても後の祭り。

みんなはにこやかに健やかに


「あ~問題ない。」


「俺が世界を正す!」


「真の魔王に俺はなる!!」


とかなんとか、時間は永遠にあるんだから、壮大な夢も現実を帯びてくる。

でも、暴走して敵対だけはしたくないね。


「とりあえず、こっちの世界にようこそ」


そう言うのはアルだ。

そして更に鬼のような提案をする。


「みんなは勘違いしているかもしれないけど、この世界では無敵だろうけど、戦闘に関して天界ではまだまだ子供並みだ。だから、もう少しレベルアップをしてもらおうと思う。今まではアイリスやアリスが特訓していたと思うけど、次は僕がみんなを特訓するね。その次はカインかな、最後にカノンに特訓を受けて貰おうか」


「おお! 望むところだぜ!」


皆も気合が入っているな~と思っていたら


「兄ちゃんも参加する?」


と飛んでも発言をアルがしてくるもんで


「ば…バカな事を言うもんじゃないよ? アル君」


と全否定しておく。

最後の特訓が盛大に躊躇う原因だ。

あの戦闘バカのカノンがトリをとる特訓なんて地獄の光景しか目に浮かばない。


そんな俺の慌てようにジト目であるが見てくる。


「ふ~ん…いいの? 皆に追い抜かされちゃうよ?」


アルよ。

お兄ちゃんはそんな挑発には少したりとも心は動かないのだよ。


「忘れてるかもしれないけど、俺は回復系でクレリック系でヒーラーで後方支援組なの!」


アルも「それもそうか」とか言ってるし。


「大体、アルの特訓だけならお兄ちゃん喜んでやるけどね…最後が問題だ」


「え? カノンの特訓?」


「そう! 何で好き好んで死ぬと分かってる事をしなきゃいけないんだよ」


「いやいや、カノンもそんなつもりないよね?」


「当然だ」


おい、カノンさんよ。

腕を組みながら「当然だ」とか言いながら何で視線を逸らすんだよ!


「いや、もう騙されないぞ! カノンに殺す気が無くっても結果だけ見たら」


「まぁ、俺たちに抜かれても悔しくないんだったらいいんじゃね~の?」

「そうそう、格下と思っていた俺たちに抜かれても何とも思わないんだったらな」


余裕の含み笑いでハッシュとコリーが言い放つ。

売り言葉に買い言葉とはよく言ったもので、途中までは絶対参加しないと心に誓ってたんだよ。


でもね…


「私も知らないうちにアイリスを抜いちゃってたんだよね~。何だったら私も特訓してあげようか?」


憐れみの笑顔を向けるアリス。

そして、ニヤニヤ顔の面々。


カッチ~ン


「お~やったろうじゃないか! 多少強くなったくらいでいい気になるなよ! 俺はまだまだ本気じゃないし!」


「って事で兄ちゃんも参加ね」


アルがそう宣言する。


「はっ!」


やってしまった!

乗せられた! 乗せられてしまったよ!!

パパ…ママ…まだ見ぬ妹たちよ、兄は空からみんなを見守っています。

ほら、あの輝く星が兄さんだよ。


追伸

寮のベットの下にある箱は、開けずに燃やしてください。

見ると呪いにかかります。

私が死ぬまで呪います。


掲載が遅くなって申し訳ない。

いや、こう見えても頑張ってるんだよ。

なんせ2月納品に間に合わせるためにてんてこ舞いですよ。

だから期間が開いてしまいました。

投稿じゃなく仕事しろって?

俺の現実逃避を奪わないでくれ!

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