第102話:アケミ物語(上)
今回はアケミに焦点を当てております。
因みに、あるアニメのキャラクターが話に出てきますが全てアケミの妄想です。
作者の妄想でもあります。
皆さんこんにちは!
私を知らない人は始めまして、アケミです。
そして私を知ってる人はお久しぶりです。
アケミです!
ホントお久しぶりです。
このまま登場しなくなっちゃうんじゃないかと思っちゃいました。
私、この世界に転移してきましたけど、戻る方法なんか分からないし、ドキドキでした。
今日はね、みんなに私の物語を教えちゃおうかな~なんて…どう?
そこのあなた、美少女勇者の話聞きたくない?
…聞きたくない?
YES
⇒NO
…聞きたくない?
YES
⇒NO
…聞きたくない?
YES
⇒NO
…聞きたくない?
YES
⇒NO
…聞きたくない?
⇒YES
NO
そっか!
みんなも聞きたいんだね!!
え? 無限ループ? シナリオ? なにそれ意味わかんない。
と言う事で、私の個人的なお話をこっそり教えちゃうね!
私アケミはある日、いつものように部活から帰ってきてご飯食べてお風呂に入ってスマホを弄りながら知らないうちに寝てたんだよね。
え? 私の部活? 弓道部なんだよ!? 中学校に弓道部って珍しくない?
弓道部って言えば海ちゃんだよ! 『本当にホノカったら真面目に聞いてるんですか?』 みたいな!!
部活動中は他の部の人たちが体操着やジャージなのに、私たち弓道部はみんな袴なの。
弓道衣って言うんだけどね。
あ、袴と言えば赤とか思ってない?
袴の赤は巫女さんなんだよ。
赤の袴が似合うのは希先輩かな。
希先輩は生徒会の副会長でアルバイトで巫女さんをしてるんだよ。
時々境内を掃除してる姿を見るととても似合っててウットリしちゃうの(妄想)
話がずれちゃったね。
私たちの弓道衣は主に紺色なんだよ。
紺色だから色気は無いかもしれないけどこう見えて私って結構大和撫子なんだよ~?
え? ただの…オタ? あん? …いっぺん…死んでみる?
さて、視聴者が一人地獄に逝ったところで続きです。
夢の中で海ちゃんと並んで的に向かって矢を飛ばしてお互い笑顔を交わしたりって感じで、至福なひと時を過ごしていたのにさ~。
その夢の中でいきなり霧に覆われて何も見えなくなっちゃったんだよね。
私は必死に『海ちゃん!』って叫んでたんだけど返事がなくって不安になってたら、目の前に目も開けていられないほどの光が眩しく照らしたと思ったら、目の前に知らないおじさん登場。
で、そのおじさんは唐突に『私は神だ』とか言うから、少し間を開けて『何だチミは!』って言ってみたんだ。
もう、この時点で「あ、これ夢だ」って思ったのよ。
夢の中で夢を意識するのって明晰夢って言うんだって友達が言ってたのを思い出したのよ。
明晰夢って夢の中で何でも願いがかなうって。
だから、こんなおっちゃんを相手にするよりも勇者に転生してRPGみたいに無双して魔王を倒したいな~って思ったんだよ。
え? 口が悪い? まぁ、最近の中学生なんてこんな感じよ。 え? 理想と違う? 幻滅? …お前も死ぬか?
え~~…さて、視聴者がまた一人減ったところで続きです。
他にも10人目のメンバーとして海ちゃんと弓道をしつつ、かよちんとおいしいおにぎりを食べるのもいいな~
なんて思っていたら
「お前に既に転生する意気込みがあり助かった。では頼むぞアケミ」
それだけを言っておっさんが消えて放置プレイですよ。
余りにも放置させるので
霧の立ち込む森の奥深く~
少女を運ぶ謎の老人~
フハハハハハハ、貴様もろう人形にしてやろうか!?
なんて歌ってみたわけですが、なんださっきのおっさんは?
と思ったら、また目の前に眩しい光が射しこみ今度は御姉さん登場。
「あなたには既に転生への心構えが御有りのようですね。安心しました」とか言われてね。
「ああ、夢の中だから心が読まれてしまったのね!」ってか、デジャブってる? とか思ってたら。
「良く分かりましたね。私は暗黒女神のベルセネ。あなたは勇者となって魔王を倒し、平和な世界を取り戻してください」
って唐突に言われた訳よ。
戦闘力なんて皆無な中学生に。
弓道は齧ってるけど部活レベルで実践レベルなんて遠い彼方な訳。
それ位は私にも分かるってもんよ。
でも考えてみて。
これは夢って理解してる訳よ。
だったら楽しまなきゃ損じゃない?
