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神様?いいえただの悪魔です。  作者: 次元
第1章:転生
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第10話:プチ冒険と冒険と

誤字報告ありがとうございます。

さて今日も頑張るぞと席についた所で邪魔が入る。

「今日も空いてたら設計書手伝って下さい。あと検証資料もお願いします」

むむむ、今日も作業が出来んではないか(仕事しろ!)

ってな事で1話だけ改修。

最近は毎日剣術と兵法をロックから教えてもらっている。

筋トレは無く準備運動も無い。


前に剣術を教えてもらう前に準備運動をしてたことがあったのだが


「アイリス…何してるんだ?」


「え? 準備運動だよ」


「剣術に準備運動なんか必要ないだろ」


「でも、準備運動してないと筋肉や筋とか痛めたりするし、突然体を動かすと100%発揮できないよ」


その言葉を聞いてロックは俺の頭にポンと軽く手を乗せると、そのまましゃがみ俺の目線に合わせてくる。


「いいかアイリス。剣術と言うのは何だ? 敵を倒す為か? それとも護身用にか?」


「…両方?」


「そうだな。でも良いか? 敵を倒すのも身を守るのも事前に準備運動なんかするか?」


それもそうか。

これから襲います! って宣言する敵なんかいないし。

こちらも同様に"これから攻撃します"なんて言わないし、その場で準備運動なんてしない。


「剣術とは、いつ如何なる状態でも100%発揮しなきゃダメなんだ」


確かに!

妙にロックの言葉に感銘を受け「パパすごーい!」ってしゃがんでるロックに体当たり風に抱き付く。

尻もちをつくロックだったが満点の笑顔で「そーかそーか」とデレデレだ。


そんな二人を冷ややかと言うのか、ぼーっと眺めているのがもう一人。

なぜかアリスも一緒に習っている。


俺より2ヶ月先に生まれた自称「お姉さん」のアリスにとって、アイリスは弟のようなもので、私がお姉ちゃんなんだからアイリスを守ってあげなきゃいけないと思っているようである。

そんなアイリスが自分より先に剣術と兵法を習っているのがアリスの負けん気を刺激したのだろう。


そうは言っても、所詮4歳女児。


木刀に振り回されるわ、兵法を聞いてるときは睡魔に襲われて船を漕いでいるわで殆んど身になっていない様子。

で、結局は、いつも守らなきゃと思ってる対象のアイリスに負けてしまうので授業の後半にはほぼ泣いている。


負けていると言っても、木刀で叩く訳にはいかないからアイリスの防御一辺倒なんだが、当たらない悔しさと苛立ちでアリスはいつも泣いてしまうのだ。

それでも毎日特訓に来るのだから相当な負けん気ではある。



ある日、父と母が王都に用があるとかで朝から出かけてしまった。

これに便乗してテイラーも同行した。



今日もアリスと二人で訓練なのだが父も居ない為、自習となった。



自主的に淡々とこなす普通の特訓も飽きてきた様で、パパとママとテイラーや護衛の人たちが出かけた早々にアリスが森の湖に行こうと提案してきた。

女の子は小さい時からおマセさんとは良く言ったものだ。

考える事もやろうとしている事も、14歳でも24歳でも変わらない。


暇になれば違う事に目が行く。


今回はたまたま湖と言う事だ。

ここから湖までは子供の足でも3時間程の距離。


プチ冒険の感覚で食事の後、メイド長に訓練してくると言ってこっそりと二人で出かけた。



考えたらアリスと初めてのお出かけ。


4歳でデートと言う感じでもなかったのだが、アリスは恋する乙女のように手を繋いでルンルンで歩いている。



4歳ですでに女なんだな~と思っていたところでフッと想い出す。

そういえばアリスの母親はあのテイラー・ビッチ(仮)だと。

まさか! すでにビッチの称号を受け継いでいるのか?


俺の将来が少し不安である。

しかし、俺の中の危険察知スキルはまだ発動していないようだ。


毎日毎日顔を合わせているのになぜか話の話題が尽きない。

どうでも良い話を話しているとそんなこんなで湖の畔に到着した。

アリスとの会話に時間のたつことも忘れ、疲れよりも、もう着いた? との印象しかなかった。



湖の遠く対岸には白い城も見える。



あの城は確かサマンサのお父さんの城だった気がする。

と言う事はおじいちゃんとおばあちゃんがあそこに住んでいるのか。

考えてみれば結構近いな。

今度、こっそり遊びに行ったらお小遣いもらえるかな?

