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神様?いいえただの悪魔です。  作者: 次元
第2章:熱血学園編
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第104話:全員集合!

なるべく早く投稿したいのですけど、体が中々言う事を聞いてくれなくて。

で、出来ればしばらくは週1もしくは週2で投稿させてください。


その日、突然、そして何の前触れもなくある大きな国がこの世界から消え去った。


その大いなる国が消えたとき、遠く離れたイスタニアでは深夜であった。

深夜にも拘らずその時、朝日が昇るかのように明るくイスタニアを照らした。


復活の国ラスアルでは、日が沈む夕刻時期に沈む太陽とは真逆から太陽が昇ったと言う。

因みに復活の国ラスアルと言われたのは、魔王に滅ぼされた後、復活させられた為に呼ばれるようになった。


ブリトニアの民はその日、何事も無く過ごしていたそうだ。


ローキシアはその日、崇める為の太陽が2つになり、全国民がその場で平伏したと言う。


この世界から消えたその国はこの世界の中心でもあるニューダルカ。


その日、世界各所の王たちがニューダルカに集まり、モンスターと魔王を打倒する為の会議が開かれていた。

そして、いつもの如く最終的には勇者に魔王を倒してもらう打算を話し合って終了する。

凡そ世界の王が集まり、話をするべき事ではない会話がなされるのだった。


野心的な王であれば「我が!」と声を荒げる処だろうが

世界から選りすぐりの戦士を魔術師団をそして最強の勇者2人に随伴させたうえで、魔王に手も足も出なかったのだ。


しかも魔王は我々の軍進をあざ笑うかのように、死傷者0人で追い返した。

そして、事もあろうに勇者が発言した再戦の約束を嬉しそうに「強くなってかかってこい」と返答した。


そんな事があり勇者は修行を積み魔王に挑み、返り討ちにされて帰ってくる。

その都度、全国民に戦闘状況が脳内に放送される。

言わば国民は視聴率100%の異種格闘技戦を観覧させられるのだ。


国民の中にも、魔王の事を口は悪いが優しいんじゃないか?

