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神様?いいえただの悪魔です。  作者: 次元
第2章:熱血学園編
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第100話:アケミの能力

新年あけましておめでとうございます。

新年は記念すべき100話でございます。

因みに今回は少し長いです。


アケミはニューダルカの王都に来ていた。

と言うのも、勇者として王の言葉を賜り、冒険者として出立してもらう事になったからだ。


そもそもアケミは人間の勇者なのだし、他の勇者より戦闘能力も優れてるし、訪れた街でモンスターが暴れまわってそれを討伐すれば一躍ヒーローだ。

戦闘能力が優れてると思ったのは、初めてこの城に来た時に、外にいるモンスターを討伐しないと絶対城内に入れるはずがないからだ。

実際には手合せも戦闘もしてないんだけど、アスラでは無いがアスラが後継として指名した暗黒女神の加護が付いてるから強いはず。

と言うのが俺とアリスの見解だし、間違いではないだろう。


アケミは王都に到着し門兵に要件を伝えると、伝令が走る。

すんなりと城内入り、そのまま謁見の間へと案内される。


王が謁見の間まで来るまで、片膝を立たせしゃがみ込み顔を伏せる。


「ダルカ・ステロネス殿下の御成り!」


まるでどこかの奉行所の様だと内心受けていたのだが当然の如く顔には表さない。

王が謁見の間に唯一存在する豪華な椅子に着席すると声をかけられる。


「勇者よよくぞ参った。面を上よ」


ここは"はは~"とか言うべきか悩んでいたが、そんな悩みも心の奥底に仕舞う。

思ったことを顔に表さない出来る女と心の奥で自己評価を下す。

その評価の結果、物静かに渋く、エレガントに、というのが最適解と導き出す。


アケミは伏せていた顔をすっと王へ向ける。


「よく来てくれた。心より感謝する」


「いえ、勿体なきお言葉」


アケミは心の中で笑っていた。

いや、堪えていた。

勿体なきお言葉って…アニメ見て無かったら絶対言葉に出てこないよ!

良かった~アニメ観てて。

やっぱりアニメは偉大だね!