なんて考えてみた。



御世辞なく遠目に見ても結構大きなお城だ。

サマンサは本当に良家のお嬢様なんだね~…それを、何を間違ったのかバカ親のロックに嫁に来るとは…。

…まぁ、傍目から見てもサマンサが幸せそうだから良いんだけど。


しかし、あんなデカい城とは、それに比べて我が家の小さき事よ…

いや、一般家庭の家に比べたらお屋敷って感じで大きいんだけどね。

あの城と我が家を比べたら月とすっぽん、ロックにサマンサって感じだ。

でも、4歳までの冒険の舞台でもあったからそれ程手狭な訳でも無いのか?

うん、完全にマッチポンプと化してるな。気を付けなければ。



ここまで来て何をするわけでは無いのだが、このプチ冒険が子供心には楽しいのだ。



ひとしきり遊んだところで帰ろうとする。

もうそろそろ帰らないと、父たちが帰ってきてしまうからね。

プチ冒険をしてるなんてバレたら怒られてしまう。


アリスも目的の場所に来れて満足だったのか、文句タラタラで岐路に付く。

喉が渇いただの、お腹すいただの、帰り道が遠い、ダルイ、疲れた…等々。

女子全開だった。

自分から誘っておいてどうかと思うが、これが世の男性が感じている理不尽ってやつか…と、寛大な心で接する俺って大人だ。


それでも、お姉さん風を吹かせたいのか「私も我慢するからアイリスも我慢だよ!」とか「帰ったらイッパイご飯食べようね」って励ましてくれた。

どんなマッチポンプなんだと思ったが大人な俺は自然とアリスの頭を撫でていた。



アリスもご機嫌になり、湖畔の道を行きと同様に手を繋ぎながら歩いていると10~12歳位の子供6人が前から歩いてきた。



子供たちは釣竿を手にしてる事からこの湖で釣りをしていたのだろう。

しかし、魚を持っていない事を見るからにボウズだったんだな。


今度は木刀の代わりに釣竿でも持ってくるか。

そんな話をしていたらアリスが何も考えていない一言を発した。


「でも、あの人達みたいに釣れないのは嫌だな~」


ここでそんな事を言っちゃうか?

流石に空気を読まない4歳女児…(汗)


案の定、その言葉を聞いた子供たちが因縁を付けてきた。


「この辺じゃ見ないガキだな」

「釣れてなくて悪かったな!」

「このガキ生意気だな」

「やめろよ、すぐに泣いちゃうぜ」


そして負けん気の強いアリスがトドメの一言。


「小っちゃい子供にケンカ売って、かっこ悪っ!」


小っちゃい子って俺の事ですか?