と、不謹慎な事を言う者も出始めている。

しかしモンスターを放っているのも魔王だと言う事で、最終的には悪者に見られるわけだが。

中には悪魔崇拝ならぬ魔王信者まで出始める始末である。


王たちは勇者から齎せられる情報を交換していた。

世界各所にあるモンスターが発生する祠に、魔王を倒せる武器が眠っているという情報。

獣人の中にも人間の勇者を凌ぐ勇者が誕生している事。

そして同様に魔人の中からも勇者が降臨している事。

ついには下々の民の中には獣人や魔人と交流しているモノが居る事を。


程なくして会議が終わりを告げる頃、ダルカの国に太陽が発生したかと思われるような光球が発生した。

その2日後、行商の為に訪れたキャラバンがニューダルカの国にやってきた時に、初めてこの国の状況が世界に伝わる事となる。


ニューダルカの中心から半径100km程離れた地面は、ガラスの様になっている事。

ニューダルカの街も城も全て跡形もなく消滅している事。

そして、生存者どころか死者さえも発見する事が出来なかった事。


誰もが思った。

世界中で噂される2つ目の太陽が原因だと言う事に。


その原因は勇者との対戦に業を煮やした魔王の仕業で間違いないだろうと言う事。


中には、魔王は自分の偉大さを見せつける為、無理やり頭の中にビジョンを見せる。

そのビジョンがなく突然国が消滅したのだから、今回の事件は魔王とは関係が無いのでは? と言う者は居たが、大多数の意見に飲み込まれ消されてゆく。



王を失った国々は混乱を極めた。


次期王となるべく、子が親を殺す。

兄が、弟が、姉が、妹がそれぞれの思惑で殺し合う。


別の国では、軍事力を持つ貴族がクーデターを起こす。


それに巻き込まれる国民。

それを避ける為に国を捨てる国民。


そして戦争。


4つあった国は2つになり、互いに争っている。

同盟関係であった国同士でも、裏では争っていた。


人間は獣人や魔人を相手にする前に人間と戦っている。

時代は混沌の体を擁していた。

正に世紀末である。

この世界に世紀という単位はないのだが。


そんな世紀末の様相に先の出来事から半年。

深いため息を吐き出す少女が小さな孤島の大きな城に居る。

数年前までは、専ら王たちの関心を一身に集めていた人物。


魔王様だ。


「はぁぁ~~~~~…」


魔王様の対面、テーブルを挟み魔王様に遠慮も無くカルボナーラをフォークに巻きつけている少年。

いつも魔王を護衛するように控えている人物。

側近だ。


「どうしたの? すんごい溜息ついて…あ、もしかしてカルボナーラが喉につっかえたの?」


そう言ってコップを差し出すのはその魔王の横に座る世界の希望である勇者。


「もうアリスったら、頬張り過ぎなんだから~」


そう言いながら、慈愛の笑みをアリスと呼ばれた魔王に向ける。


「確かに、このカルボナーラ美味しいもんね~」


と発言するのは、獣人族の勇者と讃えられているミーシャ。

その隣でクスクスと笑っている幼い獣人勇者のシュガー。


「全くだな! 俺たちが冒険している時もこんな旨いものを毎日食ってたんだろ~」


というのはミーシャの対面に座っているコリー。


「俺は旅の途中のメシは何でも旨かったぜ?」


と言うのはコリーの隣のハッシュ


「お前だって、何でも旨いって言いながら出されるもの全部食ってただろう」


ハッシュにそう言われたのは魔人族勇者のイーサ


「ああ、違いない!」


と言うイーサに苦笑いを浮かべるのはイーサと同じ魔人族の勇者であるノルン。


「全く、みんなは冒険をしていたのかご飯を食べてたのか分からないわね~。どうアリス落ち着いた?」


そう言うのはシュガーの隣でアリスを心配するスージー



そのスージーがアリスの方を見て首を傾げる。


「アリスどうしたの? 頬なんか膨らませて、あ、みんなが好きな事を言ってるから怒ってるの?」


「いや、悪かった」

「怒る事ないだろ~」

「あははは」


終始和やかな会話だったのだが、魔王様の再び大きな溜息一発。


「ハァ~~~~~~…違う!」


皆が一斉にアリスの方に向く。

しかし、みんなも分かっていると言わんばかりの表情だ。


「違うわよ!!」


カルボナーラがのどに詰まった訳ではない!

アリスは声を大にして言いたい訳だ。


しかしここにいる誰もが暗黙の了解と理解している。


「や、分かってるよアリス」

「ああ、分かってる」

「「「うん」」」


「そうよ、みんなアリスの言いたい事は分かってる。…分かってるけど」


皆の言わんとしている事にアリスも分かっている。

分かってはいるのだが…アリスも力なく一言答える。


「うん…」


皆も言いたいことはある。

しかしその思いを言葉にするにはあまりに大きな出来事。


そんな空気を変えようとアイリスが一言口にする。


「しかし…こりゃ無いよな…」


みんなが力なく「うん」と答える。


流石のアイリスにもこの空気を変えることは出来なかった。

アイリスもそれ以上の言葉が出てこなかった。


するとテーブルの端、お誕生日席に座るキャノンがぽつりと言葉を発する。


「どうする? お前達、元の世界に戻るか?」


その言葉に皆は驚愕の顔でキャノンの方へ顔を向ける。

互いが互いの顔を見つめた後、それぞれ顔を伏せ出かかった言葉を飲み込む。


この世界にやってきて何のかんのあったが早くも10年近く経過していた。

そして得られたのは、ミッション未達成。


キャノンとの約束はある意味守られたのかもしれない。

しかし、こうじゃない。

誰もがそう考えていた。

だから、誰からも帰ろうとは言い出せずにいた。


お気楽なアイリスも。

イケイケのハッシュも。


このままで帰れるか! と誰もが思っていた。

ある一部を除いて。




重苦しい空気とは裏腹に絶叫と思われるほどに甲高い笑い声と共に現れた男たち。

見ず知らずの男たちの登場にアリスとアイリス以外は驚きを通り越してフリーズしている。

何故ならば、ここは一応でも魔王の城な訳で、おいそれと簡単に侵入する事は不可能なのだ。


それを狂ったかのように笑いながら大広間に入ってくるのだ。

呆気に取られるのが当たり前である。


そんなよく分からん連中にも常識人がいる様で


「ちょっと…カインさん、笑いすぎでしょ!」


アイリスたちの重苦しい光景に腹を抱えて大笑いするのはアスラの使徒であるカイン。

その様子を咎めるのはアイリスが溺愛し絶対の信頼を向ける実弟のアル。


「いや、だってよ、この空気ぃ~重すぎる~!! そして、やっと出番だ~!」


アルの言葉にも悪びれずカインは待ってましたと大袈裟に両手を天に向け絶叫する。


「カインさん、みんなに失礼ですよ」


怒気を強めるアルに対して流石のカインもビクリと仰け反ると声を殺す。


「ああ、悪い悪い、でもよアルゥ…ぶふぉっっっ…くくくくくっっっっっっ、見てみ、アイリスのあの顔」


が、やはり心の奥底から発生する笑気に抗えず再び笑いだすカイン。


「おい、カイン、アスラが睨んでるぞ、いい加減にしとけ」


余りにも場違いな笑い声に寡黙なカノンが声を出す。

久しぶりに声を聞いた驚きもあるが、アルは努めて冷静にカノンに返答する。


「カノンさん、今はアリスですよ」


カノンと言われた男はアリスの顔を見て


「そうだった、すまなかったなアスラ」


と静かに詫びるが、その詫びは全然意味が無かった。。


「久しぶりだな! アイリス! 元気してたか? ってそんな面じゃねえな、やっと大々的にオーリオンを叩き伏せる事が出来るからよ! 迎えに来たぜ」


カインは空気を読まず目が点になってるアイリスの肩を力強く叩くとそのままサムズアップする、


目の前に現れた同志に目が点になっていたが、肩を叩かれた衝撃で意識を取り戻すアイリス。


「カイン? …カノン? アル?!」


アイリスは椅子に重々しく座っていたかと思いきや、羽が生えたかのように椅子から立ち上がる。


「おいおい、転生してたった15年程で俺たちの顔を忘れたのかよ! みんなも、我が侭アイリス、鬼のアスラに付き合ってくれて大変だったろう? ありがとうな! 心から礼を言う」