アケミはアニメと今自分が置かれた状況を重ねてみて、アニメの内容を思い浮かべる。

しかしそのアニメは唯我独尊なアニメだったので、後の展開は勇者が王を殴るという、とんでもアニメだったのだ。

その後の展開を思い浮かべると危うく吹き出しそうになり慌てて顔を伏せると落ち着かせるために軽く深呼吸をする。


「どうしたのか?」


「い、いえ何でも御座いません(あっぶね~マジで吹き出しそうになっちゃったよ)」


危うく優雅でエレガントな所作が台無しになる所だった。


「ふむ、緊張しているようだな。突然だがそなたにも魔王討伐に尽力してもらいたいのだが、先の魔王との戦いで勇者が負けた事は知っておろう?」


アケミと王とで思考内容に若干の乖離があるようだが、アケミは動じない。


「は! 頭の中にその場の光景が見えましたので…」


国を挙げた魔王討伐作戦は魔王を討伐するどころか力の差と言うのを嫌と言うほど見せつけられた。

その事を思い出し、苦虫を噛み潰したように王は眉間に皴を寄せる。


「同じ轍は踏みたくないのでな。お主の力を見せて貰いたいのだが構わぬか?」


王の提案に"?"を浮かべながら張りの無い声で答えた。


「勇者コロンを呼べ!」


王は近衛に伝える。

程なくして勇者コロンと呼ばれる男が現れ、アケミの横に並ぶように片膝をつき頭を垂れる。


「お呼びで」


「うむ。そこにいる勇者アケミの実力を測って欲しい」


「は!」


コロンは言葉短く返答すると「ついて来い」とだけ言うと謁見の間から歩き出す。

アケミは慌てて王に一礼をして小走りでコロンに付いて行く。


城を出て闘技場の様なところに連れて行かれる。

王立軍が使用している訓練所の様で、相当に大きい。

コロシアムかと思うほどの規模だ。


コロンは振り向き「ここでお前の実力を見てやろう」と言った瞬間、アケミが「あ!」と驚いたように声を上げる。

コロンは眉間に皴を寄せ予想できる返答を頭に浮かべながら、アケミに問いかけた。


「あ、いや、魔王討伐の時の…」


アケミの回答にやっぱり予想通りと思い、ため息交じりに返答する。


「しかし、俺は修行してあの時より強くなった。もう魔王の好きにはさせない!」


「はぁ…すいません」


「いや、いい。お前の実力を俺に見せろ。かかってこい」


コロンは木刀をアケミに投げ渡し構えを取る。


アケミは木刀を受け取り適当に構える。

軽く木刀を振るアケミに対し、動く事も無く構えるコロン。


あの映像を見た印象ではコロンと言う勇者は凄く弱いはず。

本当に勇者なのか疑うほどに。

そもそも、あの二人アイリスとアリス相手に人間がどうこうできる問題では無い事をアケミは理解していた。

あの二人は神を相手にしようとしているのだから。

たかが神の使いたる勇者では足元にも及ばないのは理解している。


それでも自分と同様の勇者コロン、一般人や兵士に比べれば実力は雲泥の差なのだけど、先の戦い風景を見ていたのでどのくらいの力加減で戦っていいかアケミは考えあぐねていたのだが。


「…来ないのか?」


「あ、いや」


「お前も勇者なんだから、これくらい対応できるよな?」


そう言って、一向に向かってこないアケミに苛立ちを感じたのか、自身の必殺技(?)を繰り出す。


「エクストリームフレイムスラッシュ!」


炎の属性を持ったソニックブームがアケミに向けて放たれる。


「あ…」


これってアリス、じゃなくって魔王様と戦った時に出した必殺技?

いきなり初対面の女の子に向かって必殺技とか出しちゃう?

…でも、これは本当に必殺技なのだろうか?


アリスが、アイリスが感じた率直な感想と同じことをアケミも抱いた。


弱く見せるべきか、強く見せるべきか

弱く見せた場合、暇な訓練に付き合わされて冒険できないかもしれない。

強く見せた場合、勇者コロンに対して加減が分からない。

等々、いろいろ考えていたら空気を切り裂く炎の斬撃が目の前に迫っている。


「バ バカが! 対応もできない未熟勇者だったか!」


が、次の瞬間、自身の放ったエクストリームフレイムスラッシュが自分に返ってくる。


「っ!」


状況が掴めない状況に陥るコロン。


間一髪で自身の技を避けたコロンだったが、コロンは憔悴しきったような顔でアケミを見る。


アケミが同じ技を繰り出した素振りも無く、同様の技が自分に襲い掛かってきたのだ。


どういうことだ? 自分を凌駕するほどのスピードの持ち主なのか?

それとも、技を真似た魔法なのか?


色々と思考をするコロンだったが、1度しか見ていない為、正解に辿り着けていなかった。

アケミを見れば特に技を仕掛けた風でもなく、木刀を持っていない左手で後頭部を軽く掻いている。

まるで悪戯を誤魔化すような素振りだ。


キッ! とアケミをひと睨みし、猛スピードでアケミに迫る。


アケミはと言えば相変わらず木刀を軽く振り切先を上下に動かしているだけだ。

勿論、考えている事と言えば"自分を弱く見せるべきか、強く見せるべきか"だった。


コロンはアケミに迫りながら木刀に対して魔力を漲らせる。

そして電撃の属性を纏わせ無防備ともいえるアケミの頭上に剣を叩きこむ動作をする。


それに合わせてアケミもコロンの攻撃を受ける為、木刀を横にし頭上に構えるが、コロンはそこまでの動作を読んでいたかのように、アケミの後方に回り込み軽く首筋に電撃属性の木刀を浴びせる。


この頃には、訓練していた兵たちも様子を見ていた。

アケミの剣の扱い方、避け方、初動。全てが素人然としており誰もがコロンの勝利を確信したのだが、その場で立っているのはアケミのみ。

コロンはアケミの後ろで横たわっていた。

時折、ビクン…ビクンと体が痙攣している。


この様子を見ていた兵の誰もが声を出せずに様子を見ている。

攻撃したはずのコロンが倒れ、攻撃を受けたアケミが立っているからだ。


「あの~…大丈夫ですか?」


数度の痙攣の後、アケミがコロンに対して声をかけた。


何とか意識を取り戻したコロンは痺れる体にムチを打ち言葉を発する。


「くっ、俺もまだまだ修行が足りないな…意識外からの攻撃と、目にも止まらぬ早さとは」


アケミはコロンの話を聞いて口が開く。

いや、そんな攻撃じゃないよ? と言いかけたのだが


「いや謙遜するな。お前だったらあの魔王でも渡り合えるんじゃないか?」


もしかしてこの人は人の話を聞かない系の人なのか?