アリスさん間違えてますよ。

この子たちはアリスに喧嘩を売ってる…いや、喧嘩を売ってるのはアリスなんだけど本人に自覚が無いのが一番の難点。


俺は誰に聞かれもしない程の小さい溜息を吐く。

そんな俺の態度に子供たちの神経が逆なでされたのか地元少年たちからは『ピキッ』と聞こえてきそうな顔をしております。


はい、喧嘩必至です。

既にリングは鳴らされております。



アリスは木刀を構えて6人に対して構えをとるが、どう考えても4歳児が10歳オーバーの子供に勝てる訳ないだろ。

しかも、俺に対してアリスは「お姉ちゃんが守ってあげる!」とか言ってるし………。

自分で点けた火に油を注して大火にしたのもアリスなんだけどね…これこそ本当のマッチポンプだった。

しかも天然…世の中で言う『一番性質が悪い』と言われているモノだ。



アリス、相手と己の強さを見極めるのも強さの内だよ? なんて心の中で叫んでみた。



案の定、早々に木刀を奪われてアリスは泣いている。

仕方がない……非常に不本意で遺憾ながら、助けに入る次第でございます。


「お兄ちゃん達さ…アリスの木刀返してもらえる?」


向こう6人、こっち実質1人。

子供たちは強気にヘラヘラしながら木刀を振る。


「取れるものならとってみろよ!」


な~んて勝ち誇った笑顔で言ってる。


俺は有頂天な子供たちに向かって最後の断りを入れる。


「本当にいいの?」


俺の言葉を聞いて大笑いする少年たち。

すぐさま木刀を持っている子供の手を木刀で叩く。


転がるアリスの木刀

木刀を持っていた子供は何が起きたか分からない状態だったが、木刀が地に落ちた事を確認すると俺に向かってコブシを振り上げる。


「このガキ!!!!」


そう言いながら追随するように向かってくる子供5人


掴み掛ってくる子供の脛に木刀を当てる。

転び脛を抑えて泣く子供。


その隙に、木刀の切先をもう一人の子供の顎に軽く当てる。


その場で糸の切れた人形のように倒れ込む。


他の子供は石を投げてくるが、こんなのは簡単に避けられる。


逆に打ち返して、石が相手のおでこに当たりうずくまって泣いている。


アリスの木刀を拾いなおした子供が向かってくるが、相手が木刀を振りかぶるよりも早く相手のおでこに一撃を加える。


他の子供は向かってくる気配だが何か怖気づいているようでもある。


アリスの木刀を拾い、泣いてる子供たちに木刀を向け


「まだやる?」


と聞いたところで、泣いていない子供たちも一斉に泣きだす。

はあ、ヤレヤレと達観した様子で周りを眺めアリスの元へ。


そのままアリスに木刀を渡して、泣いてたアリスの手を握り歩き出した。



道中のアリスは超不機嫌。


剣を習っていたのに勝てなかった事、そして守ってあげようとした()に逆に助けられた事。

子供たちのヘラヘラした態度と上から目線。

色々混ざり合って超々が付くほど不機嫌だ。

俺が宥めようと何かを言っては明後日の方向を向くし。

どうにもこうにも、にっちもさっちもどうにも…って感じだった。


でも、手を離さない所は何か可愛いな。


俺はアリスを凄くなだめた。

4歳児が言うセリフとは思えないほど恥ずかしい言葉を並べてなだめ尽くした。


ぶっちゃけ、無意識ではあるがケンカを売ったのもアリス。

勝負を挑んだのもアリス。

全ての元凶はアリス!

と、俺は心で思っても決して口にはしませんでしたよ。

俺頑張った! 超頑張ったんだよ! 誰か俺を褒めてくれ!


始めの1時間は頬を膨らませていたアリスも次の1時間は木刀をしきりに振っていた。

「次は負けない」「アイリスにも負けない」とひたすらブツブツ言っていた。

最後の1時間はいつも通りだった。


女の子は非常に疲れる。

いや、本当に疲れた。

女の子(しかも4歳児)1人でこんなに疲れるんだぞ……二股とか三股とかする男の気がしれない。



でも、今日はある意味初の実戦だったのかな?

稽古より簡単だったけど(笑)