私も溢れんばかりの笑顔で答えた訳さ。
「分かりました! だったら無双したいんで、最強装備とか最強魔法とかください!!」ってお願いしてみたんだ。
そうしたら
「あなたの心の強さであれば、この力が使えるでしょう」
そう言われた途端、自分の意思ではなく矢を番えて弓を引いてるの。
そうして、50mは優にある霞的を狙ってるんだけど、50m先にあった霞的が1m先みたいに見えるの。
当然、正鵠にいとも簡単に命中する訳。
そりゃ当たり前よね、目の前にあるんだもん。
「この力は空間操作、如何に距離が有ろうとも空間を短縮し攻撃も可能です。」
「って事は、瞬間移動的な?」
「あなたは実際移動できませんが、周りの空間に作用させることが出来ます。この力を応用すれば、敵の攻撃を全て相手に返すことも可能です」
おおぉ! なんか使い方次第では無双出来そう!
「では、無事魔王を倒してください。頼みましたよ。」
最初のおっさんは何だったんだよ~!
と思ったら森の中。
霧の立ち込む森の奥深く~
少女を放置した謎の老人~
って替え歌口ずさんだりして森の中を彷徨った訳なんだね。
手には弓。
矢は弓を引けば自然と矢が番えられる。
よっしゃ!
無双するぞ!!
夢の中じゃ無敵だぜ! って思ってたんだけど。
この森、凄いリアリティを感じるの。
VR? そんなまやかしどころじゃない。
私の夢、再現力マジ半端ね~とか思っていたら、出てきたのよモンスター。
30m先位かな?
獣道みたいな草に覆われたほっそい道から狼みたいのが。
うは~で~た~!
って思いながら弓を構えたの、そしたら私と狼の距離が凄く縮んだように感じたの。
もうね、目の前に居る感じ。
うわ! って尻餅をついて狼の方を見たら、狼は30m先でこっちの様子を窺ってるの。
あれ? ってね。
ああ、あれが空間操作なんだね~って思って、もう一度弓を構える。
そりゃ目の前に動かない的があるんだもん、超簡単だったよ。
うりゃ! ヘッドショット!! って。
命中した途端、唸り声を上げながら狼が煙のように消えちゃった。
って思ったら、周りにも狼が居る気配。
その時思ったの、そう言えば狼って群れで生活するのよね~って。
でも空間操作で超楽ゲー。
まぁ、問題は矢の数も問題ないし超楽勝って訳でしょ?
あっという間に私の周りには狼型モンスターが13匹。
でも焦らない私最強。
最初からクライマックスだぜ! ってね。
5分後には私の周りにいた狼を全て倒したんだけど見た事も無いコインが13個、そう言えば最初の狼の分も回収しないとね。
あれ? そう言えば、レベルアップとか無いのかしら?
まぁ、既に無双状態だし私の夢だし何とでもなるわね。
しかし、夢の中なのにずいぶん歩いて疲れたんだけど…
そして12時間後、私は絶望する事となる。
もうこの頃から凄く嫌な予感がしてたのさ。
でもワンチャン、夢なら長く感じることもあるかもね。って思ってた時期がありました。
程なくして遠くの方に村が見える。
村に入って露天屋に行き串焼きを頼んだ時、提出したコインは使えないと言われ、マジか! と思い教えてもらった両替屋さんへ走って向かっていた時だ。
何の変哲もない所で盛大に転んでしまった。
普段から躓く事はあるのだけでれどその度に、ドジッ子な私可愛いって脳内で思ってたんだけど、膝を擦り剥いていた。
そして、そこからは血が滲んでいる。
ビリビリと痛む膝。
ドクンドクンと鼓動に合わせて伝わる痛み。
肘も擦り剥いていた。
横を歩くおじさんが「盛大に転んだな~大丈夫か?」と声をかけてきたが頭に入っていなかった。
ただ頭を上下に動かしている事しか分からない。
フラフラとモンスターから取得したコインを両替し、串焼きに戻り串焼きを食べてみる。
「…美味しい…」
「お! おねえちゃんありがとよ!」
後ろから串焼きを売ってるオッチャンが上機嫌でお礼を言ってきた。
でも私はうまく頭が回っておらず、広場の噴水の淵に腰を掛ける。
無意識に食べていた串焼きは残っておらず、先の鋭い串を手に持っていた。
手には串焼きのタレが付いててベタベタしてたから噴水の水で手を洗った。
「…冷たい…」
右手に持っている串の先端を左の掌に当ててみる。
「…痛い…」
その時はっきり理解した。
「…本当に転移している…」
私はそれからしばらくは現実と受け止められず白昼夢の中に微睡んでいた。
正確には現実逃避をしていた。