とアケミの中で定義された。

だから余計な事は言わないようにする。


「アケミと言ったな、俺が全く相手にされないとは、相当の実力者だと言う事は分かった。では王の待つ謁見の間に行こうか」


「あ、はい」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「そうか! 勇者コロンが全く赤子扱いか!」


「はっ! 勇者アケミならば魔王を倒す事が出来ると思います。そしてその時には我々も修行して得た力を魔王討伐に役立てたいと思います!」


アケミとコロンが謁見の間へ着くより先に二人の戦いの結果が王の耳に届く。

そこに現れたアケミに対して笑みを浮かべる王。


「結果は聞いた。勇者アケミよ。魔王討伐を任せる! 本来であれば軍を指揮して魔王城に進行したいのだが、前の戦いの時に『多数兵』より『強い精鋭』を思い知らされてな…単身で送り出さねばならぬ事に心を痛めとる」


「いえ、お心使いだけで十分です。私も一人の方が何かと行動しやすいですし」


「そうか、助かる。旅の支度金と武器防具は大臣に任せる故、いつでも」


その時だった。

王の言葉を遮り重厚な音が鳴り響く。

そして突然の轟音と共に衝撃波と地響きが城を揺らす。


「な! 何事か!」


大臣が王に代わり兵に尋ねる。


基本どこでも同じだと思うが、城は街の高台に配置している。

そして、謁見の間の扉へ通じる廊下には眼下に街並みを見下ろす事が出来る。

意味も無く廊下に10m間隔で兵が立っているのだが、その兵の報告により街に突如モンスターが現れたとの事。


幸いにも城下町に住む民間人も微々たるもので、残っている民間人も街を出ようと準備をしている最中でモンスターの現れた場所はゴーストタウン状態であった。

アイリス曰く住民のいない街にモンスターが現れる筋書き。


報を聞き、コロンに続きアケミも謁見の間を出てモンスターが暴れまわっている場所まで急ぐ。

謁見の間を出るとき、王に「頼む」と言われたので一礼はしておいた。


時間的には10数秒も無いタイムラグなのに既に兵たちは全滅に近く、コロンも片膝をついている。

アケミもこの展開に驚きを隠せない。


「この世界の人たちって何て脆いのだろう」と。


アイリスなんてアリスの最上級電撃魔法を喰らっても次の瞬間には復活してるのに…いや、アイリスだけが特別なのか?

意を決して腰に差してある剣を抜き更に驚きが襲ってきた。


「ああっ!! 木刀…っ」


この状況にアケミは半笑いで『あいた~』と言わんばかりに掌をおでこにペチペチ当てている。

コロンと戦ってた時の木刀をそのまま持参してしまったのだ。


モンスターはそんなアケミを標的に定め口を大きく開く。

魔力と思しき光の渦がモンスターの口へ集約すると咆哮と共に極大な炎の塊がアケミに音速を超えて飛翔する。


コロンたちもこのモンスターの一撃で戦力を大きく削られたのだ。

その攻撃を見てコロンは終わったと絶望した。


一撃必殺のモンスターの極大攻撃に対するアケミは木刀のみ。

しかし、次の瞬間にコロンを含む全ての兵士が驚きを隠せないでいた。


軽くアケミが木刀を振ると、モンスターの放った極大な炎の塊がモンスターめがけて飛んでいく。


自身の放った炎の塊に全身を焼かれ絶命するモンスター。

次の瞬間には足元に複数個のコインが落ちていた。


アケミは周りを見渡し、現状を確認すると両手を頭上高く掲げ「ベホイミ~!」と唱る。

次の瞬間、アケミの掌から緑色の渦巻く魔力が周囲に拡散し、傷ついた兵士たちを癒してゆく。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