そんな湖からの帰り道、本当の実戦を体験する事になる。



「この森を抜ければすぐに町だから、もう少しの辛抱よ!」とアリスが言うと同時に野犬たちの群れに遭遇する。

流石は野犬だ。相手が子供2人と言う事に何の戸惑いも見せず一斉に襲い掛かってきた。


さすがに多勢に無勢どころではない。

ちょっとくらい腕に自信があっても所詮4歳児。

命中精度は特筆するべき点ではあるが、破壊力が伴わない。

真剣だったら、剣先が当たっただけでも致命傷を与える事も裂傷を与えることも可能なのだが、当たっても多少痛い程度で済む木刀では勝負が見えていた。


純度100%の野生に木刀を叩きつけても全く怯む様子は無い。


普通の大人が木刀で叩いても会心の一撃が出ない限りは野生の犬なんて倒せないのだ。

それほどまでに野生の力と言うのは凄まじい。


そうこうしている内にさすがに多勢に無勢、俺の攻防の甲斐なくアリスの肩が野犬に噛まれてしまった。


首でなくて良かったが、4歳児の肩を噛む犬の犬歯は、あと少しの所でアリスの心臓を捕えてしまう非常にまずい状況だ。


犬の脳天を木刀で叩くが放そうとしない。

逆にアリスを咥えたまま頭を振るそぶりを見せたため、慌てて噛んでいる犬の口元に木刀を差込んだ。


しかし、木刀なんて犬の顎の力には早々に耐えられないだろう。

ましてやアリスを咥えたまま頭を振られてはアリスの命も危うい。


このままでは本当にまずい事を悟り。

魔法を展開した。


電脳展開型タブレットを開き魔法を選択する。

そしてアリスを噛んでいる犬に人差し指を向け魔法を唱える。


「ファイアミサイルレベル2!」


槍状の炎が犬を刺し貫く。


それどころか犬の上半身のみを残し蒸発させてしまった。


そのまま森の奥深くまで木をなぎ倒しながら飛んでいく。

残っているのは一瞬で炭にされた大木だけであった。


これには流石の犬たちも怯みこちらに向かってくるのを躊躇っているようでもある。


続けて呪文を展開しようとしたとき馬車がこちらに向かってくる。


その馬車から逃げるように退散する犬たち。


そして慌てて駆けつけてくる父と母とテイラーだった。


俺は早くアリスを回復させなきゃ! と思っていたのだが、母に抱きしめられ身動きがとれない。

父は逃げた犬たちの様子を窺っている。


そしてテイラーの悲鳴。

テイラーはアリスを抱きかかえると、気絶したアリスの名を懸命に呼んでいる。


そこで後続の馬車から降りてきた70歳代のじいさんがテイラーの元に駆け寄る。


その様子を母に抱かれながら見ていると、じいさんの魔力が体内で螺旋を描くように流れるのを感じた。


そして掌から緑色の光が輝いたかと思うと「ハイキュア!」と唱える。


しばらくすると、犬に噛みつかれていたアリスの傷口が小さくなり出血が停止する。

と同時に、蒼白の顔は赤みを帯び、荒い息遣いは落ち着きを取り戻していった。


じいさんはテイラーに向かい「もう大丈夫じゃ」とテイラーの肩に手を置く。


ロックは、じいさんに懸命にお礼を言うテイラーを馬車に乗るよう促し急いで屋敷に帰った。


俺は馬車の中で母に抱えられ俯きながら、先程の説明をしていた。


「まったく………」


ロックは怒り半分、心配半分でそう言いながら俺の頭に軽く手を置いて一呼吸し


「しかし、良くアリスを守った。」



俺はそう言われて、悔しさと情けなさと父の温かみで涙を流していた。


「アリスは?」


俺を落ち着かせるように、「心配いらない」と父が説明してくれた。



テイラーはアリスを抱き後続の馬車から降りてきた。


「アルトマン学園長も居るからテイラー達も今日は屋敷に泊まりなさい。その方が何かあった時に対応できる」


「ありがとうございます。ロック様。」



帰りの道中、絶えずアリスの様子を見てくれていたアルトマン学園長と呼ばれたじいさん。


「傷は塞がっているが、念のためもう一度回復魔法をかけよう。あと、殺菌もしなければの」


落ち着いたのかテイラーも深々とじいさんに礼を言う。


「宜しくお願いしますアルトマン学園長様」


ロックがテイラーの肩に手を置き微笑を見せる。


「アルトマン学園長が大丈夫と言ってくれたんだ。心配いらないよテイラー。それよりもアリスを休ませてあげるのが先決だ」


そう言いながら、屋敷の中へ入る様に促すと、そのまま踵を返す様に馬車に向かう。


「俺は野犬討伐の依頼を出してくるよ」


そういって、父は出かけて行った。



俺はアリスの様子が心配で部屋に付いて行った。


「君がアイリスだね? 加護付ですでにヒーリングマスターExだとか? Exと言うのは良く分からんが、すでに法王の器を持ってるとはの~…そういえば自己紹介がまだじゃったの? わしはアルトマンと言ってな、アイリスが入学する学園の学園長をやっておる」


何かチラリと未来の話をされたようだが、俺はアリスが心配で上の空だったようで、社交辞令的な挨拶しか返答できなかった記憶がある。


「アイリスです。…宜しくお願い致します。」

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