カインは先程の笑い声を忘れたかのように物静かにその場で腰を折ると

日本刀より短く作られた忍刀2本を帯刀たカインが小さくしかし澄み渡る様な礼を述べる。


「だからカインさんも、今はアリスですよ」


アイリスに抱き付かれ頬をスリスリされるも、それが当たり前のように、何事も無いようにカインを咎める。


「おお、そうだったな」


「アル~元気だったか? 怪我は無いか? アスラにこき使われてなかったか?」


アスラは相も変わらずアルの頬に自分の頬を撫でつける。


「…鬼のアスラって…」


アリスはコメカミをヒクヒクさせながらカインとカノンを睨む。


アイリスとアリスが言葉を発する音量より、何十倍もの音量で声を発する者が居た。

その声は、寧ろ破壊兵器と思われるような大地を揺さぶる程だった。(大げさ)



「カイン様ぁ!!!!」



「おお、久しいな、キャノンよ」


猫の俊敏さとバネを使い、シュタッとカノンの前に跪く。

見た目は殆どお座りなのだが。


「カイン様!! 500年お待ちしてまいたぁ~~(大泣)」


その様子を見てアルの頬を撫で続けていたアイリスが漸くアルの頬から離れる。


「おお、カリン様が泣いてるよ…ってそうじゃない!! お前ら、聞きたい事は山ほどある! そりゃ15年分、根詰めてみっちりと聞きたい事がある!」


ビシッと人差し指をカインとカノンに向ける。


「お、おお、相変わらずだな」


先程までの空気を一蹴させ自分のペースに持ってゆくアイリスにカインは頬を引きつらせる。

指さした後、アルの顔を見て、クシャリと顔を歪ませると、再びアルの頬に頬ずりするアイリス。


「アル~~~~元気だったか?! けがはしてないか? 苛められたりしてないか?」


「そっちかよ!」


アイリスの背後に立ち込めたオーラにたじろいだカインは盛大にツッコむ。


「アイリスのアルに対する溺愛は今に始まった事じゃないがな」


今まで、さも一緒に冒険してきたうちの一コマのような緊張や懐かしむような口ぶりで無く、そんな事、昨日も言ってたよな? 的な軽い会話に周りも空いた口が塞がらない。


寧ろ、みんなの頭の中には「「「お前達誰だよ!」」」と盛大にツッコミを入れている。

が、聞かなくても凡その見当は付いている。


暗黒の女神 アスラの使徒たち


人としての寿命を超越した悠久の時を生きる神と等しき者たち。


みんながアイリスとアリスに視線を向ける。

その視線を感じたのか、アイリスが遅まきながら紹介していく。


「ああ、みんなにも紹介するよ。こいつが俺の弟のアルだ。可愛いだろ? こう見えてもアスラの補助を担当していたり、戦闘でも優秀で、武器なんか何を使わせても俺なんかより巧みに使うんだ! こんなに可愛いのに何でもできる出来た弟でな、この前も」


15歳の少年が見た目18歳の青年を弟と呼び、溺愛している異様な光景を打ち消すかのようにカインが紹介を促す。


「おいおい! バカリス、弟のプライバシーを曝露してどうするんだよ。早く俺たちの事も紹介しろ!」


アイリスはムスッとした顔で、


「こっちがカノン、こっちがカインだ」


アイリスは交互に指を指して簡潔に紹介する。


「おいおい、随分適当だな」


この場にいる全員がアリスの顔を見る。


「なによ?」


アリスの言葉に誰も言わず視線を逸らす。

アリスの話したい内容を中断した時の顔と、今のアイリスの顔が重なったからだ。


アルがその雰囲気を感じて「ふふっ」と笑う。


「どうした?」


突然、笑ったアルを微笑ましく見るアイリスに対して、


「ふふふ、兄さんも、アリスもそして兄さんに関わった人もいつの時代も、どこの場所でも変わらないんだな~って思ってね」


「ふっ、俺が好きになった奴に悪いやつは居ないからな!」


アルに抱き付いていた腕を離し胸を張るアイリス。


「お前が言うな!」と全員からツッコミをされ、それぞれを紹介してゆく。


「で、アリス…で良いんだよな?」


チラリとカインはアリスの顔を確認するように見ると恐る恐ると言った感じで確認する。


「ええ、アリスよ」


「って事で、アリスだ」


本当はアイリスを含むここに居る全ての人は知っている。

アリスはアスラなのだと。


どのような経緯でアリスになったのか分からないがアスラなのだと。

しかし、本人がアリスと言うのだからアリスなのだろう。


皆深く考えないようにしている。

アスラでもアリスでも、名前に拘る人間はここには居ない。


スージーはアリスを見つめて微笑んでいる。

あなたが誰でも関係ないわよと、声出さぬ想いで。



誤字脱字等あったら報告お願いします。


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