第101話:時空間魔法
少し短いです。
でも手と腰の痛みに耐えて書いたので許してください。
アリスが仮想アスラの元から帰ってきた。
それも特に苦労した様子も無い。
念の為、道中をアリスに聞くと
「何かね、5キロ位あるトンネルを歩いてる感じだった。周りが真っ暗だから不安になったんだけどスグに出口の明かりが見えたから後は走ったんだけど、すぐにアスラ様に会えて安心したよ」
だって。
有り得ない。
俺がどんな苦労をしたと思っているのだね。
それはもう超大作スペクタクルショーだった訳ですよ!
それが何?
5キロ位のトンネルって?
もしかして、今後も考えてアスラが仮想世界に至る通路を構築してくれたとか?
やっぱりアスラは仕事が早いな~…と思った自分を叱ってあげたい。
「あ、そうなの? 俺も試しに行ってくる」って言った自分を正座のまま2時間くらいコンコンと説教してあげたい。
もう聞くも涙、語るも涙の超大作スペクタクル(3部作)でした。
さて、仮想アスラに問うたところ、アリスの問いに5分間くらいフリーズしていたそうだ。
そして5分後に復帰してからは色々な仮説を出したのだが、どれ一つとして対抗措置に辿り着くことが出来なかった。
で、結局のところ、俺たちも時空間に作用しないとダメだろうと結論付けられた。
仮想アスラも考えておくと言伝をアリスに伝えると早々に姿が消えてしまったそうだ。
因みに、アリスがスフィアをスフィアで覆い、外側のスフィアに超高重力磁場を構成したらどうかとアスラに聞いた所、そもそも空間と時間の概念が無いので意味は無いと言われたらしい。
そんな訳で魔王様と側近は、時空間魔法に四苦八苦していた。
とりあえずアケミとは良好な関係を保っているし、俺たちのやってる事に理解を示してくれてる。
お陰で俺たちの作戦に協力してくれて入るのだが、今後も協力してくれるとは限らない。
最悪、袂を別ちアケミが敵側の人間になった場合、あの無敵攻撃をレジストする必要がある。
その為アケミの使った空間操作に干渉し、空間操作を無効化するためなのだが…。
これが非常に難解で厄介なのだ。
空間を湾曲すると言う事は時間をも湾曲させるという事。
ひいては宇宙の心理に繋がる(意味不明な思い込み)。
何より、時間軸の異なる過去と未来が同一時間軸に存在する可能性があると言う事時点で、俺たちに気が付いていないが色々と崩壊しているか、崩壊する可能性がある。
距離と時間が関係ないのであれば空間転移魔法だって距離と時間を無視してるじゃん! と言われそうだが、空間転移魔法とは似ているが全く別の次元だ。
空間転移魔法は相手の魔力を自分と連結し、光の粒子へ変換し移動する。
つまり、光の速度は超えられない。
簡単に言えば光ファイバー内を高速で移動しているに過ぎない。
しかし空間操作とは、文字通り空間を操作する技だ。
アケミが操れる空間操作の有効範囲は分からないが、論理的には無限の距離を目の前に開く事が出来る。
これは、速度の概念や時間の概念が全く通らない文字通り別次元な話なのだ。
便利道具の有用性No1と名高い"どこでもなドア"なのだ。
あの秘密道具の原理は分からんが、アケミの能力はA地点=B地点となる。
これは跳躍とかワープと言うのとは異なり、空間接合なのだ。
しかも、あの便利道具と違いトビラを必要とせず直接空間を操作できる点で、比べようもない。
という事で、この空間操作を覚えればある意味自分たちも無敵な存在だし、アケミに遅れを取る訳にもいかない。
とりあえずアケミの戦闘を観ただけで原理や方法は分かったが、理論が追い付かない。
自分たちにそこまでの演算能力なぞ無い事は良く分かっている。
だって、今まで感情の赴くまま好きなように生きてきたんだもん!
と、声を押し殺し心の中で思ってみた瞬間、魔王様と目が合う。
あ…アリスも同じことを考えていたな?
そう思った瞬間、アリスの目が鋭くなる。
…なに? やっぱり俺の考えダダ漏れなの?
最近、考えてる事がアリスに筒抜けの様な気がする。
はぁ、こんな時、頭脳派のアルが居ればな~…と心で思った瞬間。
「はぁ、こんな時、頭脳派のアル君が居ればね~」
と、俺が思っていた事と同じことを口に出す。
ああああ!! やっぱり考えが漏れてるんだよ~!!
俺は泣きそうな顔でアリスの顔を見ながら消え入りそうな声で
「…そうだね…でさぁ、確認なんだけど俺の考え、漏れてる?」
とアリスに質問すると、これまたいつものように
「え? 顔に書いてあるじゃん」
とだけ答える。
俺ってばどんだけ顔に出やすいんだよ。
いやいや、その前に顔にそんな具体的な事が出るってあり得なくない?
むう…考えても仕方がない。
俺は顔を洗うように両手で顔を擦ると大きく鼻から息を出す。
そして、電脳に接続する為、タブレットを開こうとした時だった。
何気なく少し上の目線に微かにだが、魔力の糸が見えた。
神経を集中して注意深く見るとアリスの魔力の糸が俺の頭に接続されている事が確認できた。
「あ、ばれちゃった…」
なにも悪びれる事も無くテヘペロしながら言い放ちやがった!
「あ…アリス? いつから…?(怒)」
思ったように言葉にできないが、アリスは察したように、「えっとね」と前置きをして
「初めてキャノンと戦った時に、アイリスが私に魔力を接続したでしょ? あの後、すぐかな」
俺は膝を付きうな垂れる…もう何年もこの状態だったとは。
「あれからって、もう随分経つんですけど? その間、俺の考えがアリスに筒抜けに?」
「えへへへへ…だって、アイリス中々気が付かないんだもん」
いや、そう言う問題じゃないでしょ!
俺のプライベートは無いのかよ!!
………あれ?
「おい、アリス。閃いた!!」
「俺でさえ気が付かなかった『これ』を、アケミに仕掛けたら、秘密が分かるかもよ?」
凄い名案でしょ!
ってか、アケミが反旗を翻す動向も事前にわかっちゃうんだから、どうとでも対応はできる。
「え~そんなことしたらアケミが可哀そうでしょ。アケミにプライベートは無いんですか?!」
アリスはジト目でこちらを眺める。
「お前が言うな~~~~~~~~ぁ~~~~~~~~!!!!」
俺の魂を燃やした叫びは千里を越えたと言う。