第16話 桃華の宝物
さっきの休み時間に桃華に話しかけようとしたら、いなかった。
お手洗いかな?と、思ったが、なかなか帰って来ない桃華が心配になる。
ギリギリ授業開始に間に合った桃華に、ホッとするが、なんだか様子がいつもと違う。
授業も終わり、桃華に声をかけようとしたが、またもや見当たらない。
(今日は部活もないから、ゆっくり一緒に帰ろうと思ったのに……)
桃華の机を見ると鞄が置いてあった。
まだ学校にはいるということだ。
せっかくなので、一緒に帰りたい。
まだ、鞄があるから、鞄を取りに戻ってくるだろう。
そういえば、今月の部活の写真のテーマが[ 春 ]だった…。
桃華を待っている間、学校の花壇や桜にでも、シャッターを切ろう。
桃華の鞄に置き手紙を置いておけば大丈夫…。
そう考えた私は、
「桃華 学校の花壇や桜を撮ってるね。一緒に帰りたいから、帰るときに連絡ちょうだい? 紗季」
と、書いた手紙を桃華の鞄の上に置くことにした。
そして、荷物とカメラを持って花壇、植え込みに行く。
歩きながら、気になった草花にシャッターを切る。
(………?あの後ろ姿は、桃華?)
桃華らしき人が植え込みの前にかがみ込んで何かしていた。
(桃華も、写真を撮ってるの?けど、なんだか様子が違う……?)
その後ろ姿は何だか悲しそうな、泣き出そうな…それでいて、少し怒っているような……複雑な雰囲気をまとっている。
近づいていくと、その後ろ姿はやはり桃華だった。
しかし、写真は撮らずに、植え込みに手を入れ、ガサガサとしていた。それも、制服や自分の腕が汚れてしまうことも気にせずに。
(………!!??)
そっと、桃華の横にしゃがみ込んで見ると、桃華は涙目になっていて、今にも泣き出しそうだった。
「桃華?どうしたの?」
声をかけられて、初めて私の存在に気がついたらしい桃華。
「えっ……!?紗季!?」
「私は部活の写真を、撮ってたんたけど……。桃華は?」
「えっと……。紗季…ごめんね!」
突然、桃華に謝られた…が、訳が分からない。
「??どうしたの?」
とりあえず、聞いてみる。
「……あのね…っ…………桃華が……くれた……ストラップ…っ……なくしちゃったのっ…」
泣きながら答える桃華。
どうやら、私がプレゼントしたペアストラップをなくしてしまったらしい。
「泣くほど大切にしててくれたの?」
「…ひっく……うん…っ……宝物
……」
私とのペアストラップが宝物だという桃華。
可愛い過ぎる…。
「ありがとう。」
「……ひっく…??」
私がにやけそうな口元を、こらえながらお礼を言うと、桃華は不思議そうな顔をした。
「教室とか廊下とか…校舎にはなかった?」
「…っ……ここらへんに…っ…あるの………」
「??ここにあるの?」
「うん……。……っ…私がいけなかったの……ひっく……。紗季に…っ……近づき過ぎたから……」
「えっ…?どういうこと?」
そして、桃華は話始めた。
ぽつりぽつりと、私の知らなかった真実を……。