この光景を観ていた男女が居る。


世間でいうところの人類の不倶戴天の仇となる魔王と側近。

その二人はアケミを見て目が点になっていた。


「アケミ…『ベホイミ~!』だって」


「あはははは、アケミマジで面白れ~!!」


「あれ、あんな呪文口ずさんで怒られないかな? 運営さんとかから苦情来ないか心配だよ」


「いや~どうなんだろうね? ダメだったら削除するか変更するけど」



「…今のアイリスの言葉じゃないよね?」


「そこはツッコんだら負けですよ」




「ところで、アケミの能力って何だと思う? 私は反射とかだと思うんだけど」


「俺も最初はそう思ってたんだけど、なんか、違うと思う」


「どういう事?」


反射とアリスは思っていたのに、アイリスは違うという。


「コロンとの戦いを見ていた時は反射系の魔法とか能力だと思ったんだけど、さっきのモンスターの攻撃で確信したんだよね」


「だから何よ!」


アリスはイライラし、アイリスは苦笑いと言うか、難しい顔をする。


「あれ、空間操作だよ」


空間操作と聞いてアリスは目を見開く。


「え!? 空間操作…って事は、もしかしてアケミって時空をも操作できるって事!?」


空間を操作できる、それは時間の概念にも干渉しうるという事。

それを理解しているアリスは驚きが止まらない。


「凄いよね。空間を弄れるって事は相手の攻撃なんて絶対当たらないよ」


「それってある意味無敵ってじゃん!?」


「それに近いんだろうね。アケミに攻撃を当てるって事は、攻撃者も同様の能力がないと無理だと思うよ」


相対性理論真っ青の概念を一個人が操作できる。

正にチート能力である。


「アケミ以上の能力でレジストするとかジャミングさせないとって事?」


「まぁそう言う事だね。これに時空操作も付いたら、魔王なんて目じゃないよ」


「でも、アケミ自身の身体能力は分からず終いだったね」


「だね」


実を言うと王都にモンスターを放った訳は、王都の人間から信頼を獲得する目的と、アケミの能力を確認する目的とがあった。

暗黒女神の加護付であっても、加護を付加したのはアスラでは無いし、天界で何かがあってアスラから引き継いで暗黒女神を名乗っている訳でない場合、最悪アケミとも敵対する可能性が消えたわけでは無かったからだ。


「もしかして、アケミにばれてるかな?」


「…時空操作も使えるんだったらばれてると思うわよ?」


「でも、時空操作を使っているのか、使えるのかなんて、どうやって確認する?」


「現在から過去に対し変化を与えるって事自体パラドクスだものね~…。もしかして現在から未来に対して変化を与えてるとしたら?」


「それも未来からしたら現在が過去な訳だし、やっぱりパラドクスだと思うんだけど」


「時空操作が行われた時点で並行世界が無限に増殖するのよ? そんなの神が許しても宇宙が許さないと思うんだけど」


「だよな。そんな宇宙を嬲るような事、宇宙が裂けちまうよ」


「ん? 宇宙が裂ける?」


「ん?」


「宇宙が裂ける…」


「どうした? アリス?」


「そうよ! オーリオンよ!!」


「オーリオンがどうした?」


アリスは何か突然閃いたと言った感じで柏を打つ。


「宇宙の泡を一つにしようとしてるのよ!」


「…そうすると?」


「時間、空間全てが一つになるの!」


「…そうすると?」


「全ての宇宙の泡が弾けるの!」


「…そうすると?」


「…―――…さぁ~?」


「「…」」


俺とアリスは数分だろうか。

しばらく目が合ったままフリーズした。


流石にこの空気は無いだろうと思い、止まった時間を解放するアイリス。


「ま、まぁ良くない雰囲気は伝わったよ」


「そ、そう? それは良かった。」



「どちらにしろアケミが空間操作も時空操作も出来ると仮定すればだけどね」


「そうね。でも、こっちも保険として時空間操作を止める方法は考えておいた方がいいね」



こういう場合、アスラと連絡を取りたいのだが、仮想でも仮初でも仮想天国のアスラに相談しておこうかと思い、アリスに仮想世界に飛んでもらった。

理想としては本物アスラの行方がわかれば良いし、連絡取れるのが一番理想、降臨なんてしてくれれば言う事はない。

それに俺はあの仮想空間に通じる通路を通る気はサラサラ無い。


だから今回はアリスに頑張ってもらう事にする。

アリスだったら無事にあの世界に辿り着けるだろう。

アリスも相当に力をつけてるし、認めたくは無いが魔力だけで言えば俺を超えている。

死にはしないだろうし迷う事も無いだろう。


アスラが無理ならアルやカノンかカインと連絡取りたい。

も~あいつら、どこで何をしてるのやら…

さて、右手しか使えない状態で頑張って打ち込みました。

新年になっても折れた手は治らないようです。

前年の厄を今年に持ち越さないよう厄を払いに行きたいのですがこのご時世ですからね。

密になるのを避けるとなるとどうしてももう少し時間が必要です。

それでは、本年度も宜しくお願い致します。

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